バックオフィスDXにセキュリティは必要?基本の対策やステップを解説
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法務DXの第一歩はペーパーレス化です。契約書や法務文書を電子化すれば検索や共有が効率化し、保管コストや期限漏れリスクも削減できます。実施ステップや役立つシステム、事例を交えて導入のポイントを解説するので参考にしてください。
近年、多くの企業でペーパーレス化が経営課題として取り上げられています。特に法務部門は契約書や覚書など膨大な文書を扱うため、紙のままでは効率性や安全性に限界がありました。契約書を製本して押印し、郵送でやり取りする流れは時間と手間がかかるうえ、保管にもコストが発生します。
紙の資料は検索が難しく、必要な情報を探すだけで数十分以上かかる場合も珍しくありません。さらに、紛失や誤送付のリスクも常につきまとい、企業の信頼につながるリスク要因となっていました。
紙を前提とした契約や文書管理はテレワークと相性が悪く、出社しなければ押印や確認ができない状況を生み出します。このような課題を解決する手段として注目されているのが、法務DXの一環としてのペーパーレス化です。
この記事では、法務DXの取り組みの一環であるペーパーレス化について、システム導入のメリットや実施のステップ、おすすめのシステムなどを解説します。

法務部門におけるペーパーレス化は、単なる紙の削減にとどまりません。業務のスピードを向上させ、コストを削減し、法務リスクの低減や働き方改革の推進にもつながります。従来の紙ベース業務では、契約書を探すのに平均数十分もかかってしまうことがありました。また、郵送で数日かかるやり取りが発生するなど、目に見えないロスが数多く存在しました。ペーパーレス化を進めれば、検索や共有が即座に可能となり、保管や郵送にかかるコストが不要になります。
従来の紙書類は、どれだけ整理していても「探す」作業に時間を取られてしまいます。例えば、数百件に及ぶ契約書から目的のものを見つけるには、キャビネットや倉庫を何度も探し、場合によっては担当者に依存せざるを得ません。特に人事異動や担当者変更があると、どこに何があるか把握できないケースも多く、探すだけで数時間を要することもあります。
ペーパーレス化を進め、文書をクラウド上で一元管理すれば、キーワード検索ですぐに目的の契約書にたどり着けます。契約相手先、締結日といった条件での絞り込みも可能となり、検索作業にかかる時間を削減できるでしょう。また、フォルダ分けやタグ付けによる整理も柔軟に行えるため、誰でも情報の確認をスムーズに行えます。
契約書や法務関連文書は、法的に長期間保存が義務付けられている場合が多く、紙で保管する場合には相応のコストがかかります。特に大企業や取引件数が多い企業では、書庫や外部倉庫を借りて文書を保管することも一般的です。そのため、保管費用が年間数百万円にのぼることも珍しくありません。
例えば、三井倉庫による「スマート書庫」を利用した場合、1箱あたりの月間保管料は100円です。仮に500箱を保管する場合、単純計算で月額50,000円、年間で約60万円のコストが発生します。初回預入時の預け入れ料やオプションとしての溶解廃棄料を含めると、コストがかさんでしまうでしょう。
さらに、契約締結のたびに印刷代や郵送代も発生し、これらは積み重なるとコスト負担となります。
ペーパーレス化を実現すれば、物理的な保管スペースが不要になり、倉庫費用を削減できます。また、電子契約を利用すれば印刷や郵送の必要がなくなり、コスト削減にもつながるでしょう。こうした費用削減効果は、取引件数が多い企業ほど成果を実感できるでしょう。
契約書には更新期限や解約通知期限など、守らなければならない重要な日付が数多く含まれています。紙で管理している場合、担当者のカレンダーやエクセルで個別に管理されることが多く、担当者の異動やミスによって更新漏れのリスクが高まりかねません。更新期限を逃して不要な契約を延長してしまう恐れがあるでしょう。
実際に株式会社日本パープルの調査によれば、契約書管理システム未導入企業のうち、37%もの企業が契約更新や期限の見逃した経験があると回答しています。
ペーパーレス化と同時に契約管理システムを導入すれば、更新期限を自動でアラート通知でき、リスクを未然に防げます。さらに、契約内容や期限を一覧化して可視化することで、経営層や他部門も状況を把握しやすくなり、組織全体でリスクマネジメントを強化できるでしょう。
出典参照:契約書管理システム未導入企業の88%がペーパーレス化未達!契約書紛失や更新忘れなどのリスクも|株式会社 PR TIMES
コロナ禍以降、多くの企業でリモートワークが広がりましたが、法務部門は紙の契約書や押印文化が障害となり、在宅勤務の導入が進みにくい状況でした。紙の契約書はオフィスに行かなければ閲覧できず、署名や押印のために出社が必須となるケースもあるでしょう。その結果、他部門に比べて柔軟な働き方を実現できず、人材確保や定着において不利になることもありました。
ペーパーレス化を導入すれば、クラウド上で契約書や法務資料を確認でき、電子署名により契約手続きもリモートで完結します。場所を問わず業務を進められるため、育児や介護と仕事を両立する従業員にも働きやすい環境が整います。人材採用の面でも柔軟性が高まり、優秀な人材を確保しやすくなるのもメリットです。
従来の紙ベースの契約管理では、契約の進捗状況や内容が属人化しやすく、現場と経営層の間で情報の非対称性が生まれていました。経営層が意思決定を行う際に必要な情報が迅速に得られず、判断が遅れるケースも珍しくありません。
一方、ペーパーレス化によって契約書や関連データをシステム上に一元管理すれば、契約状況をリアルタイムで可視化できます。例えば、締結済み契約の件数、契約金額の総額、更新予定件数などをダッシュボードによって一目で把握でき、経営層はより迅速に判断を下せます。現場担当者も進捗を共有しやすくなり、情報伝達の透明性も向上できるでしょう。企業全体の連携強化により、経営判断のスピードと精度が向上します。

ペーパーレス化を成功させるには、段階的な進め方が欠かせません。すべての業務を一度にデジタル化しようとすると現場に混乱を招き、逆に非効率になるリスクがあります。そのため、まずは現状の業務フローを可視化して優先的にペーパーレス化すべき領域を特定しましょう。次に導入するシステムの機能を精査して適切に選択し、最後にスムーズに定着させるための教育やサポート体制を整えていきます。
ここではペーパーレスを進めるための3つのステップを解説します。
まずは、自社の法務業務を俯瞰し、紙を多用している工程を洗い出しましょう。契約締結、覚書の保管、稟議承認など、業務ごとに紙の使用頻度や処理件数を可視化することで、最初に取り組むべき対象が見えてきます。特に、時間やコストが多くかかっている部分から優先的にデジタル化すると効果が出やすく、社内の理解も得やすいでしょう。
すべてを一気に電子化するのではなく、例えば「契約書の締結プロセス」や「契約更新日の管理」といった限定的な部分から着手するのが一般的です。小規模に始めて成果を見せることで、社内に成功体験が広がり、他の業務にも波及させやすくなります。また、対象を特定する段階では、現場担当者の意見を取り入れることも欠かせません。
対象を絞り込んだら、次は導入するシステムの機能を精査します。ペーパーレス化に必要な要素は企業ごとに異なるものの、以下のような点は共通しているでしょう。
まずは、セキュリティ要件が十分であることを確認しましょう。次に、契約や法務業務に必要な法令遵守チェックや更新管理機能が備わっているかも大切です。
ここではシステムでチェックすべき機能を解説します。
法務文書には、取引先情報や契約条件といった極めて機密性の高い情報が含まれています。情報漏えいや不正利用を防止するため、システムには強固なセキュリティ対策を求められるのが一般的です。具体的には、データの暗号化、アクセス権限の細分化、操作ログの記録といった基本機能が備わっているかを確認しましょう。
また、クラウドサービスを利用する場合には、データセンターの安全性やバックアップ体制もチェックポイントです。万一の障害やサイバー攻撃に備えた冗長化や復旧計画が整っているかどうかもチェックすべきポイントです。
導入前に第三者機関の認証(ISO27001など)を取得しているかどうかも確認してみましょう。
契約業務は、法改正やガイドラインの変更に対応しなければなりません。紙での運用では担当者による定期的な確認が必要となり、抜け漏れが発生するリスクを高めてしまうでしょう。そこで注目されるのが、契約条項を自動でチェックし、法令や自社基準に合致しているかを検証できる機能です。
例えば、解約条項が不利な条件になっていないか、下請法や独占禁止法などに抵触しないかをAIがアラートしてくれる仕組みがあります。こうした機能を備えたシステムを導入することで、レビュー作業の精度が向上し、法務担当者の負担を軽減できるでしょう。さらに、法令改正にあわせてシステムが自動でアップデートされる仕組みを持っていれば、常に最新の法的要件を満たした契約を維持できます。
グローバルに事業を展開する企業や、全国に複数拠点を持つ企業にとって、多拠点・多言語対応は欠かせません。拠点ごとに契約のやり取りを紙で行っていては、確認や承認に時間がかかり、事業スピードが鈍化します。ペーパーレス化と同時に、多拠点でも同じシステムを利用できる体制を整えることで、場所を問わずに業務を進められるようになるでしょう。
海外との契約では多言語対応も求められます。日本語と英語の契約書を並行して管理する場合でも、同じシステム上で管理できれば効率的です。システムによっては自動翻訳や多言語インターフェースを備えており、現地スタッフも使いやすい環境を構築できます。柔軟性を確保することで、事業拡大にもスムーズに対応できる体制を整えられるでしょう。
システムを導入しても、現場で活用されなければ意味がありません。スムーズな定着には、導入初期からトレーニングを徹底することが欠かせません。例えば、基本操作を学ぶ初期研修、実務に沿ったシナリオを使った応用研修、トラブルシューティングを想定したフォローアップ研修など、段階的な教育が効果的です。
また、マニュアルや動画教材を整備し、必要に応じてすぐに確認できる環境を用意することも大切です。さらに、社内にスーパーユーザーや推進担当者を置き、現場で疑問が出たときに即座に対応できる体制を作れば、利用者の不安を減らせます。最初の数カ月で使いこなせるかどうかが定着の分かれ目となるため、教育とサポートに十分なリソースを投じることが、長期的な成功につながります。
法務DXを実現するうえで欠かせないのが、ペーパーレス化を支えるシステムの導入です。紙を前提とした業務から脱却するには、単なる文書の電子化にとどまらず、安全な保存と効率的な検索・共有、さらに契約の進捗をリアルタイムで管理できる仕組みが求められます。
加えて、セキュリティ対策や法令遵守機能、多拠点やリモート環境での利用も考慮しなければなりません。ここでは法務業務のペーパーレス化に特に役立つ5つの代表的なシステムを取り上げ、その特徴や導入効果を詳しく解説します。
DocuSignは世界180カ国以上で利用されている電子署名サービスで、契約締結を完全にデジタル化できるのが特徴です。従来は印刷・押印・郵送といった工程が必要でしたが、DocuSignを導入すればインターネット環境さえあれば数分で契約を完了できます。
セキュリティ面でも国際的な認証を取得しており、署名の真正性や改ざん防止機能、操作ログの保存などが標準で備わっています。
さらに、SalesforceやGoogle Workspaceなど主要な業務ツールと連携でき、既存の業務フローにスムーズに組み込める点も魅力です。営業部門や人事部門などでも広く使えるため、全社的なペーパーレス推進の起点として導入する企業も増えています。
Contract Oneは、日本企業のニーズに特化した契約管理システムです。契約書をクラウド上で一元管理し、検索や期限管理を効率化できるのが特徴です。紙やPDFファイルで散在していた契約書を統合管理できるため、必要な契約を短時間で探し出せます。契約更新期限や解約通知期限を自動でアラートする機能も備えており、期限管理の属人化を防ぎます。
日本の商習慣に合ったUI設計がされているため、法務担当者だけでなく現場担当者も直感的に操作できるのが特徴です。さらに、契約ごとにステータスを可視化できるダッシュボード機能もあり、進捗を全社で共有するのに有効です。
また、AIを活用して契約条文を自動で抽出・整理する機能も搭載しており、レビュー作業の効率化にも貢献します。
Boxは世界的に普及しているクラウドストレージサービスで、文書管理とセキュアな共有を強みとしています。契約書や社内規程などを一元的に保存し、権限設定を細かく行えるため、必要な人だけがアクセスできる仕組みを構築可能です。
バージョン管理機能が充実しており、契約書の修正版や履歴を簡単に追跡できるのもメリットです。過去のやり取りを遡って確認できるため、監査対応や社内調査でも役立ちます。さらに、外部ともセキュアにファイルを共有できるため、紙やメール添付に依存することなく安全に情報をやり取りできます。
加えて、他の業務ツールとの連携性も高く、SlackやTeamsと組み合わせて使えば、法務部門と現場部門のコミュニケーションを効率化できるでしょう。
出典参照:Box|株式会社Box Japan
kintoneはサイボウズが提供する業務改善プラットフォームで、契約や稟議の承認フローを自動化できる点が特徴です。従来は紙に押印して回覧していた承認プロセスをオンライン化することで、社内手続きがスピードアップします。契約書をアップロードし、承認者を指定すれば、自動的にワークフローが回る仕組みを構築できます。
また、kintoneはカスタマイズ性が高く、自社の業務に合わせてアプリを自由に作成可能です。法務部門に限らず、経理や人事など他部門でも同じプラットフォームを利用できるため、全社的なDX推進にもつながるでしょう。外部サービスとの連携機能も充実しており、電子署名サービスやクラウドストレージと組み合わせることで、より高度な法務ワークフローを構築できるでしょう。
出典参照:kintone|サイボウズ株式会社
LegalForceは、AIを活用した契約レビュー支援システムで、契約条文のチェック作業を効率化できるのが特徴です。従来は法務担当者が膨大な条文を1つずつ確認していましたが、LegalForceを導入すれば数分で契約全体を解析し、リスクのある条文を自動で指摘してくれます。
例えば、解約条項や損害賠償条項が不利になっていないかといった観点で瞬時にレビューできます。これにより、契約チェックにかかる時間が短縮され、法務担当者はより戦略的な業務に集中可能です。
さらに、LegalForceは契約データを蓄積し、企業独自のナレッジを活用できる点も強みです。過去の契約事例を参照しながらレビューができるため、属人的な判断に頼らず、法務レベルを底上げできるでしょう。
出典参照:LegalForce|株式会社LegalOn Technologies
実際にペーパーレス化を導入した企業や法律事務所の事例を見ると、その効果や進め方がより具体的に理解できます。ここでは出版社である文響社と、法律事務所であるミカン法律事務所の取り組みを紹介します。どちらも紙に依存していた運用を見直し、クラウドを活用することで煩雑な書類のやり取りの効率化や柔軟な働き方の導入などを実現しました。
両社によるペーパーレス化の取り組みを参考に、自社の取り組みも促進させましょう。
文響社は「うんこ漢字ドリル」で知られる出版社ですが、従来、契約書は編集担当者が管理部に持ち込み、社内で押印して回覧し、郵送で返送するという流れでやり取りされていました。そのため、業務が煩雑になり、締結に時間がかかるという点が課題でした。編集者は執筆や制作の進行に追われるため契約処理が後回しになりがちで、管理部門が進捗を把握しづらい点もあったようです。
そこで同社はクラウドサインを導入し、契約の送付や進捗管理を管理部が直接行える体制へと切り替えています。これにより、編集担当者を経由せずに契約相手とやり取りでき、契約完了までのスピードが短縮されました。従来は数日かかっていた承認プロセスも、オンライン化によって数時間で完結できるようになり、リードタイムの削減が実現しました。
出典参照:電子契約で出版社をペーパーレス化|弁護士ドットコム株式会社
中規模のミカン法律事務所が負担と感じていたのが、紙や複数のツールに依存した情報管理です。案件情報や顧客データ、タイムチャージの記録、請求関連の処理が分散しており、確認や入力が二重三重になる非効率が常態化していました。さらに、必要な書類を紙で保管していたため、自宅に持ち帰って確認しなければならず、リモートワークを導入することが困難な状況でもありました。
この課題を解消するために同事務所に導入されたのが、クラウド型の法務業務システムです。案件管理や顧客情報、タイムチャージなどをクラウド上で一元管理できる仕組みを整え、紙資料を使用せずともすべての情報にアクセスできる環境を構築しました。
出典参照:弁護士事務所における効率的なペーパーレス化を実現。|株式会社レアラ

法務DXにおけるペーパーレス化は、単なる紙削減の取り組みではなく、企業全体の効率性と競争力を高める施策です。契約書や規程類の電子化によって検索や共有のスピードが向上し、紙の保管や郵送にかかっていたコストが削減されます。
さらに、契約更新日の自動通知やリマインド機能によって期限管理の抜け漏れを防止でき、リスクマネジメントの精度も高まるでしょう。これらの仕組みは、従来の属人的な作業に頼る運用から脱却し、組織全体で情報を共有できる体制づくりにもつながります。
法務部門におけるDXの第一歩として、ペーパーレス化に取り組みコスト削減につなげましょう。