法務DXのセキュリティ対策!安全な導入と運用のポイント

法務DXを推進したいが、セキュリティに不安はありませんか?法務DXに潜む情報漏洩などのリスクに対し、ゼロトラストや暗号化といった基本対策から、安全なツールの選定ポイント、成功に導く導入ステップまで、法務担当者が知るべき情報を網羅的に解説します。

企業のDX推進に伴い、法務部門でも業務効率化は急務です。契約書の電子化などの法務DXは生産性を向上させる一方、新たなセキュリティリスクを生じさせます。

本記事では、法務担当者が知るべきDXの背景、潜む危険性、そして安全なツール選定と導入のポイントを解説します。自社のDXを成功に導くため、ぜひご活用ください。

法務DXが求められる背景

近年、多くの企業で法務DXへの注目が高まっています。その背景には、従来の法務業務が抱える課題や、社会全体の変化が大きく影響しています。アナログな業務プロセスからの脱却は、企業成長に不可欠な要素と言えるでしょう。

従来の法務業務が抱える課題

従来の法務業務は、紙媒体での契約書管理や押印などアナログなプロセスが主流でした。膨大な書類の保管スペースや管理コストが課題となり、過去の契約書を探す際の検索性の低さは業務の属人化を招いていました。

また、製本や郵送、押印のための出社といった手作業は非効率です。これらが本来注力すべき契約内容の精査やリスク分析といったコア業務の時間を圧迫し、結果としてビジネス全体のスピード感を阻害する大きな要因となっていました。

業務効率化による生産性向上

法務DXを推進することで、アナログ業務に起因する課題の多くを解決できます。

例えば、契約管理システムを導入すれば、契約書の作成から承認、締結、保管までをデジタル上で完結させることが可能になります。これにより、書類の検索時間が大幅に短縮され、押印や郵送の手間も不要になります。

結果として、法務担当者はより戦略的な業務に集中でき、部門全体の生産性向上が期待できるのです。

多様な働き方への対応

リモートワークが普及する現代において、オフィスに出社しなければ対応できない業務は大きな制約となります。

特に紙の契約書への押印や、社内サーバーでしかアクセスできないデータベースは、柔軟な働き方を妨げる典型例です。法務DXで業務プロセスをクラウド化すれば、時間や場所にとらわれない働き方が可能になり、多様な人材の確保や従業員のワークライフバランス向上にも繋がります。

経営戦略としてのDX推進

多くの企業で全社的なDX推進が経営の重要課題となっています。法務部門も例外ではなく、従来の守りの姿勢から、事業部門のDXを法務・コンプライアンス面から積極的にサポートする「攻めの法務」への変革が求められています。

法務DXは単なる業務効率化に留まりません。蓄積された契約データを分析して事業リスクを可視化し経営判断に活かすなど、法務部門が企業の戦略的パートナーとして機能するための不可欠な取り組みなのです。

法務DXで活用される主要テクノロジー

法務DXの実現には、様々なテクノロジーが活用されています。AIによる業務自動化やクラウドの活用はその代表例です。これらの技術を理解し、自社の課題に合わせて適切に導入することが成功の鍵となります。

AIによる契約書レビューの自動化

AI(人工知能)とは、コンピューターが人間のように学習・判断する技術です。法務分野では契約書レビューの支援に活用され、AIが契約書案を瞬時に分析し、不利な条項や欠落条項、リスクのある文言を自動で検出します。

これにより、レビューにかかる時間を大幅に削減できるだけでなく、担当者による見落としといった人的ミスを防げます。審査品質の均一化と向上を図ることが可能になるのです。

クラウド型契約管理システム

クラウドとは、インターネット経由でサービスを利用する形態です。クラウド型の契約管理システムを導入すれば、契約書の作成から承認、電子締結、保管、期限管理までを一元的に行えます。

社内のどこからでも安全にアクセスでき、契約ステータスの可視化やナレッジ共有が容易になる点が大きなメリットです。これにより、業務の透明性と効率が飛躍的に向上し、ガバナンス強化にも繋がります。

電子署名・電子契約サービス

電子署名とは、電子文書の本人性と非改ざん性を担保する技術で、紙の契約書における押印に相当します。電子署名法に基づき、手書きの署名や押印と同等の法的効力が認められています。

この技術を活用した電子契約サービスは、契約締結プロセスを完全にオンライン化し、場所を問わない契約業務を実現します。郵送コストや印紙税の削減、リードタイム短縮といった直接的なメリットに加え、締結プロセスの可視化や監査証跡の確保によるコンプライアンス強化にも大きく貢献します。

リーガルリサーチツールの高度化

過去の判例や法令を調査するリーガルリサーチ業務も、テクノロジーで大きく進化しています。AIを活用した最新のリサーチツールは、単純なキーワード検索だけでなく、質問の意図や文脈を理解して関連性の高い情報を的確に提示します。

これにより、リサーチ業務の精度とスピードが飛躍的に向上し、法務担当者はより質の高い法的助言を迅速に提供でき、企業の戦略的な意思決定を強力にサポートします。

法務DXに潜むセキュリティリスク

法務DXは多くのメリットをもたらす一方、デジタル化に伴う新たなセキュリティリスクも生じます。機密情報を扱う法務部門にとって、これらのリスクへの対策は極めて重要です。外部攻撃と内部脅威の両方への備えが不可欠となります。

不正アクセスによる機密情報の漏洩

法務データがクラウドサーバーで一元管理されると、外部からの不正アクセスの標的となる可能性があります。万が一、企業の重要契約やM&A情報、顧客の個人情報などが漏洩した場合、企業の信頼が失墜したり、多額の損害賠償に繋がる深刻な事態を招きます。

特に法務情報は経営の根幹に関わるため、その被害は計り知れません。ファイアウォールや侵入検知システムの導入、通信の暗号化といった多層的な防御策が不可欠です。

内部関係者による情報の不正利用

セキュリティリスクは外部攻撃に限りません。悪意を持った従業員や退職者による情報の持ち出しや、操作ミスによる意図しない情報漏洩も大きな脅威と言えます。

そのためアクセス権限の管理が不適切だと、こうした内部不正のリスクを高める要因になります。従業員が必要な情報にのみアクセスできるよう権限を最小化する「最小権限の原則」を徹底し、誰がいつ何をしたか追跡できる監査ログの監視も重要です。

ランサムウェアによる業務停止

ランサムウェアとは、感染するとデータを暗号化して使用不能にし、復旧と引き換えに身代金を要求するウイルスです。

法務DXで利用するシステムが感染すると、契約データにアクセスできなくなり、訴訟対応の遅延や取引停止など事業継続に深刻な影響を及ぼします。身代金を支払ってもデータが戻る保証はなく、企業の評判も失墜します。定期的なバックアップの取得と復旧訓練、従業員への教育が不可欠です。

クラウドサービスの脆弱性

利用するクラウドサービス自体にセキュリティ上の欠陥(脆弱性)が存在する場合、そこを突かれてサイバー攻撃を受ける可能性があります。

自社の対策が万全でも、サービスの安全性が低ければ意味がありません。これは「サプライチェーン攻撃」の一種です。サービス選定の段階で、提供事業者のセキュリティ体制や第三者認証の取得状況、脆弱性への対応方針などを慎重に見極め、契約で責任範囲を明確化することが重要です。

守りを固めるセキュリティ対策の基本

法務DXを安全に推進するためには、多層的なセキュリティ対策が不可欠です。特定の技術に頼るのではなく、複数の対策を組み合わせることが重要です。このセクションでは、その基本となる考え方と具体的な対策を紹介します。

ゼロトラストに基づいたアクセス制御

ゼロトラストとは、「何も信頼しない」を前提としたセキュリティモデルです。社内外の区別なく、すべてのアクセスを都度検証します。

具体的には、誰が、いつ、どのデバイスから、どの情報にアクセスしようとしているのかを厳格に確認し、業務上必要な最小限の権限のみを付与します。これにより、万が一IDが窃取されても被害を最小限に抑えることが可能です。不正アクセスを効果的に防ぐ方法と言えます。

データの暗号化による情報保護

暗号化とは、データを特定のルールで変換し、第三者には読み取れないようにする技術で、情報漏洩対策における最後の砦です。

重要な契約書ファイルや顧客情報などを暗号化しておけば、万が一データが外部に流出しても、内容を解読されるのを防ぎます。データがサーバーに保存されている「保管時」と、インターネットで送受信される「通信時」の両方で、強力な暗号化を適用することが極めて重要であり、企業の信頼と資産を根本から守ります。

定期的なバックアップの実施

ランサムウェア攻撃やシステム障害に備え、データのバックアップを定期的に取得することは事業継続の要です。バックアップがあれば、万が一データが利用不能になっても、正常な時点の状態に復旧させることができます。

バックアップデータは、元のデータとは物理的に離れた安全な場所に保管する「オフサイトバックアップ」が推奨されます。また、定期的に復旧テストを行い、確実にデータを戻せることを確認しておくことが不可欠です。

従業員へのセキュリティ教育

高度なシステムを導入しても、セキュリティの最終的な砦は「人」です。従業員の意識が低ければリスクは防げません。不審なメールを開かないフィッシング詐欺への注意喚起や、複雑なパスワード管理の徹底は基本です。

さらに、インシデント発生時に速やかに報告するルールを周知し、標的型攻撃メール訓練などを定期的に実施することが重要です。これにより、従業員一人ひとりが防御壁となるセキュリティ文化を醸成します。

安全な法務DXツールの選定ポイント

法務DXで利用するツールは、機能や価格だけでなく、セキュリティ面を厳しくチェックする必要があります。自社のポリシーに合致し、信頼できるサービスを選ぶことが安全なDXの第一歩です。ここでは特に重要な選定ポイントを紹介します。

ISO27001(ISMS)認証の有無

ISO27001は情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)の国際規格です。この認証を取得したサービスは、厳格な基準をクリアし、PDCAサイクルを通じて継続的にセキュリティを運用・改善する仕組みを持つことの客観的な証明となります。

サービス提供者のウェブサイトで認証の有無を確認することは、自社の重要な法務データを預けるに足る、信頼できる事業者かを見極めるための重要な指標です。

IPアドレス制限機能の実装

IPアドレス制限とは、サービスへのアクセスを許可するIPアドレスを自社オフィスなどに限定する機能です。これにより、許可されていない場所からの不正アクセスを物理的に遮断し、セキュリティを大幅に向上させます。

リモートワーク環境でも、VPNと組み合わせることで安全なアクセスを実現可能です。特に機密性の高い法務情報を扱う上で、アクセス元を制御するこの機能は基本的な防御策として極めて有効です。

多要素認証(MFA)への対応

多要素認証(MFA)とは、ログイン時に2つ以上の要素を組み合わせて本人確認を行う認証方法です。パスワード等の「知識情報」、スマートフォン等の「所持情報」、指紋等の「生体情報」のうち2つ以上を用います。

IDとパスワードだけの認証に比べ、万が一パスワードが漏洩しても不正ログインされるリスクを劇的に低減できるため、現代のセキュリティ対策において必須の機能と言えるでしょう。

監査ログの取得と保管期間

監査ログとは、誰が、いつ、どのファイルにアクセスし、どのような操作を行ったかの記録です。このログが適切に取得・保管されていれば、万が一インシデントが発生した際に、迅速な原因究明と影響範囲の特定が可能になります。

十分な期間ログが保管されるか、また不正の兆候を検知するために必要な情報を検索・抽出できるかどうかも重要な確認ポイントです。これは事後対応だけでなく、コンプライアンス遵守の証跡としても不可欠です。

法務DXを成功に導く導入ステップ

法務DXは、単にツールを導入すれば終わりではありません。自社の状況を把握し、計画的にステップを踏んで進めることが成功の鍵です。ここでは、失敗しないための具体的な導入ステップを紹介し、着実なDX推進をサポートします。

ステップ1.現状分析と課題の特定

まずは現在の法務業務プロセスを洗い出し、「どこに時間がかかっているか」「リスクは何か」「何が属人化しているか」等の課題を特定します。法務部員だけでなく事業部門にもヒアリングを行い、現場のリアルな声を集めることが重要です。

さらに業務フローを可視化し、客観的なデータで分析することが不可欠です。この現状把握の精度が、後のツール選定や目標設定の成否を直接左右する最も重要な土台となります。

ステップ2.目的とゴールの明確化

次に、特定した課題を解決するため、法務DXで「何を実現したいのか」という目的とゴールを明確に設定します。「契約書レビュー時間を50%削減する」のように、具体的な数値目標(KPI)を立てることが重要です。

これにより導入後の効果測定がしやすくなり、経営層や関連部門からの理解と協力を得やすくなります。目的は単なる効率化に留めず、事業貢献に繋げることが成功の鍵です。

ステップ3.スモールスタートでのツール導入

最初から全部門で大規模に導入するのではなく、特定のチームや業務に限定してツールを導入する「スモールスタート」がおすすめです。小さな範囲で試行することで、導入リスクを最小限に抑えつつ、運用上の課題を早期に発見し改善できます。

また、現場からのフィードバックを収集し、本格展開に向けた改善点や効果的な運用方法を確立できます。この成功体験が全社展開の推進力となります。

出典参照:DX実践手引書|独立行政法人情報処理推進機構(IPA)

ステップ4.法務部門とIT部門の連携体制構築

法務DXの推進には、ITやセキュリティの専門知識が不可欠です。法務部門だけで進めると、セキュリティリスクの見落としや既存システムとの連携失敗を招きかねません。必ずIT部門と連携し、企画段階から協力体制を築きましょう。

法務が業務要件を、ITが技術的な実現可能性やセキュリティ要件を担うことで、安全で効果的なDXが実現します。定期的な情報共有の場を設け、両部門が一体となって推進することが成功の絶対条件です。

法務DXのセキュリティ対策を万全にしよう

法務DXは、法務部門の生産性を向上させ、企業全体の競争力を高めるための重要な取り組みです。しかし、そのメリットを最大限に享受するためには、セキュリティ対策が不可欠です。セキュリティはDXを阻む壁ではなく、攻めの法務を実現するための土台です。IT部門と連携し、スモールスタートで着実に歩みを進めることが成功の鍵となります。

今回ご紹介したリスクや対策、ツールの選定ポイントを参考に、自社の状況に合わせた安全なDX推進計画を立ててみてください。守りを固めつつ、戦略的な法務への変革を実現しましょう。