バックオフィスDXに課題はある?解決策やおすすめのシステムを解説

バックオフィスDXが抱える課題やメリット・デメリットを解説します。企業競争力向上につながる理由や、導入の際に活用されるシステム、実際の成功事例まで紹介しているので、バックオフィスDXを推進させる際の参考にしましょう。

近年、企業の業務効率化やコスト削減を目的に「バックオフィスDX」が注目されています。経理や人事、総務といったバックオフィス部門でデジタル技術を活用することで、手作業や紙中心の業務を減らし、生産性を高める取り組みです。ただし、導入の現場では初期費用の負担や従業員の抵抗感、システムの活用が進みにくいといった課題も少なくありません。総務省『情報通信白書令和4年版』によれば、DXを進めるうえでの課題として、資金不足を挙げている国内企業は27.3%、アナログ文化が定着していると回答した国内企業は32.6%にのぼっています。

本記事では、バックオフィスDXに潜む代表的な課題とその解決策、さらに活用できるシステムや実際の企業事例を紹介し、実践のヒントを整理します。DXは単なるツール導入ではなく、業務プロセスや組織文化そのものを変革する取り組みです。この変革を成功させるためには、デメリットを事前に把握し、適切な対策を講じることが不可欠です。この記事を参考に自社のバックオフィスDXを推進しましょう。

出典参照:情報通信白書令和4年版 | 総務省

バックオフィスDX推進で意識すべき6つの課題

バックオフィスDXを推進することは、多くの企業にとって業務効率化やコスト削減につながると期待されています。一方で、実際に取り組むと想定以上の課題に直面するケースもあるでしょう。

特に初期コストや運用負担、従業員のITスキル格差、部門ごとの縦割り意識などが障害となりやすい傾向にあります。さらに、セキュリティや情報管理の難しさ、従業員の心理的な抵抗なども見逃せない要素です。ここでは、現場で特に起こりやすい6つの課題について、整理して確認していきましょう。

1.システム導入の初期コストと運用コストの負担

バックオフィスDXにおいて、最初のハードルになりやすいのが導入にかかる費用です。クラウドサービスの利用料やライセンス費用だけでなく、導入時の初期設定、既存システムとの連携調整、追加のカスタマイズに関する費用も発生します。さらに、導入が完了してからもサーバーやクラウドの運用コスト、アップデート費用、保守対応など継続的な支出が伴います。

社内ヘルプデスクやサポート担当を置く場合は人件費も増える可能性があるでしょう。これらが重なると「予想以上に費用が膨らんでいる」と感じられることもあり、短期的には負担が増えやすいです。費用を抑えるためには段階的な導入や、必要な機能に絞った契約を検討するのが一般的です。

このようなコストの負担は、補助金や助成金を利用することで、初期費用や一部の運用費用を軽減できる可能性もあります。

2.成果が短期的に見えにくくROIも不透明

DXは基本的に長期的な視点で成果を見ていく必要があるでしょう。バックオフィスの改善は直接売上を生まない領域であるため、費用対効果を定量的に示すことが難しいとされています。例えば、経理業務の自動化によって残業時間が減ったとしても、それを数値化して投資効果として経営層に示すのは簡単ではありません。その結果、導入直後には「期待していた効果が見えにくい」と受け止められることもあります。

ROIを算出する際には、コスト削減に加え、業務スピードの改善や人的リソースの有効活用、ミス削減など目に見えにくい効果も含めて評価していきましょう。こうした観点を持つことで、中期的には確実に効果を感じやすくなる可能性があります。経営層と現場が共通の目標を持ち、KPI(重要業績評価指標)を明確に設定することで、成果を可視化しやすくなります。

3.従業員のITリテラシーに応じた教育が必要

バックオフィスDXの仕組みを導入しても、従業員が十分に活用できなければ効果は限定的です。特に、年齢層や業務経験が幅広い企業では、ITリテラシーの差が顕著に出る傾向があります。慣れていない人にとっては、新しいシステムは「難しい」「面倒」と感じられ、結果として一部の人に業務が集中しかねません。このようなケースは効率化どころか、むしろ負担増になってしまうでしょう。

これを防ぐためには、導入前から教育体制を整えておくことが望まれます。段階的な研修、動画マニュアルやFAQの提供、専用サポート窓口の設置など、複数の方法を組み合わせることで従業員の不安を軽減しやすくなります。教育を軽視するとDXの浸透が遅れかねません。そのため、現場の理解促進に重点を置きましょう。また、従業員が自ら学びやすいように、社内講師による定期的な勉強会を開催することも有効です。

4.部門間のサイロ化による連携不全

DX推進の際に障害となるのが、部門間の連携不足です。経理、人事、総務などのバックオフィス部門がそれぞれ独立してシステムを導入すると、情報の分断が生じやすくなります。

例えば、人事部が管理する従業員データと、経理部が扱う給与データがうまく連携できないと二重入力や不一致が頻発するでしょう。その結果、業務効率化のはずが逆に手間を増やす要因になりかねません。これを回避するためには、導入段階で部門横断的に要件をすり合わせる仕組みを整えましょう。さらに、データを一元化する基盤や統合管理ツールを検討することも有効です。

サイロ化を防ぐ仕組みが整っていないと、せっかくのDXが部分最適にとどまる恐れがあります。部門間の壁を取り払い、全社的な視点から業務プロセス全体を見直すことが成功のポイントです。

5.セキュリティリスクと情報管理の複雑化

クラウドサービスや外部ツールの利用が増えると、情報管理の難易度も高まるのが一般的です。

従来の紙や社内システムで閉じていた業務に比べ、ネットワークを介した外部利用はセキュリティリスクを伴います。特に財務データや個人情報を扱う場合、不正アクセスや情報漏えいのリスクを軽視できません。

実際に独立行政法人情報処理推進機構による『情報セキュリティ白書2024』で発表された2023年における主な情報セキュリティインシデントの中には、社会保険労務士向けクラウドサービスがランサムウェアの不正アクセスを受けた事例が挙げられています。ランサムウェアによる攻撃だけでなく、クラウドサービスの設定ミスが原因のセキュリティインシデントも発生しました。

利用するサービスが増えることでアクセス権限の設定や監査ログの管理が複雑化し、担当者の負担を増加させる恐れがあります。

こうした課題に対応するには、多要素認証やゼロトラスト型のセキュリティモデルを採用したり、定期的な監査を実施したりする方法が考えられます。情報管理の仕組みが追いつかないと、業務効率化のメリットがリスクによって相殺されかねません。ISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)やプライバシーマークなどの認証取得を目指し、全社的なセキュリティ意識を高めることも有効です。

出典参照:情報セキュリティ白書2024|独立行政法人情報処理推進機構(IPA)

6.従業員の抵抗によるDXが形骸化するリスク

新しい仕組みを導入しても、従業員の心理的な抵抗が強いと、実際には活用されず形骸化してしまう恐れがあります。「従来のやり方のほうが慣れている」「新しいツールを覚えるのは負担」といった声が多いと、導入効果が出にくくなるでしょう。

こうした抵抗感が放置されると、DXそのものが形だけの施策にとどまるリスクも考えられます。現場の協力を得るには、小さな業務改善から始めて成功体験を共有することが効果的です。例えば、勤怠申請や経費精算といった日常的な業務から自動化を進めると「便利だ」と実感しやすくなるでしょう。

さらに、利用実績を定期的に見える化して評価すれば、従業員の意識も変わっていく可能性があります。トップダウンだけでなく、ボトムアップで現場の意見を吸い上げる仕組みを作ることも効果的です。

バックオフィスDXの課題を克服する4つの解決策

バックオフィスDXの推進には多くの課題が存在しますが、それらを乗り越えるための方法も存在します。ポイントとなるのは以下の4つです。

  • 経営層と現場の協力体制
  • 小さな改善からの段階的導入
  • 部門横断的な取り組み
  • 外部リソースの活用

これらを組み合わせることで、DXが形骸化することを防ぎ、持続的な効果を得やすくなるでしょう。ここでは代表的な4つの解決策を紹介し、それぞれがどのように課題克服につながるかを解説します。

1.経営陣が関与しつつ現場の声を集める仕組みを整える

バックオフィスDXを推進するには、経営層のリーダーシップが欠かせません。ただし、経営層のトップダウンだけでは現場に定着しにくくなるため、従業員の意見を吸い上げる仕組みを同時に整える必要があります。

例えば、導入前にアンケートを実施し、現場で困っている具体的な業務を洗い出すことが効果的です。業務の洗い出しによって「使いにくい」といった抵抗感を減らせるでしょう。また、経営層がDXの目的や将来像を丁寧に説明することも現場の理解を深める要素になります。現場のニーズと経営層の戦略を両立させる体制が整えば、プロジェクトが停滞せず、徐々に効果を得やすい環境につながります。

さらに、DXの進捗や成果を経営層から定期的に現場へフィードバックすれば、従業員のモチベーションを維持し、当事者意識を高められるでしょう。

2.部門横断的なDX推進チームの設置

DXは特定の部署だけが取り組むものではなく、企業全体で推進していく必要があります。そのため、部門横断的な推進チームを設けることが有効とされています。経理・人事・総務などの代表者を集め、共通の課題を共有する場を設けることで、サイロ化を防ぎやすくなるでしょう。

また、システム導入や業務プロセスの設計を進める際にも、部門ごとの要望を集約しやすくなります。さらに、定期的な会議やワークショップを通じて進捗を可視化すれば、全体のモチベーション維持にも役立ちます。推進チームが「DXの旗振り役」として機能すれば、部門ごとの連携不足による失敗の減少につながるでしょう。このチームが主導して各部門の業務フローを可視化し、無駄なプロセスや重複する作業を発見することも大切です。これにより、全社的な視点から最適なDX戦略を策定できます。

3.小さな業務から段階的に導入して現場の不安を解消

バックオフィスDXを一気に進めようとすると、従業員が不安を感じやすく、抵抗も大きくなる傾向があります。そこで有効とされるのが小さな業務から始める方法です。

例えば、勤怠申請や交通費精算など、従業員が日常的に行う簡単な業務を自動化するところから着手すると「便利になった」と実感しやすくなります。こうした成功体験が積み重なると「もっと業務を効率化したい」という前向きな意識が芽生えます。また、段階的に導入すればシステムトラブルが起きた際の影響も限定的で、改善策を柔軟に取りやすくなるでしょう。また、小さな改善を積み重ねることで、最終的に大きな変革へと自然につなげることが期待されます。従業員が新しいシステムに慣れるための十分な時間とサポートを提供することもポイントです。成功事例を社内広報などで積極的に共有し、DXのメリットを「自分ごと」として感じてもらいましょう。

4.外部ベンダーやコンサルの活用

社内のリソースだけでバックオフィスDXを進めるのは難しい場合もあります。そのようなときには、外部の専門ベンダーやコンサル会社を活用する方法が検討されます。

専門家は豊富な導入経験を持ち、システム選定や業務フロー設計のノウハウを提供してくれる存在です。また、客観的な視点から社内の課題を洗い出すことも可能でしょう。さらに、プロジェクト初期だけでなく、運用開始後の定着支援やトラブル対応までカバーしてくれるケースもあります。

外部への依存はコスト増大のリスクにつながるものの、適切な範囲で活用すれば社内負担を軽減しつつ、スムーズな導入につなげられると考えられます。外部の知見を取り入れることで、最新の技術トレンドや他社の成功事例を参考にでき、自社にとって最適なソリューションを効率的に見つけ出すことができるでしょう。

バックオフィスDXで活用できるシステム3選

バックオフィスDXを効果的に進めるためには、課題に合ったシステムの選定が欠かせません。近年は会計・人事労務・契約管理・業務自動化など、バックオフィス業務を効率化するクラウドサービスが豊富に提供されています。

これらのツールは、手作業や紙ベースの業務を置き換えるだけでなく、データを一元管理し、部門間の連携を強化する役割も果たします。ここでは、特に多くの企業で導入が進んでいる3つの代表的なシステムを紹介し、それぞれの特徴と期待される効果を詳しく見ていきましょう。

1.マネーフォワード クラウド|会計業務・人事業務の自動化と効率化を実現

「マネーフォワード クラウド」は、会計・人事・労務・経費精算などバックオフィスの主要業務を幅広くカバーするクラウドサービスです。銀行口座やクレジットカードと連携すれば取引データが自動で取り込まれ、仕訳や帳簿作成にかかる時間を短縮できるのが特徴です。

さらに給与計算や年末調整、社会保険手続きなどもクラウド上で処理できるため、複数の部門が関与する業務を一元管理しやすくなります。そのため、入力作業の軽減や月次決算の早期化などの効果が期待できるでしょう。

また、クラウド基盤を利用することで在宅勤務やリモートワークにも対応しやすく、どこからでも利用できる点も魅力です。バックオフィスにおける多様な働き方の実現に効果的でしょう。

出典参照:マネーフォワード クラウド|株式会社マネーフォワード

2.クラウドサイン|契約書締結プロセスの迅速化とデジタル化の推進

「クラウドサイン」は、契約書の作成から締結、保管までをオンラインで完結できる電子契約サービスです。従来は郵送や押印に時間を要していた契約業務を、電子署名によって数分で完了できる点が特徴です。

これにより、契約締結にかかる時間やコストを削減できるだけでなく、紙の管理に伴う紛失リスクも軽減できるでしょう。法的にも電子署名法に準拠しているため、信頼性や証拠能力の面でも利用が広がっています。また、契約書をクラウド上で一元管理できるため、検索や共有が容易になり、社内の法務・営業・管理部門がスムーズに連携しやすくなります。契約業務の効率化は取引スピードを高めるだけでなく、企業全体のビジネス展開を加速させる要因としても注目されているサービスです。

出典参照:クラウドサイン|弁護士ドットコム株式会社

3.Automation Anywhere|定型業務の自動化と業務効率化を支援

「Automation Anywhere」は、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)の代表的なツールのひとつで、パソコン上で行う定型業務をソフトウェアロボットが自動化します。例えば、請求書データの転記や基幹システムへの入力作業、レポート作成など、人が手作業で行うと時間がかかる業務を自動化できるのが強みです。具体的には、入力作業の短縮や人的ミスの減少といったメリットが期待できます。プログラミング知識がなくても比較的扱いやすく、テンプレートの活用によって短期間で導入できる点も評価されています。

バックオフィス全体での定型業務をロボットに任せることで、従業員はより付加価値の高い業務に時間を使えるようになり、組織全体の生産性向上にも寄与するでしょう。

出典参照:Automation Anywhere|オートメーション・エニウェア・ジャパン株式会社

バックオフィスDXに成功した企業事例

バックオフィスDXは、単なる理論ではなく実際に成果を上げている企業が増えています。多くの事例に共通しているのは「小さな業務から導入を始め、従業員に成功体験を与えること」や「部門をまたいだ仕組みづくりを意識していること」です。

ここでは3つの企業事例を取り上げ、どのような課題があり、どのようにシステムを活用して改善を進めたのかを整理します。導入の具体例を知ることで、自社のDX推進につながるでしょう。

1.株式会社フクシア|使いやすいチャットツールで勤怠管理を効率化

株式会社フクシアでは、従業員の勤怠管理を紙や表計算ソフトで行っていたため、集計に手間がかかり、正確性にも課題がありました。そこで導入したのが、freeeと連携可能なチャット型の勤怠管理ツールです。

従業員は日々の出退勤をチャットに入力するだけで勤怠が自動的に集計され、管理部門の負担が軽減されました。また、リアルタイムで勤務状況が確認できるようになったことで、残業時間や有給休暇の取得状況を適切に把握できるようになりました。

現場からは「簡単に操作できるので抵抗感が少なかった」といった声もあり、ITリテラシーに差がある環境でも導入しやすい仕組みとなったとされています。結果的に、人事業務の効率化と透明性の向上が同時に進んだ事例です。

出典参照:freeeで労務業務を一元管理。勤怠状況の可視化で未来を見据えた経営戦略をサポート|フリー株式会社

2.株式会社佐竹製作所|新たに導入したRPAシステムで入力作業を自動化

株式会社佐竹製作所では、経理や受発注に関わる入力作業を手作業で行っていたため、処理時間が膨大になり、担当者の残業も増加していました。そこで導入されたのがRPAシステムです。請求書や受注データを自動で読み取り、基幹システムに入力する仕組みを整えたことで、人的ミスが減少し、担当者が本来の業務に集中できるようになりました。

導入後は「以前は数時間かかっていた作業が数十分で完了するようになった」との声があり、業務効率の改善が明確に確認されたといいます。システム導入にあたっては、現場担当者への教育や小規模業務からの段階的な導入を重視し、従業員が安心して使える環境を整えたことも成功の要因とされています。

出典参照:RPAと連携し、ルーチンの入力作業を自動化 1人当たり約1時間/1日の業務を削減|株式会社アイル

3.株式会社京葉銀行|セキュリティに配慮しつつRPAで業務を自動化

株式会社京葉銀行では、金融機関特有の厳格なセキュリティ要件があり、バックオフィス業務の効率化を進めにくい状況が続いていました。そこで導入したのがWinActorを活用したRPAシステムです。

データの入力や帳票の作成といった定型作業をロボットが代行するようになり、作業スピードが向上しただけでなく、人的な入力ミスの防止にもつながりました。銀行業務においては顧客情報を扱うため、システム導入に際しても権限管理やアクセス制御を徹底し、安全性と効率化の両立を実現しました。導入後は業務負担の軽減により、従業員が顧客対応や新しい業務改善に時間を割けるようになったと報告されています。

出典参照:RPA + AI-OCRでクラウドサービスを活用する銀行のセキュリティ対策とは?|株式会社NTTデータ

まとめ|バックオフィスDXは課題を把握して取り組もう

バックオフィスDXは、単にシステムを導入すれば成功するものではなく、課題を理解したうえで計画的に進めることが求められます。初期費用やROIの不透明さ、従業員の抵抗感や部門間の分断など、障害となる要素は少なくありません。

このような状況では、経営層と現場の協力体制を築き、小さな業務から改善を始めることで、従業員の成功体験を積み重ねやすくなります。さらに、外部ベンダーの活用やセキュリティ対策を適切に行うことで、長期的な効果を得やすい環境を整えられるでしょう。自社に合った方法を柔軟に選びながら取り組むことが、持続的なバックオフィスDXの実現につながります。