労務DXにERPを導入するメリットとは?選ぶ際のポイントまで解説
バックオフィス
バックオフィスDXは効率化の一方で情報漏洩や不正アクセスなどのリスクを伴います。本記事では経理・人事・総務の特徴からDX化の背景、具体的なセキュリティ対策や事例までを解説し、安全に推進するポイントを紹介します。
近年、多くの企業でDX(デジタルトランスフォーメーション)が進められています。その中でも注目されているのが、経理や人事、総務などを担うバックオフィス業務のデジタル化です。
バックオフィスのDXは業務効率を向上させる一方で、クラウドや外部サービスを利用する場面が増えるため、セキュリティリスクも高まります。特に個人情報や財務データといった重要情報を扱う部門だからこそ、適切なセキュリティ対策が不可欠です。そこで本記事では、バックオフィス業務の特徴を整理しながら、DX化に伴うセキュリティの基本的な考え方や必要なステップについてわかりやすく解説します。さらに、具体的な事例や実践的なポイントも交えて、実務に役立つ情報も紹介するので、参考にしてください。

バックオフィスとは、企業活動を支える裏方の業務です。経理や人事、総務などが中心で、直接的に売上に結びつかない一方で、組織運営に欠かせない役割を持っています。事業の基盤を安定させ、全体の生産性を間接的に高める役割も果たしています。
ここでは、バックオフィスの範囲と特徴について、詳しく見ていきましょう。
バックオフィスの代表的な業務には、経理、人事、総務があります。経理は仕訳や決算、資金管理を担い、人事は採用や給与計算、労務管理を担当します。総務は社内規程の整備や備品管理などを行い、社内全体の運営を下支えする存在です。
これらの業務は日々繰り返し発生するため、正確さと迅速さが求められるのが一般的です。さらに近年では、法改正への対応や従業員情報の厳格な管理も重要性を増しています。企業によっては専任部門を設置し、専門的なノウハウを活用しながら効率的に進める取り組みも増えてきました。こうした背景から、デジタル化による効率化と同時に、情報漏えいを防ぐセキュリティ対策が常に意識されるようになっています。
バックオフィス業務の多くは、ルーチン化された定型的な作業です。例えば、請求書処理や給与計算は毎月決まった時期に発生し、処理内容も大きく変わりません。そのため、自動化やシステム化との相性が良い領域と言えるでしょう。
反面、データ入力や確認作業が多いため、ミスや漏れが起こると重大な影響を及ぼすリスクもあります。紙やエクセルを中心とした従来の方法では属人化が避けられず、業務効率や正確性に課題が残ってしまうでしょう。さらに業務が煩雑化するにつれて、担当者の負担が増し、人的リスクも高まる傾向が見られます。DX化はこうした課題を解決する有効な手段ですが、同時にクラウド環境や外部サービス利用に伴う情報セキュリティリスクが高まりかねないという点には注意しましょう。
DX化は企業が競争力を維持するために欠かせない取り組みです。なかでもバックオフィス業務のDXが求められるのは以下のような理由からです。
それぞれの背景について詳しく見ていきましょう。なぜバックオフィスのDX化が求められるか背景を理解しておくことで、セキュリティ対策も講じやすくなるでしょう。
日本では少子高齢化の影響により、多くの企業が慢性的な人手不足に直面しています。実際、生産年齢人口(15~64歳)は1995年をピークに減少しており、2050年には5,275万人と2021年から29.2%も減ってしまうと予想されているほどです。
バックオフィスも例外ではなく、限られた人員で膨大な業務を処理しなければなりません。従来の手作業や紙ベースの運用では効率に限界があり、人的ミスや処理遅延のリスクが残ります。そのため、DXを進めて自動化やシステム連携を取り入れることが欠かせません。
業務を効率化することで担当者の負担を軽減し、戦略的な業務に時間を割けるようになります。
新型コロナウイルスの影響を契機に、リモートワークが広がりました。これにより、従来の紙やオンプレミス環境に依存する運用から、クラウドサービスを活用した柔軟な働き方へと移行が進んでいます。
クラウドはインターネット環境さえあればどこからでもアクセスできる利便性がある一方、不正アクセスやデータ漏えいといったリスクも抱えかねません。そのため、セキュリティ対策を講じないまま導入すると大きなリスクとなります。
安全性を確保するには、アクセス権限の設定、多要素認証、通信の暗号化といった基本的な対策が不可欠です。利便性と安全性を両立させることが、バックオフィスDXにおいて重要なテーマとなっています。
バックオフィスのDXは業務効率を高める一方で、新たなセキュリティリスクを招く可能性があります。具体的に挙げられるのが、以下のようなセキュリティリスクです。
具体的なセキュリティリスクを把握しておくことで、万が一のトラブル発生を抑制しやすくなるでしょう。
バックオフィスDXの代表的な取り組みとして、クラウドサービスの活用があります。クラウドは利便性が高く、場所を問わず業務を行える点が魅力です。ただし、外部サーバーにデータを預けることになるため、情報漏洩のリスクは従来より高まります。
アクセス制御が不十分であったり、通信が暗号化されていなかったりすると、第三者にデータが流出する可能性が否定できません。特に、個人情報や給与データなどの機密情報が流出すれば、企業の信頼低下や法的リスクにつながります。そのため、クラウド利用においては利便性と同時に安全性を確保する視点が求められています。今後はクラウドベンダーの選定基準にも、より厳格なセキュリティ確認が求められるでしょう。
バックオフィス業務では、多くの従業員が同じシステムにアクセスすることがあります。権限管理が曖昧なまま運用すると、必要のない情報にまでアクセスできてしまう状況が生まれかねません。その結果、内部関係者による不正利用や情報の持ち出しが発生するリスクが高まります。実際、情報漏洩事件の中には内部関与が原因とされるケースも少なくありません。
例えば、退職予定者が顧客情報を不正にコピーするような事態です。こうした問題を防ぐためには、役職や担当業務に応じて権限を細かく設定するのがポイントです。さらに、定期的に権限を見直すことで不要なアクセスを防ぎ、リスクを軽減できます。あわせて監査ログを活用すれば、不正行為の早期発見にもつながります。
DX化によってデータの一元管理が進むと、利便性と同時に不正アクセスや改ざんのリスクが高まってしまうでしょう。特に財務データや従業員情報は外部攻撃の標的となりやすく、一度改ざんされると経営判断に大きな影響を与えます。不正アクセスは外部攻撃者だけでなく、内部関係者によっても行われる可能性があります。ログイン情報の流出や脆弱なパスワードが原因となるケースも珍しくありません。
このような事態を防ぐには、アクセス経路を常に監視し、異常な挙動を検知する仕組みが必要です。さらに、改ざんが疑われる場合には迅速に追跡・修正できる体制を整えることが求められています。あわせて、バックアップからの復旧体制を整備することも大切です。
リスクを軽減するためには、技術的な対策と組織的な取り組みを両立させる必要があります。具体的には以下のような対策を講じましょう。
基本的なセキュリティ対策を段階的に導入することが、安全性向上の第一歩です。
従来のセキュリティは「社内ネットワークは安全」という前提で境界防御を行う方法が中心でした。しかしクラウド利用やリモートワークの普及により、この考え方では不十分になっています。業務環境が多様化した現代では、境界だけで守る体制は現実的ではなくなっています。
ゼロトラストモデルでは、すべてのアクセスを「信頼しない」ことを前提に検証する取り組みです。ユーザーや端末がどこからアクセスする場合でも、本人確認や端末の健全性を都度確認し、必要最小限の権限だけを付与します。これにより、不正アクセスや情報の持ち出しを未然に防ぐ効果が期待できます。ゼロトラストは一度に導入するのは難しいため、段階的に仕組みを整えるのが現実的です。社内文化や運用ルールの整備も並行して行うと導入がスムーズになるでしょう。
バックオフィスDXでは複数のクラウドサービスを利用するケースが増えています。ログイン情報が分散するとパスワード管理が煩雑になり、流出リスクも高まります。この課題を解決する方法として、多要素認証(MFA)とシングルサインオン(SSO)の導入が有効です。
MFAはIDとパスワードに加え、ワンタイムコードや生体認証を組み合わせることで、不正ログインの可能性を低減します。SSOを導入すれば、複数サービスをひとつの認証で利用できるため、ユーザーの負担が軽減され、セキュリティと利便性の両立につながるでしょう。こうした仕組みを早期に導入することで、安全なDX推進が可能になります。
ログの記録と監視は、不正行為の早期発見に欠かせない対策です。誰が、いつ、どのデータにアクセスしたかを記録すれば、異常な行動を検出しやすくなります。万が一、不正が発生した場合も、ログを基に原因を追跡し、再発防止策を講じられるでしょう。さらに、監視ツールを導入すれば、リアルタイムで異常を検知できる可能性が高まります。定期的に分析を行うことで、潜在的な脅威を可視化する効果も期待できるでしょう。
バックオフィスDXにおいては、クラウドサービスや社内システムの双方でログを一元管理するのが望ましいとされています。監査対応や法規制の観点からも、ログの活用は今後ますます求められるでしょう。継続的な改善に役立てる仕組みとしても重要性が増しています。
技術的な対策だけでは万全なセキュリティが期待できない恐れがあります。従業員の意識向上やルール整備も同じくらい大切です。例えば、パスワードを使い回さない、怪しいメールを開かないといった基本行動を徹底するだけでも、多くのリスクを避けられます。特にバックオフィス業務は扱うデータ量が多く、些細なミスが大きな被害につながりやすい特徴があります。
そのためには、定期的なセキュリティ研修やシミュレーション訓練を実施し、実践的な知識を身につけることが効果的です。また、社内ポリシーを明文化し、従業員が迷わず対応できる環境を整えることも心がけましょう。教育とポリシーを両立させることで、人為的ミスを最小限に抑えられます。さらに、トップ層が積極的に関与することで、全社的な取り組みとして定着しやすくなるでしょう。
バックオフィス業務をDX化する際には、利便性だけでなくセキュリティ機能の充実が不可欠です。バックオフィスDXにあたってツールを導入する際は、以下のようなセキュリティ機能を確認しておきましょう。
確認すべき機能をそれぞれ詳しく解説します。
バックオフィスDXツールは、リモートワークや出張先から利用されるケースが増えています。そのため、社外からのアクセスを前提とした安全な仕組みが欠かせません。
まず求められるのがアクセス制御です。利用者ごとに権限を明確に設定し、業務に必要な範囲だけ利用できるようにすれば、情報の不正利用を防ぎやすくなります。加えて、多要素認証を組み合わせることで、万が一パスワードが流出しても不正ログインを阻止することができます。
例えば、IDとパスワードに加え、ワンタイムパスワードやスマートフォンでの確認を導入する方法です。利便性を損なわずに安全性を高めるには、こうした多層的な仕組みが有効といえるでしょう。加えて、定期的にアクセス履歴を確認し、異常な接続がないかをチェックする習慣も有効です。
バックオフィスでは、従業員の個人情報や財務データなど、重要な情報を日常的に扱います。そのため、データ暗号化は必須といえます。保存時や通信時に暗号化を行えば、外部からデータが盗み取られても内容を解読されるリスクを減らせるでしょう。
また、万が一の障害やサイバー攻撃に備えて、バックアップ機能も欠かせません。クラウド上に定期的なバックアップを行うことで、システム障害やデータ破損時にも迅速に復旧でき、業務の中断を最小限に抑えられます。暗号化とバックアップは一見別の機能のようですが、どちらも安心して業務を継続するための基盤を支える存在といえるでしょう。さらに、複数拠点にバックアップを保存すれば災害リスクにも強くなります。
加えて、自動化ツールを組み合わせれば、運用負担を減らしつつ精度を高められます。将来的にはAIによる異常検知と連携させる仕組みも期待できるでしょう。
DX化では、勤怠管理や経理システム、電子契約など複数のサービスを連携させて効率化する場面が増えています。その際にポイントとなるのがAPIの安全性です。APIはシステム同士をつなぐ窓口であるため、セキュリティが甘いと不正アクセスやデータ漏洩の原因になりかねません。
安全性を確保するには、認証や通信の暗号化を徹底することに加え、利用権限の管理も必要です。また、不審なリクエストを検知する仕組みを導入すれば、攻撃を未然に防ぐ可能性が高まります。便利な連携機能を安心して利用するためには、APIの安全性を定期的にチェックし、常に最新のセキュリティ水準を維持する姿勢が求められています。さらに、開発段階からセキュリティレビューの実施も有効です。
加えて、外部監査を活用すれば、客観的な評価と改善の機会が得られます。

バックオフィスDXを進める際は、導入前後で段階的にセキュリティ対策を強化することが有効です。診断、設計、運用改善という流れが基本的なステップとなります。特に、運用改善をせずにいると、せっかくセキュリティに配慮したバックオフィスDXであっても形骸化しかねません。
ここではバックオフィスDX推進におけるセキュリティ強化のステップを詳しく見ていきましょう。
セキュリティを強化する最初のステップは、現状把握です。自社が保有するデータやシステム資産を棚卸しし、どの部分に脆弱性があるかを明確にします。例えば、古いOSを使っている端末や更新されていないソフトウェアは、攻撃者に狙われやすいポイントです。
また、従業員が私用の端末から業務データにアクセスしている場合もリスクが高まります。こうした課題を洗い出すことで、どの領域から優先的に対策を行うべきかが見えてくるでしょう。
診断の際は、外部の専門家に依頼する方法も有効で、第三者視点からの評価がより実態に即した改善につながります。さらに、脆弱性診断ツールを併用することで、網羅的なチェックが可能となり、漏れを防げます。
バックオフィスDXツールを導入する際には、便利さだけでなく安全性を意識した設計が必要です。例えば、利用開始直後は問題がなくても、運用が長期化する中で設定ミスや管理不足が生じることがあります。そのため、最初からセキュリティを前提とした設計を行うことが望ましいとされています。
アクセス権限の範囲を最小限にする、監査ログを自動で記録する、バックアップを組み込むといった工夫は、導入後のトラブルに備える有効な手段です。また、システム変更や新しいサービスとの連携時にもセキュリティ観点での再検討を行うことで、継続的な安全性を保ちやすくなります。加えて、定期的なセキュリティレビューを実施すれば、設計の妥当性を長期的に維持できるでしょう。
セキュリティ対策は導入して終わりではなく、運用を続ける中で徐々に形骸化してしまう恐れがあります。従業員がルールを守っていても、実態に合わないマニュアルのままでは効果が発揮されません。そのため、定期的にマニュアルを見直しましょう。
例えば、クラウドサービスの仕様変更や法改正に伴い、手順を更新する必要が出てきます。年に一度の棚卸しや監査を通じてルールを最新化すれば、形だけの運用を避けられます。さらに、見直しの際には従業員からのフィードバックを取り入れることで、現場で実践しやすい内容に改善できるでしょう。継続的な更新が、バックオフィスDXの安全な運用を支えることにつながります。
バックオフィスDXは業務効率を高める一方で、セキュリティリスクも拡大させます。安全に活用するには、権限管理やインシデント対応体制などを事前に整え、リスクを最小化する視点を意識しましょう。
ここではバックオフィスDXにおけるセキュリティのポイントを詳しく解説します。
バックオフィスのDXでは、経理、人事、総務など複数部門が同じシステムの利用が一般的です。部門ごとに必要な情報は異なるため、権限を細かく設定すれば不要なデータへのアクセスを防げます。
例えば、経理部門は財務情報を扱う一方、人事部門は従業員データを中心に利用します。権限設定を適切に行えば、情報漏洩のリスクを減らし、内部不正も抑止できるでしょう。加えて、異動や退職に合わせて定期的に権限を見直すことも欠かせません。実際の運用に即した柔軟な管理を行うことで、利便性を損なわずに安全性の確保が可能となります。さらに、アクセス状況を定期的に監査することで改善点を早期に把握可能です。
どれほどセキュリティ対策を講じても、完全なリスクの排除は難しいといわれています。そのため、万が一のインシデントに備えた対応体制を整えておくことが大切です。
例えば、情報漏洩が発生した際の報告フローや、システム停止時の代替手段を明文化しておけば、被害の拡大を抑えやすくなります。さらに、定期的に訓練を行い、担当者が迅速に行動できる状態の維持が望ましいです。
実際のトラブルは想定外の状況で起きやすいため、複数のシナリオを準備しておくことが有効です。計画と訓練を繰り返すことで、DXを推進しながらも安心して運用できる体制を築けます。加えて、外部機関との連携を想定した対応計画を準備することも有効です。
実際にDXを進めた組織では、さまざまなセキュリティ対策が導入されています。以下では、公的機関と企業の2つの事例を見ていきましょう。
実際の取り組みを把握しておくことで、自社が取り組む際にスムーズに進められるでしょう。さらに、他社の工夫を参考にすることで、自社独自の改善策を検討しやすくなります。
埼玉県では庁外からのクラウドサービス利用を安全に行うために、多要素認証を導入しました。従来のIDとパスワードによる認証だけでは不正ログインのリスクが残るため、ワンタイムパスワードなどを組み合わせる仕組みの導入を決定しました。
これにより、職員が外部環境からアクセスする場合でも高い安全性が確保され、利便性とセキュリティを両立した運用が実現されています。
出典:県の目指すDX推進計画の実現に向けて「Box」「Okta」を導入、ペーパーレス・テレワークを促進|埼玉県
建設大手の株式会社大林組では、DX推進に伴い外部の専門機関によるセキュリティ評価を行いました。システム導入時に自社だけで判断するのではなく、第三者がリスクを診断することで見落としを減らし、対策の精度を高めています。
この取り組みにより、潜在的なリスクを早期に把握し、必要な改善を速やかに行う体制を整備しました。結果として、業務効率化と安全性を両立させる基盤が強化されています。さらに、継続的な改善活動につなげる効果も期待されています。

バックオフィスDXを進めるうえで、セキュリティ対策は避けて通れない要素です。権限管理や対応体制の整備といった基本的な施策に加え、実際の事例に学ぶことで現場で活かせる工夫を取り入れやすくなります。
DXの本来の目的は効率化と利便性の向上ですが、安心して使える環境がなければ持続的な推進は難しいでしょう。日常的な管理と改善を重ねながら、安全性を確保したDXを目指すことが大切です。さらに、全社的な意識改革を進めることで、取り組みの効果は一層高まっていきます。
バックオフィスDXに潜むセキュリティリスクと対策を把握して、自社の変革につなげましょう。