人事DXをAI活用で加速!具体的な事例と導入ステップを解説

人事DXにおけるAI活用法を具体的に解説します。採用や人材育成など5つの領域での活用法から、導入メリット、注意点、成功に導く5つのステップまでを網羅的に紹介します。他社の成功事例も参考にしながら、自社の人事課題を解決するヒントを見つけてください。

人事業務の効率化や属人化の解消に課題を感じていませんか?「人事DX」や「AI活用」という言葉を耳にする機会は増えたものの、具体的に何から始めれば良いのか、どのような効果があるのか分からず、一歩を踏み出せないでいる方も多いのではないでしょうか。

本記事では、そのような人事担当者や経営者の方々に向けて、人事DXにおけるAI活用の基本から、具体的な活用事例、導入のメリット、そして成功に導くための具体的なステップまでを網羅的に解説します。

この記事を読めば、自社の人事課題をAIでどのように解決できるのか、その具体的なイメージと実行への道筋が見えてくるはずです。

人事DXにおけるAI活用とは

人事DXにおけるAI活用とは、定型業務の自動化やデータに基づく意思決定の高度化により、人事部門を管理部門から企業の成長を牽引する戦略的な役割へと変革させる取り組みです。ここではその基本的な考え方と、従来業務との違いを解説します。

人事DXの目的とAIの役割

人事DXが目指す主な目的は、人事業務の効率化と、データに基づいた戦略的人事(HR)の実現にあります。少子高齢化による労働力不足や働き方の多様化が進む現代において、企業は優秀な人材を確保し、その能力を最大限に引き出すことが求められています。

この目的を達成するための強力な武器となるのがAIです。AIは、膨大な人事データを分析して客観的なインサイトを導き出したり、採用や労務管理における定型業務を自動化したりする役割を担います。

AIを効果的に活用することで、人事は単なる管理部門から、企業の成長を牽引する戦略的パートナーへと進化していくでしょう。

従来の人事業務との違い

従来の人事業務は、紙やExcelを中心としたアナログな管理が多く、担当者の経験や勘に依存する部分が大きいという課題がありました。例えば採用選考では面接官の主観が入りやすく、人材配置では上司の印象が優先されるといったケースも少なくありませんでした。

これに対しAIを活用した人事DXでは、業務プロセスが大きく変わります。データが全ての基盤となり、客観的な事実に基づいた意思決定が可能になるのです。

採用ではAIが候補者のスキルを公平に評価し、労務管理ではAIが勤怠データを分析して長時間労働の兆候を検知します。これにより業務の属人化を防ぎ、公平性と透明性の高い人事を実現できる点が最大の違いと言えます。

AIで変革する5つの人事領域

AIの活用範囲は人事業務の多岐にわたります。

ここでは、特にAIによる変革のインパクトが大きい「採用」「育成」「配置」「評価」「労務管理・組織開発」の5つの領域について、どのような活用が可能なのかを具体的に見ていきましょう。

自社のどの業務に適用できそうか、イメージしながら読み進めてみてください。

採用業務

採用業務は、AI活用によって最も劇的に効率化が進む領域の一つです。

例えばAIが応募書類の内容を解析し、自社が求める要件との合致度をスコアリングすることで、選考の初期段階にかかる時間を大幅に削減できます。

さらに、候補者が録画した自己PR動画をAIが分析し、表情や声のトーンなどを客観的に評価することで、面接官による評価のばらつきを抑えることも可能です。

また、AIチャットボットが候補者と自動でやり取りを行い、面接日程を調整するといった活用法もあり、面倒な日程調整業務から解放され、候補者体験の向上にもつながります。

人材育成

従業員一人ひとりの能力を最大限に引き出すパーソナライズされた育成も、AIの得意分野です。

まず、従業員のスキルや経歴データを分析し、現在の職務や将来のキャリアパスに必要なスキルとのギャップを特定します。

その上で、AIが膨大なeラーニングコンテンツや研修プログラムの中から、各従業員に最適なものを自動で推薦します。

個々の学習進捗や理解度をAIが追跡し、つまずきやすいポイントを予測して追加の学習コンテンツを提示するなど、学習効果を最大化するための継続的なサポートも実現できます。

人材配置

「誰をどこに配置するか」という経営の重要課題においても、AIは強力な意思決定支援ツールとして機能します。高い成果を上げている従業員の行動特性やスキルなどをAIが分析し、成功要因をモデル化します。

このモデルを基に新規プロジェクトの立ち上げなどの際に、AIが従業員データベースの中から最適なチーム編成をシミュレーションし、複数パターンを提案します。これにより、データに基づいた最適な人員配置が可能になります。

また、従業員本人のキャリア志向とAIが分析した適性を掛け合わせ、個人に合ったキャリアパスを提案することもでき、エンゲージメント向上に貢献します。

人事評価

人事評価における永遠の課題である「公平性」と「納得感」の向上に、AIは大きく貢献します。AIは評価者の主観を排除し、設定された評価基準と客観的な実績データのみに基づいて評価を行うため、評価の公平性を担保し、従業員の不満を軽減します。

また、日々の業務データをAIがリアルタイムで分析して個人のパフォーマンスを可視化することで、期末にまとめて評価するのではなく、継続的なフィードバックが可能になります。

さらに、従業員のパフォーマンスデータを基に、上司が1on1で話すべき論点をAIが提案するといった形で、より質の高い対話を促進することもできます。

労務管理・組織開発

従業員が安心して働ける環境を整え、組織全体の活力を高めるためにもAIは活用できます。AIが従業員の勤怠データを常に監視し、長時間労働や休日出勤の増加といった異常パターンを早期に検知してアラートを発することで、メンタル不調などを未然に防ぎます。

さらに、過去の離職者の行動パターンをAIに学習させ、在籍する従業員の中から離職リスクの高い人材を予測することも可能です。これにより早期のフォローアップが実現し、意図しない人材の流出を防ぎます。

従業員サーベイのフリーテキスト回答といった定性的なデータをAIが解析し、組織の課題を抽出することもでき、組織改善に役立ちます。

人事DXにAIを導入する4つのメリット

AIを人事業務に導入することは、単なる業務効率化にとどまらず、企業経営に多くのプラスの効果をもたらします。

ここでは、AI導入によって得られる代表的な4つのメリットについて、具体的に解説します。

これらのメリットを理解することで、社内での導入提案もスムーズに進められるでしょう。

定型業務の自動化と効率化

AI導入の最も分かりやすいメリットは、定型業務の自動化による圧倒的な効率化です。給与計算、勤怠管理、入退社手続きといった、毎日・毎月発生するルーティンワークをAIに任せることができます。これにより人事担当者は単純作業から解放され、面談や制度設計、組織開発といった、人でなければできない付加価値の高い「コア業務」に集中する時間を創出します。

実際に、WEB面接サービス「harutaka」を提供する株式会社ZENKIGENの事例では、導入企業である株式会社物語コーポレーションが約1万件のエントリーシート評価にAIを活用したところ、評価にかかる工数を約70%削減できたという報告があります。

また、手作業による入力ミスや計算間違いといったヒューマンエラーを削減できるため、業務の正確性も格段に向上します。結果として、人事部門全体の生産性が大きく向上するのです。

出典参照:AI活用の有無が採用活動の成否に影響。活用した81.4%が採用目標数を達成、73.3%が人員リソースに充足|Thinkings株式会社

データに基づく客観的な意思決定

従来の人事では、担当者や管理職の「経験と勘」に頼った主観的な判断が多くなりがちでした。しかしAIを活用すれば、従業員のスキル、経歴、パフォーマンスといった膨大な人事データを客観的に分析し、その結果に基づいて意思決定を行えます。

例えば採用候補者の選定や、従業員の昇進・昇格、最適な人材配置などを、データという明確な根拠を持って判断できるようになります。

無意識の偏見(アンコンシャス・バイアス)に左右されない判断は、ダイバーシティ&インクルージョンの推進にもつながります。これにより判断のブレや属人性をなくし、公平で透明性の高い人事施策を実現できるでしょう。

従業員エンゲージメントの向上

AIの活用は従業員の満足度や働きがい、すなわちエンゲージメントの向上にも直接的に貢献します。AIによる公平な評価制度は、従業員の納得感を高めます。また、一人ひとりに合わせた研修プログラムの提供やキャリアパスの提案は、会社が自分を見てくれているという実感につながります。

実際に、お菓子卸売企業の渋谷レックスでは、「5人に1人が辞めていく」ほどの高い離職率が経営課題でした。そこで、従業員のコンディションを可視化するHRサーベイツール「Geppo」を導入しました。個々の従業員が抱える課題や本音をデータで把握し、上司との1on1ミーティングで対話する機会を増やしました。この取り組みの結果、導入から1年半で退職者数が0人になったという驚くべき成果が報告されています。

このように、AIを含むHRテクノロジーを活用して従業員の孤立を防ぎ、組織への帰属意識を高めることができます。従業員一人ひとりを大切にする姿勢が、エンゲージメント向上という形で返ってくるのです。

出典参照:倉庫勤務のパートさんとの距離感を埋め、利用開始後に離職が0人になった活用事例|渋谷レックス株式会社

戦略的な人事施策の立案支援

AIは過去や現在のデータを分析するだけでなく、未来を予測することも得意としています。例えば、将来の事業計画に必要な人材要件を定義すれば、AIが社内の人材データと照らし合わせ、今後不足するスキルや人材タイプを予測してくれます。

また、組織全体のスキル分布や従業員のエンゲージメント状態を可視化することで、経営課題に直結する人事戦略をデータドリブンで立案・実行できるようになります。

これにより経営層に対して、より説得力のあるデータに基づいた人事戦略の提案が可能になります。AIは、人事を「守り」の管理部門から「攻め」の戦略部門へと変革させる強力なパートナーとなるでしょう。

AI導入前に知るべき3つの注意点

AIは人事DXを加速させる強力なツールですが、魔法の杖ではありません。

メリットばかりに目を向けて拙速に導入を進めると、思わぬ失敗につながる可能性があります。

ここでは、AI導入を検討する際に必ず押さえておくべき3つの注意点について解説します。これらのリスクを事前に理解し、対策を講じることが成功の鍵となります。

導入と運用にかかるコスト

AIツールの導入には、当然ながらコストがかかります。ツールのライセンス料や初期設定費用といった「導入コスト」だけでなく、継続的に発生する「運用コスト」も考慮しなければなりません。これらには、既存システムからのデータ移行費用や、従業員がツールを使いこなすための研修費用なども含まれます。

安易に安価なツールを選ぶと、後から必要な機能が不足していたり、サポートが不十分だったりして、結果的に高くつくケースも少なくありません。導入を検討する際は、目先の費用だけでなく、長期的な視点でトータルコストを試算し、得られる効果とのバランス(費用対効果)を慎重に見極めることが重要です。

情報セキュリティとプライバシー

AIが扱う人事データには、氏名、年齢、経歴、評価といった、極めて貴重な個人情報が大量に含まれます。万が一これらの情報が外部に漏洩した場合、企業の社会的信用は失墜し、経営に深刻なダメージを与えかねません。

個人情報保護法などの法規制を遵守することはもちろん、データの匿名化やアクセス権限の厳格な管理といった技術的な対策も欠かせません。

導入するAIツールが高度なセキュリティ基準を満たしているかを厳しくチェックするとともに、従業員のデータをAIで分析することについて、プライバシー保護の観点から従業員の理解を得ることも不可欠です。

AIの判断に対する従業員の理解

AIが自分の評価や異動を決めると聞くと、多くの従業員は「冷たい」「機械に判断されたくない」といった抵抗感や不信感を抱く可能性があります。AIの判断プロセスがブラックボックスのままだと、従業員は結果を受け入れられず、エンゲージメントの低下を招く恐れがあります。

こうした事態を避けるためには、AIはあくまで意思決定を支援するツールであり、最終的な判断は人が行うというスタンスを明確に伝えることが大切です。

AIの分析結果は「客観的な参考情報」の一つと位置づけ、最終判断には必ず人の介在があることを繰り返し伝えましょう。また、判断プロセスの透明性を高める努力が求められます。

AI活用を成功に導く導入5ステップ

人事領域へのAI導入は、やみくもに進めても成功しません。自社の課題に合った適切なアプローチを、段階的に踏んでいくことが重要です。

ここでは、AI活用を成功に導くための具体的なプロセスを5つのステップに分けて解説します。このステップに沿って進めることで、導入の失敗リスクを最小限に抑え、着実に成果を出すことができるでしょう。

ステップ1:課題の明確化と目的設定

最初に行うべきは、「何のためにAIを導入するのか?」という目的を明確にすることです。「採用選考にかかる時間を50%削減したい」「新入社員の1年以内の離職率を改善したい」といったように、解決したい課題を具体的に定義し、数値目標(KPI)を設定します。

「なんとなく効率化したい」といった曖昧な目的では、導入するツールも曖昧になり、効果測定もできずに失敗に終わる可能性が高まります。

経営層や現場の人事担当者を巻き込み、自社が抱える最も重要な人事課題は何かを徹底的に議論することが、このステップの成功の鍵です。この目的が明確であればあるほど、後のツール選定や効果検証の軸がブレなくなり、プロジェクト全体の方向性が定まります。

ステップ2:導入範囲の決定と費用対効果の試算

次に、設定した目的に基づき、AIを導入する業務範囲を決定します。いきなり全社の人事業務に導入するのはリスクが高いため、まずは最も課題が大きく、かつAI導入による効果が見えやすい領域に絞って始める「スモールスタート」が推奨されます。

スモールスタートで成功体験を積むことで、他部署への展開もスムーズに進められます。導入範囲を決めたら、その領域における導入・運用コストと、それによって得られる効果(人件費削減、生産性向上など)を試算し、費用対効果を検証します。この際、コスト削減のような直接的な効果だけでなく、従業員満足度の向上といった間接的な効果も視野に入れると、より正確な投資判断ができます。

ステップ3:AIツールの選定とベンダー比較

導入する目的と範囲が固まったら、それを実現できる具体的なAIツールを選定します。世の中には多種多様な人事系AIツールが存在するため、それぞれの特徴をよく比較検討する必要があります。

自社の既存システム(勤怠管理や給与計算ソフトなど)との連携がスムーズに行えるかどうかも、業務効率を左右する重要なチェックポイントです。

無料トライアル期間などを活用して、実際にツールを操作し、現場の担当者が直感的に使えるかを確認することも推奨されます。複数のベンダーから話を聞き、デモンストレーションを見せてもらった上で、自社に最適なパートナーを選びましょう。

ステップ4:スモールスタートと効果検証

ツールを選定したら、いよいよ導入です。特定の部署やチームで試験的に導入(PoC: 概念実証)し、ツールの使い勝手や実際の業務への影響を確認し、問題点を洗い出します。

そして、ステップ1で設定したKPIを基に、客観的なデータで効果を測定します。「本当に採用工数は削減されたか?」といった効果を定量的に評価し、本格導入に進むべきかどうかの判断材料とします。

同時に、実際にツールを利用した従業員へのアンケートやヒアリングを行い、「使いにくい点はないか」「もっとこうだったら良いのに」といった定性的なフィードバックを集めることも、運用の定着には不可欠です。

ステップ5:全社展開と運用の定着

スモールスタートで良好な結果が得られ、課題点も改善できたら、いよいよ全社への展開フェーズに移ります。

AIツールを使うためには業務フローや運用ルールを明確に整備することが重要です。また、従業員向けに説明会や研修会を実施し、導入の目的やメリットを丁寧に伝えて理解を促します。

導入して終わりではなく、これが新たなスタート地点です。定期的に利用状況や効果をモニタリングし、改善を繰り返すPDCAサイクルを回していく体制を整えましょう。成功事例を社内で共有し、利用を促進する文化を醸成していく地道な努力が、AI活用の成否を分けます。

参考になる人事DXのAI活用事例

理論やステップを理解しても、具体的なイメージが湧きにくいかもしれません。ここでは、実際にAIを活用して人事課題の解決に成功している企業の事例を、活用のパターン別に紹介します。

株式会社エートス|AI採用工数を削減しコア業務に集中

採用領域では、AIを活用して選考プロセスを効率化する事例が多く見られます。株式会社エートスが提供するAI採用プラットフォーム「AETHOS」は、AIがエントリーシートを評価し、採用担当者の評価のばらつきをなくすことを支援します。

このシステムの導入により、ある企業ではエントリーシートの評価にかかる時間が最大で82%も削減されました。

創出された時間を使って、採用担当者は学生とのコミュニケーションを密にするなど、より本質的で付加価値の高い業務に集中できるようになったのです。

出典参照:面接工数を最大70%削減するAI面接官『HiRevo』- 業界別カスタマイズで採用課題を解決|株式会社エートスAI

勤次郎株式会社|データ分析で離職率の改善に成功

従業員の離職は、企業にとって大きな損失です。勤次郎株式会社が提供する「離職防止AI」は、この課題解決をサポートします。

このシステムは、勤怠データ(遅刻、早退、欠勤など)や人事情報(年齢、勤続年数など)をAIが分析し、過去の離職者の傾向を学習します。その学習モデルに基づいて、在籍している従業員の離職リスクを予測し、リスクが高いと判断された従業員を早期に発見します。

これにより、人事担当者や上司は適切なタイミングで面談などのフォローアップを行えるようになり、人材の定着を促し、離職率の改善に貢献します。

出典参照:Universal 勤次郎、離職分析AI機能をリリース|勤次郎株式会社

AIで切り拓く人事の未来と成功の鍵

AIは、定型業務の自動化から戦略的な意思決定支援まで、人事のあらゆる領域に変革をもたらします。AIを使いこなすことで、人事部門は日々の管理業務から脱却し、企業の未来を創る戦略的パートナーへと進化できるでしょう。

しかし、成功の鍵は高機能なツールの導入だけではありません。最も重要なのは「自社の課題は何か」「AIで何を成し遂げたいか」という目的を明確にすることです。AIをあくまで人を支援するツールと位置づけ、従業員との対話といった人でしかできない業務に注力することが、これからの人事には求められます。この記事が、貴社の人事DX成功の一助となれば幸いです。