人事DXのセキュリティ対策!リスクと安全なツールの選び方

人事DXを進める上で、セキュリティ対策に悩んでいませんか?外部からの攻撃や内部不正、クラウドの脆弱性など、人事情報には多くのリスクが潜んでいます。この記事では、具体的なリスクの種類から講じるべき対策、安全なツールの選び方までを網羅的に解説します。

人事DXでは従業員の重要な個人情報を扱うため、そのセキュリティ対策に大きな不安を感じていませんか。経営層からセキュリティは万全なのかと聞かれても、何から確認すればよいか分からず困ってしまうこともあるでしょう。

この記事では、人事DXに潜む具体的なセキュリティリスクから、今すぐ実践できる対策、そして自社に合った安全な人事管理システムの選び方まで、分かりやすく解説します。

最後までお読みいただくことで、漠然とした不安が解消され、自信を持って人事DXの第一歩を踏み出せるようになるでしょう。

人事DXでセキュリティ対策が重要な理由

人事DXを推進する上で、なぜこれほどまでにセキュリティ対策が重要視されるのでしょうか。

それは人事部門が扱う情報が、企業にとって最も機密性が高く、万が一漏洩した際のリスクが計り知れないからです。まずは、その理由を具体的に見ていきましょう。

保護すべき機密性の高い人事情報

人事部門が扱うデータには、従業員とその家族に関する、非常にプライベートな情報が多く含まれています。氏名や住所といった基本情報はもちろん、マイナンバーや基礎年金番号、給与や評価データ、健康診断の結果といった情報も扱います。これらの情報が組み合わさることで、個人のプライバシーが丸裸になり、なりすましなどの犯罪に悪用されるリスクもはらんでいます。

これらの情報は、法律で厳重な保護が義務付けられているものも少なくありません。特にマイナンバーは「特定個人情報」とされ、個人情報保護法の中でも最も厳格な管理が求められるのです。

ひとたび外部に流出してしまえば、従業員に直接的な被害が及ぶだけでなく、企業の存続を揺るがす事態にもなりかねません。

出典参照:個人情報保護法等|個人情報保護委員会

情報漏洩が企業に与える経営リスク

もし、これらの機密情報が漏洩してしまった場合、企業は具体的にどのようなダメージを受けるのでしょうか。そのリスクは、単にイメージが悪くなるだけでは済みません。これらのリスクは独立しているわけではなく、連鎖的に発生することで、企業の経営基盤そのものを揺るがしかねないのです。

まず、被害に遭った従業員への損害賠償や、原因調査、システム復旧などに多額の費用がかかります。「個人情報を適切に管理できない企業」という印象が広まれば、顧客や取引先からの信頼を大きく損なうことにもなるでしょう。そうなると、採用活動で人が集まらなくなったり、監督官庁から業務停止命令を受けたりする可能性も出てきます。

最悪の場合、事業を続けること自体が難しくなってしまうことも考えられるのです。

人事DXに潜む3つのセキュリティリスク

人事DXは業務効率化に大きく貢献する一方、デジタル化ならではのセキュリティリスクが伴います。ここでは、特に注意すべき代表的な3つのリスクについて解説します。これらのリスクを正しく理解することが、適切な対策を講じるための第一歩となります。

外部からの不正アクセスとサイバー攻撃

企業の持つ情報を狙ったサイバー攻撃は、年々巧妙になっています。人事DXでクラウドサービスなどを利用する場合、インターネット経由での攻撃に常に晒されることになります。特に人事部門は重要な個人情報が集約されているため、サイバー攻撃の格好の標的となりやすいのです。

警察庁サイバー警察局が令和6年12月に公表した「不正アクセス行為対策等の実態調査」によると、このようなサイバー攻撃の脅威は実際に増加傾向にあります。攻撃手段の内訳では、「部外からの不正アクセス」が47.4%で最も多く、昨年度から9.6ポイント増加しています。

例えば、データを人質に取って身代金を要求する「ランサムウェア」や、偽のメールで情報を盗む「標的型攻撃メール」などが代表的です。過去1年間の被害状況において「ランサムウェアによる業務影響」が17.5%で最も高く、また攻撃手段としては「不正なメール(フィッシング含む)」が31.6%と高い割合を占めています。

攻撃者は、盗み出した人事情報を悪用したり、システムそのものを破壊したりすることを狙っています。簡単なパスワードを使いまわしていたり、システムの更新を怠っていたりすると、不正に侵入される危険性が高まります。

出典参照:不正アクセス行為対策等の実態調査(p.25.53.57-58)|警視庁

内部不正による意図的な情報漏洩

セキュリティリスクは、必ずしも会社の外からやってくるわけではありません。実は、情報漏洩の原因として、退職者や今の従業員による内部不正も多く報告されています。

「情報セキュリティ白書」では、2023年の個人情報漏えい・紛失事故175件のうち、「不正持ち出し・盗難」が13.7%(24件)を占めており、内部不正が情報漏えいの重要な原因の一つであることが示されています。また、内部不正による大量の情報漏えいが報告されており、特に大手通信事業者のグループ企業で合わせて1,500万件を超える顧客情報が漏えいした事例が挙げられています

動機は金銭目的だけでなく、個人的な恨みや不満といった感情的なものも多く、予測が難しいという側面もあります。会社の待遇への不満などから、従業員が機密情報を不正に持ち出したり、競合他社へ情報を売ったりするケースです。

特に、給与情報や従業員リストといった機密性の高いデータが、不正な目的で持ち出されやすい傾向にあります。誰でも重要な情報にアクセスできる状態になっていると、こうした内部不正のリスクが非常に高まってしまいます。そのため、役職や仕事内容に応じてアクセスできる人を制限することが大切です。

出典参照:情報セキュリティ白書(p.4.9.35.43-44)|IPA(情報処理推進機構)

クラウドサービスの脆弱性と設定ミス

クラウド型の人事管理システムは、自社でサーバーを持つ必要がなく便利ですが、それが新たなリスクを生むこともあります。サービスを提供している会社がどれだけ頑張っていても、プログラムにセキュリティ上の欠陥が見つかる可能性はゼロではありません。システム導入時の初期設定をそのまま使い続けるのではなく、自社の運用に合わせて定期的に設定を見直すことが求められます。

さらに見落としがちなのが、システムを使う側の設定ミスです。便利なクラウドサービスだからこそ、セキュリティ設定の重要性が見過ごされがちになるのです。例えば、アクセス権限の設定を間違えて、全従業員が役員の給与情報を見られるようにしてしまう、といったケースが考えられます。

「クラウドだから安全」と安心しきるのではなく、提供者と利用者の両方が責任を持つ意識が欠かせません。

講じるべきセキュリティ対策チェックリスト

ここまで解説したリスクに対し、企業は具体的にどのような対策を講じればよいのでしょうか。「システム」「運用」「人」の3つの観点から、対策すべき項目を説明していきます。自社の状況と照らし合わせながら確認してみてください。

システム面での技術的対策

まずは、悪意ある攻撃から情報を守るための技術的な対策が重要です。システム的な防御壁を多層的に構築することで、外部からの脅威を効果的に防ぎます。これらの技術的な対策は、不正な侵入を未然に防ぐだけでなく、万が一侵入された際の被害を最小限に食い止める役割も担っています。導入する人事管理システムに、情報を守るための機能が備わっているかを確認しましょう。

例えば、データを暗号化する機能があれば、万が一データを盗まれても中身を簡単には見られません。また、IDとパスワードだけでなく、スマートフォンなども使って本人確認を行う「二要素認証」は、不正ログインを防ぐのに非常に効果的です。

他にも、会社の中からしかアクセスできないようにする「IPアドレス制限」や、誰がいつアクセスしたか記録する「ログ監視」といった機能も有効です。

運用面での管理的対策

高機能なシステムを導入しても、それを扱う社内のルールが整っていなければ、その効果は半減してしまいます。これらのルールは、作って終わりではなく、定期的に見直しを行い、実効性を保つことが重要です。策定したルールが形骸化しないよう、なぜそのルールが必要なのかという背景や目的まで従業員に共有することが重要です。

情報を安全に扱うための、管理体制や運用ルールをしっかりと作りましょう。大切なのは、従業員の役職や仕事内容に応じて、見せる情報を必要最小限にすることです。異動や退職があった際には、アクセスできる権限を速やかに見直す運用が求められます。

また、人事情報の取り扱いに関する社内ルールをきちんと作り、情報の持ち出し禁止などを全従業員に知らせることも忘れてはいけません。

従業員へのセキュリティ教育と体制構築

セキュリティ対策で最終的に重要になるのは「人」の意識です。従業員一人ひとりが「会社の情報を守る」という当事者意識を持つことが、何よりの防御策となります。研修は一度きりで終わらせるのではなく、最新の脅威や事例を交えながら継続的に行うことで、より高い効果が期待できます。従業員全体のセキュリティ意識を高め、何か問題が起きたときにすぐに対応できる体制を整えることが欠かせません。

不審なメールの見分け方や、安全なパスワードの管理方法などについて、全従業員を対象にした研修を定期的に行うとよいでしょう。また、もしウイルス感染などの問題が起きた場合に、誰にどのように報告すればよいかを事前に決めておくことも大切です。

問題を隠さずに、すぐに報告できる雰囲気を作ることが、被害の拡大を防ぐ鍵となります。

安全な人事管理システムを選ぶ3つの確認ポイント

ここまで解説してきた対策を、自社だけで完璧に行うのは非常に大変です。だからこそ、信頼できる人事管理システム(ツール)を選ぶことが非常に重要になります。

ここでは、ツール選びで失敗しないために、必ず確認したい3つのポイントをご紹介します。

搭載されているセキュリティ機能の網羅性

まず確認したいのは、自社が求めるセキュリティ機能を十分に備えているかどうかです。自社のセキュリティポリシーと照らし合わせて、必要な機能が欠けていないかを確認することが重要になります。

また、企業の成長に合わせて将来的に必要となりそうな機能が、オプションとして追加できるかどうかも確認しておくと良いでしょう。前述の、データの暗号化や二要素認証、IPアドレス制限、アクセスログの監視といった機能が、標準で付いているかを確認することが大切です。これらの機能が、追加料金のかかるオプションではなく、基本機能として提供されているかどうかがポイントになります。

公式サイトの機能一覧を見たり、資料請求をしたりして、詳しい内容をしっかりと確認しましょう。

第三者認証(ISMS等)の取得状況

そのサービスが客観的に見て安全かどうかを判断する上で、分かりやすい目印となるのが「第三者認証」です。これは、外部の専門機関が、その企業のセキュリティ管理体制が国際的な基準を満たしていることを証明するものです。これらの認証は、単に技術的な安全性を証明するだけでなく、組織として情報を適切に管理・運用する仕組みが整っていることを示しています。

例えば、「ISMS認証」や「プライバシーマーク」といった認証があります。これらは、情報セキュリティや個人情報の取り扱いについて、厳しい基準をクリアした証です。認証の維持には定期的な審査が必要なため、継続的に高いセキュリティレベルを保っていることの証明にもなります。

こうした認証を取得しているサービスは、信頼性が高いと判断する一つの大きな材料になるでしょう。

障害発生時のサポート体制と実績

どれだけ優れたシステムでも、障害やトラブルが絶対に起きないとは言い切れません。万が一の事態に備えて、どのようなサポートが受けられるかを確認しておくことは非常に重要です。専門知識がなくても安心して運用を任せられるかどうか、という視点で判断することが大切です。可能であれば、契約前にトライアルなどを利用して、実際のサポート対応の速さや質を体験してみることをおすすめします。

サポートの受付時間はいつか、電話やメールなどどのような方法で問い合わせできるか、といった点を事前に確認しておくと安心です。また、自社と同じような業種や規模の会社への導入実績が豊富かどうかも見ておきましょう。多くの企業に選ばれているということは、それだけ信頼されている証拠と言えます。

人事担当者が知るべき関連法規の要点

人事DXにおけるセキュリティ対策は、単にリスクを管理するためだけのものではありません。

法律によって定められた企業の義務を果たすためにも、必ず行う必要があります。

ここでは、人事担当者として最低限知っておきたい法律のポイントを解説します。

個人情報保護法における企業の義務

企業は、個人情報保護法という法律に基づいて、扱う個人データを安全に管理するための措置をとる義務があります。これには、社内に責任者を置いたり、従業員を教育したり、システムの安全性を高めたりといった対策が含まれます。法律で定められた義務を一つひとつ着実に果たすことが、結果的に企業のセキュリティレベル全体を底上げすることにつながります。

これまで説明してきた対策は、まさにこの法律上の義務を果たすことにもつながるのです。また、万が一漏洩が発生した際には、個人情報保護委員会への報告や本人への通知も義務付けられており、事後対応の体制構築も求められます。もし、この義務を怠って重大な情報漏洩を起こしてしまうと、企業に対して重い罰金が科される可能性もあります。

出典参照:個人情報保護法等|個人情報保護委員会

法改正へのシステム対応状況

個人情報保護法は、社会の変化に合わせて、数年ごとに内容が見直されます。法改正によって企業が守るべきルールが変わるため、常に最新の法律に対応しなくてはなりません。サービス提供者のウェブサイトや契約書で、法改正への対応方針が明記されているかを確認することが重要です。自社でシステムを管理している場合、法改正のたびに専門家への確認やシステムの改修が必要となり、大きなコストと手間がかかってしまいます。

この点、クラウド型の人事管理システムを利用する大きなメリットがあります。それは、面倒な法改正への対応を、サービスを提供している会社側で行ってくれることです。将来的なリスクとコストを抑えるためにも、システムを選ぶ際には、こうした法改正への対応を迅速に行ってくれるかどうかも、確認しておくとより安心できるでしょう。

人事DX成功の鍵はリスク理解とツール選定

この記事では、人事DXを進める上でのセキュリティリスクと、その具体的な対策、そして安全なツールの選び方について解説してきました。

セキュリティ対策と聞くと、費用のかかる面倒なものだと感じてしまうかもしれません。しかしその本当の目的は、従業員の大切な情報を守り、安心して働ける職場環境を作ることへの投資なのです。

適切な対策を行い、信頼できるツールを選ぶことは、会社の信用を高めてこれからの成長を支える土台となります。まずは自社の現状を把握し、課題を解決できるパートナーとして、信頼できる人事管理システムを探すことから始めてみてはいかがでしょうか。