IoT工場セキュリティ対策ガイド|製造業で増加する攻撃リスクと防御方法を解説

IoT工場見える化とは?導入メリット・活用事例・システム構成を解説

IoT工場のセキュリティ対策を解説します。製造業を狙うサイバー攻撃のリスク・OT環境特有の課題・ネットワーク分離や監視体制の構築方法・導入事例まで体系的にまとめました。工場IoTのセキュリティ強化を検討している担当者に役立つ内容です。

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工場のIoT化を進める中で、サイバー攻撃やセキュリティインシデントのニュースを見て、自社の対策が十分かどうか不安を感じている担当者の方は多いのではないでしょうか。

工場のIoT化はOTネットワークとインターネットをつなぐことを意味しており、従来の閉じた環境では想定していなかったサイバー攻撃のリスクへ影響が及ぶ可能性があります。製造業を標的としたランサムウェア攻撃は2020年以降増加傾向にあり、生産停止・情報漏洩・取引先への波及といった深刻な被害が国内外で報告されている状況です。

IoT工場のセキュリティ対策はITシステムとは異なるOT固有の視点が必要であり、稼働を止めずに段階的に整備することが求められます。本記事では、IoT工場のセキュリティリスクが増大する背景・想定される攻撃と侵入経路・対策が複雑化する要因・主要技術・対策の進め方・企業事例まで体系的に解説します。

IoT工場のセキュリティリスクが増大する背景

ネットワーク接続の拡大に伴うリスクを管理するIoT工場セキュリティのイメージ

IoT工場のセキュリティリスクは、ネットワーク接続範囲の拡大・ITとOTの要件の違い・攻撃手法の高度化・閉域網依存の限界という4つの要因が重なることで急速に高まっています。

これらの背景を正確に把握することが、自社に必要な対策を設計するうえで重要です。まずはリスクの全体像を整理したうえで、優先度の高い領域から段階的に技術対策を整備していきましょう。

IoT導入による工場ネットワークの複雑化と接続範囲拡大

従来の工場ネットワークは生産設備・PLCなどのOT機器だけで構成されており、外部接続が限定的な閉じた環境でした。IoT導入によって設備にセンサーや通信機器が追加され、クラウドやERPとのデータ連携が広がることで、ネットワークの接続範囲と接続ポイントが増加しています。

接続するデバイス数が増えるほど攻撃者が侵入できる経路の数も増えるため、一点突破で工場内ネットワーク全体に被害が拡大するリスクが高まります。IoT化のメリットを活かすためにも、接続範囲の拡大に応じたセキュリティ設計が不可欠です。

IT環境とOT環境で異なるセキュリティ要件と運用方針

ITシステムのセキュリティでは機密性・完全性・可用性の3要素のうち機密性が最優先とされますが、OT環境では設備の稼働継続(可用性)が最優先となります。ITシステムへのセキュリティパッチ適用やシステム再起動は定期的に行えますが、生産ラインを止めることが許されないOT環境では、パッチ適用のためのダウンタイムを確保することが困難でしょう。

この優先順位の違いが、IT向けのセキュリティ製品やポリシーをそのままOT環境に適用できない根本的な理由になります。IT環境とOT環境それぞれの特性を踏まえた設計が求められます。

製造業を狙ったサイバー攻撃高度化と被害拡大

IPA(独立行政法人情報処理推進機構)が公表した「情報セキュリティ10大脅威2024」では、製造業を含む重要インフラへのランサムウェア攻撃が上位にランクインしています。攻撃者は生産設備への感染によって工場を停止させ、業務データを暗号化して身代金を要求することで、製造業の事業継続を人質にとる手法を用います。

2021年に発生した国内大手自動車メーカーの取引先へのランサムウェア攻撃では、完成車工場の生産停止という重大な影響が生じました。攻撃の標的と手法が高度化している現状を踏まえた対策設計が求められます。

出典参照:情報セキュリティ10大脅威 2024|独立行政法人情報処理推進機構

閉域網依存のセキュリティ運用が抱える脆弱性

工場のOTネットワークはかつて外部から物理的に切り離された閉域網として運用されており、ネットワークの分離自体がセキュリティ対策として機能していました。しかしIoT化・リモートメンテナンスの普及・クラウド連携の拡大によって完全な閉域網の維持が困難になっており、外部からの侵入経路が事実上生まれている状況です。

閉域網であるという前提のもとで脆弱性対応やアクセス管理が行われていない工場では、一度侵入を許すと被害が工場内全体に広がるリスクがあります。

インシデントが発生した場合の具体的な被害

セキュリティインシデントが発生した場合の被害は、製造ラインの停止にとどまらず、サプライチェーン全体・取引先・経営財務に至るまで広範囲に及びます。

被害の規模と種類を事前に把握しておくことで、経営層へのセキュリティ投資の必要性を説明する材料としても活用できます。以下の4つの観点から、インシデント発生時の具体的な影響を整理していきます。

製造ライン停止による事業継続への影響

ランサムウェアなどのマルウェアが工場のOTネットワークに侵入すると、PLCやSCADAなどの制御システムが機能を停止し、生産設備が正常に動作しなくなることで、製造ラインの稼働が停止します。生産停止が長期化すると、製品の出荷遅延・納期違反・受注機会の喪失という連鎖的な事業損失が発生します。

IPA(独立行政法人情報処理推進機構)の調査によれば、製造業のランサムウェア被害における生産停止期間は数日から数週間に及ぶケースが報告されており、復旧までの間の機会損失は企業規模によって数千万円から数億円規模に達することがあります。

出典参照:情報セキュリティ10大脅威 2024|独立行政法人情報処理推進機構

情報漏洩によるサプライチェーン全体への波及

工場のIoTネットワークには、製品の設計データ・製造ノウハウ・取引先情報・調達価格などの機密情報が流通しています。攻撃者がこれらの情報を窃取して外部に流出させ、競合他社に売却することで、企業の技術優位性が失われるリスクがあります。

また、自社の情報漏洩を起点として取引先のシステムへ被害が拡大し、部品供給の停止などを通じてサプライチェーン全体へ影響が波及する可能性もあります。被害が自社の範囲を超えて関係企業全体に広がることで、取引先への損害賠償リスクが生じるケースも想定されます。そのため、情報漏洩は財務面にも深刻な影響を及ぼすリスクとして認識しておくことが重要です。

社会的信頼低下による取引先・顧客への影響拡大

サイバー攻撃の被害を受けた事実が公表されると、情報管理体制への不信感から取引先が取引の継続を見直し、顧客が製品への信頼性を疑うリスクが生まれます。特に自動車・食品・医薬品など品質管理や安全性への要求が高い業種では、セキュリティ事案が製品の安全性への疑義と結びつくことがあり、ブランド価値への長期的なダメージにつながります。

社会的信頼の回復には技術的な復旧とは別に、広報対応・第三者機関による調査・再発防止策の公表という長期的な取り組みが必要です。信頼の喪失は財務的な損失とは異なり、数値で測ることが難しい経営上の深刻なリスクといえるでしょう。

復旧コストや損害賠償による経営負担の増加

セキュリティインシデントからの復旧には、感染範囲の調査・システムの再構築・データ復旧・セキュリティ強化という複数の工程が必要であり、専門ベンダーへの対応費用だけで数千万円規模に達するケースがあります。

取引先や顧客への損害賠償・弁護士費用・監査費用なども加わり、総経営負担はさらに増大します。ランサムウェア被害の場合、身代金の支払いを選択しても復旧が保証されるわけではなく、支払い後もデータが復元されないケースが報告されています。セキュリティ対策への事前投資は、インシデント発生後の復旧コストと比較して低い水準に収まるケースが多いでしょう。

IoT工場で想定される主なサイバー攻撃と侵入経路

IoT工場を標的とするサイバー攻撃は、脆弱なレガシー機器・リモートアクセス・物理デバイス・サプライチェーンという4つの侵入経路を通じて発生するケースが多いです。

自社工場の侵入経路を把握したうえで、優先度の高いリスクからの対策が重要です。侵入経路の全体像を把握することで、セキュリティ投資の優先順位を合理的に判断できます。

レガシー機器や長期稼働システムの脆弱性を狙った攻撃

製造現場には導入から10年以上経過したPLCやSCADAが現役で稼働しており、ベンダーのサポートが終了しているケースや、セキュリティパッチの提供が停止しているケースが多いです。これらのレガシー機器はセキュリティ機能が脆弱であり、既知の脆弱性が放置されたまま運用されているため、攻撃者に悪用されやすい状態にあるといえます。

機器の更新に多大なコストと時間が必要であることから、脆弱性が発覚しても即座に対処できないという構造的な問題があります。ネットワーク分離や通信監視によって脆弱性を補完する代替策を設計することが重要です。

リモートアクセス経由で発生する不正侵入リスク

保守ベンダーや社外エンジニアが工場の設備をリモートでメンテナンスするためのアクセス経路は、適切に管理されていない場合に不正アクセスの侵入経路となります。

認証が不十分なリモートアクセス環境や、長期間使用されていない未管理のVPN接続が攻撃者に悪用され、正規のリモートアクセス資格情報が窃取されて不正侵入に悪用されるケースがあります。リモートアクセスには多要素認証を必須とするとともに、接続ログを記録して定期的に監査する運用体制を整えることが有効な対策です。

USB・持ち込みデバイスを介したマルウェア感染

工場の設備に接続するUSBメモリ・ラップトップ・スマートフォンなどの持ち込みデバイスは、マルウェアを工場ネットワークに持ち込む侵入経路となる可能性があります。インターネットに接続されていない閉域網の工場でも、外部デバイスを経由したマルウェア感染のリスクは排除できません。

2010年に発覚した「Stuxnet」は、USBを介して産業制御システムに感染拡大したことで知られており、物理的な持ち込みデバイスが重大な侵入経路になり得るでしょう。持ち込みデバイスのウイルスチェックを義務化し、設備へのUSB接続を制限するルールの徹底が有効です。

出典参照:制御システム関連の サイバーインシデント事例4~Stuxnet:制御システムを標的とする初めてのマルウェア~|独立行政法人情報処理推進機構

サプライチェーンを経由した間接的なサイバー攻撃

自社のセキュリティ対策が十分でも、セキュリティ水準の低い取引先や部品メーカーのシステムを経由してマルウェアが侵入するサプライチェーン攻撃が増加しています。2020年に発覚したSolarWinds社のサプライチェーン攻撃では、ソフトウェアの更新プログラムにマルウェアが埋め込まれ、多数の組織に被害が拡大しました。

保守ベンダーが工場ネットワークへのリモートアクセスを行う際の認証管理を強化し、取引先に対してセキュリティ要件を契約に明示することで、サプライチェーン経由のリスクを低減できます。

IoT工場でセキュリティ対策が複雑化する要因

IoT工場のセキュリティ対策は、製造現場の特性・部門間の分断・レガシー機器の存在・人材不足という4つの要因によって複雑化します。

これらの要因を把握することで、対策の設計段階から障壁を織り込んだ現実的な推進計画を立てることができるでしょう。課題を把握せずに導入を進めると、ツールだけが増えて対策が機能しないリスクが高まります。以下で各要因の内容を詳しく解説します。

稼働継続を優先する製造現場の特性が対策実施を制限する

製造現場では、生産ラインの稼働率維持と納期遵守が最優先事項とされており、セキュリティ対策のためにラインを止めることは原則として許容されません。セキュリティパッチの適用・機器の更新・ネットワーク設定変更といった対策は、生産停止リスクを伴うため、実施タイミングが定期メンテナンスの機会に限定されます。

この制約が、脆弱性が発覚してから対処するまでの期間を長期化させ、暫定対応に留まらざるを得ない状況を生む要因になります。稼働継続を前提とした対策設計が、OT環境では不可欠な条件です。

IT部門とOT部門の優先順位の違いが対策方針の分断を生む

IT部門はサイバーセキュリティの観点からパッチ適用・アクセス制限・ログ監視の強化を求める一方、OT部門は稼働率の維持と生産計画の遵守を優先するため、両者の間に対策方針の違いが生まれやすい状況です。

IT部門がセキュリティポリシーを策定しても、OT部門に伝達されず、現場での実施が後回しにされて、対策の実効性が低下するケースがあります。IT・OT横断のセキュリティ推進体制を構築し、両部門が合意できる優先順位の設定ルールを整備することが、課題を解消するうえで重要です。

レガシー制御機器の存在が脆弱性対応を長期化させる

製造現場のレガシー制御機器はベンダーのサポートが終了している場合が多く、セキュリティパッチが提供されないまま長期間稼働を継続するケースが多いです。パッチを適用しても動作が保証されない機器が存在し、機器の更新に伴うシステム全体の再検証に多大な工数が必要なため、脆弱性対応が長期化する構造的な問題があります。

レガシー機器の脆弱性に対しては、パッチ適用以外の代替策としてネットワーク分離・通信監視・アクセス制限を組み合わせた補完的な防御設計が求められます。

セキュリティ運用人材の不足が継続的監視体制の構築を困難にする

IoT・OT・セキュリティの3領域にまたがる専門知識を持つ人材は国内でも希少であり、製造業の多くの企業では専任のOTセキュリティ担当者を確保できていない状況です。IT部門がセキュリティを担当していても製造現場のOT環境に不慣れだったり、製造部門がOT機器を管理していてもセキュリティの専門知識が不足していたりするケースが多く、継続的な監視体制の構築が困難になります。

外部のマネージドセキュリティサービス(MSSP)を活用し、社内のキーパーソンを育成するための教育体制を整えることが現実的な対応策です。

IoT工場セキュリティで活用される主要技術

IoT工場のセキュリティを強化するためには、ゼロトラストモデル・OT向け監視ツール・運用基盤という3つの技術領域を組み合わせた多層防御の設計が有効です。

各技術の特性と適用範囲を正確に理解したうえで、自社のリスク水準と運用体制に合った構成を選定することが求められます。技術の組み合わせ方によって、防御の深さと運用コストのバランスが変わります。

ゼロトラストモデルを活用したOTネットワーク防御

ゼロトラストとは「すべての通信を信頼しない」という前提に基づき、ネットワークの内外を問わずアクセスのたびに認証・認可を行うセキュリティモデルです。従来の境界防御モデルはOTとITの統合によって境界が曖昧になった環境では十分に機能しにくく、ゼロトラストへの移行が製造業でも広がっています。

OT環境へのゼロトラスト適用では、デバイス証明書によるエンドポイント認証を導入し、ネットワークをゾーンに分割してゾーン間の通信を厳密に制御することで、侵入後の横展開を抑制できます。

OT環境向けセキュリティツールの導入と監視体制

OT環境に特化したセキュリティ監視ツールとして、ClarotyやNozomi Networksが国内外の製造業で広く採用されています。これらのツールはModbus・DNP3・PROFINETといったOT固有の産業用プロトコルを解析できるため、通信内容を可視化し、正常な通信パターンからの逸脱を検知することが可能です。

エージェントレスで動作するため、既存の生産設備にソフトウェアを追加インストールせずに展開できる点が、稼働中の工場への導入において大きなメリットになります。

セキュリティ監視とアクセス管理を支える運用基盤

SIEM(セキュリティ情報・イベント管理)は、OTネットワーク・ITシステム・クラウド環境のログを一元収集し、相関分析によって異常を検知するシステムです。OT対応のSIEMを導入し、OT固有のプロトコルのログを解析すると、正常稼働時の通信パターンをベースラインと比較して脅威を早期に検知できます。

アクセス管理ではIAM基盤を整備して最小権限の原則に基づいた権限設計を行い、リモートアクセスにZTNAを適用してセッションを録画・監査することで、不正アクセスのリスクを低減できます。

IoT工場を守るセキュリティ対策の進め方

IoT工場のセキュリティ対策は、資産の可視化から始めてネットワーク分離・監視体制・インシデント対応という4つのステップを順番に整備することで、稼働を止めずに段階的に防御力を高めることができます。

各ステップの内容と目的を把握したうえで、自社のリスク水準に応じた優先順位の設定が重要です。すべてを一度に整備しようとせず、高リスク領域から着実に積み上げましょう。

ステップ1:資産の可視化とリスクの棚卸し

セキュリティ対策の出発点は、工場内に存在するすべての資産の把握です。ITシステムだけでなく、PLC・センサー・ゲートウェイ・カメラなどのOT資産もすべて対象に含め、ネットワーク構成図を最新の状態に整備すると、攻撃者に狙われうる資産の全体像が明らかになるでしょう。

資産を洗い出したら、各資産の脆弱性・接続経路・ネットワーク上の位置を評価して、リスクの発生可能性と影響度をマッピングします。リスクアセスメントの結果をもとに対策の優先順位を設定でき、限られた予算と人員を効果的に配分できます。

ステップ2:ネットワーク分離とアクセス制御の設計

ネットワークセグメンテーションとは、工場内のネットワークを機能や重要度に応じて複数のゾーンに分割し、ゾーン間の通信を制御して、攻撃の横展開を防ぐ手法です。OTネットワーク・ITネットワーク・外部接続ネットワークをそれぞれ分離し、生産ラインごとにネットワークを独立させることで、一部に侵害が発生しても被害範囲を限定できます。

アクセス制御では最小権限の原則に基づいた権限設計を行いながら、リモートアクセスには多要素認証を必須とする運用ルールを整備することが重要です。IEC 62443を参照して国際標準に沿った設計を進めましょう。

ステップ3:脅威を早期検知する継続的監視体制の構築

ネットワーク分離とアクセス制御が整備されたら、脅威をリアルタイムで検知する継続的な監視体制の構築に移ります。OT対応のSIEMやNDR(ネットワーク検知・対応)ツールを導入して、通信ログを一元収集し、異常な通信パターンを自動検知する環境を整えます。

24時間365日体制での監視が難しい場合は、マネージドSOCサービスを活用し、外部ベンダーとの連携で監視体制を補完することが現実的な対応策です。定期的なログ分析と脆弱性スキャンを組み合わせることで、脅威の早期発見と対処の速度を高められるでしょう。

ステップ4:インシデント発生時の対応手順と復旧計画の策定

セキュリティインシデントの発生を完全に防ぐことは難しいため、被害を最小化するための事前準備が重要です。BCP(事業継続計画)にサイバー攻撃シナリオを組み込み、製造ラインが停止した場合の復旧手順・代替生産体制・対外公表のタイミングを事前に定めておくことが求められます。

CSIRT(コンピュータセキュリティインシデント対応チーム)を設置して初動対応・被害範囲の特定・関係者への連絡・再発防止策の策定を担う体制を整え、年1回以上のインシデント対応訓練を実施することで、実際の発生時に組織が迅速に動ける体制を確立できます。

IoT工場セキュリティ対策に取り組んだ企業事例

国内の製造企業では、OT環境のセキュリティ強化に向けた具体的な取り組みが進んでいます。業種や規模が異なる2社の事例から、自社への応用可能性を探りましょう。

各社の課題・手段・成果の構造を把握することで、導入計画を設計する際の参考にしてください。事例を通じて、IoT工場セキュリティ対策の具体的なアプローチをイメージしましょう。

事例1.萩原テクノソリューションズ|OT・OA領域の境界防御による工場セキュリティ強化

萩原テクノソリューションズは、工場のOA(オフィスオートメーション)領域とOT領域の間に境界防御を導入し、工場全体のセキュリティ強化を推進しました。OAネットワークからOTネットワークへの通信を制御するファイアウォールを設置し、両ネットワーク間のデータ連携を最小限の通信経路に絞り込むことで、OTネットワークへの不正侵入リスクを低減しています。

既存の生産設備を停止させることなく境界防御を段階的に導入した点が特徴であり、稼働継続を優先するOT環境でもセキュリティを強化できることを示す事例として参考になります。ネットワーク構成の可視化を起点に対策を設計した進め方は、中小製造業にも応用しやすいアプローチです。

出典参照:工場セキュリティ導入事例|萩原電気ホールディングス

事例2.JFEスチール株式会社|OT環境におけるセキュリティ体制強化を推進

JFEスチール株式会社は、製鉄所のOT環境を対象としたセキュリティ体制の強化に組織的に取り組んでいます。OT資産の棚卸しとリスクアセスメントを実施して対策の優先順位を設定し、OTネットワークの通信を監視する体制を整備することで、製鉄所全体の防御力を段階的に高めています。IT部門とOT部門が連携したセキュリティ推進体制を構築し、両部門の知見を統合した対策方針を策定している点が特徴です。

攻撃者が侵入した際の被害を最小化するためのインシデント対応手順も整備されており、大規模な製造拠点においてOTセキュリティを組織的に推進するためのガバナンス体制の整備事例として、製造業全体の参考になるでしょう。

出典参照:『工場のインシデント対応訓練シナリオの実践』から学ぶ|JFEスチール株式会社

まとめ|IoT工場のセキュリティ対策は段階的な整備が事業継続の鍵となる

工場IoTのセキュリティ対策は、OT固有の視点での段階的設計が製造ラインの安定稼働と事業継続を守るうえで不可欠です。主な侵入経路はレガシー機器の脆弱性・リモートアクセス・持ち込みデバイス・サプライチェーンの4つであり、各経路に応じた対策の優先順位に沿った設計が重要です。

資産の可視化・ネットワーク分離・継続的監視・インシデント対応計画という4つのステップを順番に整備することで、稼働を止めずに防御力を高められます。まず自社工場のOT資産を可視化してリスクアセスメントを実施し、IoTセキュリティ対策の検討を進めてみてはいかがでしょうか。

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