総務DXの進め方5ステップ | 成功に導く重要なポイントや具体例

総務部門のDX推進を担当することになったものの、「何から手をつければいいのか」「どのツールを選べば成功するのか」とお悩みではありませんか。

総務DXは単にITツールを導入する活動ではなく、業務プロセスそのものを見直す変革活動のため、計画的な準備が不可欠です。

そこでこの記事では、以下の内容を解説していきます。

  • 総務DXを成功させる具体的な進め方
  • 総務DXを成功に導く3つの重要なポイント
  • 【業務領域別】総務DXで効率化できる具体例
  • 総務DXにおすすめのツール

この記事を読むことで、総務DXを進めるために欠かせない知識を身につけることができます。総務DXについて理解を深めたい、成功させたいとお考えの方は、ぜひ最後までご覧ください。

そもそも総務DXとは?

総務DXとは、AIやクラウドサービスなどのデジタル技術を活用し、総務部門の業務プロセスや組織、働き方そのものを根本から変革する取り組みのことです。これまでのやり方にとらわれず、新しい技術を使って仕事の進め方を見直すのが総務DXの本質といえます。

単に紙の書類を電子化するだけでなく、データをもとにした戦略的な意思決定をおこない、企業全体の成長に貢献する部門へと進化させることを目指します。

総務DXは単なるデジタル化ではない

総務DXは、業務をデジタルツールに置き換えるだけの「デジタル化」とは根本的に異なります。デジタル化が紙の申請書を電子フォームに変えるなど、既存の業務を効率化する「手段」であるのに対し、総務DXはデジタル技術を前提として業務フローそのものを見直し、組織や企業文化を変革していく「目的」です。

アナログ業務をデジタルに移行させるだけでなく、蓄積されたデータを分析・活用し、経営戦略に貢献する新たな価値を生み出すことが、総務DXの大きな特徴となります。

なぜ今総務DXの推進が急務なのか?

今、総務DXの推進が急務とされているのは、少子高齢化に労働人口の減少や、働き方の多様化といった社会全体の大きな変化に対応するためです。

少子高齢化が進む中、限られた人材で高い生産性を維持するには、旧来の非効率な業務を続けるわけにはいきません。また、リモートワークの普及や法改正への対応など、総務部門が担う役割はますます複雑化しています。

これらの課題を解決し、変化に強い組織を作るために、デジタル技術を活用した業務全体の変革が、企業の持続的な成長に不可欠となっているのです。

総務DXを導入するメリット

総務DXを導入する主なメリットは、以下の4点です。

  • 生産性の向上と業務効率化
  • コスト削減
  • ガバナンス強化とセキュリティ向上
  • 従業員満足度の向上

一つずつ解説していきます。

生産性の向上と業務効率化

総務DXは、日々の単純な繰り返し作業を自動化します。そのため、従業員はより創造的で大切な仕事に集中できるようになり、会社全体の生産性や効率が大きく向上するのです。

たとえば、これまで紙とハンコでおこなっていた申請・承認フローをワークフローシステムに置き換えるだけで、時間や場所を選ばずに業務を進められるようになります。備品管理や郵便物の仕分けといった単純作業も、専用ツールやAIを活用すると自動化が可能です。

総務DXを進めることで、総務担当者はより創造的で戦略的な仕事に集中できるようになります。

コスト削減

総務DXは、ペーパーレス化や業務自動化を通じて、企業のさまざまなコストを削減します。

紙の書類を電子化するだけでも、印刷代、郵送費、書類の保管スペースにかかる費用を大幅にカットできます。また、ワークフローシステムの導入は、申請や承認のために費やされていた従業員の移動時間や作業時間を削減し、人件費という見えにくいコストの削減にも貢献するのです。

ガバナンス強化とセキュリティ向上

総務DXの推進は、業務プロセスをデジタルデータとして記録・管理するため、企業のガバナンス強化とセキュリティ向上に大きく貢献します。

紙の書類による管理では難しかった閲覧権限の設定やアクセスログの監視が、システム上では容易におこなえます。これにより、情報漏洩のリスクを大幅に低減させることが可能です。

また、法改正に対応した書類のフォーマット更新などもシステム側で自動的におこなわれるため、コンプライアンス遵守の徹底と人的ミスの防止につながり、企業の信頼性を高めます。

従業員満足度の向上

総務DXは、面倒な申請手続きなどを簡素化し、従業員が本来の業務に集中できる環境を整えるため、従業員満足度(ES)の向上につながります。

スマートフォンからいつでも経費精算や休暇申請ができれば、従業員のストレスは大きく軽減されるでしょう。また、オフィス環境に関する要望や問い合わせも、チャットボットなどを活用すると迅速に対応が可能となります。

総務部門のサービスが向上すると、従業員は会社から大切にされていると感じ、仕事へのモチベーションやエンゲージメントが高まる効果が期待できます。

総務DXを成功させる具体的な進め方

企業にとってメリットの多い総務DXですが、導入を成功させるためには、以下のようなステップを踏んでいくことが大切です。

  • 現状業務の可視化と課題の洗い出し
  • 目的とゴール(KGI/KPI)を設定する
  • 課題解決に最適なツールを選定する
  • 特定業務からスモールスタートで導入・運用する
  • 効果測定と改善を繰り返す

一つずつ解説します。

ステップ1:現状業務の可視化と課題の洗い出し

総務DXの第一歩は、現在おこなっている業務をすべてリストアップし、「誰が」「何を」「どれくらいの時間で」おこなっているのかを客観的に可視化することです。

まずは、契約書の管理、備品の発注、経費精算といった日々の業務内容をすべて書き出してみましょう。そのうえで、「この作業は時間がかかりすぎている」「ここはミスが発生しやすい」といった問題点や非効率な部分を洗い出していきます。

現状把握が不十分だと、的外れなツールを導入してしまう原因となるため、最も重要なプロセスといえます。

ステップ2:目的とゴール(KGI/KPI)を設定する

現状の課題を洗い出したら、次に総務DXによって「何を達成したいのか」という明確な目的と具体的な数値目標(ゴール)を設定します。目的が曖昧だと、途中でプロジェクトの方向性がぶれてしまうからです。

たとえば、「ペーパーレス化によるコスト削減」を目的とするなら、「半年以内に紙の使用量を50%削減する」といった具体的な目標(KPI)を立てます。最終的なゴール(KGI)として「年間コストを300万円削減する」と設定すると、関係者の意識が統一され、施策の評価もしやすくなるでしょう。

ステップ3:課題解決に最適なツールを選定する

目的とゴールが明確になったら、洗い出した課題を解決できる最適なITツールを選定します。

世の中には多種多様なツールが存在するため、「多機能だから良い」と安易に決めるのは禁物です。大切なのは、自分たちの目的達成に本当に必要な機能が備わっているか、そして従業員が直感的に使えるかという視点です。

無料トライアル期間などを活用し、複数のツールを実際に試してみることをおすすめします。また、将来的な業務拡大にも対応できる拡張性があるかどうかも、選定の重要なポイントになります。

ステップ4:特定業務からスモールスタートで導入・運用する

導入するツールが決まったら、いきなり全部門に展開するのではなく、まずは特定の業務や部署に限定して小さく始める「スモールスタート」が鉄則です。

たとえば、総務部門内だけで経費精算システムを試験的に導入してみるなど、万が一トラブルが発生しても影響範囲を最小限に抑えられる形でスタートします。この段階で操作性に関する現場の意見を吸い上げたり、想定外の問題点を洗い出したりしておくのです。

スモールスタートによって得られた成功体験と改善点が、全社展開をスムーズに進めるための貴重なデータとなります。

ステップ5:効果測定と改善を繰り返す

ツールを導入したら終わりではなく、むしろそこからが本当のスタートです。導入後は、ステップ2で設定した目標(KPI)が達成できているかを定期的にチェックする「効果測定」が欠かせません。

たとえば、「ツールの導入で本当に残業時間は減ったのか」「従業員からの問い合わせ件数はどう変化したか」などを具体的なデータをもとに検証します。思うような効果が出ていなければ、その原因を探り、ツールの設定を見直したり、運用ルールを改善したりするPDCAサイクルを回し続けることが、総務DXを成功に導きます。

総務DXを成功に導く3つの重要なポイント

総務DXを成功させるためには、以下3つのポイントを押さえておきましょう。

  • 経営層や関連部署を巻き込む
  • 最初から完璧を目指さない(スモールスタートの徹底)
  • 導入して終わりではなく定着までサポートする

一点ずつ解説します。

経営層や関連部署を巻き込む

総務DXの推進には、経営層や他部署の積極的な協力が不可欠です。新しいツールの導入や業務フローの変更には、予算の承認や関連部署との調整が必ず発生するためです。

まずは、総務DXが単なる業務効率化ではなく、コスト削減や生産性向上を通じて、いかに企業経営に貢献するのかを経営層にしっかりと説明し、プロジェクトの強力な後押しを得ましょう。経理部や情報システム部など、関連する部署とは早い段階から連携し、目的やゴールを共有しておくと、全社的な協力体制が築きやすくなります。

最初から完璧を目指さない(スモールスタートの徹底)

総務DXを成功させる秘訣は、最初から100点満点の完璧な状態を目指さないことです。むしろ、「まずは60点でもいいから始めてみよう」という姿勢が大切になります。

先の先まで計画を立てすぎると、予算も時間もかかり、失敗したときのリスクが伴います。まずは、課題が明確で成果が出やすい一部の業務に絞ってツールを導入する「スモールスタート」を徹底しましょう。

小さな成功体験を積み重ねると、従業員のDXへの抵抗感を和らげ、次のステップへのモチベーションにもつながります。

導入して終わりではなく定着までサポートする

新しいツールを導入しても、従業員が使いこなせなければ意味がありません。そのため、総務DXではツールを導入して終わりではなく、従業員が当たり前に活用できるようになるまでの「定着サポート」が極めて重要です。

ツールの導入直後は、操作方法に関する説明会を開いたり、いつでも質問できる窓口を設けたりと、手厚いサポート体制を築きましょう。また、「導入したけど使い方がわからない」という従業員の声に耳を傾け、マニュアルを改善するなど、継続的なフォローアップをおこなう姿勢が定着を促進します。

【業務領域別】総務DXで効率化できる具体例

総務DXを導入することで、日常的におこなっている以下のような業務を効率化できます。

  • 契約書管理・押印申請
  • 備品・固定資産管理
  • 郵便物・社内便管理
  • 経費精算・勤怠管理

それぞれどのようにして効率化されるのか、見ていきましょう。

契約書管理・押印申請のDX

契約書管理や押印申請は、電子契約システムやワークフローシステムを導入することで、ペーパーレス化と業務スピードの向上を実現します。

従来の紙の契約書の場合、印刷、製本、押印、郵送、そしてファイリングと、多くの手間と時間がかかっていました。電子契約システムを導入すれば、これらの作業がすべてオンライン上で完結するため、契約締結までの時間を大幅に短縮できます。

また、過去の契約書を探す際も、データで管理されていれば、検索機能によって一瞬で見つけ出すことが可能になります。

備品・固定資産管理のDX

管理システムやチャットボットの導入により、備品や固定資産管理で重要になる在庫管理の自動化と、問い合わせ対応の効率化を可能にします。

これまで表計算ソフトなどで手作業でおこなっていた在庫管理は、システムを導入すると、備品の使用状況がリアルタイムで把握でき、在庫が少なくなると自動で発注アラートを出す設定も可能です。従業員からの「マウスの在庫はありますか?」といった定型的な問い合わせも、チャットボットが24時間365日対応してくれるため、総務担当者の業務負担を大きく減らします。

郵便物・社内便管理のDX

郵便物や社内便管理をDXすることで、担当者の仕分け作業を効率化します。クラウド型の郵便物管理サービスなどの活用によって、リモートワーク中でもスムーズな受け渡しを実現するのです。

オフィスに届いた郵便物を担当者がスキャンし、システム上にアップロードすると、従業員はどこにいても自分の郵便物を確認できます。これにより、郵便物を確認するためだけに出社する必要がなくなります。また、誰宛の荷物かをAIが自動で判別し、チャットツールで本人に通知するサービスもあり、仕分けの手間を削減するのです。

経費精算・勤怠管理のDX

経費精算や勤怠管理のDXは、専用のクラウドシステムを導入すると、申請・承認作業の簡略化とヒューマンエラーの防止に絶大な効果を発揮します。

スマートフォンアプリを使える経費精算システムなら、従業員は外出先で受け取った領収書を写真に撮るだけで申請が完了します。勤怠管理システムも、ICカードやGPSと連携させると、出退勤時刻が自動で記録されるため、打刻漏れや入力ミスを防ぐことが可能です。

経費精算や勤怠管理のデータは、給与計算ソフトと連携でき、経理部門の業務効率化にもつながります。

総務DXにおすすめのツール

総務DXを推進するためには、以下のような種類のツール導入がおすすめです。

  • ワークフローシステム
  • ビジネスチャット
  • オンライン会議システム
  • 経費精算システム
  • 勤怠管理システム

それぞれどのようなツールかを解説します。

ワークフローシステム

ワークフローシステムは、稟議書や各種申請書など、社内の申請・承認プロセスを電子化するためのツールです。

ワークフローシステムを導入すると、これまで紙とハンコでおこなっていた一連の流れがすべてオンライン上で完結します。申請者はスマートフォンやPCからいつでも申請でき、承認者も場所を選ばずに承認作業をおこなえるため、業務の停滞を防ぎ、意思決定のスピードを向上させます。誰の承認で止まっているのかが一目でわかるため、プロセスの透明化にもつながるでしょう。

ビジネスチャット

ビジネスチャットは、社内のコミュニケーションを円滑にし、情報共有のスピードを上げるためのツールです。メールよりも気軽でスピーディーなやり取りが可能なため、部署内の連携はもちろん、部署を横断したプロジェクトなどでも活躍します。

総務部門でビジネスチャットを活用することで、従業員からの簡単な問い合わせに素早く回答したり、社内全体へのお知らせを一斉に通知したりする際に非常に便利です。また、話題ごとにグループを作成できるため、あとから情報を振り返りやすいのも大きなメリットといえます。

オンライン会議システム

オンライン会議システムは、遠隔地にいるメンバー同士が映像と音声でコミュニケーションを取るためのツールです。

オンライン会議システムを活用すると、社内外の会議のために移動する必要がなくなり、時間と交通費の大幅な節約につながります。支社や拠点が多い企業にとっては、全社の情報共有を円滑に進めるうえで欠かせないツールといえるでしょう。

また、画面共有機能を使えば、資料を一緒に見ながら打ち合わせができるため、対面と変わらない質の高いコミュニケーションが可能です。

経費精算システム

経費精算システムは、交通費や出張費などの経費申請から承認、そして精算までの一連の流れを効率化するツールです。

多くの経費精算システムでは、スマートフォンのカメラで領収書を撮影すると、AI-OCR機能が日付や金額を自動で読み取り、データ化してくれます。これにより、従業員の面倒な入力作業が大幅に削減されます。

また、交通系ICカードの利用履歴を取り込んで、交通費を自動で計算する機能もあります。経理部門にとっても、承認後のデータが会計ソフトと連携できるため、仕訳作業の手間が省けるのです。

勤怠管理システム

勤怠管理システムは、従業員の出退勤時刻や労働時間を正確に記録・管理するためのツールです。

ICカード、PCのログイン・ログオフ履歴、GPS情報など、さまざまな方法で打刻ができるため、オフィス勤務からリモートワークまで多様な働き方に対応します。また、残業時間や休暇の取得状況が自動で集計され、リアルタイムで可視化されるため、従業員の働きすぎを防止し、適切な労務管理をおこなううえで不可欠です。

法改正にも自動でアップデート対応するため、コンプライアンスの強化にもつながります。

【まとめ】総務DXの第一歩は「課題の洗い出し」から

この記事では、総務DXの進め方を中心に、総務DXを促進させるためのポイントを解説しました。総務DXを進める際は、まずは現状の可視化から始め、目的を設定し、スモールスタートで導入後に効果測定を繰り返すという一連の流れが非常に大切です。

また、「最初から完璧を目指さないこと」、そして「経営層や関連部署を巻き込み、全社的な協力体制を築くこと」が、総務DXを成功させる鍵となります。

総務DXは、日々のルーティンワークを効率化するだけでなく、総務部門が「単なるコスト部門」から「企業の生産性を向上させる戦略的部門」へと進化するための大きなチャンスでもあります。この記事を参考に、まずは自社の課題の洗い出しという小さな一歩から、未来への変革を始めてみてはいかがでしょうか。