バックオフィスDXにセキュリティは必要?基本の対策やステップを解説
バックオフィス
人事DXがもたらす具体的なメリットとは?本記事では、業務効率化や戦略的人材活用といった利点から、導入のデメリットと対策、成功に導く4つのステップ、さらには中小企業の事例までを網羅的に解説。DX推進の第一歩を後押しします。
経営層から「DX推進」の号令がかかり、人事部門として何から手をつければ良いか悩んでいませんか。
日々の給与計算や勤怠管理に追われ、本来注力すべき人材育成や採用強化といった戦略的な業務に時間を割けない、というジレンマは多くの企業が抱える共通の課題です。
人事DXは、単なるITツールの導入ではありません。反復的な作業から担当者を解放し、データを用いて企業の最も重要な資産である「人材」の価値を最大化する変革の取り組みです。
この記事では、人事DXがもたらす具体的なメリットから、導入の現実的な課題、そして成功へのロードマップまで、専門知識がない方でも深く理解できるよう、丁寧に解説していきます。

人事DXとは、AIやクラウドシステムといった最先端のデジタル技術を駆使して、採用、労務管理、人材育成、評価といったあらゆる人事業務のプロセスを変革する取り組みを指します。
この変革の目的は、単に紙媒体をデジタルに置き換えることや、特定の業務をITツールで自動化することに留まりません。真のゴールは、それらの活動を通じて収集・蓄積された従業員のデータを一元的に管理し、深く分析することにあります。
そして、その分析結果を経営戦略の意思決定に活かし、客観的なデータに基づいた人材配置や育成計画を立案することです。例えば、ハイパフォーマーの行動特性を分析して採用基準に反映させたり、従業員のスキルセットを可視化して最適なプロジェクトチームを編成したりすることが可能になります。
このように、人事業務を効率化する「守りのDX」と、データを活用して企業価値を高める「攻めのDX」の両輪を回し、組織全体の競争力を根本から強化していくことが、人事DXの本質的な価値と言えるでしょう。
現代のビジネス環境は、労働人口の減少に伴う人材獲得競争の激化や、テレワークをはじめとする働き方の多様化など、大きな変革の波に直面しています。
こうした状況下で、旧来の紙やExcelを中心としたアナログな人事管理手法では、変化のスピードに対応しきれなくなっています。情報が分散し、必要なデータを迅速に活用できないままでは、戦略的な意思決定は困難です。
経済産業省が警鐘を鳴らす「2025年の崖」や「DX推進指標」も示すように、レガシーシステムのままでは企業の競争力を損なうリスクさえあります。人事DXは、こうした時代の要請に応え、データを活用して組織の力を最大化するための不可欠な経営戦略なのです。
出典参照:DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~|経済産業省
出典参照:DX推進指標(サマリー)|経済産業省

人事DXの推進は、単なる業務効率化に留まらず、企業の成長を加速させる多様なメリットをもたらします。
このセクションでは、人事部門が享受できる代表的な5つの利点について、具体的な効果とともに掘り下げていきます。これらのメリットを理解することで、自社にとっての導入価値がより明確になるでしょう。
給与計算や勤怠管理、社会保険手続きといった毎月必ず発生する定型業務を自動化できることは、人事DXがもたらす最も直接的かつ体感しやすいメリットの一つです。
例えば、勤怠管理システムを導入すれば、従業員の打刻データが自動で集計され、残業時間や休暇取得状況がリアルタイムで反映されます。これにより、月末に集中していた煩雑な集計作業や、手作業による入力ミスが劇的に削減されます。
創出された貴重な時間を、従業員との1on1ミーティングの質の向上、キャリア開発支援プログラムの企画、あるいは組織の課題を分析し改善策を立案するといった、人でなければできない付加価値の高いコア業務に振り分けることが可能になります。
このように、人事担当者が「作業者」から「戦略的パートナー」へと役割を変革する基盤を築くことができるのです。
従業員のスキル、経歴、評価、研修履歴といった人材情報を一つのプラットフォームに集約し、可視化できるようになる点は、人事DXの核となるメリットです。
従来、紙のファイルや複数のExcelシートに散在し、活用が困難だった貴重なデータが、タレントマネジメントシステムなどによって統合されることで、組織全体の人材状況を瞬時に、かつ多角的に把握できるようになります。
この統合されたデータを分析すれば、「どの部署にどのようなスキルを持つ人材が不足しているか」「3年後の次世代リーダー候補は誰か」「エンゲージメントが低下しているチームの共通点は何か」といった戦略的な問いに対し、客観的な根拠に基づいた答えを導き出せます。
これにより、感覚や経験則に頼らない、データドリブンな適材適所の人員配置や効果的な後継者育成計画が実現します。
採用活動の全プロセスをデジタルで管理し、蓄積されたデータを分析することで、採用の精度と効率を大幅に向上させます。
採用管理システム(ATS)を導入すれば、複数の求人媒体からの応募者情報を自動で取り込み、一元管理できます。選考の進捗状況は関係者間でリアルタイムに共有され、対応漏れや二重連絡といったミスを防ぎ、候補者にスムーズな選考体験を提供できます。
さらに、入社後に高いパフォーマンスを発揮している社員の応募経路や経歴、面接時の評価などを分析することで、自社にマッチする人材のペルソナが明確になります。
データに基づいた採用基準を用いることで、面接官の主観に頼るのではなく、客観的な視点での選考が可能となります。結果的に採用のミスマッチを根本から減らし、入社後の定着率向上と育成コストの削減に大きく貢献します。
従業員の業績や行動に関するデータを活用することで、評価者の主観や相性に左右されない、客観的で公平性の高い人事評価制度を構築できます。
目標管理システム(MBO)などを通じて、期初に設定した目標と期末の達成度、そしてそのプロセスをデータとして記録・共有することが可能です。これにより、評価者ごとの評価のバラつきを是正し、なぜその評価になったのかを具体的な事実に基づいて説明できるようになります。
従業員は自身の評価に対する納得感を持ちやすくなり、次の成長に向けた具体的なアクションプランを立てやすくなります。評価の透明性と公平性が担保されることは、従業員のエンゲージメントを高め、組織全体のパフォーマンス向上に不可欠な信頼関係を醸成する上で極めて重要な要素となります。
パルスサーベイなどのツールを活用して従業員のコンディションや満足度を定期的かつリアルタイムに測定し、そのデータを分析することで、組織が抱える課題を早期に発見し、改善策を講じることが可能になります。
例えば、特定の部署でエンゲージメントの低下を示すデータが見られた場合、その原因が「業務負荷の高さ」なのか「人間関係」なのかを深掘りし、上司との1on1ミーティングの機会を増やす、業務分担を見直すといった具体的な対策を迅速に打てます。
個々の従業員が抱えるキャリアへの不安や職場への要望をデータに基づいて把握し、適切なサポートを提供することは、会社への信頼感と貢献意欲(エンゲージメント)を高めます。
エンゲージメントの高い組織は、離職率が低く、生産性や顧客満足度が高いことが多くの調査で示されており、企業の持続的な成長に直結する重要な指標なのです。
多くのメリットをもたらす人事DXですが、その導入プロセスは常に順風満帆に進むとは限りません。新しい仕組みを導入する際には、コスト、既存システムとの連携、そして「人」に関わる課題など、乗り越えるべきハードルが存在します。
しかし、事前にこれらの潜在的な課題を正確に理解し、適切な対策を講じることで、導入の失敗リスクを大幅に減らすことが可能です。このセクションでは、多くの企業が直面しがちな3つの代表的なデメリットと、それらを乗り越えるための具体的なアプローチを解説します。
新しいシステムやツールの導入には、初期費用や月額利用料といった金銭的なコストが発生します。 特に多機能なシステムは高額になる傾向があり、投資対効果が見えにくいという懸念から導入をためらうケースは少なくありません。
この課題への対策として、導入によって削減できる残業時間や人件費、採用コストなどを具体的に試算し、明確な費用対効果を示すことが重要です。さらに、法制度への対応という観点でも、電子帳簿保存法やインボイス制度など、実務に直結するルール改正を見据えたDXは避けて通れません。
いきなり全社展開するのではなく、まずは特定の部署や課題に絞ってスモールスタートし、成功実績を作ってから段階的に範囲を広げていくアプローチも、リスクを抑える上で有効な手段となります。
出典参照:電子帳簿等保存制度特設サイト|国税庁
出典参照:適格請求書等保存方式(インボイス制度)の手引き|国税庁
長年使用してきた給与計算ソフトや勤怠管理システムから新しいシステムへ過去のデータを移行する作業は、想像以上に複雑で時間を要する場合があります。
データ形式の違いや文字コードの問題、情報の不整合など、予期せぬトラブルが発生し、最悪の場合、給与支払いの遅延など通常業務に深刻な支障をきたすリスクも考えられます。
このデメリットを乗り越えるためには、移行対象となるデータを事前に棚卸しし、「どのデータを」「いつまでに」「どのような手順で」移行するのかを定めた綿密な移行計画とリハーサル計画を立てることが不可欠です。特に、データのクレンジング(重複や誤りの修正)には十分な時間を確保する必要があります。
また、システム提供ベンダーのサポート体制が充実しているか、データ移行支援サービスを提供しているかも、ツール選定時の重要な判断基準とすべきでしょう。
「ITに詳しい人材が社内にいない」「新しいツールを使いこなせるか不安」という問題は、特に中小企業において人事DXを阻む大きな壁となります。 専門知識を持つ人材が不足していると、数あるツールの中からどれが自社に最適か判断できなかったり、導入したはいいものの十分に活用されず形骸化してしまったりする恐れがあります。
この課題に対しては、一つの解決策に固執せず、複数のアプローチを検討することが重要です。社内のITリテラシー向上のための研修プログラムを実施する、外部の専門家やコンサルティングサービスを積極的に活用して知見を補うなどが挙げられます。
そして何よりも、プログラミングなどの専門知識がなくても直感的に操作できる、ユーザーフレンドリーなツールを選ぶことが、DX推進のハードルを下げ、現場への浸透を成功させる鍵となります。

人事DXを成功に導くためには、流行りのツールに飛びつくのではなく、戦略的かつ段階的にプロジェクトを進めることが不可欠です。自社の現状を正確に把握し、明確なゴールを設定した上で、計画的に実行と改善を繰り返していくプロセスが求められます。
このセクションでは、多くの企業が実践し、成果を上げている導入アプローチを4つのステップに分解して解説します。
人事DX推進の最初のステップは、「何のためにDXを行うのか」という目的を明確に定義することです。
「採用候補者への連絡が遅れがち」「紙の書類が多く保管場所を圧迫している」といった現場レベルの課題から、「若手社員の離職率が高い」といった経営レベルの課題まで、まずは現状を徹底的に洗い出します。
これらの課題の中から、最も緊急度と重要度が高いものは何かを特定し、「業務効率を30%向上させる」「離職率を5%改善する」など、具体的な数値目標を設定することが極めて重要です。
こうした目標設定は、経産省が示す「DX推進指標」にも通じる考え方であり、組織の成熟度を測りながら段階的にDXを進める指針となります。
出典参照:DX推進指標(サマリー)|経済産業省
明確化された課題と目的を基軸に、それを解決するための最適なツールを選定するフェーズに移ります。
市場には、勤怠管理、採用管理、タレントマネジメントなど、特定の機能に特化したSaaS(Software as a Service)から、人事業務全般をカバーする統合型(ERP)システムまで、多種多様なツールが存在します。
選定にあたっては、「自社の課題解決に直結する機能は何か」「将来的な事業拡大に対応できる拡張性はあるか」「セキュリティ対策は万全か」「そして予算に見合っているか」といった複数の視点から総合的に比較検討することが求められます。
多くのツールが無料トライアル期間を設けているため、必ず複数のツールを実際に操作しましょう。現場の担当者がストレスなくスムーズに使えるかどうかを確認するプロセスを省略してはいけません。
人事DXは、人事部門だけの取り組みとして進めると失敗する可能性が高まります。
経営層や情報システム部門、さらには実際にツールを利用する現場の従業員をも巻き込んだ全社的なプロジェクトとして推進する体制を構築することが成功の鍵です。
プロジェクトの最終責任者として経営層から役員を任命し、人事、IT、各事業部門からの代表者で構成される推進チームを組織します。その上で、誰がプロジェクト全体の進捗を管理し、誰がシステムの設定やデータ移行を担当し、誰が社内への周知や研修を行うのか、それぞれの役割と責任を明確に定義します。
特に、経営層がプロジェクトの重要性を全社に発信し、強力なリーダーシップを発揮することは、部門間の連携を円滑にし、導入への抵抗感を和らげる上で不可欠です。
ツールの導入はゴールではなく、あくまで組織変革のスタート地点に過ぎません。 導入後は、一定期間が経過した時点で、ステップ1で設定したKPIがどの程度達成されたかを、データを基に定量的に評価します。
例えば、「給与計算にかかる時間が月間20時間削減されたか」「従業員満足度サーベイのスコアが目標の10ポイント向上を達成したか」といった具体的な効果を測定します。思うような成果が出ていない場合は、その原因の分析が必要です。「ツールの設定に問題はないか」「従業員へのトレーニングは十分だったか」「運用ルールが形骸化していないか」といった観点から改善策を立案・実行します。
このPDCA(Plan-Do-Check-Action)サイクルを粘り強く回し続けることこそが、人事DXを組織文化として根付かせ、その効果を最大化させる方法です。
理論や方法論を学ぶことも重要ですが、実際に人事DXによって課題を解決し、成長を遂げた企業の生きた事例は、これから取り組む企業にとって何よりの道しるべとなります。
このセクションでは、特に中小企業が直面しがちな具体的な課題に対し、DXがどのように貢献したのか、3つの成功事例を紹介します。
株式会社リージョンデザイン・ホールディングスでは、これまで人事労務業務を紙やExcelでアナログ管理。
給与明細の手渡し、タイムカードや年末調整の記入など、膨大な労力と人為的ミスの発生が大きな課題でした。特に、電子帳簿保存法の改正を背景に、バックオフィスのDX推進が急務でした。
同社は、グループ企業10社へfreee人事労務の同時導入を決定し、バックオフィス業務のDXを一気に加速しました。導入により、従業員の手間とストレスが解消され、業務効率化で捻出された時間を顧客サービス向上に充てることを期待。従業員もDXに前向きな姿勢を示しています。
出典参照:グループ企業10社の同時導入で一気にDXを加速 最も工数がかかっていた人事労務の課題をfreeeで解消|フリー株式会社
アイリスオーヤマでは、多角的な事業展開を支える人材リソースの活用や、人事台帳・評価などが異なるシステムで管理されていることが課題でした。これを解決し、データに基づく人材活用や人事DXを推進するため、タレントマネジメントシステム「タレントパレット」を導入しました。
「タレントパレット」は、採用から育成、配置、評価、抜擢・活躍までの機能をワンストップで提供し、人材情報を活用した科学的人事戦略を実現。これにより、採用ミスマッチの防止に貢献しました。
さらに、社員のスキルや経験を可視化し、社内スカウト制度を運用することで効果的な人材発掘を目指し、組織全体の活性化を図っています。
出典参照:アイリスオーヤマが多角的な事業展開を支える人事戦略基盤としてタレントマネジメントシステム「タレントパレット」導入|株式会社プラスアルファ・コンサルティング
大阪市水道局は、人事配置案の作成において、在職年数やキャリアデザイン、保有資格、所属バランスなど様々な要素を考慮した膨大なデータ整理と資料作成が大きな課題となっていました。
この非効率性を解消し、業務運営DXを推進するため、同局はワンストップ人事労務システム「One人事」を提供するOne人事株式会社と共同研究協定を締結しました。
この共同研究では、「One人事」のAI技術を用いた新機能によって、人事配置案の素案をAIで作成する実現性を検証します。これにより、人事部門の業務効率化を図るとともに、最適な人事配置案の作成を通じて組織力の向上に貢献することを目指しています。研究成果は将来的にシステム化され、他の公的機関への提供も視野に入れられています。
出典参照:One人事、大阪市水道局と人材データとAIを活用した人事配置案の作成に関する共同研究について協定を締結|One人事株式会社
この記事を通じてご理解いただけたように、人事DXは単なる業務効率化のためのツール導入ではありません。
人材という最も重要な経営資源の価値を最大化し、企業の競争力を根本から高めるための戦略的な取り組みです。日々の定型業務に追われる現状から抜け出し、従業員の成長支援や組織開発といった未来を創る活動に時間を振り分けることが、これからの人事部門には求められています。
最初から全社的な壮大な計画を描く必要はありません。まずは「最も時間を取られている業務は何か」「データがあればもっと良い判断ができるのはどの場面か」といった身近な課題を一つずつ丁寧に可視化することから始めましょう。
小さな改善の積み重ねが、やがて大きな組織変革につながる。それこそが人事DXを成功へ導く確実な第一歩となります。