Difyとは？誰でもできる初期設定と運用のポイントを解説

Difyは、ノーコードで生成AIアプリケーションを開発・運用できるプラットフォームです。専門的なプログラミング知識がなくても、直感的な操作でAIチャットボットやワークフロー自動化ツールを簡単に構築でき、業務効率化をサポートします。このプラットフォームにより、企業のIT部門だけでなく、さまざまな部署の従業員も自社の課題解決に貢献できるようになります。

また、OpenAIのGPTシリーズやGoogleのGeminiなど、複数のAIモデルとの連携により、業務ニーズに応じた最適なアプリケーションを構築できるでしょう。AIアプリのカスタマイズや既存システムとの連携も容易で、効率化を実現します。

この記事では、Difyの基本概要や特徴、効果的な運用方法を詳しく解説します。初期設定の方法を把握して、自社の業務効率を向上させましょう。

Difyとは？業務支援の生成AIプラットフォーム

Difyは、ノーコードで生成AIアプリケーションを開発・運用できるプラットフォームです。専門的なプログラミング知識がなくても、直感的な操作でチャットボットやワークフロー自動化ツールなどのAIアプリを構築できます。

企業の業務効率化を強力にサポートするため、近年注目を集めているサービスです。誰もが簡単にAIを業務に取り入れられるため、IT部門だけでなく、さまざまな部署の従業員が自社の課題解決に貢献できるようになるでしょう。

Difyの基本概要と特徴

Difyは、企業がAIを業務に導入する際のハードルを大きく下げることを目的として設計されました。

まず、ノーコード・ローコードでの開発が可能で、複雑なコードを書くことなく、GUI（グラフィカルユーザーインターフェース）上でドラッグ＆ドロップといった簡単な操作だけでAIアプリを作成できます。これにより、開発期間を短縮し、専門知識がなくてもビジネス部門の担当者がAI導入プロジェクトを主導できるようになります。

また、多様なAIモデルとの連携も特徴です。以下のようなAIモデルと連携できます。

• GPTシリーズ（OpenAI）
• Claude（Anthropic）
• Gemini（Google）

さまざまなAIモデルを自由に選択し、組み合わせて利用できるため、用途やコストに応じて最適なシステムを柔軟に構築できるでしょう。

ChatGPTのAPI直利用やZapierとの違い

Difyは、ChatGPTのAPIを直接利用する場合や、ZapierなどのiPaaS（Integration Platform as a Service）とは、違いがあります。

ChatGPTのAPIを直接利用する開発では、プログラミング言語の知識が必須であり、専門の開発者がいなければ実現は困難です。一方、Difyはノーコードで直感的に操作できるため、専門的なスキルを持たない人でもAIアプリを開発できます。

次に、ZapierなどのiPaaSとの違いです。Zapierは異なるSaaS（Software as a Service）同士を連携させ、タスクを自動化することに特化しています。一方、Difyは、AIモデルを核として、社内外のデータを活用した対話型AIアプリケーションの構築に特化しているシステムです。

業務効率化につながるDifyの主な機能

Difyには、企業の業務を効率化するためのさまざまな機能が搭載されています。これらの機能を活用することで、定型業務の自動化や社内の知識共有を促進できるでしょう。具体的には、以下のような機能が代表的です。

• プログラミング知識がなくてもAIアプリを自由にカスタマイズして構築
• AIアプリをAPIとして既存のシステムと連携させてAIの機能を業務プロセスにシームレスに組み込む

ここではそれぞれの機能を見ていきましょう。

1.AIアプリをノーコードで構築できる

Difyの特徴は、プログラミングの知識がなくても、GUI上でAIアプリを自由にカスタマイズして構築できる点です。AIアプリは、大きく分けて会話型とワークフロー型の2つに分類されます。

会話型では、ユーザーとの対話を通じて、情報提供や業務をサポートするAIチャットボットを作成できます。社内マニュアルを学習させた社員向けのQ&Aボットや、顧客からの問い合わせに自動で回答するカスタマーサポートボットなどが代表的な例です。

ワークフロー型では、一連のタスクを自動化するためのAIツールを作成できます。例えば、

以下のようなタスクの自動化が挙げられます。

• 顧客からの問い合わせメールを自動で要約し担当者へ通知
• 会議の議事録からタスクを抽出し、プロジェクト管理ツールに登録するワークフロー

ワークフロー型の活用による自動化で、自社の業務を効率的に進めましょう。

2.API連携で既存システムの機能を拡張可能

Difyは、作成したAIアプリをAPIとして外部に公開し、既存のシステムと連携させることができるのも機能のひとつです。これにより、AIの機能を既存の業務プロセスにシームレスに組み込むことが可能になるでしょう。例えば、自社Webサイトにチャットボットを組み込むことが考えられます。作成したカスタマーサポートボットをAPI経由で自社のWebサイトに埋め込み、訪問者からの質問に自動で対応させます。

また、顧客情報管理（CRM）ツールや営業支援（SFA）ツールと連携させ、AIが顧客の問い合わせ内容を分析し、最適な対応策を提案するといった機能を追加できるでしょう。さらに、グループウェアやタスク管理ツールと連携させ、会議の議事録からタスクを自動で抽出できます。

3.社内外のデータを活用したナレッジ管理と自動応答

Difyの機能のひとつに、ナレッジベースがあります。PDF、Word、テキストファイルなどのドキュメントをアップロードしてAIに学習させることで、AIは社内の独自の情報を活用できるようになるでしょう。

ナレッジベースは、主に2つの方法で活用できます。ひとつは、ナレッジベースを活用したQ&Aチャットボットです。社内マニュアルや過去の技術資料、人事規定などをナレッジベースに取り込むことで、従業員が知りたい情報をAIに質問して即座に回答を得られるようになります。

もうひとつは、RAG（Retrieval-Augmented Generation）機能です。DifyはRAGという技術を用いて、ナレッジベースから関連性の高い情報を抽出し、AIモデルがそれに基づいて回答を生成します。

Difyの初期設定を進める6つのステップ

Difyを活用するためには、適切な初期設定が欠かせません。これから紹介する6つのステップを順番に実施することで、Difyの機能を効果的に活用する準備が整います。

適切に設定を進めることで、業務の効率化や生産性の向上に直結するため、このステップをしっかりと進めることが大切です。特に、最初に設定を誤ると後々の運用に影響を及ぼすことがあるため、最初のステップは慎重に行いましょう。

ここでは、Difyの初期設定を進めるステップを詳しく解説します。

ステップ1.アカウント登録と初回ログイン

まず、Difyの公式Webサイトにアクセスし、アカウントを登録しましょう。登録は、メールアドレスまたはGoogleアカウント、GitHubアカウントなどを使用して進められます。現代のビジネスシーンでは、Googleアカウントを持っているのは一般的であるため、スムーズに登録作業を進められるでしょう。

アカウント登録が完了したら、初回ログインを行います。ログイン後に表示される管理画面は、AIアプリを作成・管理するための主要な作業スペースです。この画面では、設定やデータ管理、アプリケーションの作成・運用が行えるため、ここでの操作がDify活用のカギとなります。また、初回ログイン時には簡単なチュートリアルが表示され、機能を把握しながら進めることができます。

ステップ2.APIキーの設定とモデル接続

Difyでは、AIモデルを利用するために、OpenAIなどのAPIキーの設定が必要です。

管理画面の左側のメニューから「設定」を選択し、「APIキー設定」のページで、利用したいAIモデルのAPIキーを入力します。複数のAIモデル（例：GPT-4、Claude 3など）を登録しておくことで、アプリケーションごとに最適なモデルを使い分けやすくなるでしょう。この機能を活用することで、さまざまな業務に応じたAIアプリケーションを柔軟に開発できます。

APIキーを設定しないとAIモデルが利用できませんので、必ず最初に行うようにしてください。APIキーは、各モデルプロバイダーの公式サイトで取得できます。なお、APIキーの管理には十分なセキュリティ対策を施し、漏えいを防ぐように心がけましょう。

ステップ3.社内資料を取り込みナレッジベースを構築

次に、AIに学習させたい社内資料をDifyのナレッジベースに取り込みます。このステップは、AIアプリが独自のデータに基づいた回答を生成するために欠かせません。

管理画面の左側メニューから「ナレッジ」を選択し、「ナレッジベース」の項目で、「新規作成」をクリックし、ナレッジベースに名前を付けます。ナレッジベースに、PDFやテキストファイルなどのドキュメントをアップロードすると、Difyが自動でアップロードされたファイルを解析し、AIが利用できる形式に変換してくれる仕組みです。

この作業により、AIはアップロードされたドキュメントの内容を学習し、その情報に基づいて回答を生成できるようになります。

ステップ4.最初のAIアプリを作成

管理画面の左側メニューから「スタジオ」を選択し、「新規アプリ」をクリックして、アプリの種類を選択しましょう。アプリ名を入力し、詳細を設定し、プロンプトを設定します。

プロンプトとは、AIにどのような役割をさせるか、どのような指示を出すかを記述した指示書です。例えば、「あなたはカスタマーサポートの専門家です。質問には丁寧な言葉遣いで回答してください」といった指示を与えます。その後、作成したナレッジベースを連携させましょう。これにより、アプリケーションは社内資料を参照して回答を生成するようになります。

また、プロンプトは業務内容に応じて柔軟に調整できるため、さまざまな場面で役立つアプリケーションを作成できるでしょう。

ステップ5.AIアプリを公開してユーザーを管理

作成したAIアプリは、特定のユーザーに公開可能です。

編集画面で、「公開」ボタンをクリックし、Webサイトへの埋め込み、APIとしての公開、共有リンクの作成などが選択できます。「ユーザー管理」のページで、利用する従業員やグループを設定します。ユーザーごとに異なる権限（管理者、ユーザーなど）を付与すれば、情報漏えいのリスクを低減できるでしょう。

また、公開前にユーザーが適切な権限を持っているかを確認し、利用状況をモニタリングすることで、セキュリティのさらなる強化が期待できます。定期的に権限やアクセスログをチェックし、必要に応じて調整し、万全の体制を整えましょう。

ステップ6.通知機能など業務効率化のための設定

さらに、Difyには業務効率化に役立つさまざまな設定があります。通知機能として、特定の条件を満たした場合に、Slackやメールなどに通知を送る設定ができます。例えば、「AIでは回答できなかった質問があった場合に、担当者に通知する」といった設定が可能です。

また、ログ分析によって、AIアプリの利用状況や、ユーザーからの質問内容のログを分析できます。これにより、ユーザーがどのような情報を求めているかを把握し、アプリケーションの改善に役立てられます。ワークフロー機能を使えば、複数のAIモデルや外部サービスを組み合わせて、複雑なタスクを自動化するワークフローを構築できるでしょう。

これらの設定を適切に行うことで、より効率的で安全なAIアプリの運用が可能になります。

Difyを運用する際の4つのポイント

Difyを効果的に運用するためには、まず初期設定を適切に行うことが大切です。最初のステップとして、アカウント登録後にAPIキーを設定し、ナレッジベースの整備が求められます。その後、必要なAIアプリを作成し、各種設定を完了させます。AIモデルとデータを連携させ、適切な公開設定を行うことで、Difyを最大限に活用できるようになるでしょう。

また、通知機能やユーザー権限の設定を通じて業務効率化を進め、安定した運用を実現することもポイントです。

1.定期的なデータ更新で最新情報を反映させる

Difyにアップロードしたナレッジベースは、時間が経つと情報が古くなってしまいます。特に、製品情報や人事規定など、頻繁に更新される可能性があるデータの場合、定期的なメンテナンスが不可欠です。

業務内容やデータの性質に応じて、週次や月次など、定期的な更新サイクルを定めておくと良いでしょう。新しい製品情報やサービス内容、人事制度の変更など、最新の情報をナレッジベースに追加・更新しておけば、AIは常に正確な情報に基づいた回答を生成できます。

すでに使われなくなった古い資料や、関連性の低いデータは定期的に整理しましょう。ナレッジベースから削除することで、AIの回答精度を保ち、不要なコストの発生を防げます。

2.ユーザー権限を細かく設定し、情報漏えいを防止

Difyでは、ユーザーごとに利用権限を詳細に設定することが可能です。これを適切に活用すれば、機密情報の漏えいリスクを低減できるでしょう。

例えば、人事部向けのAIアプリは人事部の従業員のみが利用できるよう制限し、全社向けのQ&Aボットは全従業員が利用できるようにするなど、役割に応じてアクセス権限を設けます。一部のユーザーにはアプリケーションの閲覧のみを許可し、設定の変更やデータの編集は管理者に限定するなど、細かな権限の設定によって、意図しない設定変更やデータの改ざんを防ぐことができます。

誰が、いつ、どのアプリケーションを利用したかといったログを定期的に確認し、不審なアクセスがないかのチェックもポイントです。

3.ログ監視を定期的に実施し、安定稼働を確保

Difyのログ監視機能は、AIアプリの安定稼働を確保するために不可欠です。定期的なログ分析により、問題の早期発見と対策が可能となるでしょう。

どのAIアプリがどのくらいの頻度で利用されているかを把握すれば、利用頻度の高いアプリの改善に注力できます。ユーザーからの質問のうち、AIが回答できなかった「解決できなかった質問」の分析によって、ナレッジベースに不足している情報や、プロンプトの改善点を見つけ出しやすくなります。

また、連携しているAPIの接続エラーなど、技術的な問題が発生していないかを定期的にチェックすることで、システム障害を未然に防ぐことができるでしょう。

4.バージョンアップとセキュリティパッチを適切に適用する

Difyは、機能の追加や改善、セキュリティの脆弱性対策のために、定期的にバージョンアップが行われます。

Difyの公式発表や通知を確認し、最新バージョンがリリースされたら、その内容を把握します。脆弱性を修正するためのセキュリティパッチは、情報漏えいを防ぐうえで欠かせません。情報更新の把握が遅れてしまったら、脆弱性をついた攻撃による情報漏えいにつながりかねません。そのため、リリースされたら速やかに適用するよう心がけましょう。

バージョンアップによって新しい機能が追加された場合、それを活用することでAIアプリの性能をさらに向上させることができます。また、新機能の導入に伴う調整や設定変更も行うことで、より高い成果を得られるようになるでしょう。

Difyを導入した企業の成功事例

Difyを導入した企業では、業務の効率化とコスト削減が実現しています。株式会社カカクコムでは、社内向けQ&Aチャットボットと議事録作成の自動化に成功し、人事部門の負担を減少させました。また、株式会社MYUUUは、営業後の業務をDifyとZapierで自動化し、業務の80%削減に成功しました。これらの成功事例は、Difyが企業の業務改善にどれだけ貢献できるかを示しています。

ここでは両社の成功事例を詳しく見ていきましょう。

1.株式会社カカクコム｜社内チャットボットで問い合わせと議事録作成を自動化

食べログほかの人気サイトを運営する株式会社カカクコムは、社内業務の効率化を目的としてDifyを導入しました。同社では、人事制度や福利厚生に関する社内問い合わせが多く、担当者の負担が大きいという課題がありました。

この課題を解決するため、Difyを用いて社内向けのQ&Aチャットボットを開発しています。具体的には、人事規定や社内マニュアルをDifyのナレッジベースに取り込み、社員からの質問にAIが自動で回答する仕組みを構築しました。これにより、人事部門への問い合わせ件数が削減され、担当者はより戦略的な業務に集中できるようになったとのことです。

また、同社では会議の議事録作成にもDifyを活用しています。

出典参照：1000人超えの組織にDifyでチャットボットを導入した話と生成AIアプリで全社の効率化を進めている話｜株式会社カカクコム

2.株式会社MYUUU｜商談後の業務を80%削減

株式会社MYUUUは、AIプロダクトの開発・提供を行う企業です。同社は、自社の営業活動における課題を解決するためにDifyを導入しました。

営業担当者は、商談後の顧客への御礼メール作成や、議事録の要約、社内報告書の作成といった一連の作業に多くの時間を費やしていました。

そこで構築したのが、DifyとZapierを組み合わせたワークフローです。Difyはテキストデータから重要なポイントを抽出し、メールや報告書のドラフトを自動で生成します。そして、Zapierを介して、生成されたドラフトをGmailやSlackに連携させ、担当者に通知する仕組みを構築しました。その結果、商談後の業務を80％削減しています。

出典参照：Difyの企業導入事例5選！業種・課題別の成功事例とビジネスインパクト｜株式会社MYUUU

まとめ｜Difyは初期設定を適切に完了させ運用しよう

Difyは、プログラミングの知識がない人でも、生成AIアプリケーションを簡単に構築・運用できる画期的なプラットフォームです。ノーコード・ローコードでの開発、多様なAIモデルとの連携、社内データの活用といった強力な機能を備えています。

Dify導入による効果を引き出すためには、本記事で解説した6つのステップに従って初期設定を適切に完了させていきましょう。アカウント登録からAPIキーの設定、ナレッジベースの構築、そして最初のAIアプリ作成まで、各ステップを丁寧に進めていきます。しっかりと初期設定を完了させて、企業の生産性向上に貢献する強力なツールとなるでしょう。