ERPで内部統制する方法は?メリットや課題の解消法を解説

ERPと内部統制の関係を解説しています。ERPを活用したリスク軽減、コンプライアンス強化、不正防止、具体的な導入方法や課題の解決策を事例を交え紹介します。業務効率と企業の信頼性向上を目指す際の参考にしましょう。

企業経営において、内部統制はリスク管理や法令遵守を徹底し、組織全体の信頼性を高めるための基盤となります。近年では、不正会計や情報漏えいなどのリスクが多様化・高度化しており、紙や表計算ソフトだけでの管理では限界が見えてきました。

こうした背景から、ERP(統合基幹業務システム)を活用し、内部統制を効率的かつ確実に実施する企業が増えています。ERPは財務、人事、販売、在庫といった各部門のデータを一元管理できるため、業務プロセスの可視化や不正防止、迅速な意思決定の支援に直結するでしょう。

本記事では、内部統制の基本的な考え方とERPの役割、具体的な強化方法や課題解決策、実際の導入事例までをわかりやすく解説します。

内部統制とは

内部統制とは、企業が健全な経営を行い、業務の効率化や法令遵守、資産保全を実現するための仕組みです。特に上場企業では金融商品取引法(J-SOX法)により内部統制報告制度が義務付けられており、非上場企業においてもガバナンス強化の観点から重要性が増しています。

内部統制は単なる管理体制ではなく、経営戦略やリスクマネジメントと深く関係し、企業価値を守る柱となる大切な要素です。しかし、従来の紙や表計算ファイルに依存した管理では、情報の散在や更新の遅れ、不正行為の見逃しなどのリスクが高まりやすい傾向にあります。

内部統制の重要性とERPの役割

内部統制は、不正やミスを未然に防ぎ、企業の信頼性を保つ上で不可欠です。市場環境が目まぐるしく変化する現代において、法令遵守(コンプライアンス)や迅速な意思決定が求められる中、その重要性はますます高まっています。

ERP(Enterprise Resource Planning)は、この内部統制を強化するうえで中心的な役割を果たします。ここでは、内部統制の重要性とERPの役割について見ていきましょう。

財務報告の正確性を保つ

財務報告は、企業活動の成果や財務状況を利害関係者に正しく伝えるために欠かせない情報源です。内部統制が不十分な場合、数字の誤りや不正会計が発生しやすく、企業の信用を失墜させる可能性があります。ERPを導入すれば、売上・仕入・在庫・経費といったデータが自動的に連携し、仕訳や集計が正確に反映されます。

また、記録の履歴管理や入力制限機能により、意図しないデータ改ざんや重複入力を防げるでしょう。結果として、決算や監査の際にも正確性と透明性が確保され、投資家や取引先からの信頼性の向上につながります。

効率的なリスクマネジメント

リスクマネジメントは、企業活動の中で発生し得る様々なリスクを特定し、影響を最小化するための取り組みです。ERPはデータをリアルタイムで把握できるため、異常値や不正な取引を早期に発見しやすくなります。

例えば、通常の発注量を大きく超える注文や、承認者と実行者が同一の取引など、内部統制上の警戒ポイントを自動的に検出しやすくなります。また、リスク発生時には迅速な是正措置が可能となり、損失拡大の防止が可能です。これにより経営の安定性を高めます。平常時から潜在的な脅威を管理し、損失の拡大を防ぎましょう。

ERPによる内部統制によって期待できる3つのメリット

ERPは単なる業務効率化のためのシステムではなく、内部統制の実効性を高めるための強力なツールです。財務や販売、在庫などの情報を一元化し、業務プロセスを標準化することで、不正防止やコンプライアンス遵守、リスクの軽減が可能です。

また、記録や承認履歴を自動で残せるため、監査対応にも強く、必要な証跡の迅速な提示が期待できます。これらの機能により、企業は経営の透明性を高めながら、予期せぬトラブルや損失を未然に防ぐのに役立つと期待されます。ここでは具体的に3つのメリットを見ていきましょう。

1.リスクの軽減

ERPを活用することで、業務データの一元管理とリアルタイムな可視化が可能となり、市場変動やオペレーション上における潜在的なリスクの早期発見につながります。例えば、異常な取引パターンや承認経路の逸脱を自動的に検知し、アラートを発する機能があれば、問題が拡大する前に対処できる可能性が高まります。

また、各業務の責任者や承認者を明確にし、取引の流れを記録することで、責任の所在が曖昧になることを防止できます。結果として、企業は財務リスクや業務停止リスクを減らし、安定した経営基盤の維持が可能です。

2.コンプライアンス遵守の強化

法令や業界基準の遵守は、企業の信頼を守るために欠かせません。ERPには承認フローやアクセス制御、操作ログ管理など、コンプライアンス強化に直結する機能が備わっています。これにより、国際基準を含む業務が法令や社内規定に沿って適切に実行されているかを自動的に監視する体制の構築につながります。

さらに、監査や調査が入った際にも、過去の取引記録や操作履歴を即座に提示できるため、説明責任を果たしやすいです。この仕組みは、特に海外拠点を持つ企業や複数の規制が絡む業界で効果を発揮します。

3.不正行為の予防

不正会計や資産の横領などは、企業に甚大な損害と信用失墜をもたらします。ERPでは、業務権限の分離やアクセス制限、二重承認制度などを容易に設定できるため、特定の人物が単独で不正を行う可能性を軽減できる見込みです。これにより、権限の乱用を防ぎ、組織全体の透明性を向上させます。

また、システム上で全ての操作履歴が残るため、万一不正が発覚しても迅速に原因を特定しやすくなるという点もメリットです。不正の発見が遅れると、被害が拡大しかねません。予防と早期発見の両面で効果を発揮するこの仕組みは、企業の内部統制における安心材料となります。

ERPを活用して内部統制を強化する方法

ERPは導入するだけでは内部統制の効果を最大化できません。ポイントになるのは、システムの持つ機能を自社の業務フローに的確に組み込み、日常業務の中で活用し続けることです。そのためには、業務の可視化、権限管理、データ管理といった観点からの運用強化が欠かせません。

ERPを使って内部統制を高めるためには次のような方法を試してみましょう。

  • 業務フローの可視化と改善
  • 権限管理とアクセス制限
  • データの一元管理とリアルタイムな監視体制の構築

ここではそれぞれの方法について詳しく解説します。

1.業務フローの可視化と改善

ERPを導入することで、各部門の業務手順や承認プロセスを一元化して可視化できます。業務フローが見える化されると、どこに無駄や重複があるかを発見しやすくなり、改善策を講じやすいです。この標準化されたプロセスは、従業員が誰であっても同じ品質で業務を遂行できるようにし、属人化を防ぐ役割も果たします。

さらに、ERPは紙ベースのワークフローをデジタル化するため、承認がどこで止まっているか、誰がボトルネックになっているかを瞬時に把握可能です。これにより、業務効率だけでなく、内部統制の精度向上が期待できます。

2.権限管理とアクセス制限

内部統制の根幹は「必要な人が必要な情報だけにアクセスできる状態」を維持することです。ERPは、役職や担当業務に応じて権限を細かく設定し、閲覧や編集・承認の範囲まで制限する機能を備えているのが一般的です。これにより、情報漏えいや不正操作のリスクを減らせます。

例えば、経理担当者だけが財務データにアクセスでき、特定の承認権限を持つ人だけが支払いを実行できるように設定することで、横領や不正会計のリスクの低減につながります。また、各従業員の操作履歴がシステムに記録されるため、不正なアクセスや操作を事後的に追跡することも可能です。

3.データの一元管理とリアルタイムな監視体制の構築

ERPは企業内のデータを統合し、リアルタイムで監視できる環境を提供します。これにより期待できるのが、異常値や不自然な取引が発生した場合、即座に検知して対応する体制です。

例えば、特定のサプライヤーへの支払額が急増したり、在庫データが不自然に減少したりした場合、システムが自動的にアラートを発します。これにより、担当者の見落としを防ぎ、不正やエラーを初期段階で発見できる可能性が高まります。

さらに、監視のためのダッシュボードやアラート機能を活用すれば、管理部門は状況を常時把握でき、問題発生時に迅速な是正措置を講じることが可能です。

ERPによって内部統制を図る際の課題

ERPは内部統制の強化に貢献しますが、導入や運用の過程では複数の課題に直面します。特に運用開始後は、想定していなかった業務上の変更や人員の異動などが発生し、計画段階で設計した統制が崩れやすくなるのが課題です。

こうした状況を放置すると、ERPの機能が十分に活かされず、内部統制が形骸化してしまうリスクを高めてしまいます。これらの課題を正確に把握し、改善策を講じることが、システム本来の効果を最大限に引き出すポイントです。

1.細かい設定や更新作業の管理負担

ERPの内部統制機能を最大限活用するには、承認ルール、権限設定、業務プロセスの細部まで精緻に設計する必要があります。さらに、組織改編や法改正、新製品・新サービスの開始など、環境の変化に応じて頻繁に更新を行うことが求められます。この作業はシステム管理者だけでなく、各部署の担当者も関与するため、継続的な調整とテストが欠かせません。

更新作業の負担が大きくなると、設定の一部が後回しになり、不完全な状態で運用される危険があります。これを防ぐには、更新手順を標準化し、定期的な棚卸しや監査を組み込むことが有効です。

2.複雑なユーザーの権限設定

企業規模が拡大し、部門や業務内容が多様化するほど、ユーザーごとに必要なアクセス権限は複雑化します。ERPでは詳細な権限設定が可能ですが、その反面、誰がどの範囲までアクセスできるべきかを正確に把握し、反映する作業は容易ではありません。

誤った設定により、機密情報に不要なアクセスが許可されたり、必要な情報が見られない状態になったりすることがあります。また、人事異動や役職変更に伴う権限の見直しを怠ると、過去の業務範囲に基づく過剰権限が残り、情報漏えいリスクが高まります。

権限管理の透明性を保つためには、役職ごとに標準権限を定義し、自動付与・削除の仕組みを導入してみましょう。

3.業務フローとシステム統合の不整合

ERP導入時、既存の業務フローとシステム機能が完全に一致することは少なく、どちらかに合わせた調整が必要です。システムに無理なカスタマイズを施すと将来のアップデートや保守に影響が出る一方、業務フローを変更すると現場の混乱や抵抗を招く可能性があります。

不整合が放置されれば、現場がシステム外で業務を行う“抜け道”が生まれ、内部統制の形骸化につながります。これを防ぐには、導入前に現状業務の棚卸しと要件定義を徹底し、必要に応じて段階的に業務を変更する計画が不可欠です。また、ERP標準機能を前提とした運用ルール作りが、長期的な統制維持に役立ちます。

4.セキュリティの脆弱性とリスク

ERPは財務データ、人事情報、取引記録などの重要情報を集約管理するため、外部からのサイバー攻撃や内部からの不正アクセスの標的となる恐れがあります。特に、IDやパスワードの管理が不適切であったり、システム更新を怠ったりすると、脆弱性が生じやすいです。また、クラウド型ERPでは通信経路の暗号化や多要素認証の実装が不十分だと、情報漏えいのリスクが高まります。

これらを防ぐには、技術的なセキュリティ対策だけでなく、ユーザー教育やセキュリティポリシーの徹底が大切です。さらに、定期的な脆弱性診断や侵入テストを行い、常に最新のセキュリティ状態を保つことが求められます。

内部統制の課題を解消する方法5選

ERP導入後に発生する内部統制上の課題は、適切な運用設計と改善策によって軽減につながります。特に、定期的な監査や権限の見直し、業務プロセスの標準化は、長期的に安定した統制環境を維持するうえで欠かせません。

また、セキュリティ対策や社員教育も、単発の施策ではなく継続的な取り組みとして組み込むことが大切です。ここでは、実践的かつ効果の高い5つの方法を紹介します。内部統制の課題を解消して、メリットにつなげましょう。

1.監査部門や外部監査によるシステムの定期監査

ERPの内部統制が適切に機能しているかを確認するには、定期的な監査が不可欠です。社内の監査部門によるチェックだけでなく、第三者機関による外部監査を取り入れることで、客観的かつ専門的な視点から改善点を見つけられます。

監査では、アクセスログや操作履歴、承認ルートの妥当性を重点的に検証します。また、監査結果をもとに改善計画を策定し、実行状況をフォローアップする仕組みを整備しましょう。こうした継続的な監査体制は、不正や設定不備の早期発見と是正につながります。

2.アクセス権限とユーザー管理の強化

内部統制の根幹を支えるのが、適切なアクセス権限の設定と管理です。役職や業務内容に応じて最小限の権限を付与し、不要になった権限は速やかに削除します。そのためには、ユーザーアカウントの棚卸しを定期的に行い、実際の業務内容と現在の権限に乖離がないか厳格に照らし合わせることが必要です。

さらに、権限変更時には承認フローを必須化し、記録を残すことで、後から追跡できる状態を確保します。特にID管理システムとERPを連携させ、権限の自動更新や退職者アカウントの即時削除を実現できれば効果的です。

3.業務プロセスの標準化と自動化

業務フローの標準化は、属人的な判断や手順のばらつきを減らし、内部統制の精度を高めます。ERPを導入する際は、可能な限り標準機能を活用し、全社で統一された業務プロセスの設計を検討しましょう。これにより、誰が担当しても同じ品質と手続きで業務が完遂され、統制の脆弱性を未然に防ぎます。

また、承認やデータ入力など繰り返し発生する業務は自動化を進めることで、人為的ミスの削減や効率化が実現します。自動化の導入後も定期的にフローを見直し、現場の変化や新しい法規制に対応できるようアップデートを行うこともポイントです。

4.セキュリティ強化のための対策

ERPにおけるセキュリティ対策は、技術面と運用面の両方から強化する必要があります。技術面では、多要素認証、データ暗号化、侵入検知システムの導入が有効です。運用面では、パスワードポリシーの厳格化や、端末利用ルールの徹底が欠かせません。最新のセキュリティパッチを常に適用し、脆弱性対策を怠らないことが肝心です。

また、外部接続や持ち出しデータの管理を厳格化することで、不正アクセスや情報漏えいのリスクを減らせます。さらに、セキュリティ対策は一度設定して終わりではなく、新しい脅威や攻撃手法に対応するための継続的なアップデートが欠かせません。

5.社員教育と定期的なトレーニング

内部統制を機能させるには、システムやルールを理解して正しく運用できる人材が不可欠です。社員教育では、ERPの操作方法だけでなく、内部統制の意義やコンプライアンスの重要性を伝えることを意識しましょう。これにより、従業員一人ひとりが不正防止に対する意識を高められます。

定期的なトレーニングにより、設定変更や新機能追加の際にもスムーズに対応できる体制の構築が可能です。また、新入社員や異動者には早期に教育プログラムを受講させ、統制ルールに沿った業務遂行を習慣化させることが、長期的な統制維持に直結します。

ERPによって内部統制を強化した企業事例

ERPを活用した内部統制の強化は、多くの企業で実績を上げています。特に、改善が見られるのは、業務プロセスの標準化やペーパーレス化、海外拠点を含むグローバル対応などです。ここでは、国内外で実際にERPを導入し、内部統制を強化した以下の2つの事例を紹介します。

  • 株式会社中部プラントサービス
  • 株式会社マネーフォワード

いずれもシステムの機能を最大限活用し、業務効率とコンプライアンスの両立を実現しています。

事例1.株式会社中部プラントサービス|ペーパーレス化によって内部統制を強化

株式会社中部プラントサービスでは、紙ベースで行っていた経理や承認業務をERPに移行し、ペーパーレス化を推進しました。これにより、承認フローの透明性が向上し、申請から承認までの履歴をシステム上で一元管理できるようになっています。

紙の書類に依存していた頃は、承認の遅延や書類紛失のリスクが課題でしたが、ERP導入後は業務スピードが向上し、監査対応も迅速化しました。また、アクセス権限を細かく設定し、必要な情報だけを必要な人が閲覧できる仕組みを構築し、不正防止と効率化を同時に実現しています。

出典参照:長年の利用で培った高い信頼感を背景にSuperStream-NX へと移行アドオン開発を最小限に抑えて低コストでの移行と業務標準化を実現|キヤノンITソリューションズ株式会社

事例2.株式会社マネーフォワード|海外拠点の内部統制と経理プロセスの標準化

株式会社マネーフォワードでは、海外拠点を含む複数の事業拠点で異なっていた経理プロセスを統一するためにERPを導入しました。従来は各拠点で異なる会計ソフトや手順を用いていたため、集計や連結決算時に時間と手間がかかっていました。ERP導入後は、共通のシステム上でリアルタイムにデータを共有できるようになり、経理業務の効率化と透明性が向上しています。

株式会社マネーフォワードのように海外に拠点を持つ企業は、国ごとの法律に対応しなければなりません。同社は国ごとの法規制に対応するための設定も組み込み、コンプライアンスリスクを低減しました。この仕組みにより、監査対応や内部統制の監視が容易になり、グローバル規模での経営管理が強化されています。

出典参照:ERPとは?成功する導入プロジェクトのためのポイント|株式会社マルチブック

まとめ|ERPによる内部統制強化でリスクを減らし、業務を効率化しよう

ERPは、財務報告の正確性、リスクマネジメント、コンプライアンス遵守、不正防止など、内部統制のあらゆる側面を支える有効なツールです。業務フローの可視化やアクセス権限の適切な管理、リアルタイムなデータ監視によって、組織の透明性と安全性を同時に高められます。ただし、設定や運用の負担、業務との不整合、セキュリティ対策などの課題も存在するため、導入前の計画と導入後の改善活動が不可欠です。

成功している企業は、ERPの機能を最大限活用しつつ、監査や社員教育などの運用面にも注力しています。自社の状況や将来像を見据え、最適なERP活用戦略を構築することで、内部統制と業務効率化を同時に実現可能です。