金融DXの推進によって叶う勘定系システムの刷新|4つの取り組み例を紹介
金融

ペーパーレス化を成功させるために必要な注意点と具体的な対策を詳しく解説します。セキュリティ・法令遵守・社内理解のポイントから、金融DXに対応した業務改善手法まで広くご紹介します。
紙の書類に囲まれたオフィス、時間がかかる手続き、煩雑な保管作業、こうしたアナログな業務に悩む企業も多いのではないでしょうか。金融業界は高い信頼性と正確性が求められる一方で、紙文化が根強く残っている分野でもあります。
しかし、近年のデジタル技術の進化により、業務の効率化と生産性の向上を目的とした「金融DX(デジタルトランスフォーメーション)」の必要性が高まっています。そこで注目されているのが、ペーパーレス化の推進です。
この記事では、金融DXを進める上でなぜペーパーレス化が重要なのか、現場で進まない理由にはどのような課題があるのかを解説します。また、現状を乗り越えるための視点も紹介します。本記事を読めば自社の業務に潜む課題に気づき、デジタル化を具体的にどう進めるかの道筋が見えてくるでしょう。
金融DXを加速させるためには、業務プロセスのデジタル化が避けられません。その中でもペーパーレス化は、根幹となるステップの1つです。紙の書類を使い続けることで、物理的な保管スペースや印刷コスト、人的なミスの発生など多くの非効率が生じます。また、業務のスピード感が求められる現在において、紙のやり取りでは迅速な対応が難しくなります。
さらに、リモートワークやオンライン契約など柔軟な働き方を取り入れるためには、書類の電子化が不可欠です。ペーパーレス化によって業務をクラウド上で完結できるようになれば、社員は場所や時間にとらわれずに業務を遂行できるようになるでしょう。金融DXを推進する上で、まずはペーパーレスという基盤を整えることが求められているのです。
理想としてはペーパーレス化を進めたいと考えていても、現場ではなかなか実現できていないのが実情です。では、なぜ金融業界ではペーパーレス化が進みにくいのでしょうか。そこには複数の要因が関係しています。
多くの金融機関では、既存の業務システムが古く、最新のデジタル技術と連携しづらいという課題があります。これらのレガシーシステムは安定性を重視して長年運用されてきたものですが、新たなクラウドシステムや電子帳票との互換性が乏しく、ペーパーレス化の妨げとなっています。
また、既存システムを刷新するには多大なコストと時間が必要であるため、優先順位が下がってしまうケースも少なくありません。システムの柔軟性が欠如していることがデジタル化の足かせとなっているのです。
金融業界は情報セキュリティが厳格に求められる分野です。そのため、データの電子化に対して慎重にならざるを得ない側面があります。電子データの漏えいや改ざんを懸念し、紙ベースの運用に依存するケースも見受けられます。
加えて、金融商品取引法や電子帳簿保存法といった各種法規制への対応も容易ではありません。文書の保存期間や改ざん防止措置などに対する基準を満たす必要があります。これらの規制にどう適応するかが、ペーパーレス化を推進する上で重要な課題となるでしょう。
技術的な環境が整っていても、それを使いこなせる人材がいなければ業務改善にはつながりません。長年紙文化に慣れている現場では、電子化に対する抵抗感が強くデジタルツールの導入に時間がかかる傾向があります。
研修制度が整っていない場合、社員が新しいシステムに慣れるまでに時間を要するので生産性の一時的な低下を招くリスクもあります。そのため、ペーパーレス化を成功させるには、ツールだけでなく活用できる人材の育成も同時に進めていく必要があるでしょう。
中小規模の金融機関では、デジタル化への投資が利益に直結しにくいと判断され後回しにされるケースもあります。初期費用が高く見える一方で短期的なリターンが見えにくいため、なかなか予算が確保できません。
しかし長期的に見れば、紙の削減によるコストの最適化や業務効率の向上といったメリットが期待できます。ROI(投資対効果)を正しく評価することが、経営判断を後押しするでしょう。
日本特有の「押印文化」や、対面での署名を重視する法的慣習もデジタル化のスピードを遅らせている要因の1つです。契約書や申込書など法的効力を持つ文書については、電子署名が認められていても紙での対応を求める企業や顧客が存在します。
これにより、業務全体のデジタル化が一部で止まり、完全なペーパーレス化に至らない状況が続いています。電子署名や電子契約の普及に向けては、業界全体での意識改革が求められるでしょう。
金融DXを導入しペーパーレス化を実現すると、業務の効率化やコスト削減にとどまらず、顧客満足度の向上や企業としての社会的信頼の獲得にもつながります。
ここでは、金融DXを推進することで得られる具体的な6つのメリットについて解説していきます。
金融機関では、取引記録・契約書・顧客情報など日常業務で扱う紙の量が膨大です。これに伴い、書類の保管スペースやキャビネット、倉庫の賃料といった固定費がかかっているケースが多く見られます。
ペーパーレス化によってこれらの文書をデジタルデータとして管理すれば、保管にかかる物理的スペースを必要とせず、コスト削減が期待できるでしょう。また、デジタル化された情報はクラウドやデジタルストレージに保管できるため、管理の手間も軽減され、より効率的な運用につながります。
紙媒体での業務フローでは、書類の印刷・押印・郵送・確認といった手続きが必要になり、意思決定に時間がかかる傾向があります。特に複数部門や遠隔地とのやり取りが発生する場合、時間的ロスは避けられません。
一方で、書類の電子化を行うとオンライン上での確認や承認が可能となるため、申請から処理までのリードタイムを短縮できるでしょう。結果として、顧客対応のスピードも上がり、企業全体のレスポンス力が向上するのです。
紙の書類は紛失や盗難、誤送付といったリスクが常につきまといます。さらに、オフィス外に持ち出された場合に第三者の目に触れる危険性もあり、個人情報や機密情報の漏えいにつながることもあるでしょう。
しかし、ペーパーレス化によって情報を電子的に管理することで、アクセス権の制御や暗号化、ログ管理といったセキュリティ対策が施しやすくなります。これによって情報管理の精度が高まり、組織としてのリスクマネジメント力を強化できるでしょう。
近年、企業の社会的責任(CSR)や環境・社会・ガバナンス(ESG)への関心が高まっており、金融機関もその取り組みを求められています。その中でもペーパーレス化は、温室効果ガスの削減や森林資源の保護といった環境負荷の軽減に寄与する手段として注目されています。
紙の使用量を減らすことで製造・輸送・廃棄にかかるエネルギー消費を抑えられるでしょう。こうした取り組みは顧客や投資家からの評価にもつながり、企業のブランド価値向上に寄与します。
コロナ禍以降多くの企業がリモートワークを導入しましたが、紙ベースの業務を前提とした業務フローが足かせとなり業務の停滞を招いたケースも見受けられます。
ペーパーレス化を進めればどこからでもアクセス可能なクラウド型の文書管理が実現し、在宅勤務や出張先からでも業務を継続できるようになるでしょう。また、リアルタイムでの情報共有や文書の同時編集など、柔軟な働き方を支える基盤も整います。
紙の書類ではデータの分析や活用が難しく、個々の顧客ニーズに対応したサービス提供には限界があります。これに対し、電子化されたデータは検索性や集計性が高く、顧客の属性や行動履歴をもとにしたパーソナライズドな提案がしやすくなるという特徴があります。
例えば、過去の取引内容やライフイベントに応じて最適な金融商品をレコメンドしたり、チャットボットでの対応精度を向上させたりすることが可能になるでしょう。デジタル技術と組み合わせることで、より顧客に寄り添ったサービスを構築しやすくなります。
金融業界におけるペーパーレス化は、単なる紙の削減にとどまらず、業務効率化や顧客満足度向上、さらにはサステナビリティへの貢献にも直結します。ただし、導入には戦略的なステップが必要です。
ここからは、ペーパーレス化を円滑に進めるために押さえておきたい8つのステップを紹介します。
最初に行うべきは、自社でどのような紙書類が使用されているかを正確に調べることです。
業務の中で使われている帳票や契約書、申請書類などを棚卸しし、それぞれがどのような目的で使用されているのかを明確にします。このプロセスを経ることで、紙媒体が本当に必要かあるいはデジタル化が可能かを判断しやすくなるでしょう。具体的には、書類の種類ごとに処理フローを図式化し、無駄がないか、重複している業務がないかをチェックすることが重要です。
ペーパーレス化を実現するには、適切なデジタルツールの導入が役立ちます。
ツール選定では、自社の業務フローやセキュリティ要件に適合しているかを確認することが重要です。書類の共有や編集が頻繁に発生する部署では、クラウド型の文書管理システムが適しているでしょう。また、ワークフローの自動化を視野に入れるならば、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)や業務支援ツールの導入も効果的でしょう。
導入にあたっては、小規模な部署で試験的に運用を始め、フィードバックを得ながら段階的に全社へ展開していきましょう。
どれだけ高機能なツールを導入しても、利用する社員の意識が変わらなければペーパーレス化は定着しません。
ペーパーレス化の定借のためには、まず経営層が旗振り役となり、ペーパーレス化の目的や期待される効果を社内に共有することが求められます。加えて、定期的な研修や説明会を通じて、実務レベルでの理解を深めることが重要です。
また、部門ごとにペーパーレス推進リーダーを任命し現場の声を吸い上げながら改善を進めることで、社員の自発的な参加も促されるでしょう。
契約書や申請書といった法的な効力を持つ文書についても、ペーパーレス化を進めるためには電子署名やデジタルフォームの活用が欠かせません。
電子署名は、本人確認や改ざん防止の技術が用いられており、紙と同等の法的効力が認められています。こうした仕組みを取り入れることで郵送や対面でのやり取りが不要となり、処理時間や人的コストの削減につながります。
さらに、申請フォームなどもデジタル化することで、入力内容の自動チェックやデータベースへの連携がスムーズに行えるのです。
紙書類が減ったとしても、デジタル化された情報が各所に分散していては業務効率の向上にはつながりません。
そこで重要となるのが、クラウドストレージによるデータの一元管理です。Google DriveやBox、Microsoft OneDriveなどのサービスを利用することでどこからでも安全にデータへアクセスでき、共同編集や共有も円滑になります。
また、アクセス権限の設定や操作ログの記録といった機能も備わっており、セキュリティ管理の強化にもつながるでしょう。
紙媒体に比べてデジタルデータはコピーや転送が容易な反面、不正アクセスや情報漏えいといったリスクも存在します。
そのため、ペーパーレス化を進める際には、同時にセキュリティ対策も見直す必要があります。ファイルの暗号化・二要素認証の導入・アクセスログの取得などを基本対策として整備しましょう。
また、社内のセキュリティポリシーも文書化し、全社員に対して遵守を徹底させる体制を築くことが求められます。
ペーパーレス化は単に紙をなくすことではなく、業務プロセス全体の効率化と自動化を視野に入れるべきです。
そのためには、帳票の出力から承認、保存までの一連の流れをワークフロー管理ツールで構築し、処理の自動化を図りましょう。請求書処理では、OCR(光学文字認識)を用いて紙のデータを読み取り、自動で仕訳や支払い手続きまで連携させることも可能です。
こうした取り組みにより、人的ミスの軽減や業務スピードの向上が期待できるでしょう。
最後に重要なのは、法令や業界規制に準拠した文書管理体制の構築です。
金融業界では、電子帳簿保存法や個人情報保護法といった関連法規に基づいて一定期間の文書保存義務があります。電子的に保存する場合は、真正性(改ざんされていないこと)、見読性(人が内容を確認できること)、保存性(一定期間保持できること)の3要件を満たす必要があります。
これらをクリアするためには、信頼性の高い文書管理システムの導入とともに社内規定の整備や監査対応の体制も整える必要があるでしょう。
業務のペーパーレス化は多くのメリットがありますが、同時に慎重な準備と管理が必要です。情報の扱いや組織内の意識統一が不十分なまま進めてしまうと、期待した成果が得られない可能性もあります。
ここでは、ペーパーレス化を進める際に注意すべき5つのポイントをご紹介します。
デジタル化によって文書が電子データとして保存されるようになると、サイバー攻撃や情報漏えいのリスクが増すことになります。そのため、万全のセキュリティ対策が不可欠です。
例えば、データの暗号化やアクセス権限の設定、二要素認証の導入などが挙げられます。さらに、社員に対する情報セキュリティ研修を行い、日常的なリスク意識の向上を図ることも効果的です。
ペーパーレス化を推進する上では、電子帳簿保存法やe-文書法などの関連法規への理解と対応が必要です。文書の保管期間や電子データの真正性を確保する方法などは業種によって求められる水準が異なります。
対応を誤ると法的責任を問われることにもつながるため、専門家のアドバイスを受けながら運用設計を行うようにしましょう。
いくら最新のツールを導入しても、担当社員が使いこなせなければ意味がありません。ペーパーレス化の成否は、社員一人ひとりの意識と協力に左右されます。
そのため、導入前に社内説明会やデモンストレーションを実施し、なぜペーパーレス化が必要なのかを丁寧に伝えることが重要です。加えて、操作マニュアルの整備や導入初期のサポート体制も用意しておくと、スムーズな定着が期待できるでしょう。
ペーパーレス化を効果的に進めるには、自社に合ったデジタルツールの選定が重要です。単に有名な製品を選ぶのではなく、自社の業務フローや社員のITスキル、既存システムとの連携などを総合的に判断して導入計画を立てる必要があります。
また、導入後の運用サポートやカスタマーサービスの充実度も重要な比較ポイントです。時間をかけて選定することで、無理なく運用できる基盤を構築しやすくなるでしょう。
すでに使用している基幹業務システムや顧客管理システムとの連携を考慮しないままツールを導入すると、業務の効率化どころかむしろ手間が増えるケースもあります。
そのため、ペーパーレス化に際しては現在のシステム環境を正確に把握し、API連携やデータ形式の互換性などを確認した上で無理のない形で統合していくことが大切です。
ペーパーレス化を実現するには、技術的な知識だけでなく現場に寄り添った提案力と実行力が求められます。
『株式会社TWOSTONE&Sons』は、金融業界をはじめとしたさまざまな業種においてペーパーレス化やデジタルトランスフォーメーション(DX)の支援を行っています。当社の特徴は、現場の課題に即した実践的なソリューションを提供できる点です。クラウドシステムの導入支援をはじめ、社内業務プロセスの見直しや法令対応まで、幅広いニーズに対応しています。
ペーパーレス化に課題を感じている企業は、ぜひ一度ご相談ください。
紙からの脱却は、単なる業務改善にとどまらず企業の未来を形づくる戦略的な一歩でもあります。セキュリティや法規制、社員の意識など気をつけるべき点は少なくありませんが、正しいステップと信頼できるパートナーを選べば無理なく取り組めるでしょう。
特に金融業界では、法的要件と情報管理の厳格さが求められるため、確実なサポートが欠かせません。ペーパーレス化はゴールではなく、DXの第一歩です。これを機に業務の質を高め、組織の競争力を向上させていきましょう。