バックオフィスDXにセキュリティは必要?基本の対策やステップを解説
バックオフィス
労務管理業務が複雑化するなかで、企業の競争力を維持するためには効率化が必要です。しかし、従来の方法では時間と手間がかかり、法改正にも迅速に対応しづらいのが現実です。労務DXは、デジタル技術を活用してこれらの課題を解決する手段として注目されています。
本記事では、労務DXの導入がもたらすメリットを具体的な事例を交えて紹介し、実践的なアプローチを解説します。労務DX推進ツールの自社に合った選び方まで紹介しているため、ぜひ最後までご覧ください。

労務DXとは、データ活用を通じて業務プロセスを変革し、経営戦略に貢献する取り組みです。
それぞれ解説します。
労務DXは、最新デジタル技術で労務管理や組織を変革し、企業の競争力を高める戦略的な取り組みです。背景にはテクノロジーの進化があり、可視化できなかった人事データを収集・分析できるようになりました。
具体的には、人事評価や勤怠管理システムのデータを活用し、従業員一人ひとりのパフォーマンスやエンゲージメントを高める施策を立案できます。労務DXは、データにもとづく科学的なアプローチで、従業員と企業の双方の成長を目指す活動です。
労務DXとIT化・デジタル化の違いは、データ活用による新たな価値創造を目指す点にあります。IT化は紙書類の電子化といったアナログからデジタルへの置き換え、デジタル化は特定業務の自動化を指します。
一方、労務DXは、デジタル化で蓄積された勤怠や評価のデータを分析し、戦略的な人材配置や育成計画をおこなう取り組みです。労務DXはIT化・デジタル化を手段として活用し、より高度な経営判断に役立つ包括的な概念です。

労務DXにおける課題は、以下のとおりです。
ひとつずつ解説します。
労務DXの推進には、専門知識を持つ人材の不足や組織内の抵抗といった課題があります。多くの場合、人事部門にデータ分析の専門家がおらず、現場の従業員は新しいシステムの導入による業務フローの変更を嫌う傾向があるためです。
結果として、経営層がDXの重要性を理解していても、現場レベルで協力が得られず計画が進まない場合があります。人材・組織に関する課題の克服が、労務DX推進の最初のステップです。
ツールの導入・運用コストや、自社に合ったツールを選定する難しさが、労務DXの課題となる場合があります。高機能なツールは導入費用だけでなく月々のランニングコストも高額になる傾向があるため、費用対効果が見えにくく、導入の意思決定が遅れやすいです。
また、市場には多種多様なツールが存在するため、自社の課題を解決できるツールを見極めるのが困難です。コストやツール選定は、労務DXを進めるうえでの大きなハードルといえます。
労務DXは、「何を解決したいか」といった目的が曖昧なままでは失敗に終わるリスクが高いです。ツール導入自体が目的化すると、現場の課題解決につながらず、結局使われないシステムになってしまいます。
「従業員のエンゲージメントを高める」といった目的がある場合、必要なサーベイ機能を持つツールを選ぶ、といった具体的な判断が可能です。労務DXで成果を出すためには、導入前の明確な戦略と目的設定が重要です。
労務DXでは従業員の個人情報という機密性の高いデータを扱うため、高度なセキュリティ対策が不可欠です。万が一、情報漏洩やサイバー攻撃の被害に遭えば、企業の社会的信用を損ないます。
アクセス権限の厳格な管理、データの暗号化、第三者機関によるセキュリティ認証(ISMS認証など)を取得したツールを選ぶと安心です。企業の重要な資産である人材情報を守るためにも、セキュリティ課題には万全の対策を講じましょう。

労務DXのデータ活用がもたらすメリットは、以下の5つです。
それぞれ解説します。
データ活用によって、客観的な根拠にもとづいた戦略的人事を実現できます。勤怠、評価、スキルといったデータを分析すると、個人のパフォーマンスや組織の状態を正確に把握可能です。
その結果、データに基づいた最適な人材配置や育成計画の立案ができます。労務DXによる、データドリブンなアプローチは、人事部門が経営に役立つために必要な取り組みです。
労務DXの推進は、従業員の生産性とエンゲージメントの向上につながります。煩雑な事務作業が自動化された場合、従業員はほかの業務に集中できるため、データにもとづく公正な評価は会社への信頼感を高めます。
たとえば、定型的な申請業務がシステム化されると、その時間を企画業務に充てられます。従業員が働きがいを感じられる環境整備は、組織全体の活力を高めるうえで効果的です。
勤怠データやサーベイ結果の分析を通じて、優秀な人材の離職を未然に防ぐことが可能です。データから離職の兆候を早期に検知し、上司による面談や配置転換といった適切なフォローアップをおこなえます。
実際、残業時間の急増やサーベイの回答内容の変化など、離職の予兆とされるデータパターンは存在します。データ活用は貴重な人材の流出を防ぎ、組織力を維持・強化するための有効な手段です。
データ活用は、長時間労働やハラスメントといった労務リスクを可視化し、未然に防止するのに役立ちます。勤怠システムや従業員サーベイのデータを分析すると、問題の兆候を客観的な数値として早期に発見できます。
特定の部署で残業時間が突出しているのがデータで分かる場合、業務量の調整や人員の補充といった具体的な対策を講じられるため、問題が深刻化する前に対処が可能です。労務DXの推進でデータを活用するのは、健全な職場環境を維持するうえで重要です。
データ分析の活用は、採用のミスマッチを減らし、自社に定着・活躍する人材の質を高めるのにつながります。自社で高いパフォーマンスを発揮する従業員の経歴やスキル、価値観などをデータで分析し、採用基準に反映できるため、面接官の主観に頼った採用から脱却し、客観的な基準で候補者を評価できます。
入社後の活躍が期待できる人材を獲得しやすくなるのが、労務DX推進でデータを活用するメリットです。

労務DXのデータ活用事例は、以下の4つです。
ひとつずつ解説します。
TDSE株式会社は、AIによる離職予測モデルを活用し、効果的な離職防止策を実現しています。このモデルは、過去の退職者の勤怠データや人事情報をAIに学習させ、離職の可能性が高い従業員を予測するものです。
予測結果にもとづき、人事担当者が適切なタイミングでフォローをおこない、離職率の低下に成功しています。労務DX推進でデータを活用し、人事担当者の経験に頼らない科学的なアプローチを可能にした事例です。
出典参照:企業・社員双方によりよい成果をもたらす人事DXとは?人事データ利活用事例やロードマップを解説! | TDSEマガジン | TDSE株式会社
伊藤組土建株式会社は、勤怠管理システムの導入によって長時間労働の是正に成功しました。勤怠データを全社で可視化・共有し、労働時間に対する従業員一人ひとりの意識を高めたのが成功の要因です。
具体的には、システム上でリアルタイムに労働時間を確認できるようにし、一定時間を超えるとアラートが出る仕組みを導入しました。この取り組みは、単なるシステム導入に留まらず、意識改革を促した点が重要なポイントです。
出典参照:働き方改革グッドプラクティス2021支援事例集|厚生労働省
株式会社SmartHRは、活躍人材のデータを分析して採用基準を最適化し、組織のパフォーマンス向上につなげています。同社は人事評価やサーベイ結果を、さまざまなデータを組み合わせて分析し、高い成果を出す従業員に共通する特性を特定しました。その特性を採用面接時の評価項目に加え、入社後のミスマッチを減らすのに成功しています。
データにもとづき採用基準を常にアップデートする姿勢が、強い組織作りには必要です。
出典参照:いかに“優秀人材”を育てるのか。ハイパフォーマー分析の実践と活用 – SmartHR Mag.|株式会社SmartHR / SmartHR, Inc.
オムロン株式会社は、エンゲージメントサーベイの結果を組織風土の改革につなげています。サーベイ結果を単に経営層が把握するだけでなく、各職場で上司と部下が対話する材料として活用しています。
データをもとに職場の課題について話し合い、具体的な改善アクションプランを立てて実行し、従業員の主体性を引き出しました。サーベイをきっかけに対話と改善のサイクルを生み出したことが、同社の成功の鍵です。
出典参照:従業員との対話 | サステナビリティ ||オムロン株式会社

労務DX推進ツールの種類は、以下の4つです。
それぞれ解説します。
勤怠管理システムは、従業員の労働時間を正確に記録・管理するツールです。PCやスマートフォンで簡単に出退勤を打刻でき、労働時間や残業時間が自動集計されるため、コンプライアンス遵守につながります。
収集されたデータは、長時間労働の是正や生産性分析の基礎情報にもなります。勤怠管理システムは労務DXにおけるデータ活用の入り口として、重要な役割を担うシステムです。
給与計算システムは、毎月の煩雑な給与計算業務を自動化するツールです。勤怠管理システムと連携させた場合、労働時間にもとづいた給与や残業代、各種手当、社会保険料などをミスなく自動で計算できます。
これにより、経理や人事担当者の業務負担が削減され、より戦略的な業務に時間を割けます。給与計算の効率化は、労務管理における生産性向上に必要な工程です。
労務手続きシステムは、入退社時の社会保険手続きや年末調整といった申請業務を電子化するツールです。紙書類でおこなっていた申請や役所への提出を、システム上で完結できます。従業員はスマートフォンで簡単に入力でき、人事担当者は書類の回収・チェック・保管の手間から解放されます。
労務手続きシステムによるペーパーレス化は、業務効率を向上させるのに効果的です。
タレントマネジメントシステムは、従業員のスキルや経歴、評価といった情報を一元管理し、戦略的な人材活用を支援するツールです。システムに蓄積されたデータを分析すると、個々の従業員の強みやキャリア志向を可視化できます。
その結果、データにもとづいて最適な人材配置や後継者育成計画を立案できます。タレントマネジメントシステムは、戦略人事を実現するための司令塔のような存在です。

労務DX推進ツールの自社に合った選び方は、以下の7つです。
ひとつずつ解説します。
労務DXツール選びで重要なのは、導入によって「何を達成したいのか」といった目的と課題を明確にすることです。目的がはっきりしている場合、複数のツールのなかから自社に必要な機能を備えたものを的確に選べます。
「長時間労働を是正したい」という課題がある場合、勤怠管理機能が充実したツールが候補になります。ツール選定は、目的設定から始めるのが労務DX推進を成功させるポイントです。
自社の目的達成のため、必要な機能が過不足なく揃っているかを確認するのが大切です。多機能なツールは魅力的ですが、使わない機能が多ければコストの無駄になります。逆に、必要な機能が足りなければ目的を達成できません。
自社の課題解決に必要な機能をリストアップし、それらが標準機能か、オプション追加が必要かなどを事前に確認しましょう。
労務DXツールは、一部の管理者だけでなく、全従業員がストレスなく使える分かりやすい操作性であるのが重要です。操作が複雑だと、利用がためらわれたり、問い合わせが多発して管理者の負担が増えたりと、定着が進まない原因になります。
無料トライアルを活用して複数の従業員に操作してもらい、マニュアルなしで直感的に使えるかを確認しましょう。
すでに利用している給与計算システムや会計システムなど、既存システムとスムーズに連携できるかは必ず確認すべきポイントです。システム間でデータが連携できないと、手作業でのデータ入力や転記が発生し、かえって業務が非効率になります。
API連携に対応しているか、CSVファイルで簡単に出力・取り込みができるかなど、具体的な連携方法を確認しておきましょう。
料金体系が分かりやすく、投資に見合う効果が得られるかを慎重に検討する必要があります。多くのツールは従業員数に応じた月額課金制ですが、初期費用やオプション料金などが別途発生する場合もあります。
労務DXツールの選定時は、トータルコストを算出し、費用対効果が高いと判断できるツールを選びましょう。
従業員の個人情報という重要なデータを預けるため、信頼できるセキュリティ対策が講じられたツールを選ぶのが大切です。通信の暗号化、IPアドレス制限、二段階認証といった機能の有無や、ISMSなどの第三者認証を取得しているかを確認しましょう。
企業の信頼を守るためにも、セキュリティレベルの高いツールを選定するのがおすすめです。
労務DXツール導入後のサポート体制の手厚さも、ツール選定における重要な比較ポイントです。導入時の初期設定やデータ移行でつまずくケースは多く、運用開始後も操作の疑問やトラブルは発生します。
電話やメール、チャットなど、どのようなサポート窓口があり、対応時間はどうなっているか、困った時に迅速に支援してくれる体制が整っているかを確認しましょう。

労務DXのデータ活用を始めるための実践ロードマップは、以下の6つです。
それぞれ解説します。
まずは、データ活用で達成したい目的とゴールを具体的な数値(KPI)で設定することです。「優秀な人材の離職率を来期までに5%低下させる」のように、誰が見ても達成度が分かる明確なゴールを設定しましょう。
定めたゴールが、今後のデータ分析や施策立案のすべての判断基準となります。
次に、プロジェクトを推進する全社的な体制を構築し、データを分析できる基盤を整備します。人事部門だけでなく、経営層や情報システム部門、各事業部門の責任者も巻き込み、プロジェクトの重要性を共有するのがポイントです。
また、勤怠や人事システムなど、社内に散在するデータを一元的に集約し、分析できる環境(データウェアハウスなど)を整えましょう。
データ基盤が整ったら、まずは収集したデータをグラフやダッシュボードで可視化し、組織の現状を客観的に把握します。部署別の残業時間や年代別の離職率などをグラフにすると、感覚的にしか捉えられていなかった課題が数値として明確になります。
データを可視化した現状把握が、次の課題の深掘りにつながる重要なプロセスです。
可視化されたデータから見えた傾向に対し、「なぜこの部署は残業時間が多いのか?」といった仮説を立て、検証するために分析を深掘りします。たとえば、「特定のスキルを持つ人材が不足しているのではないか」という仮説を立てると、スキルデータと勤怠データを掛け合わせて分析するといったアプローチが考えられます。
仮説検証を繰り返し、課題の根本的な原因を突き止めましょう。
データ分析から課題の原因が特定できたら、具体的な改善アクションを計画・実行します。分析だけで終わらせず、具体的な施策につなげるのがデータ活用の最終目的です。
分析の結果、上司とのコミュニケーション不足がエンゲージメント低下の原因だと分かれば、1on1ミーティングの定例化といったアクションの実行が可能です。
実行したアクションが、設定したゴール(KPI)にどのような効果をもたらしたかを必ず測定しましょう。結果を評価し、次の改善アクションに繋げるPDCAサイクルを継続的に回していくのが重要です。
効果がなければやり方を変え、効果があればさらに展開するなど、データにもとづいて常に改善を続ける姿勢が労務DX推進を成功させるポイントです。

労務DXにおけるデータ活用は、企業の持続的な成長を支える重要な経営基盤です。単なる業務効率化に留まらず、従業員のエンゲージメント向上や戦略的人事を実現する力を持っています。
データに基づいた客観的な意思決定は、従業員の納得感を高め、組織全体のパフォーマンスを向上させます。本記事を参考にデータ活用を始め、労務DXを成功させて企業の成長を加速させてください。