バックオフィスDXにセキュリティは必要?基本の対策やステップを解説
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この記事を読むと法務DXでのAI活用方法がわかります。契約書レビューの効率化のメリットや注意点、リーガルテックツールの選び方から導入ステップ、弁護士法との関係まで、法務担当者が知りたい情報を網羅的に解説しています。
企業の法務部門では、日々増え続ける契約書の確認作業や人手不足が大きな悩みとなっています。その解決策として注目されているのが、AIを活用した「法務DX」です。
この記事では、法務DXの基本からAI活用のメリット、具体的な導入手順、ツールの選び方までを分かりやすく解説します。法務業務の効率化に向けた第一歩として、ぜひ参考にしてください。

最近よく耳にするDXという言葉ですが、法務の分野でもデジタル技術による変革が進んでいます。ここでは法務DXの基本と、なぜAIの活用が重要視されているのかを見ていきましょう。
多くの企業の法務部門は、共通の課題に直面しています。事業が多様化するにつれて、確認すべき契約書の量は増える一方で、その作業は担当者に大きな負担をかけています。
また、専門知識を持つ人材は限られており、特定の担当者に業務が集中しがちです。その結果、知識やノウハウが共有されにくい状況も生まれています。
手作業での確認作業では、どうしても見落としなどの人的ミスが起こる可能性があり、これは企業にとって大きなリスクになり得ます。さらに、紙を中心とした業務は非効率で、柔軟な働き方を妨げる一因にもなっています。
このような課題を解決するため、デジタル技術で業務プロセスを見直す法務DXが求められるようになりました。特に、テレワークの普及によって電子契約の利用が広がり、業務のデジタル化への意識が高まったことも大きな要因です。
ビジネスのグローバル化や複雑化が進む中で、法務部門にはこれまで以上に迅速かつ戦略的な対応が求められています。経営層からも、コスト削減やビジネスのスピードアップのために、法務部門を含めた管理部門全体のDXが期待されています。
法務DXを力強く進める上で、AI、つまり人工知能の活用は欠かせない存在です。AI技術の進歩により、これまで人間にしかできないと思われていた複雑な業務も、自動化できるようになってきました。
例えば、AIは大量の契約書データを学習することで、人間よりも速く正確に契約書の内容をチェックできます。AIは単なる作業の代替ではなく、法務担当者の能力を拡張する強力なパートナーとなり得るのです。
これにより、担当者は単純作業から解放され、より専門的な判断が求められる戦略的な業務に時間を使えるようになります。
AIを法務業務に活用することには、多くの良い点がありますが、注意すべき点も存在します。導入を成功させるためには、メリットとデメリットの両方を理解しておくことが大切です。
AIを活用する最大の利点は、契約書の確認にかかる時間を劇的に短くできることでしょう。AIツールを使えば、契約書全体を瞬時に分析し、リスクとなり得る箇所や修正すべき点を自動で示してくれます。
これにより、担当者はこれまで何時間もかかっていた作業から解放されます。事業部門のスピード感に対応できるため、契約締結の遅延といったビジネス上の機会損失を防ぐことにもつながります。
空いた時間を使って、より付加価値の高い業務に取り組むことが可能になります。
人間が作業する場合、どんなに注意しても見落としなどのミスを完全になくすことは難しいものです。AIは決められたルールに基づいて客観的にチェックを行うため、こうした人的ミスを大幅に減らすことができます。
担当者の経験や体調に左右されず、常に一定の品質でレビューを行える点も大きな強みです。また、常に最新の法律や判例を学習したAIを使えば、法改正への対応漏れを防ぎ、企業のコンプライアンス体制を強化することにもつながります。
AIによる業務の効率化は、コストの削減にも良い影響を与えます。これまで残業で対応していた業務をAIに任せることで、人件費を抑えることが可能です。また、外部の弁護士に依頼していた契約書チェックの一部を社内で行えるようになれば、その分の費用も削減できます。
これにより、法務部門は単なるコスト部門ではなく、事業成長を支える戦略的なパートナーとしての役割をより一層果たせるようになります。法務部門全体の生産性が上がることで、ビジネス全体のスピードアップにも貢献するでしょう。
もちろん、AIツールを導入するには、初期費用や月々の利用料がかかります。多機能なツールは便利ですが、その分価格も高くなる傾向があるため、自社の規模や課題に合ったものを選ぶことが重要です。
導入時の費用だけでなく、長期的な視点で費用対効果を見極めることが求められます。また、ツールを導入するだけでなく、社内でスムーズに活用するための研修など、運用面のコストも考えておく必要があります。
AIの性能は年々向上していますが、決して万能というわけではありません。契約の背景にあるビジネス上の特別な事情や、交渉相手との関係性といった、契約書には書かれていない文脈を読み取ることは苦手です。
AIが示した修正案が、必ずしも自社にとって最善の選択とは限りません。AIを過信せず、あくまで優秀なアシスタントとして位置づけ、人間との協業を前提とすることが重要です。
そのため、AIの分析結果を参考にしつつも、最終的な判断は必ず人間が行うという姿勢が大切になります。
クラウド上で提供されるAIツールを利用する場合、企業の重要な情報である契約書データを外部のサーバーに預けることになります。そのため、情報漏洩などが起こらないよう、セキュリティには細心の注意を払わなければなりません。
ツールを提供する会社が、データの暗号化やアクセス制限など、どのような安全対策を講じているか、導入前にしっかりと確認することが不可欠です。国際的なセキュリティ認証(ISO27001など)を取得しているかどうかも、サービス選定の重要な判断基準になります。

AI技術は、法務部門のさまざまな業務に役立てることができます。ここでは、特にAIの活用によって効率化が期待できる代表的な業務を紹介します。
AIが最も力を発揮する分野の一つが、契約書に関する業務です。契約書の内容をAIが瞬時に分析し、リスクのある条項や記載漏れなどを指摘してくれます。
また、取引内容などの基本的な情報を入力するだけで、AIが契約書のひな形を作成してくれる機能もあります。締結済みの契約書をデータとして管理し、契約の更新時期が近づくと知らせてくれるなど、管理業務の負担も軽減します。
このように、契約ライフサイクルのあらゆる段階でAIは業務をサポートしてくれます。
法務担当者は、新しい法律や判例の情報を常に収集し、自社のビジネスにどのような影響があるかを分析する必要があります。この情報収集作業も、AIを使えば効率的に行えます。
リーガルリサーチツールと呼ばれるAIサービスを使えば、膨大な情報の中から、必要な法令や判例をすぐに見つけ出すことが可能です。これにより、これまで時間のかかっていたリサーチ業務を大幅に短縮できるでしょう。リサーチの網羅性と正確性を高めることにも貢献します。
企業のコンプライアンス体制を強化し、法的なリスクを管理する上でもAIは有効です。例えば、社内のやり取りをAIがチェックし、法律に抵触する可能性のある不適切な表現を検知するような活用方法があります。
また、企業の合併や買収(M&A)の際に、相手企業の膨大な資料をAIが分析してリスクを洗い出すなど、専門的な分野でも活用が進んでいます。これにより、問題が発生する前に潜在的なリスクを検知し、予防法務を強化できます。
法務の分野でAIツールを利用する上で、知っておかなければならないのが「弁護士法」との関係です。特に、弁護士でない人が法律事務を行うことを禁じた「非弁行為」に当たらないか、という点が重要になります。
弁護士法第72条は、弁護士の資格を持たない人が、報酬を受け取る目的で、法律相談や交渉、契約書の作成といった法律事務を仕事として行うことを禁止する法律です。
これは専門知識のない人が法律事務を行うことで、国民の権利や利益が損なわれるのを防ぐために定められています。もしAIツールのサービスがこの法律事務に該当すると判断されれば、問題となる可能性があります。
出典参照:弁護士法第72条|法務省
この点について、法務省は2023年にガイドラインを公表し、一定の考え方を示しました。
そのガイドラインによれば、AIによる契約書レビューサービスは、あくまで利用者の判断を助けるための「支援」ツールであるとされています。AIが自動的に法的判断を下しているのではなく、一般的なリスクや修正案を提示するにとどまり、最終的な判断は利用者が行うという仕組みです。
このように、AIは便利な「道具」であり、それを使って最終的な意思決定をするのは人間であるため、原則として弁護士法第72条には違反しない、という見解が示されました。
出典参照:AI等を用いた契約書等関連業務支援サービスの提供と弁護士法第 72 条との関係について|法務省
法務省のガイドラインによって、企業は以前よりも安心してAIツールを利用できる環境が整いました。サービスを選ぶ際には、AIの役割が人間の判断を「支援」するものであることが明確に示されているかを確認するとよいでしょう。
また、AIの分析結果を参考にしつつも、利用者が自ら検討して最終的な判断を下せるような設計になっていることが大切です。「弁護士による確認は不要」といった、利用者に誤解を与えるような表現をしていないサービスを選ぶことも、安心して利用するためのポイントとなります。
法務DXを助けるAIツールは「リーガルテックツール」とも呼ばれ、さまざまなサービスがあります。ここでは代表的なツールの種類と、自社に合ったツールの選び方について説明します。
これは、契約書の確認作業を効率化することに特化したツールです。契約書ファイルをアップロードすると、AIが内容を分析し、リスクのある箇所や修正すべき点を自動で指摘してくれます。
不利な条項や法的に問題のある表現だけでなく、自社にとって必要な条項が抜けている場合も警告してくれます。担当者の経験知に頼らず、レビュー品質を一定に保つことができるため、法務部門全体の業務標準化にも貢献します。自社のルールに合わせてチェック項目をカスタマイズできる機能を持つツールもあります。
CLMとは契約書の作成から締結、その後の管理まで、契約に関する一連の流れをまとめて管理するシステムのことです。契約書のレビュー機能だけでなく、社内での承認フローや契約更新の管理など、幅広い業務をサポートしてくれます。
契約情報が一元管理されるため、「あの契約書はどこにあるのか」といった探索の手間がなくなります。また、更新期限が近づくと自動で通知が届くため、意図しない契約の自動更新や、更新漏れといったミスを防ぐことができます。契約データを蓄積・分析することで、将来の交渉に役立てることも可能です。
紙の契約書にサインや押印をする代わりに、電子ファイル上で契約を締結するサービスです。契約締結までの時間や、印紙代・郵送費といったコストを大幅に削減できます。
電子署名法に基づいたサービスを利用すれば、法的に有効な契約として認められます。
テレワーク環境でもスムーズに契約業務を進められるため、事業継続計画(BCP)の観点からも重要性が高まっています。契約書の保管や管理がしやすくなる点も大きなメリットです。
多くのツールの中から自社に最適なものを選ぶには、いくつかのポイントがあります。まず、「契約書レビューの時間を短縮したい」など、自社が解決したい課題をはっきりさせることが重要です。
その上で、その課題解決に役立つ機能を持つツールを選びましょう。また、誰にでも使いやすい操作性か、困ったときにサポートしてもらえる体制が整っているかも確認したい点です。
企業の重要な情報を取り扱うため、セキュリティ対策が万全であることも必ずチェックしてください。
法務DXは、ただツールを導入するだけでは成功しません。計画的に準備を進めることで、その効果を最大限に引き出すことができます。
ここでは、導入を成功させるための3つのステップを紹介します。
最初に行うべきは、現在の法務業務の内容を整理し、どこに課題があるのかを正確に把握することです。「誰が、どんな業務に、どれくらいの時間をかけているのか」を具体的に洗い出してみましょう。
法務担当者だけでなく、実際に契約業務に関わる事業部門の担当者にもヒアリングを行うと、より多角的に課題を捉えることができます。業務フロー図などを作成して、どこにボトルネックや無駄が生じているのかを客観的に分析することも有効です。
この作業を通じて、「契約書の確認に毎月これくらいの時間がかかっている」といったように、課題を具体的に見える化することが大切です。
次に、洗い出した課題の中から、ツールを使って解決したいことを決め、導入の目的をはっきりさせます。例えば、「契約書レビューにかかる時間を半分にする」といった具体的な目標を立てるとよいでしょう。
目的が明確であれば、経営層への説明や予算確保もしやすくなります。「時間削減」といった定量的な目標だけでなく、「レビュー品質の均一化」や「ナレッジの共有促進」といった定性的な目標も設定すると、より多角的に効果を評価できます。
この目標は、導入後にどれくらいの効果があったかを測るための指標(KPI)にもなります。
設定した目標を達成できるツールを選びます。いくつかのツールを比較し、無料でお試し利用ができる場合は、実際に使ってみて操作性を確認することをおすすめします。
導入する際は、いきなり全社で一斉に始めるのではなく、まずは特定の部署や業務に限定して試験的に使ってみる「スモールスタート」が効果的です。スモールスタートによって、本格導入前に運用上の課題を洗い出し、改善することができます。
試験導入の期間中は、利用者からのフィードバックを積極的に収集し、本格展開に向けた運用ルールの策定に役立てましょう。小さな成功を積み重ねることで、社内の理解も得やすくなるでしょう。
法務DXは、大企業だけのものではありません。法務担当者が少ない、あるいはいない中小企業こそ、AIを活用するメリットは大きいと言えます。
中小企業が法務DXを進める際のポイントを説明します。
中小企業では、予算や人員が限られていることが多いでしょう。そのため、初期費用が安く、月額数万円程度から始められるクラウド型のツールが向いています。
クラウド型ツールは自社でサーバーを管理する必要がなく、常に最新の機能を利用できる点も中小企業にとって大きなメリットです。将来的に機能を追加できる拡張性のあるサービスを選んでおけば、事業の成長に合わせて柔軟にDXを進めることができます。
まずは契約書レビューの支援など、特定の機能に絞ったツールから試してみて、効果を見ながら利用範囲を広げていくのが現実的な進め方です。
「どの業務を効率化すれば、最も効果が大きいか」という費用対効果の視点を持つことが大切です。例えば、顧問弁護士に依頼している業務のコストと、AIツールを導入した場合のコストを比較してみましょう。
単純なコスト削減だけでなく、契約締結までのスピードアップによる機会損失の防止や、リスクの見落とし防止といった金銭に換算しにくい効果も考慮に入れると、より正確な投資判断ができます。ツール導入によって削減できた時間やコストを、事業部門への法的アドバイスや社内規程の整備といった、より戦略的な業務に充てるという計画を立てることで、導入の価値はさらに高まります。
社内にITに詳しい人がいなくても、心配する必要はありません。ツールを提供している会社の担当者は、導入を支援する専門家です。
ベンダーは多くの導入事例を知っているため、自社と似たような企業がどのように活用して成功したか、といった実践的なアドバイスをもらえます。導入時の初期設定や社内向けの説明会の開催など、手厚いサポートを提供してくれるベンダーを選ぶと、導入後の定着がスムーズに進みます。
気軽に相談しながら、自社に合った導入計画を一緒に立てていくことができます。必要であれば、ITコンサルタントのような外部の専門家の力を借りるのも良い方法です。

法務DXにおけるAI活用は、大きな可能性を秘めていますが、進め方を間違えると期待した効果が得られないこともあります。
最後に、AI活用で失敗しないために押さえておきたい注意点を解説します。
「周りの企業が導入しているから」といった理由で導入を進めるのは避けましょう。「なぜAIを導入するのか」「それによって何を達成したいのか」という目的を社内ではっきりと共有することが成功の第一歩です。
この目的設定には、法務部門だけでなく、実際に契約業務に関わる事業部門の意見も取り入れることが重要です。目的が曖昧なままでは、どのツールが自社に最適なのかを判断する基準も持てません。そして、導入した後も定期的に効果を測定し、投資に見合った成果が出ているかを確認することが大切です。
AIは非常に優れたツールですが、万能ではありません。AIの分析結果をそのまま信じるのではなく、必ず人間の目で最終的な確認を行うようにしてください。
AIは契約書に書かれた文字情報しか読み取れませんが、実際の交渉には相手との信頼関係や、これまでの取引の経緯といった非言語的な要素も大きく影響します。これらの要素を総合的に判断し、ビジネスとして最善の決断を下すことは、人間にしかできない重要な役割です。
定型的なチェックはAIに任せ、ビジネスの背景といった個別具体的な事情は人間が考慮して判断する、という役割分担が理想的です。
新しいツールを導入しても、社内で使われなければ意味がありません。誰がどのようにツールを使うのか、といった運用ルールをあらかじめ決めておく必要があります。
導入初期には、操作方法に関する質問やトラブルが必ず発生します。気軽に相談できる窓口を設置したり、定期的に勉強会を開催したりするなど、手厚いサポート体制を整えましょう。利用者からのフィードバックを収集し、ツールの設定や運用ルールを継続的に改善していく姿勢も重要です。
また、法務部門だけでなく、実際にツールを利用する事業部門の担当者にも使い方を説明し、ツールを使うことのメリットを理解してもらうことが、社内に定着させるための鍵となります。
この記事では法務DXにおけるAI活用の基本から、具体的な導入方法、注意点までを解説しました。AIの活用は、もはや一部の企業だけのものではなく、企業の競争力を高めるための重要な取り組みとなっています。
まずは、自社の法務部門がどのような課題を抱えているかを見つめ直すことから始めてみてはいかがでしょうか。そして、その課題解決に最も役立つAIツールは何か、という視点で情報を集めてみてください。
この記事が、あなたの会社の法務DXを推進する一助となれば幸いです。