金融DXで顧客対応はどう変わる?課題・メリット・事例を解説

金融機関は有人チャネルをいかに残すか、顧客ニーズの汲み取り不足などの顧客対応の課題を抱えています。スムーズな顧客対応を実現するなら金融DXの促進が有効です。金融DXに取り組めば業務効率や顧客満足度の向上、情報分散の防止が期待できます。

金融機関が提供する顧客対応の質は、そのまま顧客満足度やサービスの競争力に影響するため、質を向上させたいと考えている企業も多いでしょう。

しかし、デジタル化の進展により、顧客の多様化したニーズに対応するためにはいくつかの課題の把握が必要です。

例えば、有人チャネルの維持、デジタルと店舗間の顧客情報の引き継ぎ、そして顧客ニーズの的確な把握が欠かせません。

これらの課題を解決することで、金融機関は顧客により高品質なサービスを提供し、競争優位性を保つことが可能となります。

この記事では金融機関が抱える顧客対応の課題や金融DXがもたらすメリットなどを解説します。

金融機関が抱える顧客対応の課題

金融機関の顧客対応は、サービス品質や顧客満足度に直結する重要な要素です。

しかし、デジタル化の進展により、顧客のニーズや期待に対応するには、以下のような課題を解決しなければなりません。

  • 有人チャネルをいかに残すか
  • 店舗とデジタル間の顧客情報の引き継ぎの不備
  • 顧客ニーズの汲み取り不足

これらの課題を解決し、顧客に満足を提供することが、金融機関の競争力を維持するためには不可欠です。

有人チャネルをいかに残す

デジタル化が進む中で、金融機関はコスト削減を目的に有人チャネルを減らす傾向にあります。

しかし、依然として対面でのサービスを必要とする顧客層も存在します。

特に高齢者やITリテラシーが低い顧客にとっては、対面での相談やサポートが必要です。

そのため、デジタルサービスの普及に合わせて、有人チャネルをどのように維持し、効率的に活用していくかが課題となります。

例えば、デジタル技術と組み合わせて、対面とオンラインサービスを補完し合うハイブリッド型のサービスを提供することが求められます。

有人チャネルの必要性は特定の顧客層のためだけではありません。

デジタルサービスを駆使しても解消できない問い合わせもあるため、必要に応じて有人チャネルでの対応が求められます。

店舗とデジタル間における顧客情報の引き継ぎ不備

金融機関における情報共有の不備も、顧客対応における課題です。

特に、店舗で得た顧客情報がデジタルシステムに反映されず、顧客がオンラインでサービスを利用する際に手間がかかるケースがあります。

例えば、店舗での口座開設や相談内容がオンラインシステムに同期されない場合、顧客は再度同じ情報を入力する必要があります。

このような情報の引き継ぎの不備は、顧客に不便を強いるだけでなく、顧客満足度の低下にもつながりかねません。

情報システムの統合と、リアルタイムでの情報更新が不可欠です。

顧客ニーズの汲み取り不足

顧客のニーズを的確に把握し、迅速に対応することは、顧客対応において重要な要素です。

従来の方法では、顧客の真のニーズを十分に汲み取ることができない傾向にあります。

特に、アンケートやフィードバックを収集する方法が限られており、顧客が何を求めているのか、どういった改善が必要なのかをリアルタイムで把握できていません。

一方、DXによって金融機関が抱えるさまざまな顧客データを分析すれば、顧客の行動に基づいた予測が可能になるでしょう。

金融DXが顧客対応にもたらすメリット

金融機関がDXに取り組むことは、業務効率を向上させるだけでなく、顧客対応においても以下のようなメリットをもたらします。

  • 業務効率の向上
  • 顧客満足度の向上
  • ベテランのノウハウを新人に共有しやすくなる
  • 情報の分散を防げる

これらのメリットは、最終的に顧客に対してより高品質なサービスを提供するための基盤を築くきっかけです。

そのため、金融機関が競争優位性を確保するためには、デジタル化を積極的に進めることが不可欠です。

業務効率の向上

金融DXを進めることで、手作業や煩雑な業務が自動化されるため、業務効率の向上が期待できます。

例えば、顧客の問い合わせにAIが迅速に対応し、必要な情報を提供することで、担当者の負担を軽減できるでしょう。

また、バックオフィス業務やデータ管理の自動化により、業務のスピードアップと正確性が向上します。

その結果、顧客への対応が迅速かつ正確になり、業務のパフォーマンス改善につながるでしょう。

業務効率が高まれば、顧客の待ち時間も短縮され、満足度向上のきっかけにもなります。

顧客満足度の向上

顧客満足度を高めるためには、顧客が求めているサービスを迅速に、かつ正確に提供することが重要です。

金融DXにより、顧客の要求に迅速に応えるためのシステムやツールの整備が進みます。

例えば、AIを使ったチャットボットが24時間対応し、顧客の質問に即座に回答することで、顧客は時間を気にせずにサービスを受けられるようになります。

また、顧客の取引履歴や個別のニーズに基づいたパーソナライズドサービスの提供によって、さらなる満足度向上が期待できるでしょう。

ベテランのノウハウを新人に共有しやすくなる

金融機関では、経験豊富なベテランスタッフが持つ知識やノウハウを、新人にうまく引き継ぐことが重要ですが、実現には時間と労力がかかります。

しかし、金融DXを進めることで、業務のマニュアルや過去の対応事例、FAQなどのデジタルコンテンツを共有共有が容易になります。

新人は、デジタルコンテンツを活用して効率よく学習でき、短期間で業務に慣れることができるでしょう。

新人のスキルアップによって全体の業務のスピードが向上し、顧客に対するサービスも安定します。

また、ノウハウを得られないことによるモチベーション低下や離職のリスクも抑えられるため、定着率向上にもつながるでしょう。

情報の分散を防げる

金融機関では、多くの顧客情報や業務データが複数のシステムに分散して管理されていることが少なくありません。

情報の分散は、データの不整合や情報共有の遅れを引き起こす原因になりかねません。

そのため、金融DXを進めることで、顧客情報や業務データが一元管理され、情報の分散を防ぐことができます。

例えば、顧客の口座情報や取引履歴が一元的に管理されることで、担当者は必要な情報をすぐに確認でき、スムーズな対応につながります。

情報の統合は、顧客対応の質を高めるだけでなく、業務全体の効率化にも寄与するでしょう。

金融DXで顧客満足を向上させるべき理由

金融業界において顧客満足度は競争優位性を確保するために非常に重要です。

顧客が求めるサービスの質が向上すれば、信頼やロイヤリティが生まれ、企業の成長に直結します。

金融DXで顧客満足度を向上させるべき理由は次のとおりです。

  • 利用者からの信頼を獲得できるため
  • 業績が向上するため
  • クレーム対応を削減できるため

それぞれの理由を解説します。

利用者からの信頼を獲得できるため

顧客からの信頼を獲得することは、金融機関のブランド価値を高め、長期的な顧客関係を築くために不可欠です。

顧客は金融機関に対して安心して資産を預け、取引を行いたいと考えているのが一般的でしょう。

例えば、セキュリティ対策を講じてオンラインでの取引履歴や残高確認などが安全かつ即座にできるようにすれば、顧客は自分の資産が適切に管理されていると感じることができます。

AIを活用したリスク分析やパーソナライズドサービスの提供に対しても、顧客は自分のニーズに合わせた適切なサービスを受けられると信じることができるため、信頼関係を構築できるでしょう。

業績が向上するため

顧客満足度の向上は、業績にも直結します。

金融DXに取り組めば効率的なサービス提供が可能となり、顧客対応のスピードや精度向上が期待できます。

例えば、顧客対応における問い合わせの自動化や、データ分析の効率化により、金融機関は労力を削減し、さらに多くの顧客にサービスを提供できるでしょう。

このような効率化により、サービスの品質を維持しつつ、より多くの顧客を獲得し、業績を向上させることが可能になります。

金融DXによるサービスに満足した顧客は、知人や家族に金融機関のサービスを伝え、さらなる顧客獲得と業績向上が期待できるでしょう。

クレーム対応を削減できるため

顧客の不満やクレームは、金融機関を含めた多くの企業にとって大きな課題です。

特に金融機関では、タイムリーな対応が求められるため、クレームの発生が顧客満足度を大きく損ないます。

金融DXは、顧客対応の効率化と質の向上に寄与するため、クレーム対応の削減につながります。

例えば、AIを活用した顧客対応や、チャットボットを使った24時間対応を実現することで、顧客からの問い合わせに対する待機時間を削減できるでしょう。

また、顧客の過去の取引履歴や問い合わせ履歴をデジタルで一元管理することで、担当者が迅速かつ正確に対応できるようになり、問題解決のスピードが向上します。

顧客対応に役立つツール3選

金融機関の顧客対応において、DXは欠かせない要素となっています。

顧客対応に役立つツールは次のとおりです。

  • 1. CRM(顧客関係管理)
  • 2. SFA(営業支援システム)
  • 3. AI(人工知能)

それぞれのツールについて詳しく解説します。

1. CRM(顧客関係管理)

CRM(Customer Relationship Management)は、顧客との関係を効率的に管理し、長期的な信頼関係を構築するためのツールです。

CRMを活用すれば、顧客対応の質が向上し、業務の効率化が図れます。

CRMを活用するメリットは次のとおりです。

  • スムーズな情報共有が可能
  • 情報を大量に蓄積できる
  • リアルタイムで状況を把握できる

それぞれのメリットを解説します。

スムーズな情報共有が可能

CRMの導入によって、顧客に関する情報が一元化され、関係者間でスムーズに情報共有ができるようになります。

顧客の状態や過去の取引履歴をリアルタイムで確認できるため、迅速かつ的確な対応が可能です。

例えば、顧客が過去に行った取引や問い合わせ内容を素早く参照できるため、担当者が一貫したサービスを提供することが可能になります。

情報を大量に蓄積できる

CRMでは、顧客情報を大規模に蓄積でき、細かいニーズや過去のやりとりを管理可能です。

そのため、顧客ごとの最適な提案やサービスを提供することが可能となり、顧客の満足度向上につながります。

顧客がどのようなサービスを望んでいるのかを把握し、それに基づいて適切なアクションを取ることができるため、パーソナライズされたサービスを提供できるでしょう。

リアルタイムで状況を把握できる

CRMは、顧客とのやりとりをリアルタイムで更新し、データが即座に反映されるため、担当者は常に最新の情報を基に判断可能です。

リアルタイムで状況を把握すれば、顧客からの問い合わせに迅速に対応でき、対応漏れや情報の遅れを防止できるでしょう。

2. SFA(営業支援システム)

SFA(Sales Force Automation)は、営業活動を支援するためのツールで、営業プロセスを効率化するために用いられ、次のようなメリットが期待できます。

  • 業績のブラックボックス化を回避できる
  • 業務を効率化できる
  • 営業活動を標準化できる

営業活動の効率化と業績向上を実現するために重要な役割を果たしてくれるでしょう。

業績のブラックボックス化を回避できる

SFAを導入すれば、営業活動の進捗や業績をリアルタイムで可視化でき、業績のブラックボックス化を回避するのに有効です。

営業担当者がどの段階でつまずいているか、またはどの顧客が購買に近づいているかを把握でき、次のアクションを的確に判断できるでしょう。

また、業績や営業活動の進捗をリアルタイムで把握できれば、人材の配置にも役立てられます。

リアルタイムで営業戦略をフレキシブルに変化させ、パフォーマンスを最大化するのにも有効なツールです。

業務を効率化できる

SFAは、営業活動に関連するさまざまな業務を自動化できるツールです。

例えば、営業リストの作成や進捗管理、商談内容の記録などが自動化され、営業担当者は本来の営業活動に注力可能です。

従業員の業務負担が軽減され、営業効率が大幅に向上するでしょう。

営業活動を標準化できる

SFAは営業活動を標準化するためのツールが搭載されているのが一般的です。

営業フローや商談の進捗をシステム化することで、全営業スタッフが同じ基準で営業活動を行うことができ、効率的で均一なサービス提供につながります。

また、営業担当者間での情報共有が容易になり、チーム全体のパフォーマンスが向上するでしょう。

3. AI(人工知能)

AI(人工知能)は、金融業界を含むさまざまな業界で急速に導入が進んでおり、顧客対応にも大きな影響を与えています。

AIを活用することで、業務の自動化や精度の向上を実現できるでしょう。

AIの活用によって得られるメリットは次のとおりです。

  • ミスを軽減できる
  • コストを削減できる

それぞれのメリットを解説します。

ミスを軽減できる

AIを利用することで、人的ミスの軽減が期待できます。

例えば、顧客情報の入力や処理において、AIが自動でチェックを行い、間違いの発生確率を抑えられるでしょう。

また、AIが過去のデータから学習し最適な対応方法の提案もできるため、顧客対応の精度が向上します。

その結果、顧客満足度を維持するためのサービス品質を高められます。

コストを削減できる

AIの導入により、顧客対応の効率化が進み、人的リソースの削減が可能です。

例えば、AIを用いたチャットボットは、24時間体制で顧客対応を行うことができ、対人による問い合わせを減少させます。

その結果、従業員はより高度な業務に集中でき、コスト削減につながります。

また、AIによる分析を用いることで、顧客のニーズに応じた最適なサービスを提供し、リソースを無駄なく活用できるでしょう。

金融DXの顧客対応事例3選

金融DXを顧客対応に活用した事例は次のとおりです。

  • 1. AIチャットボットによる自動応答の導入
  • 2. デジタルモーゲージによる審査の迅速化 
  • 3. AIを活用した株価予想

それぞれの事例を詳しく解説します。

1. AIチャットボットによる自動応答の導入

ゆうちょ銀行はAIチャットボットによる自動応答を導入しました。

顧客は銀行のサービスで不明な点があれば、自宅や職場など、どこにいながらにしても24時間365日、質問が可能です。

AIチャットボットを導入することで、自動で顧客の質問に対応できるものの、チャットボットはすべての質問を解決できるわけではありません。

このようにチャットボットでは回答できなかったケースに備えて、ゆうちょ銀行では担当のオペレーターが対応する有人チャットも準備しています。

金融機関が抱える顧客対応の課題である、有人対応を残すかどうかという点を解消し、顧客の質問に適切に対応しています。

参考:SupportChatbot|ゆうちょ銀行

2. デジタルモーゲージによる審査の迅速化

住信SBIネット銀行は住宅ローンの手続きをオンラインで完結できる「かんたん住宅ローン」の提供をスタートしました。

従来の申込書類の記入や郵送、電話確認といった煩雑な手続きをなくし、顧客は書類をアップロードするだけで完了するため、これまでの負担が軽減しました。

また、不動産事業者も顧客とのやりとりを簡素化できたのも大きなメリットです。

書類対応がなくなったことで金融機関による手続きもスピーディになり、審査の迅速化につながっています。

参考:住信SBIネット銀行株式会社 | 住信SBIネット銀行、住宅ローンデジタルプラットフォーム「かんたん住宅ローン」の提供を開始

3. AIを活用した株価予想

auじぶん銀行の「AI日本マーケット予測」は、AIを活用して日本の株価動向を分析・予測するサービスです。

同サービスは、過去のTOPIXや日本PMIの動向を基に、今後の株価トレンドを予測します。予測結果は毎月第3営業日11時に「今月の日本株価トレンド」として提供され、5営業日後のTOPIX予測も月曜から金曜の16時15分に発表されます。

AIによる分析情報は、じぶん銀行アプリを通じて、原則24時間365日利用可能です。

「AI日本マーケット予測」によって投資家は市場の変動に即応した最新の株価予測情報を得られるため、迅速な判断を下せるようになりました。

参考:au|「AI日本マーケット予測」の提供開始

金融DXで顧客対応を変革させたい企業は『株式会社 TWOSTONE&Sons』へ

金融DXによって顧客対応を変革すれば、業務効率や顧客満足度の向上、情報の分散防止などのメリットにつながります。

しかし、有人チャネルをいかに残すか、店舗とデジタル間の顧客情報の引き継ぎの不備をどう解消するかなどの課題もあります。

そのため、なかなか金融DXによる顧客対応変革を進められないという企業は、『株式会社 TWOSTONE&Sons』にご相談ください。

当社はITソリューションの提供や専門的なスキルを持つITパーソンの紹介など、金融機関のDX推進をサポートしています。

金融DXによる顧客対応変革を検討している企業はぜひお問い合わせください。

まとめ|金融DXでスムーズな顧客対応を実現しよう

金融機関がDXによって顧客対応の向上が求められる理由は、利用者からの信頼獲得や業績向上などです。

金融機関でスムーズな顧客対応を実現するためには、CRMやSFA、AIなどのツールの活用がポイントです。

専用のツールを活用すれば、チャットボットによる自動応答の導入やAIによる市場分析が可能になります。

業務効率や顧客満足度の向上などを目指したい企業は金融DXによってスムーズな顧客対応を実現しましょう。