バックオフィスDXにセキュリティは必要?基本の対策やステップを解説
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人事DXツール選びにお悩みの中小企業様へ。自社に合うツールの種類やメリット、失敗しない選び方のポイントを解説します。勤怠管理や採用など、よくある課題別におすすめのツールや、具体的な導入成功事例についても分かりやすく紹介します。
日々の人事業務に追われ、本来注力すべき戦略的な仕事に手が回らない、と感じていませんか。経営層から「DX推進」と言われても、何から手をつければ良いか分からず、お困りかもしれません。
この記事では、人事DXの基本からツールの選び方、具体的なおすすめツールまでを分かりやすく解説します。自社に合うツールを見つけ、業務効率化への第一歩を踏み出しましょう。

人事DXという言葉をよく聞くようになりましたが、IT化と何が違うのか、はっきりとは分からない方もいるかもしれません。
ここでは、人事DXの基本的な考え方と、今なぜ注目されているのかについてご説明します。
人事DXとは、単にデジタルツールを導入することだけを指すのではありません。その本質は、デジタル技術やデータを活用して人事戦略や組織のあり方を変革し、会社の競争力を高めることにあります。
給与計算などの定型業務を効率化するのはもちろん、それによって集まったデータを分析することが重要です。データに基づいて、客観的な視点から採用や人材配置を行うなど、より戦略的な人事を目指すのが大きな目的と言えるでしょう。
人事DXと似た言葉に「IT化」や「HRテック」がありますが、それぞれ少し意味が異なります。
IT化は、紙のタイムカードをICカードに変えるように、手作業だった業務をデジタルツールに置き換えることです。これは部分的な業務効率化を目的としています。
一方で人事DXは、IT化を手段として活用し、組織全体の変革やビジネスモデルの改革までを目指す、より大きな取り組みです。
そしてHRテックとは、人事DXを実現するために使われる勤怠管理システムなどの具体的なツールのことを指します。つまり、HRテックというツールを使ってIT化を進め、人事DXというゴールを目指す、という関係になります。
今、多くの企業で人事DXが重要な経営課題として扱われています。その背景には、日本の社会が抱えるいくつかの課題が存在します。
一つは、少子高齢化による労働人口の減少です。総務省の統計では、2014年には6,609万人、2024年には6,957万人と直近では増加傾向にあります。しかしこれは、女性や高齢者の就労が進んだことによる一時的な効果であり、2040年には約6,000万人台前半まで減少すると見込まれています。少ない人数で高い成果を出すためには、定型業務をツールで効率化し、人はより創造的な仕事に集中する必要があります。
また、リモートワークや時短勤務といった働き方の多様化も進みました。2023年度のデータでは、週に1日以上テレワークを実施する雇用型テレワーカーの割合がコロナ禍をきっかけに増加し、7割を超えていることが示されています。また、出社とテレワークを組み合わせる「ハイブリッドワーク」が拡大傾向にあるとされています。このように複雑になった勤怠や労務の管理を正確に行うためにも、デジタルツールの活用は欠かせません。
優秀な人材を確保するための競争も激しくなっています。データに基づいた採用戦略や、社員の満足度を高める取り組みは、人材の獲得と定着のために非常に重要です。
出典参照:労働力調査(基本集計)2024年(令和6年)平均結果の概要(p.1-60)|総務省
出典参照:平成の30年間と、2040年にかけての社会の変容(p.2-12)|厚生労働省
出典参照:人口、労働力人口:主要労働統計指標(p.58)|労働政策研究・研修機構 (JILPT)
出典参照:令和5年度テレワーク人口実態調査(p.2.12.19)|国土交通省
人事DXを実現するためのツールには、解決したい課題に応じて様々な種類があります。ここでは代表的な4つのツールについて、それぞれの役割や特徴を見ていきましょう。
勤怠管理・給与計算システムは、社員の日々の出退勤時刻を記録し、労働時間を自動で集計してくれるツールです。さらに、集計されたデータをもとに給与計算や年末調整までを自動で行うことができます。ICカードやスマートフォンなど、様々な方法で打刻できるため、リモートワークにも柔軟に対応可能です。
法改正にもシステム側で対応してくれるため、コンプライアンスを遵守した管理が容易になります。
手作業による計算ミスや確認の手間を大きく減らし、人事担当者の負担を直接的に軽くしてくれるでしょう。
採用管理システムは、ATS(Applicant Tracking System)とも呼ばれています。求人情報の公開から応募者の受付、面接の調整、内定者との連絡まで、採用に関する一連の流れをまとめて管理するツールです。
複数の求人サイトからの応募者情報を一つの画面で管理できるため、対応漏れや二重対応を防ぐのに役立ちます。また、面接官ごとの評価をデータとして残せるので、選考基準のブレをなくし、採用活動の属人化を防ぐ効果も期待できます。
応募者への連絡をスムーズに行えるため、候補者の満足度向上にも繋がり、企業の採用ブランドイメージを高めることにも貢献します。
タレントマネジメントシステムは、社員一人ひとりのスキルや経験、これまでの評価といった情報を一元管理し、可視化するためのツールです。これらのデータを活用することで、勘や経験だけに頼るのではなく、客観的なデータに基づいた戦略的な人材配置が可能になります。
例えば特定の資格を持つ社員を全社から検索したり、高い成果を出す社員の傾向を分析して育成に活かしたりと、様々な活用が考えられます。
これまで気づかなかった隠れた才能を発見したり、将来のリーダー候補を計画的に育成したりする上でも、非常に有効なツールです。
人事評価システムは、評価シートの作成や配布、回収、集計といった人事評価に関わるプロセスを電子化し、効率化するツールです。これまでExcelや紙で行っていた評価業務をシステム上で行うことで、評価者と被評価者の両方の負担を軽くします。評価の進捗状況も一目で分かるようになります。
評価結果はデータとして蓄積されるため、過去の評価と比較したり、昇給や賞与の計算に活用したりすることも簡単です。評価に関するコミュニケーションが円滑になることで、タイムリーなフィードバックを促し、社員の成長を支援する文化を育むことにも繋がるでしょう。
人事DXツールを導入すると、業務が楽になるだけでなく、会社全体に良い影響をもたらします。ここでは、ツールを導入することで得られる主なメリットを3つご紹介します。
ツール導入の最も分かりやすいメリットは、定型業務を自動化できることによる生産性の向上です。これまで多くの時間を要していた勤怠データの集計や給与計算、社会保険の手続きなどが、ツールによって大幅に効率化されます。
これにより単純な入力ミスが減るだけでなく、人事担当者は時間のかかる作業から解放されます。これまで月末に集中していた残業が削減されるなど、働き方そのものの改善にも繋がるでしょう。
そして空いた時間を使って人材育成の計画を立てたり、社員のキャリア相談に乗ったりと、より付加価値の高い仕事に集中できるようになるのです。
多くの会社では社員のスキルや評価といった大切な情報が、個別のExcelファイルや紙の書類にバラバラに保管されているのではないでしょうか。
人事DXツールはこれらの情報を一元管理し、誰にでも分かりやすく可視化してくれます。データが整理されることで、これまで気づかなかった組織の状況を客観的に把握できるようになります。
これにより、経営層に対して客観的なデータを用いて組織課題を報告し、具体的な改善策を提案しやすくなります。例えば部署ごとの残業時間の変化を分析して働き方の改善に繋げたり、社員の離職理由を分析して定着率アップの施策を考えたりと、データに基づいた意思決定が可能になります。
人事DXツールの導入は人事担当者だけでなく、一般の社員にとっても多くのメリットがあります。結果として、社員が会社に対して抱く愛着や貢献意欲、いわゆる従業員エンゲージメントを高める効果が期待できます。
例えば人事評価のプロセスがシステムによって透明化されれば、社員は評価に対する納得感を持ちやすくなります。各種の申請がオンラインで手軽にできるようになれば、日々のちょっとしたストレスも減るでしょう。会社が自分のことを見てくれている、という安心感が、仕事へのモチベーションを高めるきっかけにもなります。
こうした経験の積み重ねが、会社への信頼感を育み、働きがいを高めることに繋がっていきます。

人事DXツールは、ただ導入すれば良いというものではありません。自社に合わないツールを選んでしまうと、期待した効果が得られないこともあります。
ここでは、ツール選びで後悔しないための大切なポイントを解説します。
ツール選びを始める前に、まず「何のために導入するのか」「どんな課題を解決したいのか」をはっきりさせることが最も重要です。この最初のステップが曖昧だと、多機能なツールに目移りしてしまい、結局使わない機能のために高いコストを払うことになりかねません。
現場の担当者にもヒアリングを行い、「誰が」「何に」「どれくらい」困っているのかを具体的に洗い出すことが成功への近道です。「給与計算の手作業をなくしたい」「採用候補者の管理が大変」など、現場の具体的な課題を書き出してみましょう。
課題をリストアップしたら、その中で最も優先して解決すべきものは何か、優先順位をつけておくと、さらにツールを選びやすくなります。この目的が明確であるほど、自社に必要な機能が見えやすくなり、ツール選びの軸が定まります。
次に、ツールの特性が自社の規模や業種に合っているかを確認します。人事DXツールは大企業向けや中小企業向けなど、それぞれ得意な領域が異なります。
例えば従業員数が数十名規模の会社であれば、シンプルで導入しやすいツールが向いていますし、数百名規模であれば、より詳細な権限設定ができるツールが必要になるでしょう。公式サイトの導入事例ページで、自社と似た規模や業種の企業がどのように活用しているかを確認するのも、非常に参考になります。
自社の従業員数に合わないツールを選ぶと、機能が多すぎて使いこなせなかったり、逆に機能が足りなかったりするかもしれません。無料トライアルなどを活用して、自社に合うかどうかを試してみるのがおすすめです。
特にITツールに不慣れな社員が多い場合、システムの使いやすさは非常に大切です。どんなに高機能なツールでも、実際に使う社員が「使いにくい」と感じてしまっては、社内に定着せず、宝の持ち腐れになってしまいます。
無料トライアル期間には、人事担当者だけでなく、実際にツールを使うことになる一般社員や管理職にも触ってもらい、意見を聞くことが大切です。誰でも直感的に操作できるか、画面のデザインは分かりやすいか、といった点を確認しましょう。また、導入時や運用中に困ったときに、気軽に相談できるサポート体制が整っているかも重要なポイントです。
サポート体制については、導入時の初期設定をどこまで手伝ってくれるのか、という点も確認しておくと、スムーズなスタートを切ることができるでしょう。電話やチャットでの問い合わせがしやすいか、マニュアルは充実しているかなどを事前に調べておくと、導入後も安心です。
最後に、すでに社内で使っている他のシステムと連携できるかを確認してください。特に、給与計算ソフトや会計ソフト、ビジネスチャットツールなど、すでに業務の基盤となっているシステムとの連携は重要です。データの連携ができないと、システム間で情報を手作業でコピー&ペーストする必要が生まれ、ミスが発生する原因にもなります。
ツールの公式サイトで連携可能なサービス一覧を確認したり、営業担当者に直接問い合わせたりして、自社のシステムと問題なく連携できるかを事前にしっかりと確認することが不可欠です。例えば、勤怠管理システムと給与計算システムが連携できれば、ボタン一つでデータを移すことができ、二重入力の手間が省けます。
もし連携できないと、かえって作業が増えてしまう可能性もあるため、どのようなシステムと連携できるのかを必ずチェックしましょう。
ここからは具体的な課題別に、代表的な人事DXツールをご紹介します。多くの企業で導入されており、評価の高いツールを厳選しましたので、ぜひ参考にしてください。
勤怠管理や給与計算といった日々の業務を効率化したい場合には、労務管理に強みを持つツールが適しています。
例えば「ジョブカン」は、勤怠管理や労務、給与計算など、必要な機能だけを選んで組み合わせられるのが特徴です。
小さく始めて、会社の成長に合わせて機能を追加していくことができます。
また「freee人事労務」は、会計ソフトで有名なfreeeが提供しており、勤怠から給与計算、年末調整までをクラウドで完結させられます。同社の会計ソフトとスムーズに連携できるため、バックオフィス全体の効率化を図りたい企業にぴったりです。
出典参照:ジョブカン|株式会社Donuts
出典参照:freee人事労務|freee株式会社
優秀な人材を確保するために、採用活動の質とスピードを上げたい、という課題には採用管理システムが有効です。
「HRMOS採用」は、求人作成から応募者の管理、選考状況の分析まで、採用活動をまとめて管理できます。データに基づいて採用活動を振り返り、改善していくことを得意としています。
また「engage」は、無料で求人掲載から応募者管理までを行えるのが大きな魅力です。まずはコストをかけずに採用のDXを始めてみたい、という企業にとって最適な選択肢の一つと言えるでしょう。
出典参照:HRMOS採用|株式会社ビズリーチ
出典参照:engage|エン・ジャパン株式会社
社員一人ひとりの能力や経験を把握し、適切な人材配置や育成に繋げたい、という場合にはタレントマネジメントシステムが役立ちます。
「カオナビ」は、社員の顔写真が並ぶ分かりやすい画面が特徴で、顔と名前を一致させるところから、本格的な人材配置の検討まで幅広く活用できます。多くの企業に導入されている実績があり、様々な業界での活用ノウハウが豊富な点も安心材料です。
「HRBrain」は、タレントマネジメント機能に加えて、人事評価や組織診断の機能も充実しています。シンプルな操作性と手厚いサポートに定評があり、初めてタレントマネジメントシステムを導入する企業でも安心して利用できるでしょう。
出典参照:カオナビ|株式会社カオナビ
出典参照:HRBrain|株式会社HRBrain
特定の業務だけでなく、人事に関する業務を幅広く、まとめて効率化したいというニーズもあると思います。その場合は、一つのシステムで多くの機能をカバーできるオールインワンタイプのツールがおすすめです。
「ジンジャー」は、勤怠管理や人事管理、給与計算などを一つのデータベースで管理できるのが強みです。一度従業員の情報を登録すれば、それぞれの機能で情報が連携されるため、管理の手間を大きく減らすことができます。
「SmartHR」は、特に入社手続きや年末調整といった労務手続きのペーパーレス化で高い評価を得ています。社員自身がスマートフォンなどから情報を入力するだけで手続きが完了する手軽さが人気で、近年は人材管理機能も強化されています。
出典参照:ジンジャー|jinjer株式会社
出典参照:SmartHR|株式会社SmartHR
実際に人事DXツールを導入した企業や団体では、どのような成果を上げているのでしょうか。ここでは、具体的な企業の成功事例を3つご紹介します。
広島県内の水道事業を担う広島県水道広域連合企業団では、以前、職員の勤怠管理を紙のタイムカードで行っていました。そのため、月末の集計作業に多くの時間がかかり、管理者の大きな負担となっていたそうです。
そこで勤怠管理システム「ジョブカン」を導入しました。職員はパソコンやスマートフォンで簡単に出退勤を記録できるようになり、休暇の申請もシステム上で行えるようになりました。
この取り組みにより勤怠管理にかかっていた時間が大幅に削減され、ペーパーレス化も実現しました。
行政機関においても、DXが業務効率化に大きく貢献することを示した良い事例です。
出典参照:広島県水道広域連合企業団でfreee人事労務とfreee経費精算の導入を開始|広島県水道広域連合企業団
東海旅客鉄道株式会社(JR東海)では、人事評価を紙とExcelで運用していました。そのため、評価シートの作成や配布、回収、集計といった作業に多くの手間と時間がかかっていたのです。
そこでタレントマネジメントシステム「カオナビ」を導入し、評価業務をシステム化しました。これにより、評価に関わる事務作業の工数が大幅に削減されたといいます。
その結果、管理職は事務作業から解放され、部下との対話やフィードバックといった、より本質的なコミュニケーションに時間をかけられるようになりました。業務効率化が、人材育成の質の向上にも繋がった好例と言えるでしょう。
出典参照:JR東海がタレントマネジメントシステム「カオナビ」を導入|東海旅客鉄道株式会社
全国に料理教室を展開する株式会社ABC Cooking Studioでは、毎月多くのスタッフが入社するため、入社手続きが大きな負担となっていました。紙の書類をやり取りする手間や、情報をシステムに入力する作業に追われていたそうです。
そこで労務管理ツール「SmartHR」を導入し、入社手続きを完全に電子化しました。新しいスタッフは、自身のスマートフォンやパソコンから直接情報を入力するだけで、手続きが完了する仕組みです。
この改革により、書類の印刷や郵送、手入力といった作業が一切なくなり、年間で約480時間もの工数削減に成功しました。人事担当者は、採用や教育といったコア業務に、より多くの時間を割けるようになったそうです。
出典参照:ABC Cooking Studio、ジンジャー導入で人事データ連携にかかる時間を年480時間削減、年300部以上の入社書類をペーパーレス化|株式会社ABC Cooking Studio

この記事では、人事DXの基本からツールの選び方、具体的な成功事例までをご紹介しました。
人事DXは、単に日々の業務を楽にするためのものではありません。デジタル技術とデータを上手に活用して、採用や育成といった人事戦略をより良いものにし、会社の成長を後押しするための重要な取り組みです。
多くのツールがありますが、最も大切なのは、自社の課題をきちんと見極め、その解決に本当に役立つツールを選ぶことです。今回ご紹介した選び方やツールを参考に、ぜひ貴社にぴったりのものを見つけてください。
まずは「自社の課題は何か」を整理することから、戦略的な人事への第一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。