バックオフィスDXにセキュリティは必要?基本の対策やステップを解説
バックオフィス
労務DXの推進は、業務効率化と生産性向上に大きな影響を与えますが、セキュリティリスクへの対応が欠かせません。とくに、人事データやマイナンバーといった機密性の高い情報を扱うなかで、情報漏洩や法的罰則に直面するリスクが増しています。
本記事では、労務DXの導入時に重要なセキュリティ対策のポイントを解説し、企業がどのように安全にデジタル化を進められるかを紹介します。これからの労務DX推進において、セキュリティ強化とコンプライアンスを徹底し、事業継続計画(BCP)の向上にも貢献できる方法を学びましょう。

労務DXとは、テクノロジーを活用して労務管理業務を効率化し、従業員体験の向上と経営基盤の強化を目指す取り組みです。以下について紹介していきます。
それぞれ解説します。
労務DXは、単にデジタルツールを導入するのではなく、従来の業務プロセスを根本から見直し、生産性を高める経営戦略の一環です。労務DXツールを導入するだけでは、既存の非効率な業務をそのままデジタルに置き換えるだけで、本質的な課題解決にはつながりません。
具体的には、勤怠の承認フローの簡素化や、給与計算の自動化によって手作業によるミスの削減など、業務そのもののあり方を見直す姿勢が求められます。労務DXの本質は、テクノロジーを手段として業務改革を成し遂げることにあります。
人事DXが人材育成や組織開発など人事領域全体の変革を目指すのに対し、労務DXは労務管理に特化しており、HRテックはそれらを実現するための技術やツールの総称です。対象とする領域と役割が異なるため、それぞれの言葉を正しく区別して理解する必要があります。
たとえば、人事評価システムの導入は人事DX、給与計算ソフトの導入は労務DXの範疇となり、それらのシステム自体がHRテックにあたります。3つの言葉は密接に関連しながらも、それぞれ異なる概念として定義されています。
労務DXによって効率化できる業務領域は、入退社手続き、勤怠管理、給与計算、年末調整など、紙や手作業が中心だった定型的な業務です。これらの業務は、多くの企業で時間と手間がかかる一方で、正確性が厳しく求められるのが特徴です。
労務DXツールを活用すると、各種申請のオンライン化やデータの自動集計、行政手続きの電子申請などが可能になります。労務DXによる効率化で、担当者はより創造的なコア業務に集中できるようになり、組織全体の生産性向上につながります。

労務DXは業務効率化に役立つ一方、企業の存続を脅かす多様なセキュリティリスクがあります。労務DXは、クラウドサービスを利用する場合が多いため、不正アクセスによる情報漏えいや、ランサムウェアなどのマルウェア感染のリスクは常に存在します。
従業員による意図的な、あるいは過失による内部不正や情報持ち出しも想定しなければなりません。労務DXを推進するうえでは、利便性の追求と同時に、リスクへの対策を講じるのが重要です。

労務DXにセキュリティ対策が重要な理由は、以下の4つです。
ひとつずつ解説します。
労務管理では、法律で厳重な管理が義務付けられているマイナンバーをはじめ、センシティブな個人情報を取り扱うため、高いレベルのセキュリティ対策が必要です。マイナンバーは社会保障や税の手続きに用いられる重要な情報であり、その管理不備は法律によって厳しく罰せられます。
従業員の病歴や健康診断の結果といった機微な情報も扱うため、プライバシー保護の観点からも細心の注意が必要です。労務DX推進で、個人情報を守るのは、企業の法的・社会的責務です。
情報漏えいが発生した場合、企業には個人情報保護法にもとづく厳しい法的罰則が科されるリスクがあります。同法に違反すると国から是正命令が出され、従わない場合は行為者だけでなく法人に対しても高額な罰金が科される場合もあります。
罰金や監督官庁による公表は、企業の財務状況に直接的な打撃を与えるだけでなく、企業の評判を大きく損なうことにもつながるため、法的罰則は経営における重大なリスクです。
情報漏えい事故は、顧客や取引先からの信頼を瞬時に失墜させ、長期的なダメージにつながるリスクがあります。一度「情報管理が甘い会社」というレッテルを貼られてしまうと、それまで築き上げてきたブランドイメージが傷つき、取引の停止や新規顧客の獲得機会の損失など、事業活動に深刻な影響をおよぼすリスクがあります。
企業の持続的な成長のためには社会的信用の維持が重要であり、その根幹を支えるのが情報セキュリティです。
個人情報の管理に対するセキュリティ不安は、従業員の会社への不信感を生み、DX推進そのものを阻害する内部的な要因です。「自分の大切な情報が適切に管理されていないのではないか」という疑念は、新しいツールの利用に対する心理的な抵抗感につながります。従業員の協力なくして、全社的なDXの成功はあり得ません。
経営層は徹底したセキュリティ体制を構築し、従業員に安心感を与え、DX推進への協力を促す必要があります。

労務DXで扱う重要データは、以下の4つです。
それぞれ解説します。
社会保障や税の手続きに不可欠なマイナンバーは、利用目的が厳しく制限され、厳格な安全管理措置が法律で定められている「特定個人情報」です。企業は、従業員やその扶養家族のマイナンバーを収集・保管する際、法律で定められた範囲外での利用や提供を固く禁じられています。
漏えいや紛失を防ぐために、物理的・技術的な安全管理措置を講じる義務もあります。マイナンバーの取り扱いは、労務管理において注意を払うべき事項です。
健康診断結果や病歴などの個人情報は、不当な差別や偏見につながるリスクがあるため、労務DXを推進する際は、慎重な取り扱いが必要です。これらの情報は従業員の健康管理や適切な人員配置のために利用されますが、その取り扱いを誤れば深刻な人権問題に発展しかねません。
個人情報保護法においても「要配慮個人情報」として定義され、本人の同意なく取得することは原則として禁止されています。労務DXを推進する際は、企業はこれらの情報の必要性を十分に検討し、厳格な管理体制のもとで運用しなければなりません。
氏名、住所、生年月日といった人事基本情報に加え、個人の生活に直結する給与や人事評価といった情報は、漏えいした場合に深刻なプライバシー侵害となる重要なデータです。これらの情報は従業員の経済状況やキャリアに直接影響を与えるため、社内においてもアクセスできる担当者を限定するといった、厳重な管理が求められます。
万が一外部に流出した場合、従業員に直接的な被害がおよぶだけでなく、企業の管理体制が問われるため、個人情報の保護は極めて重要です。
出退勤時刻や休暇取得状況などの勤怠データは、労働基準法をはじめとする法令遵守の証拠となる重要な情報です。時間外労働の上限規制や有給休暇の取得義務など、企業が遵守すべき法的要件は多岐にわたります。
勤怠データを正確に記録・管理するのは、これらの法令を遵守しているのを示すうえで重要です。また、勤怠データは、長時間労働の是正、従業員の健康管理や働きがい向上のための基礎データとしても活用されるため、その重要性はますます高まっています。

労務DXでセキュリティを強化するメリットは、以下の5つです。
ひとつずつ解説します。
明確なセキュリティルールを整備することで業務プロセスが標準化され、組織全体の生産性向上が期待できます。セキュリティを考慮したシステムやルールは、誰が担当しても同じ品質で業務を遂行できる基盤です。
業務プロセスの標準化により、担当者ごとの判断のばらつきや、俗人的な作業によるミスや手戻りを減少できます。結果、無駄な確認作業が削減され、従業員はほかの業務に集中できます。
セキュリティ体制の構築は、法令遵守(コンプライアンス)の徹底につながり、業務の属人化の解消に効果的です。労務管理には個人情報保護法や労働基準法など、遵守する多くの法律が関わります。セキュリティ対策は、これらの法律要件を満たすための具体的な手段です。
システムによってアクセス権限や操作ログを管理すると、担当者個人の知識や経験に依存しない、持続可能で公平な業務運用が実現でき、組織としてのガバナンスが強化できます。
会社が自分たちの個人情報を最高レベルで保護しているという安心感は、従業員の会社への信頼、すなわちエンゲージメントを高めるのにつながります。従業員は、自分の情報が安全に管理されていると実感すると、安心して業務に集中できます。
エンゲージメントの向上は、従業員の満足度や定着率の向上にもつながる重要な要因です。労務DXにおけるセキュリティ投資は、従業員を大切にするといった企業の姿勢を示すメッセージにもなります。
徹底したセキュリティ基盤を持つ労務DXは、事業継続計画(BCP)の実効性を高めるうえで重要な役割です。クラウド型の労務DXツールは、災害やパンデミックなどでオフィスに出社できない状況でも、場所を問わずに給与支払いや社会保険手続きなどの重要業務を継続できます。
労務DX推進によるBCP強化で、サイバー攻撃によるシステムダウンのリスクを低減させるのも、事業継続において重要なポイントです。セキュリティ対策は、有事の際の事業の継続につながる欠かせない取り組みです。
厳格な情報管理体制は、企業の社会的責任(CSR)を果たす姿勢の証明となり、顧客や取引先からの信頼獲得に役立ちます。とくに、プライバシーマークやISMS認証などを取得している企業は、情報セキュリティに対する意識が高いと客観的に評価されます。
このような信頼は、新たなビジネスチャンスの創出や、有利な取引条件の獲得につながる場合があるため、強固なセキュリティで企業のブランドイメージを向上させ、企業価値そのものを高めるのに役立てましょう。

労務DXツール選定・導入時の注意点は、以下の4つです。
それぞれ解説します。
労務DXツール選定において、セキュリティ機能と第三者認証の確認は重要です。導入するツールに、データの暗号化、IPアドレス制限、二段階認証といった基本的なセキュリティ機能が備わっているかを確認しましょう。
それに加え、ISMS認証(ISO/IEC 27001)やプライバシーマークなど、第三者機関による客観的な評価を受けているかは、信頼性を判断するうえで重要な指標となります。
労務DXツールの定着には、全従業員がストレスなく使える直感的な操作性と、充実したサポート体制が重要です。とくに、ITツールに不慣れな従業員でもマニュアルなしで使えるような、分かりやすい画面設計(UI/UX)は重要な選定ポイントです。
労務DXツール導入後に発生する疑問やトラブルに対して、電話やチャットで迅速かつ的確に対応してくれるサポート体制があるかどうかも確認しましょう。無料トライアルを活用し、実際の使用感を試してみるのがおすすめです。
導入を成功させるコツは、「年末調整のペーパーレス化」といった、解決したい課題を具体的に設定し、スモールスタートを心掛けることです。最初から全部門・全業務で一斉に導入しようとすると、現場の混乱を招き、失敗するリスクが高まります。
まずは特定の部署や業務領域に限定して試験的に導入し、効果を検証しながら徐々に適用範囲を広げていく進め方が安心です。スモールスタートにより、課題を早期に発見し、改善しながら着実にDXを推進できます。
労務DXツール導入は非効率な既存業務を見直す絶好の機会であり、成功のためには従業員への周知徹底が大切です。新しいツールを導入する前に、現在の業務フローの問題点を洗い出し、ツール導入によってどのように改善されるのかを明確にしましょう。
一方的な導入は現場の反発を招き、ツールの利用が形骸化する原因となります。変更内容や新たなルール、導入のメリットについて、説明会などを通じて従業員へ丁寧に伝え、理解と協力を得るのが重要です。

セキュリティに強いおすすめの労務DXツールは、以下の4つです。
ひとつずつ解説します。
SmartHRは、豊富な導入実績と、誰にでも使いやすい優れたUI/UXに定評がある労務DXツールです。セキュリティ面では、通信やデータベースの暗号化、脆弱性診断の定期的な実施、ISMS認証の取得など、多層的な対策を講じています。
その使いやすさと信頼性の高さから、スタートアップから大企業まで、幅広い規模の企業に支持されています。労務管理の効率化を初めて進める企業にとって、有力な選択肢の1つです。
出典参照:SmartHR(スマートHR)|シェアNo.1のクラウド人事労務ソフト| 株式会社SmartHR / SmartHR, Inc.
freee人事労務は、金融機関にも採用されるレベルの高いセキュリティ基準を誇るツールです。開発プロセスから運用体制に至るまで厳格なセキュリティ管理を徹底しており、データの保護において高い信頼性を持っています。
同社が提供する会計ソフトとのシームレスな連携が特徴で、労務から会計までバックオフィス業務全体を効率化したい企業に適しており、徹底したセキュリティと業務連携の両方を重視する場合におすすめなツールです。
出典参照:クラウド会計ソフト | freee|フリー株式会社
ジョブカン労務HRは、労務管理だけでなく、勤怠管理や給与計算、経費精算など幅広い機能を網羅したシリーズ展開が特徴です。必要な機能だけを選んで導入できるため、コストパフォーマンスに優れています。
セキュリティに関しても、IPアドレス制限や二段階認証、ISMS認証の取得など、標準的な対策はしっかりと押さえています。幅広いバックオフィス業務を段階的にDX化していきたいと考える企業にとって、魅力的な選択肢です。
出典参照:労務管理システムで人事業務の効率化をかなえる|ジョブカン労務HR|株式会社DONUTS
オフィスステーション 労務は、社会保険や労働保険に関する行政手続きの電子申請機能が特に充実しているツールです。200種類以上の帳票に対応しており、e-GovとのAPI連携によって複雑な申請業務を効率化できます。
セキュリティ面でもデータの暗号化やISMS認証取得など、安心して利用できる体制を整えているため、行政手続きのペーパーレス化や効率化を最優先課題としている企業に最おすすめなツールです。
出典参照:オフィスステーション|シェアNo.1人事労務クラウドソフト| 株式会社エフアンドエム

労務DXにおけるBCP(事業継続計画)対策の進め方は、以下の4つです。
それぞれ解説します。
BCP策定の最初のステップは、事業継続に必要な労務業務を特定し、それらが停止する可能性のあるリスクを具体的に洗い出すことです。、「給与支払い」や「社会保険手続き」は、いかなる状況でも停止できない最重要業務です。
これらの業務を脅かすリスクとして、自然災害や大規模なシステム障害、サイバー攻撃、パンデミックなどを想定し、それぞれが業務に与える影響度を分析します。
洗い出したリスクに対して、クラウド型の労務DXツールを活用し、重要業務を継続できる具体的な代替手段や復旧手順を定めます。たとえば、「大地震で本社オフィスが機能停止した場合でも、従業員は自宅から給与計算システムにアクセスし、給与支払いを実行する」といった戦略を策定しましょう。
この際、データのバックアップ体制や、緊急時の連絡手段、代替要員の確保なども含めて検討するのが重要です。
策定した戦略は、緊急時に誰でも行動できるように、具体的な手順書としてマニュアル化する必要があります。「誰が」「いつ」「何を」「どのように」行うのかを明確に記載し、図やチェックリストなども活用して分かりやすくまとめましょう。
完成したマニュアルは全従業員に共有し、その内容と各自に期待される役割を周知徹底するのが重要です。マニュアルがどこに保管されているか、いつでも確認できるようにしておくのも大切です。
BCPは、一度作成したら終わりではなく、定期的な訓練と見直しによって実効性を維持していく必要があります。緊急時を想定した安否確認訓練や、代替システムへの切り替え訓練などを定期的に実施しましょう。
訓練で見つかった課題は速やかに計画へ反映し、事業環境の変化に合わせて常に見直しをおこなうと、BCPの実効性を維持できます。

労務DXの成功は、利便性の追求とセキュリティ対策が両輪であって初めて実現します。とくに、個人情報やマイナンバーといった機密データを扱う際には、セキュリティ強化を優先しなければなりません。
システム選定時には、セキュリティ機能や第三者認証を確認し、導入後も従業員への周知や業務フローの見直しを行うことが求められます。これらの取り組みを通じて、企業の信頼性を高め、労務DXを円滑に進めていきましょう。