ERP導入時にデータ移行する方法は?主な5つのステップを解説

ERP導入時のデータ移行において注意すべきポイントを詳しく解説しています。適切なデータ選定やクレンジング、マッピングの重要性を理解し、トラブルを避けつつスムーズなデータ移行を目指す方法を紹介しています。

企業の業務効率化や経営の可視化を推進する上で、ERP(Enterprise Resource Planning)パッケージの活用は重要な選択肢の1つです。ERPパッケージは販売管理や財務管理、人事管理など複数の業務領域を統合的に管理できるため、業務の一貫性向上や情報共有を促します。

ERPを活用するには、その特徴や対応可能な業務範囲を正しく理解する必要があります。また、実際に導入を検討する際には、自社の業務にどのように適用できるのか、どのようなツールが存在するのかを把握しておく必要があるでしょう。

本記事では、ERPパッケージが対応可能な業務領域や具体的なツール例を解説し、導入効果を最大化するためのポイントもあわせて紹介します。システム選定の参考として活用してください。

ERP導入時にデータ移行を適切に実施すべき理由と背景

ERPシステムの導入には、既存システムから新システムへデータを移行する作業が不可欠です。この段階でのデータ移行の正確性は、業務の継続性やシステムの信頼性を左右する重要なポイントとなります。

不完全なデータ移行は、業務トラブルや誤った意思決定を招くリスクが高いため、入念な計画と品質管理が求められます。適切なデータ移行が行われて初めて、ERPの本来の効果を発揮できるといえるでしょう。

業務継続に必要なデータを新システムで正しく利用するため

ERPシステムの切り替え時に、既存データを正確に新システムに移すことは、日常業務を滞りなく継続する上で重要といえます。顧客情報、注文履歴、在庫状況などが正確に反映されなければ、受注処理や出荷手配、請求業務などが混乱をきたし、結果として顧客満足度の低下や業務遅延につながります。

特に販売管理や購買管理の分野では、リアルタイムで正確なデータが不可欠となるため、データの正確性はミスを防ぐ大きな要素です。また、ERP切り替え後の初期段階から利用者が混乱なく操作できるように、移行作業は計画的かつ段階的に進めることが望まれます。

不正確・不完全な移行は業務停止や誤判断の原因になるため

データ移行時に不正確な情報や欠落が含まれると、業務停止や誤判断につながる可能性が高まります。例えば、会計データに誤りがあれば、決算処理や税務申告に支障をきたし、法的な問題が生じることもあるでしょう。販売データの欠損や誤入力は売上や在庫管理の把握を困難にし、経営層の意思決定を誤らせる原因となりかねません。

こうした状況は、企業の信用にも影響を及ぼし、最悪の場合は顧客離れや業績悪化を招く恐れもあります。これを防ぐために、移行前後のデータ検証や品質管理体制を強化し、慎重にプロセスの管理が大切といえるでしょう。

マスターデータの整備は業務効率化・分析精度向上に直結するから

ERPの効果的な活用は、マスターデータの精度に強く依存しています。マスターデータとは、顧客情報や商品情報、従業員データなど業務の基盤となる基本情報を指し、これらが整備されていないと業務の重複や手戻りが多発し、効率が低下します。

例えば、商品コードが不統一、重複していると、在庫管理に混乱が生じ、誤発注や過剰在庫を招く可能性が高まるでしょう。さらに、正確なマスターデータは経営分析の質を高め、正しい判断を支える情報基盤となります。

移行作業においては特に整備と標準化に力を入れ、全体の業務効率化や戦略的なデータ活用につなげましょう。

過去の取引履歴や会計情報の正確な移行が法令遵守に必要だから

過去の取引履歴や会計情報は、税務申告や監査において重要な証跡となり、ERP移行の際にこれらを正確に引き継ぐことは、法令遵守の観点からも大切です。特に会計データは、決算や税務調査の根拠となるため、誤った移行は罰則や指摘の対象になるリスクがあります。

また、監査法人からの要求に対応するために、過去の正確な取引データが求められることも多く、データの整合性を保つことが企業信用の維持につながります。これらの理由から、過去データの品質チェックや移行プロセスの厳密な管理は欠かせない作業であり、経営基盤の安定に直結しているでしょう。

ERP導入時にデータ移行する5つのステップ

ERP導入に際しては、既存の業務データを新システムに正確に移行するプロセスが重要となります。

移行作業は単にデータをコピーするだけではなく、現状のデータ調査から始まり、必要な情報の選別、データの整理や変換、そして実際のテスト移行と本番移行まで複数の段階に分かれています。各ステップを丁寧に進めることで、移行後のシステムがスムーズに稼働し、業務に支障を出さないことが狙いです。

ここでは、ERPのデータ移行における5つの主要ステップについて詳しく説明します。

①現状データの調査・分析

データ移行の第一歩は、既存システムに存在するすべてのデータを詳細に調査し、どのような情報がどの形で保存されているかを把握しましょう。この段階で重要なのは、データの種類や構造、更新頻度、品質の問題点の分析だといえます。

例えば、顧客データや在庫情報、取引履歴といった主要データを洗い出し、それぞれのシステム間でどのような違いがあるかを明確にしてください。また、不整合や重複データの有無も確認し、後続の工程でどのような対応が必要かを検討します。

現状データの正確な理解がなければ、移行時に誤りや抜け漏れが発生しやすくなるため、丁寧な調査と分析が欠かせません。

②移行対象データの選定と整理

調査・分析で把握したデータの中から、移行すべき対象を選定し整理する作業が次のステップです。すべてのデータをそのまま移行するのではなく、業務に不要な情報や重複データは除外し、必要なものだけを厳選します。

例えば、過去の古い取引データや無効な顧客情報は移行対象から外すことで、システムの負荷軽減や処理速度の向上につながるでしょう。さらに、データを最新化し、統一されたフォーマットに整理できると、後のクレンジングや変換処理の効率化を図れます。

こうした選定と整理が不十分だと、移行後のシステムのパフォーマンス低下やトラブルの原因となるため、慎重に取り組む必要があります。

③データクレンジング

データクレンジングは、移行対象としたデータの誤りや不整合を修正し、品質を高める工程です。例えば、住所の表記揺れや重複した顧客情報の統合、欠損値の補完などが含まれます。正確で一貫性のあるデータを準備すると、移行後のシステムが正しく情報を処理し、業務上の誤りや混乱を防ぎます。

クレンジング作業は手作業だけでなく、自動化ツールを活用するケースも多く、効率化を目指しつつも専門家によるチェックを並行して行うことが望ましいです。品質の悪いデータを放置すると、ERP活用の妨げとなるため、入念なクレンジングは必須の工程といえます。

④データマッピングと変換ルールの定義

データマッピングは、旧システムのデータ形式と新しいERPのデータ形式を対応づける作業です。各フィールドの対応関係を明確にし、必要に応じてデータの変換ルールを定義します。例えば、日付形式の違いやコード体系の差異を調整し、新システムが期待通りにデータを認識できるように設定します。

この作業は移行の成否を左右する重要なステップで、曖昧な対応や誤った変換は後のシステムトラブルの原因となるため細心の注意が必要でしょう。また、複雑な変換ロジックが必要な場合は専門的なスクリプトやツールを用いて処理を自動化し、ミスの防止が検討されます。

⑤テスト移行と本番移行の実施

移行計画が整ったら、まずはテスト移行をし、問題点の洗い出しと修正を行います。テスト移行では、データの完全性や整合性が保たれているか、システムで正しく処理されるかを確認し、業務担当者と連携して実運用を想定した検証を進めましょう。

この段階で問題が見つかれば、前段階の作業に戻って調整や再処理を行うことが求められます。問題が解消され次第、本番移行を実施し、実際の業務で新システムを使い始めます。本番移行時はトラブルが最小限になるよう、移行期間の計画やバックアップ体制の準備も必要です。

このように段階的に進めることで、円滑なERP切り替えが期待できます。

データ移行に対応したERPツール例

ERPのデータ移行は、正確かつ効率的に行う必要があり、専用のツールを活用すると作業の負担軽減やミス防止につながります。

市場には多種多様なデータ移行支援ツールがあり、各製品は異なる特徴を持っているでしょう。例えば、大量データの高速処理や複雑な変換処理を得意とするもの、API連携に強みを持つもの、関連ツールとスムーズに連携する製品などがあります。

ここでは代表的なERPデータ移行対応ツールを紹介し、それぞれの強みや活用ポイントを解説します。

①SAP Data Services|管理機能の充実や移行機能の効率化を実現

SAP Data ServicesはSAP社が提供するデータ統合・変換プラットフォームで、ERPのデータ移行を強力に支援します。多様なデータソースから情報を収集し、一元管理しながら複雑なデータ変換を効率的に処理できるため、大規模なERP移行プロジェクトでも活用されやすい特徴があります。

移行前のデータ品質チェックやクレンジング機能も搭載されており、誤データを排除しながらスムーズに移行できる環境を提供します。

また、エラー発生時のトラブルシューティング機能や移行状況の可視化ツールも充実しているため、プロジェクト管理の負担軽減にもつながります。こうした管理機能により、移行の品質と効率を両立できる点が評価されています。

出典参照:SAP Data Services|SAP SE

②ZAC|API経由でデータの移行が可能

ZACはオロ社が提供する業務支援プラットフォームで、API連携を活用した柔軟なデータ移行を実現しています。APIを介して異なるシステム間のデータをリアルタイムに連携させることができ、ERPシステムへの移行時にも効率的にデータを取り込めます。

APIベースのため、従来のファイルベースの移行に比べてデータの整合性を保ちやすく、変更や更新にも迅速に対応できる特徴があります。

また、ZACは操作性の良さやシンプルな設計が評価されており、中小規模の企業にも適応しやすい点も強みです。API連携により自動化の範囲が広がり、移行作業の負荷を減らしながらシステム間の連携強化に役立ちます。

出典参照:ZAC|株式会社オロ

③freee統合型ERP|関連ツールのデータと連携できる

freee統合型ERPはクラウド型のERPとして、会計や給与、販売管理など複数の関連ツールと密接に連携できる点が特徴です。関連する各種業務ツールのデータをシームレスに連携させるため、移行時も既存ツールからのデータ取り込みがスムーズに行えます。

特に中小企業向けに設計されており、専門知識がなくても扱いやすいインターフェースや設定が整っているため、移行プロセスの負担を減らしやすいといえます。

さらにクラウド上での運用を前提にしているため、常に最新の機能や法令対応が反映される点もメリットとなります。freeeは多様なツールを統合し、移行後の業務効率化を促進する環境を提供しています。

出典参照:freee統合型ERP|フリー株式会社

ERPを導入して業務効率を上げている企業事例

ERP導入によって、業務効率化や情報共有の強化を実現している企業は多く、具体的な成功事例から学べるポイントが多くあります。特にデータ移行を慎重に行い、プロジェクト管理を徹底しているケースでは、導入後の運用におけるトラブルを減らしスムーズな業務推進につながっているでしょう。

ここでは、ERPの効果的な活用で実務改善を果たした代表的な企業事例を紹介し、各企業の取り組みや工夫を取り上げます。

業務効率化に向けた具体的な取り組みや、その背景となる運用方法を知ることで、自社でのERP活用の参考になれば幸いです。

事例①千代田化工建設株式会社|ERPをカタールで本番稼働

千代田化工建設株式会社は、海外拠点であるカタールのプロジェクトにてERPを本格的に稼働させ、業務の標準化と効率化に取り組みました。データ移行にあたっては現地のシステムとの整合性を重視し、移行計画の緻密な策定と段階的なテスト移行を実施しています。

これにより、移行後のデータ不整合や業務停止を回避し、現場でのスムーズな運用を確保しました。ERPの活用でリアルタイムにプロジェクト状況を把握できるようになり、意思決定の迅速化にもつながっています。こうした取り組みは海外プロジェクトにおける情報管理の改善に寄与しています。

出典参照:大手エンジニアリング企業で国内初のSAP® ERP本格導入を実現。国内外のプロジェクトを把握できるIT基盤の構築を1年半で実施。|アビームコンサルティング株式会社

事例②株式会社クボタ|短い期間での移行をプロジェクト管理により完結

株式会社クボタでは、新たなERPシステムへの切り替えに際し、移行期間の短縮を目標に掲げました。徹底したプロジェクト管理のもと、現状分析からテスト移行、本番移行までのスケジュールを厳密に管理し、無駄のない作業工程を構築しています。

特にデータクレンジングやマッピングの精度向上に注力し、移行時のトラブルを減らしながらスムーズな切り替えを実現しました。また、現場とのコミュニケーションを密にとることで、運用開始後の早期問題解決も促進しています。このように計画的な進行管理が移行成功のカギとなりました。

出典参照:環境事業プラットフォーマーを目指すクボタが取り組む、4社統合の基幹システム構築|日本アイ・ビー・エム株式会社

事例③日本ディクス株式会社|作業効率UPと利益予測にERPを活用

日本ディクス株式会社では、ERPの導入により作業効率の改善と利益予測精度の向上に取り組みました。データ移行時には既存システムの分析を徹底し、不要データの削減やフォーマット統一を進めることで、移行後のデータ品質を確保しています。

ERP導入後は業務データのリアルタイム可視化が可能となり、日々の作業効率が向上しただけでなく、収益予測やコスト管理の精度が高まりました。これにより経営層が迅速に意思決定を行える環境が整い、事業運営の安定化に貢献しています。こうしたデータ活用の進化は企業競争力の強化につながります。

出典参照:事業拡大にあわせてクラウドERPシステムを導入し、プロジェクト別の「利益予測」を実現|株式会社 オロ

ERP導入時にデータ移行するときの注意点

ERPを新たに導入する際、データ移行はシステムの安定稼働や業務継続の基盤となるため、慎重に進める必要があります。不十分なデータ選定や、整備不足が後々の業務に影響を与えることも少なくありません。

移行に関わる各段階での精度向上や、関係部門との密な連携が重要となり、トラブルの未然防止やスムーズな運用開始につながるでしょう。ここでは移行時に気をつけたいポイントを詳しく説明します。

移行対象データの選定を慎重に行う

ERPへ移行するデータを選定する際は、現行業務で本当に必要な情報を見極めることが大切です。過去の取引データや顧客情報、在庫情報など膨大なデータが存在するため、業務運用に必須なデータを正確に洗い出す必要があります。

無駄なデータまで移行するとシステムが複雑化し、処理速度の低下や管理コストの増加につながるリスクが高まります。反対に重要データが抜け落ちると、業務の混乱や判断ミスの原因になるため、各部署と協議しながら優先順位を設定して整理が求められるでしょう。

現状の業務プロセスや将来の運用方針も踏まえた選定が欠かせません。

データクレンジングを徹底する

移行前のデータクレンジングは、精度の高いERP運用を支える土台として必要です。重複データや誤記載、不整合な情報を除去・修正できると、移行後のシステム上でのエラーやトラブルを未然に防ぎます。特に顧客情報や財務データは正確性が求められ、クレンジングが不十分だと取引の誤りやレポートの誤解釈を引き起こす恐れがあります。

また、フォーマットの統一やコード体系の整理もクレンジングの一環であり、これによりデータマッピングの整合性も保ちやすくなるでしょう。十分な時間と専門的な知見を確保して、徹底的なデータ精査を行うことが推奨されます。

データマッピングの整合性を確保する

データマッピングとは、旧システムのデータ項目と新しいERPの対応項目を正しく結びつける作業です。これが正確でなければ、データの意味が変わったり、欠落が生じたりするため、業務に重大な支障をきたす恐れがあるでしょう。

移行対象データの構造やフォーマットを詳細に把握し、ERPの仕様に合わせて正しく対応付けることが重要といえます。また、複数のデータソースを統合する場合は、重複チェックや単位の統一も求められます。

マッピングミスを防ぐために、専門知識を持つ担当者によるレビューやテスト移行を複数回実施し、データの一貫性を担保しましょう。こうした作業は移行の成功率に直結します。

業務部門と連携して進める

ERPのデータ移行はIT部門だけで完結しづらく、業務部門との連携が不可欠です。各部門は日々の業務で利用するデータの内容や運用ルールを熟知しているため、データの選定やクレンジング、マッピングの過程で積極的な意見交換が求められます。

特にマスターデータの正確な整理や例外処理の取り扱いについては現場の知見が欠かせません。

連携が不足すると、業務運用のズレや現場の抵抗が生じやすくなり、移行後のトラブルや定着の遅れにつながる恐れがあります。定期的な打ち合わせや報告体制を整え、情報共有を密に保ちながら移行プロジェクトを進行させることが望まれます。

まとめ|ERP導入時のデータ移行をスムーズかつ正確に進めよう

ERPのデータ移行は、新しいシステムを安定的に稼働させるための基盤となる大切な作業です。移行の成功には、まずデータの精査が欠かせません。

移行対象となるデータを慎重に選び出し、重複や誤りを除去するクレンジングの徹底が求められるでしょう。また、旧システムのデータと新しいERPの項目を正確に結びつけるマッピング作業も重要で、この整合性が移行後の業務の正確性に直結します。

本記事で紹介したポイントを踏まえ、ERPのデータ移行を確実に進めることで、業務効率の向上や円滑なシステム運用を実現しやすくなるでしょう。