財務DXにおけるダッシュボードとは？作成ステップを分かりやすく解説

財務DXにおいて、ダッシュボードは企業の意思決定を支える情報可視化ツールです。従来の財務データ管理では、膨大な情報の一元的な把握が難しく、経営者や財務担当者は直感的に状況を理解するのが困難でした。その結果、経営判断が遅れてしまうケースもあるでしょう。

一方、財務ダッシュボードを活用すれば、リアルタイムで業績や資金繰り、キャッシュフローなどの財務データを視覚的に把握できます。そのため、迅速かつ正確な経営判断が可能になるでしょう。さらに、ダッシュボードは単なるデータの集積ではなく、データのトレンドや分析結果を瞬時に確認できるため、予測や改善策の立案に有効です。

この記事では、財務DXにおけるダッシュボードの重要性を解説し、その作成ステップを分かりやすく説明します。財務業務のDX促進やダッシュボードの活用を検討している方はぜひ参考にしてください。

ダッシュボードとは意思決定を支える情報可視化ツール

財務ダッシュボードは、企業が保有する財務データをリアルタイムで視覚化し、迅速な意思決定をサポートするためのツールです。

従来の一般的な経理システムでは、大量のデータを逐一確認することが必要で、情報整理に時間を要してしまうという課題がありました。対して、ダッシュボードは、売上高、経費、キャッシュフロー、貸借対照表などの主要な財務指標を一目で確認できるため、経営層や担当者は即座に情報を確認可能です。

レポートやスプレッドシートとの違い

レポートやスプレッドシートも情報整理には役立ちますが、ダッシュボードとは大きく異なります。レポートやスプレッドシートは静的であり、一定の期間ごとに手作業で更新されることが一般的です。そのため、データの分析に時間がかかり、リアルタイムでの判断が難しくなります。また、情報が分散している場合が多く、必要なデータを探すのに手間がかかってしまうでしょう。

一方、ダッシュボードは動的で、リアルタイムでデータを更新し、自動的に情報を反映させます。これにより、過去のデータに基づくレポート作成では得られない、迅速で正確な判断が可能となります。

財務DXでダッシュボード活用が重要な5つの理由

財務DXにおけるダッシュボードとは、企業が持つ膨大な財務データを視覚的に整理し、リアルタイムで確認できるようにするツールです。

売上や支出、キャッシュフロー、予算の進捗など、複数の数値を一つの画面で統合的に表示できるため、従来の紙やスプレッドシートでの煩雑な集計作業を削減します。また、担当者だけでなく経営層も直感的に状況を把握でき、経営判断の迅速化につながる点が特徴です。

ここでは、財務DXでダッシュボードの活用が重要な理由を解説します。

1.財務状況をリアルタイムで把握

財務ダッシュボードの利点は、リアルタイムで財務状況を把握できる点です。従来の手作業で行っていた財務データの収集や集計では、データの更新に時間がかかり、経営者が最新の財務状況を把握するのが難しくなります。経営判断の遅れは、販売機会やサービス提供機会の損失につながりかねません。

ダッシュボードを活用すれば、以下のようなデータをリアルタイムで確認でき、意思決定につなげられるでしょう。

• 売上高
• 支出
• キャッシュフロー

これにより、資金ショートや予期しない支出などのリスクを未然に防ぐことが可能になります。

さらに、最新データを基にした柔軟なシナリオ分析も行えるため、突発的な市場変化や不測の事態に対しても迅速に対応できるでしょう。

2.資金繰りの予測精度の向上

ダッシュボードを使用すれば、資金繰りの予測精度が向上します。過去の財務データを基にした予測やシミュレーションがリアルタイムで行えるため、今後の収支状況を正確に把握できます。

例えば、売掛金の回収状況や支払い予定額を反映させることで、将来的な資金需要を予測し、適切な資金調達計画を立てることができるでしょう。これにより、急な支払いに対する対応が可能となり、資金繰りの安定化に貢献します。

さらに、複数のシナリオを比較することで、景気変動や為替リスクに備えた戦略的な資金運用が可能となり、経営の柔軟性も高まります。データに基づいた精度の高い予測は、経営者がより自信を持って意思決定を下すための指針となり、企業の成長につながるでしょう。

3.部門間でのスムーズな情報共有の実現

財務ダッシュボードは、部門間での情報共有をスムーズにします。従来、各部門で管理していた財務データが分散していた場合、情報の共有や調整に時間がかかり、意思決定の遅れにつながることがありました。一方、ダッシュボードを活用すれば、全社的な財務データを一元化し、リアルタイムで共有できます。これにより、営業部門や経理部門、経営層が同じデータを参照し、迅速に情報を交換できるでしょう。

また、部門間での連携が強化され、業務の効率化が図られます。さらに、共通のKPIや予算進捗を全社で可視化することで、目標達成に向けた組織全体の一体感も高まります。情報の一元化は、部門間の壁を取り払い、より戦略的な議論を促すため、全社的な生産性向上が期待できるでしょう。

4.異なるシステムの財務データを統合

企業では、複数のシステムを使用して財務データを管理しているケースがあるものの、これらのデータが異なる形式で存在すると、集計や分析に時間がかかりかねません。一方、財務ダッシュボードは、異なるシステムからのデータを統合し、統一されたフォーマットで表示できます。これにより、データの整合性が保たれ、複数のシステムを使っている企業でも、一元的に財務情報を把握できるようになります。その結果、データの整合性が向上し、経営層が迅速に意思決定を行えるようになります。

さらに、複数拠点や海外子会社のデータも統合可能で、グローバル経営における全体最適を実現しやすくなる点も強みです。

5.データ集計や報告作業の負担軽減

従来の手作業でのデータ集計や報告作業は、膨大な時間と労力がかかり、経理部門の負担が大きくなりかねません。対して、財務ダッシュボードを導入すれば、データの集計や報告作業が自動化され、業務の効率化が進みます。例えば、月次の財務報告や予算の実績比較など、手作業で行っていた集計作業を自動化できます。これにより、担当者は集計作業にかける時間を削減し、より戦略的な業務に集中できるようになるでしょう。

さらに、レポートが自動生成されることで人為的ミスの削減にもつながり、財務データの信頼性を高めることができます。その結果、経理部門は単なる数字の管理だけでなく、経営陣への提言など付加価値の高い業務に時間を充てられるようになります。

財務DXを促進させるダッシュボードの作成ステップ

財務DXを推進するために、ダッシュボードの活用は有効です。適切なダッシュボードを作成すれば、財務データをリアルタイムで可視化し、迅速かつ的確な経営判断を支援できます。

以下では、財務ダッシュボードを効果的に作成するためのステップを紹介します。このステップを順を追って実行することで、ダッシュボードの精度が向上し、経営層や担当者が有益な情報を迅速に把握できるでしょう。

ステップ1.必要な財務指標を明確化

最初のステップは、ダッシュボードで表示するべき財務指標を明確にすることです。資金繰りを管理するために必要な指標は企業ごとに異なるため、まずはどの指標が経営判断に役立つかを洗い出しましょう。

一般的な指標には、売上高、経費、キャッシュフロー、利益率、流動比率、自己資本比率などがありますが、業種や事業規模によって優先すべき指標は異なります。目標とする財務状況を達成するために必要な指標を特定し、ダッシュボードにどのデータを表示すべきかを決めます。

この段階で適切な財務指標を選定できれば、後のステップでダッシュボードを有効活用できるでしょう。さらに、KPIと連動させることで、財務データと経営戦略の整合性を保ち、分析の精度を高めることも可能です。

ステップ2.収集するデータの範囲と形式を統一させる

次に行うべきは、収集するデータの範囲と形式の統一です。財務ダッシュボードを作成するには、さまざまなシステムからデータを収集する必要があります。例えば、売上データは販売管理システムから、支払い情報は会計ソフトから取得するのが一般的です。異なるシステムからデータを収集した場合、フォーマットや項目が異なるケースも多いため、統一された形式に整えなければなりません。

データ形式を統一すれば、ダッシュボード上で情報を視覚化しやすくなり、データの正確性や整合性を保つことができます。データベースやシステム間での連携がうまくいくよう、事前にデータ項目を整備し、必要な情報を漏れなく収集することが大切です。

ステップ3.可視化の目的に合わせて画面を構成

ダッシュボードの画面構成を決める際には、可視化の目的に合わせてレイアウトを設計します。経営者が即座に状況を把握できるよう、情報が整理された見やすいレイアウトが求められます。例えば、以下のようなレイアウトは、視覚的に理解しやすいでしょう。

• 資金繰りの状況を一目で確認できるよう、キャッシュフローの推移をグラフで表示する
• 売上や利益を数値で簡潔に示す

また、ダッシュボードに表示する情報の重要度に応じて、優先順位をつけて配置します。銀行口座の残高のように、リアルタイムで変更されるデータを画面上部に表示すれば、求めている情報を目立たせることができます。このように画面の構成は、使いやすさを重視して設計しましょう。

ステップ4.試作段階でフィードバックしてもらう

ダッシュボードの設計が完了したら、試作段階でフィードバックをもらうことが欠かせません。初期のデザインでは、実際のユーザーがどの情報をどのように表示することを望んでいるかが分からないため、関係者からの意見を聞くことが不可欠です。経理部門、経営層、IT部門など、ダッシュボードを実際に使用する担当者からフィードバックを受け、その内容を反映させることで、使いやすいツールに仕上げることができます。

フィードバックを受けて、必要な機能や改善点を洗い出し、ダッシュボードの使い勝手を向上させましょう。この段階での意見交換が、その後の運用に大きな影響を与えるため、しっかりとしたコミュニケーションが求められます。

ステップ5.運用ルールと更新頻度を決める

ダッシュボードを運用する際には、更新頻度や使用ルールを決めておくことが必要です。データの更新頻度は、経営層がダッシュボードをどれくらいの頻度で利用するかに合わせて設定します。

例えば、リアルタイムでの更新が必要であれば、データの取り込みを自動化する仕組みが必要です。一方、日次や週次で更新が可能であれば、その頻度に合わせて手動での更新も選択肢として考えられます。

また、データの整合性を維持するために、以下のようにダッシュボードをどのように運用するかのルールを定めておきましょう。

• 誰がどのデータを更新するのか
• 定期的なチェックをどのように行うのか

さらに、更新の責任者を明確にしておくことで属人化を防ぎ、トラブル発生時にも迅速に対応できる体制を築けます。

ステップ6.定期的な更新の実施

ダッシュボードを効果的に活用するためには、定期的な更新が欠かせません。経営環境や市場状況の変化に対応するために、ダッシュボード上の指標やデータの見直しを行い、必要な調整を加えましょう。また、ビジネスの成長に伴い、表示する財務指標が変わることもあるため、定期的にダッシュボードの内容を見直す必要があります。

定期的に更新することで、ダッシュボードが常に最新の情報を反映し、経営判断に役立つ信頼性の高いツールとして機能し続けます。加えて、更新のたびに担当者間で共有すれば、情報の一貫性や透明性も確保でき、組織全体での活用度がより高まるでしょう。さらに、継続的に改善サイクルを回すことで、ツールが企業の成長と共に進化し続ける仕組みを築けます。

財務DXに有効なダッシュボードツール3選

財務DXを推進するためには、適切なダッシュボードツールを活用しましょう。ここでは、財務データを効率的に可視化し、経営層や担当者が迅速な意思決定を行うために役立つ3つのダッシュボードツールを紹介します。それぞれが提供する独自の機能と強みを活かすことで、企業の財務状況をより効果的に管理できます。

さらに、操作性や導入の容易さといった観点からも比較し、自社に最適なツールを選定することが成功のポイントです。

1.Tableau｜多様なデータを直感的に可視化できる

Tableauはビジュアライゼーションツールで、財務データを直感的に可視化できます。特に、複数のデータソースから情報を統合し、視覚的に理解しやすいグラフやダッシュボードに変換する能力に優れています。Tableauは、企業の財務データや運営状況をリアルタイムで把握するために必要な視覚化を提供し、経営層や担当者が重要な指標を瞬時に理解できるようにします。

このツールの最大の強みは、ユーザーインターフェースが直感的であり、技術的な知識がなくても簡単に操作できる点です。また、さまざまなデータソースに接続してデータを取り込むことができ、企業固有のニーズに合わせたダッシュボードを作成できます。

出典参照：Tableau｜株式会社セールスフォース・ジャパン

2.Power BI｜Microsoft製品と連携しやすい

Power BIは、Microsoft製品とシームレスに連携できるビジネスインテリジェンスツールで、財務データの可視化に強力な機能を提供します。特に、ExcelやDynamics 365など、Microsoftの既存のツールと自然に統合できるため、Microsoft製品を使用している企業にとって使いやすいツールです。データをリアルタイムで更新し、ビジュアルに整理されたダッシュボードを作成できます。

Power BIは、データソースの取り込みが簡単で、複数のデータソースを結合してダッシュボードに表示可能です。加えて、レポート作成やシェアリング機能も強化されており、部門間でのデータ共有がスムーズに行えます。

出典参照：Power BI｜日本マイクロソフト株式会社

3.MotionBoard｜リアルタイムな経営管理に対応

MotionBoardは、企業の経営データをリアルタイムで可視化するために開発されたBIツールです。特に、財務データの即時分析やダッシュボードの作成に優れた機能を持ち、企業の経営判断をサポートします。MotionBoardは、リアルタイムでのデータ更新が可能で、現場の状況や財務状況を即座に反映させることができます。

このツールの特徴は、インタラクティブなグラフやチャートを活用して、データを視覚的にわかりやすく表示できる点です。また、複数のデータソースからリアルタイムで情報を収集し、企業の経営状況を把握するために重要な財務指標を瞬時に表示できます。これにより、経営者や担当者は、即座に対応策を講じることができ、迅速な意思決定が可能です。

出典参照：MotionBoard｜ウイングアーク１ｓｔ株式会社

財務DXでダッシュボードを活用した事例

財務DXの取り組みの一環として、企業はダッシュボードを活用し、財務状況をリアルタイムで把握でき、業務の効率化が進みます。ここでは、ダッシュボードを導入して成功を収めた企業の事例を2つ紹介します。それぞれがどのようにしてダッシュボードを活用し、業務改善につなげたのかを見ていきましょう。

さらに、得られた成果や改善ポイントを分析することで、他社が参考にできる具体的な導入のヒントも見えてきます。

事例1.株式会社メイコー｜グループ各社の経営情報を統合

株式会社メイコーは、電子機器を製造するグローバル企業で、グループ各社が異なる地域で独立して運営していました。これまで、各社の経営情報は分散しており、リアルタイムでの状況把握が難しく、経営者や担当者は情報を集約するために膨大な時間を費やしていました。

この課題を解決するため、メイコーはダッシュボードを導入し、グループ各社の経営情報を統合することに成功しています。これにより、経営層はリアルタイムで各社の財務データや業績を把握できるようになり、迅速かつ的確な経営判断ができるようになりました。この取り組みは、グループ全体の運営効率を向上させ、経営の安定化につながっています。

出典参照：グループ24社の経営管理統合DBをたった3名の経理で完全内製化 半期で2,500を超えるExcel受渡を大幅削減し分析中心の業務へ変革｜ウイングアーク１ｓｔ株式会社

事例2.株式会社三菱UFJ銀行｜年間8万時間の業務負荷削減

株式会社三菱UFJ銀行は、日本を代表する大手銀行です。同行は長年にわたって膨大な財務データを手作業で管理していました。従来の方法では、データの集計や報告書作成に膨大な時間がかかり、業務負担が大きかったため、効率化の必要性が高まっていました。

そこで、同銀行はTableauを導入し、財務データをダッシュボードで可視化する体制作りに取り組んでいます。システム導入により、データ集計やレポート作成が自動化され、従来手作業で行っていた業務にかかる時間が削減されました。特に、年間で8万時間以上の業務負荷削減を実現し、従業員はより戦略的な業務に集中できるようになっています。

出典参照：導入後4年でユーザー1万人、年間8万時間の業務負荷削減を達成｜株式会社三菱ＵＦＪ銀行｜株式会社セールスフォース・ジャパン

まとめ｜ダッシュボードを活用して財務DXを促進させよう

財務DXを推進するために、ダッシュボードの活用は効果的です。ダッシュボードを利用すれば、企業は財務データをリアルタイムで可視化し、経営層や担当者が迅速かつ正確に意思決定を行うための強力なツールです。特に、複雑な資金繰りやキャッシュフロー、利益率などを一目で確認できるため、経営状況の把握がスムーズになります。

ダッシュボードの導入によって、手作業で行っていたデータ集計やレポート作成が自動化され、業務負担の軽減やミスの削減につながるでしょう。

ダッシュボードを活用して財務に関わる業務を効率的に進めましょう。