バックオフィスDXにセキュリティは必要?基本の対策やステップを解説
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SaaS管理は、情シスが企業のSaaS利用を最適化する取り組みです。コスト削減、セキュリティ強化、業務効率化を実現する具体的な3ステップを解説します。管理不足によるリスクやツール導入のメリットを紹介するので参考にしてください。
企業のIT環境において、SaaS(Software as a Service)は業務効率化や柔軟な働き方を支える基盤となっています。しかし、利用サービスが増えるほど、アカウントや契約状況の把握が難しくなり、コストの無駄やセキュリティリスクが潜在化します。特に情シス部門では、利用実態が把握できないツールへの課金や退職者アカウントの放置は、情シスにとって日常的な課題です。
この記事では、情シスにとってSaaS管理がなぜ必要なのか、その具体的な手順や導入メリット、さらに実際の事例を交えて解説します。加えて、SaaS管理を適切に行うことで、企業のITガバナンス強化や全社的な生産性向上にも直結する点についても紹介しているので参考にしてください。

SaaS管理とは、企業で利用しているクラウドサービスの契約状況、利用状況、コスト、セキュリティを一元的に把握し、最適化する取り組みです。
情シスが適切に管理することで、不要な支出を抑え、情報漏えいや不正アクセスのリスクを軽減可能です。また、業務効率化にも直結するため、組織全体の生産性向上にもつながります。さらに、利用状況の分析から業務改善のヒントを得られる点も大きな利点であり、IT戦略の精度向上にも貢献するでしょう。
SaaS管理を怠ると、組織はさまざまなリスクにさらされます。例えば以下が挙げられます。
これらはコスト面・セキュリティ面の両方に悪影響を与え、経営判断や業務効率にも影響しかねません。SaaSは手軽に導入できる反面、管理が属人化しやすく、気がつかないうちにこれらの問題が深刻化しているケースも少なくありません。組織全体でSaaS管理の重要性の認識が不可欠です。
SaaSは契約後、利用が減っても解約手続きが行われず、惰性的に課金されるケースが少なくありません。特に部門単位で契約されたツールは情シスの把握外になりやすく、利用状況が不透明なまま費用だけが発生します。複数部署で同じサービスを重複契約している場合、年間で数百万円単位の無駄が生じることもあるでしょう。定期的な棚卸しを行わない限り、この無駄は積み重なり続けます。
このような不要な出費を防ぐには、SaaS管理ツールなどを活用して全社のSaaSを可視化し、利用率が低いサービスや重複契約を自動で検知する仕組みを構築することが効果的です。これにより、無駄なコストを迅速に特定・削減できます。
退職者のアカウントが削除されないまま放置されると、悪意ある第三者による不正アクセスの入り口になります。特に管理者権限を持ったアカウントが残っている場合、企業データの改ざんや情報漏えいのリスクが高まってしまうでしょう。
また、外部委託先との共有アカウントが整理されていない場合も同様です。アカウント削除はセキュリティ対策の基本であり、退職や契約終了のタイミングで確実に実施する体制が不可欠です。退職時には、関連部署と連携してアカウントの一覧を迅速に作成し、アクセス権限を速やかに削除するプロセスの自動化が求められます。これは、セキュリティリスクを最小限に抑えるうえで有効な対策のひとつです。
SaaSは社外のクラウド環境にデータを保管するため、契約や設定に不備があると情報漏えいにつながります。アクセス権限の設定ミスや、暗号化されていない通信経路を放置すると、意図しない第三者にデータ流出の恐れがあります。
さらに、個人情報保護法、金融庁ガイドラインなど業界ごとに定められた法令やガイドラインを守らない場合、企業は法的責任を問われかねません。法的責任を問われると、罰則だけでなく、自社の評判も下がってしまうでしょう。SaaSの選定段階からセキュリティポリシーを明確にし、契約内容の精査が大切です。また、導入後も定期的にアクセス権限や設定を見直し、セキュリティリスクを常に監視する体制を構築する必要があります。
SaaSの契約管理、アカウント発行・削除、利用状況の確認は手作業だと多くの時間を要します。サービスごとに管理画面が異なり、情報が分散していると二重チェックや更新漏れが発生しやすくなるでしょう。その結果、情シス担当者は日々の運用業務に追われ、本来取り組むべきシステム改善や戦略立案に時間を割けなくなります。
これが慢性的な疲弊や離職リスクにつながりかねません。SaaS管理ツールを導入し、契約情報やライセンス状況、利用データを一元管理すれば、これらの定型業務を効率化できます。これにより、情シス担当者はより付加価値の高い業務に集中できるようになり、組織全体のIT戦略を強化できます。
効果的なSaaS管理は、単に契約情報を整理するだけではありません。利用状況の可視化、コスト分析、統制ルールの策定まで一連の流れの構築が必要です。具体的には以下の3ステップの実施が、コスト削減とセキュリティ強化の両立につながるでしょう。
この管理体制を確立できれば、情シス部門は日々の運用業務から解放され、より戦略的なIT投資やシステム改善に注力可能です。
まずは、全社で利用されているSaaSを洗い出します。部門契約や個人利用を含め、契約内容、ユーザー数、利用頻度を一覧化します。社内アンケートやクレジットカード明細、シングルサインオン(SSO)ログの活用が有効です。可視化により、重複契約や利用頻度の低いサービスを特定でき、見直しの土台が整います。
このステップでポイントなのは、情シスが把握していない「シャドーIT」をなくすことです。全従業員を巻き込み、利用中の全サービスを漏れなく把握すれば、次のステップである分析の精度が向上します。
さらに、可視化の段階で契約更新日や支払い方法などの情報も同時に整理すると、後続の契約管理やコスト交渉がスムーズになります。
可視化した情報をもとに、利用頻度とコストのバランスを評価しましょう。例えば、利用率が低くても高額なサービスは縮小や解約を検討します。一方、低コストでありながら利用頻度が高いツールは維持する価値があります。分析は四半期ごとなど定期的に行い、変化に応じた契約の見直しを検討しましょう。
この分析を通じて、コストパフォーマンスの低いサービスを特定し、適正なライセンス数に調整できます。また、利用状況の推移を追うことで、サービスの利用が停滞している原因を探り、改善策を検討するのも可能です。
さらに、部署ごとの利用傾向を把握すれば、全社共通化や代替ツールへの統一など戦略的な意思決定が行いやすくなります。コスト削減だけでなく、業務効率化やユーザー満足度の向上にも寄与します。
分析結果を踏まえ、不要なサービスを解約し、必要なツールは契約プランを最適化しましょう。また、新規導入時の承認フローやアカウント発行・削除手順を明文化し、全社で統一ルールを適用します。これにより、管理の属人化を防ぎ、長期的なコスト最適化とセキュリティ強化を実現できます。
この統制ルールは、今後SaaSを継続的に安全かつ効率的に利用するためのガイドラインとなる存在です。特に、退職時のアカウント削除プロセスの自動化や、権限管理の厳格化は、情報漏えいリスクを低減するために不可欠です。
加えて、契約更新前のレビューや、新規サービス導入時の事前評価制度を取り入れることで、不要なコストやリスクを未然に防げます。

SaaS管理ツールを活用すると、手作業では難しい一元管理が可能になり、情シスの負担を軽減可能です。
SaaS管理ツールを活用すれば、契約状況や利用状況をリアルタイムで可視化できるため、不要なライセンスの早期発見やプラン見直しがスムーズに行えます。さらに、アカウント削除や権限設定といったセキュリティ対策を自動化でき、人的ミスによる情報漏えいリスクを減らせるでしょう。
ここでは情シスがSaaS管理ツールを導入するメリットを解説します。
SaaS管理ツールは、全社の利用状況をリアルタイムで把握できます。利用頻度の低いツールを早期に特定し、不要な契約を削減可能です。また、複数部署で利用している同一サービスを統合契約に切り替えることで、ボリュームディスカウントを適用しコストを抑えられるでしょう。
さらに、契約更新日や支払い方法を一覧化すれば、解約漏れや重複契約を防止できます。これにより、年間数百万円規模の経費削減も実現可能です。利用状況のデータはレポートとして自動生成されるため、経営層や各部門への説明もスムーズに行えます。単なる費用削減にとどまらず、IT予算の適正配分や新規ツール導入の判断材料としても活用できます。
SaaS管理によって退職者や異動者のアカウント削除を自動化すれば、不正アクセスのリスクを低減可能です。権限の過剰付与を防ぎ、アクセス権限を必要最小限に保つ設定も可能です。定期的な権限レビュー機能を備えるツールを活用すれば、セキュリティ体制を強化できます。
加えて、アカウントの利用履歴やログイン状況を監視する機能もあるため、異常なアクセスを即座に検知可能です。これにより、情報漏えいの早期防止が可能になります。さらに、セキュリティポリシーの違反があった場合に自動でアラートを送信する仕組みを構築すれば、問題発生から対処までの時間を短縮できます。こうした予防的な対策は、企業ブランドの信頼維持にも関わる取り組みです。
分析結果を踏まえ、不要なサービスを解約し、必要なツールは契約プランを最適化します。また、新規導入時の承認フローやアカウント発行・削除手順を明文化し、全社で統一ルールを適用しましょう。これにより、管理の属人化を防ぎ、長期的なコスト最適化とセキュリティ強化につなげられます。
この統制ルールは、今後SaaSを継続的に安全かつ効率的に利用するためのガイドラインとなります。統制ルールが曖昧なままでは、セキュリティリスクを軽減できません。特に、退職時のアカウント削除プロセスの自動化や、権限管理の厳格化は、情報漏えいリスクを低減するために不可欠です。SaaS管理ツールを導入すれば、これらのルールを自動で適用でき、運用担当者の負担を減らしながらガバナンスを強化できます。
ここでは、実際にSaaS管理ツールを導入して効果を上げた以下の企業事例を紹介します。
導入の背景や得られた成果を知ることで、自社への導入検討の参考になるでしょう。特に、導入目的や改善点、数値としての成果を明確に把握すれば、社内提案時の説得力が増します。コスト削減や業務効率化だけでなく、セキュリティやITガバナンスの強化にもつながる事例が多く、業種や規模を問わず応用可能です。
株式会社日本旅行は、全社的なSaaS利用状況を可視化するために管理ツールを導入しました。結果、利用されていないサービスや重複契約が多数見つかり、年間2,000万円程度のコスト削減に成功しました。
さらに、アカウント発行・削除のフローを統一し、セキュリティ面の強化にもつながっています。導入前は各部門でバラバラに契約管理が行われており、更新漏れや解約忘れが発生していました。導入後は契約情報が一元化され、更新日の自動通知機能により手続き漏れがゼロになっています。また、定期的な利用状況レポートにより、経営層がIT投資の効果を把握しやすくなり、意思決定のスピードも向上しました。
出典参照:日本旅行がSaaS管理のために「ITboard」を導入、実質2,000万円程度のコスト削減効果を発揮。導入事例を公開|株式会社 PR TIMES
株式会社コシダカホールディングスは、全国に展開するカラオケ店舗の業務効率化を目的にSaaS管理ツールを導入しました。アカウント発行・削除作業を自動化したことで、これまで複数人で対応していた業務を1人で運用可能にし、人的コストを削減できています。
さらに、退職者アカウントの削除漏れを防止し、セキュリティリスクの低減も実現しています。導入前は各店舗や本部で異なる手順のアカウント管理が行われていたものの、管理負担とミスの発生が課題でした。しかし、導入後は一元管理が可能となり、作業時間を短縮できています。また、権限付与のルール化と自動化により、店舗スタッフの入れ替わりにも柔軟に対応できる体制が整いました。
出典参照:SSOとのセット利用で「てんてこまい」だったアカウント発行・削除を1名で運用できるように|フリー株式会社

SaaSは企業の業務効率化に欠かせない一方で、管理不足によるコスト増大やセキュリティリスクが潜在しています。情シス部門が主体となり、可視化・分析・統制できる体制を整えていきましょう。SaaS管理ツールは、このプロセスを効率化し、コスト削減と業務負担軽減を同時に実現します。自社の現状に合ったツールを選定し、継続的に改善することで、より安全で効率的なIT環境を構築できます。
特に、シャドーITの横行はセキュリティの脆弱性につながるため、全社的なルールを明確にし、従業員への啓発を徹底していきましょう。