法務DXとは?メリットから始め方までわかりやすく解説

法務DXの導入で失敗したくない担当者様へ。この記事では法務DXが求められる背景、業務効率化やコスト削減といったメリット、具体的な始め方4ステップ、ツール選定のポイント、中小企業の成功事例までを網羅的に解説していきます。

「契約書の確認に時間がかかり、事業のスピードを遅らせてしまっている…」

「リモートワークを導入したいのに、紙とハンコの文化が根付いていて進まない…」

企業の法務や管理部門では、このような悩みを抱えている方も多いのではないでしょうか。その解決策となるのが、デジタル技術で法務の仕事を変える「法務DX」です。

この記事では、法務DXの基本からメリット、具体的な始め方まで、専門用語を避けて分かりやすく解説します。自社の課題を解決するヒントがきっと見つかるはずです。

法務DXとは何か

法務DXは、単に紙の書類をパソコンのデータに置き換えるだけではありません。最新のテクノロジーを使って、法務の仕事のやり方そのものを見直し、さらに効率的で価値のある業務に変えていく取り組み全体を指しています。

契約業務の効率化とリスク管理の強化

法務DXで最も大切なのは、契約業務の効率化とリスク管理の強化です。

これまでの手作業による契約プロセスは、時間がかかる上に、人の手によるミスや書類の紛失といったリスクが常にありました。法務DXはAIが契約書のリスクを自動でチェックしたり、クラウド上で契約書をまとめて管理したりすることで、これらの課題を解決に導きます。

これにより、担当者は単純な作業から解放され、より専門的な仕事に集中できるようになるのです。これまで見過ごされがちだった契約上の細かなリスクも、テクノロジーの力で発見しやすくなります。

リーガルテックとの関係性

法務DXについて知る上で、「リーガルテック」という言葉も重要です。リーガルテックとは、法律(Legal)と技術(Technology)を組み合わせた言葉で、法務DXを実現するための具体的なツールのことを指します。

具体的には、AI契約レビューシステムや電子契約サービスなどが、代表的なリーガルテックにあたります。つまり、法務DXという「目的」を達成するための「手段」がリーガルテックだと考えると分かりやすいです。

法務DXを進めることは、自社の課題に合ったリーガルテックを選んで、上手に活用していくことだと言えるでしょう。

法務DXが求められる3つの背景

なぜ今、多くの企業で法務DXがこれほど注目されているのでしょうか。その背景には、私たちの働き方やビジネス環境の大きな変化があります。

働き方改革とリモートワークの普及

働き方改革の推進とリモートワークの普及は、法務DXが広まる大きなきっかけとなりました。「紙の契約書にハンコを押して郵送する」という昔ながらの方法では、会社に行かなければ仕事が終わりません。

これでは、従業員が自由な働き方を選ぶのは難しいでしょう。

電子契約サービスなどを導入すれば、どこにいても契約業務を進められるようになり、リモートワークにも柔軟に対応できます。これにより、従業員の多様な働き方をサポートできるため、優秀な人材の確保や定着にも繋がるというメリットもあります。場所に縛られない業務フローを構築することは、事業継続計画(BCP)の観点からも非常に重要です。

コンプライアンス強化の社会的要請

最近では、企業のルール違反に対する社会の目が非常に厳しくなっています。そのため、コンプライアンス(法令遵守)の体制を強化することは、どのような企業にとっても大切な課題です。

契約管理システムを導入して契約書を一元管理すれば、更新期限を忘れたり、社内ルールを無視した契約を結んでしまったりするリスクを防げます。法務DXは、会社を守るという観点からも非常に重要です。

また、誰がいつ契約を承認したのかという記録がデータとして正確に残るため、社内外への説明責任を果たしやすくなります。複雑化する法規制に迅速に対応し、企業の信頼性を高める上でも欠かせない取り組みと言えるでしょう。

ビジネススピードの加速化への対応

市場の変化が速い現代では、ビジネスのスピードが会社の競争力に直接影響します。新しいビジネスを始める際に、法務の契約書チェックに時間がかかってしまうと、大きなチャンスを逃すことにもなりかねません。

AIのツールなどを活用して審査時間を短くすることは、会社全体の成長を後押しすることに繋がります。

競合他社もスピードを重視する中で、法務部門がボトルネックになってしまうと、事業の機会損失は計り知れません。

事業部門と法務部門がスムーズに連携し、迅速な意思決定を支える基盤として、法務DXの役割はますます大きくなっています。

法務DX導入で得られる4つのメリット

法務DXを進めることで、企業は具体的にどのような良いことがあるのでしょうか。ここでは、代表的な4つのメリットをご紹介します。

業務効率化による生産性の向上

一番のメリットは、法務に関する仕事がぐっと楽になり、効率が上がることです。例えば過去の契約書を探す時間がほぼゼロになったり、書類の承認プロセスがスムーズに進んだりします。また、契約書のひな形作成を自動化できるツールもあり、日々の作業時間を大幅に短縮することが可能です。

これにより生まれた時間で、事業戦略に寄り添った提案や、将来起こりうるリスクを先回りして防ぐといった、より創造的で重要な業務に取り組めるようになります。日々の定型業務から解放されることで、法務部門が会社の成長に直接貢献できる場面が増えるでしょう。

印紙代や郵送費などのコスト削減

紙の契約書を電子データに切り替えることで、目に見えるコストを減らせます。電子契約の場合、契約金額によっては必要だった収入印紙が不要になります。

さらに、契約書を送るための郵送費や、印刷するためのインク代、紙代もかかりません。契約の数が多い会社ほど、その削減効果は大きくなるでしょう。

それだけでなく、大量の書類を保管するためのキャビネットや倉庫スペースも不要になるため、オフィスの省スペース化にも繋がります。書類の管理にかかっていた人件費といった、見えにくいコストの削減も期待できます。

契約リスクの可視化とガバナンス強化

契約管理システムなどで情報をまとめて管理すると、契約に隠れたリスクが見えやすくなり、管理体制も強化されます。契約の更新日が近づくと自動でお知らせしてくれたり、権限のない人が契約書を閲覧できないように設定したりできます。

これにより、うっかり契約が自動更新されてしまうといった事態を防ぎ、会社のルールがきちんと守られる健全な経営に繋がります。誰がいつ何を承認したのかという履歴が正確に残るため、内部監査の際にもスムーズに対応することが可能です。

会社全体で契約に関するルールが統一され、組織としての統制が取りやすくなる点も大きなメリットです。

法務ナレッジの蓄積と共有

法務の知識やノウハウは、特定の詳しい人に頼りがちになることがあります。法務DXは、そうした「個人が持つ知識」を「会社の財産」として蓄積し、共有するための土台にもなります。過去の契約データや審査の履歴がシステムに残るため、担当者が交代しても仕事の質を保ちやすくなります。

新しい担当者の教育にも役立ち、会社全体の法務対応力を高める効果が期待できるでしょう。法務部門内での判断基準が統一されるため、担当者による判断のブレが少なくなるという利点もあります。これにより、事業部門からの信頼も高まり、よりスムーズな連携が実現します。

法務DXの対象業務と代表的なツール

法務DXは、具体的にどのような仕事で活用されているのでしょうか。

ここでは、3つの業務とそこで使われる代表的なツールを紹介します。

契約書レビュー業務とAI契約レビュー

契約書に隠れたリスクを見つけ出すレビュー業務は、法務担当者の専門知識が特に必要とされる仕事です。ここで活躍するのが、AI契約レビューツールです。

AIが契約書を瞬時に読み込み、会社にとって不利な部分や、必要なのに抜けている条項などを自動で指摘してくれます。担当者はAIのチェック結果を確認するだけで済むため、レビュー時間を大幅に短縮し、見落としのリスクも減らせます。膨大な量の契約書を人の目だけで確認するのは、非常に集中力が必要で、時間もかかります。

AIツールは経験豊富な法務担当者のように、瞬時に契約書全体をスキャンしてくれる頼もしいアシスタントのような存在です。これにより、担当者はより複雑な法的判断や、事業部門へのアドバイスといった、人でなければできない高度な業務に集中できます。

契約書管理業務と契約管理システム

結び終わった契約書を、後から見返せるようにきちんと保管・管理する仕事も、法務DXの重要な対象です。この業務を効率化するのが、契約管理システムです。契約書の情報をデータとして一元管理し、必要な契約書をキーワードですぐに探し出せます。

また、契約の更新期限が近づくと知らせてくれる機能もあり、紙の書類を探す手間や更新忘れのリスクから解放されます。「あの契約書は、どのキャビネットに入れただろうか」と探す時間は、もう必要ありません。システムが会社の契約書をすべて記憶してくれる、安全なデジタル書庫の役割を果たします。

契約内容に関する問い合わせがあった際にも、数秒で該当箇所を見つけ出せるため、社内からの信頼性も向上するでしょう。

契約締結業務と電子契約サービス

契約を結ぶ最終プロセスも、DXによって大きく変わります。その中心となるのが電子契約サービスです。このサービスを使えば、オンライン上で契約を交わすことができます。

電子署名とタイムスタンプという技術により、紙の契約書と同じように法的な効力が認められています。書類の印刷やハンコを押す作業、郵送の手間がなくなり、契約を結ぶまでの時間を劇的に短縮できるのが魅力です。これまで数日かかっていた契約締結が、相手方が確認すれば数分で完了することもあります。

契約の進捗状況もシステム上で確認できるため、「相手に書類は届いただろうか」といった心配もなくなります。

【事例】法務DXで課題を解決した企業

ここでは、実際に法務DXによって課題解決に成功した企業の事例を見ていきましょう。

住友商事|AI契約レビューで法務ナレッジを蓄積・効率改善

多様な事業を展開する住友商事株式会社では、各部門から法務部への契約書レビュー依頼が急増し、担当者の業務が非常に多忙になっていました。また、レビューの品質が担当者の経験に左右されがちで、優れたノウハウが個人にとどまってしまうという課題も抱えていました。

そこで同社は、契約業務のDXを支援する「MNTSQ CLM」というツールを導入しました。このツールによって、過去の膨大な契約書データの中から、参考にしたい類似案件を簡単に見つけ出せるようになりました。

これにより、特に経験豊富なエース級の担当者が持つ高度なノウハウを、組織全体で共有できるようになったことが大きな成果です。結果として、若手担当者でも質の高いレビューが迅速に行えるようになり、業務効率の向上と人材育成の両方を実現しました。

出典参照:「住友商事らしい法務」をナレッジマネジメントとAI契約レビューで実現|住友商事株式会社

法務DX導入を成功させる4ステップ

法務DXを成功させるためには、計画的に進めることが非常に大切です。ここでは、導入を成功に導くための具体的な4つのステップをご紹介します。

ステップ1:現状業務の課題を可視化

まずは、今の法務の仕事で何に困っているのか、課題を洗い出して見えるようにすることから始めましょう。「どこに時間がかかっているのか?」「どのようなリスクがあるのか?」を具体的に把握することが、最適なツール選びの第一歩になります。

実際に業務を担当しているメンバーにヒアリングを行い、日々の業務で不便に感じている点を具体的に聞き出すことが大切です。例えば、「契約書の検索に平均で15分かかっている」「レビューの差し戻しが月に5件発生している」といったように、できるだけ具体的な数字で課題を把握すると、後の効果測定がしやすくなります。

この最初のステップを丁寧に行うことで、なぜDXが必要なのかという目的が明確になり、社内の協力を得やすくなるでしょう。

ステップ2:導入範囲と目標を明確化

次に、どこからDXを始めるのか(導入範囲)と、何を目指すのか(目標)をはっきりと決めます。いきなりすべての業務を変えようとすると大変なので、まずは「契約書の管理から」というように、小さな範囲から始めるのが成功のコツです。

すべての業務を一度に変えようとすると、現場の混乱を招き、失敗のリスクが高まります。まずは最も課題が大きい業務や、効果が出やすい部分に絞って取り組むのがおすすめです。

目標を設定する際は、「契約レビューの時間を30%削減する」や「契約書の検索時間を1分以内にする」といった、誰が見ても達成できたかどうかが分かる具体的な数字を使いましょう。

ステップ3:スモールスタートでツールを導入

導入範囲と目標が決まったら、実際にツールを選び、まずは限定した範囲で試験的に使ってみます。無料でお試し利用できるツールも多いので、現場の担当者の意見も聞きながら、自社に合っているかを確かめるのがおすすめです。

複数のツールの無料トライアルを試してみて、それぞれの操作性や機能を比較検討すると、自社に最適なものが見つかりやすくなります。この段階で、実際にツールを使うことになる現場の担当者に触ってもらい、「使いやすいか」「業務の流れに合っているか」といった生の声を集めることが非常に重要です。

試験導入は、本格導入の前に問題点や改善点を見つけ出し、計画を修正するための大切な準備期間だと考えましょう。

ステップ4:効果検証と全社への展開

試験導入の結果、どのような効果があったかを評価します。目標としていた数字が達成できたかを確認し、効果があると分かれば、社内での利用範囲を少しずつ広げていきましょう。ステップ2で設定した目標(KPI)と実際の結果を比較し、「これだけの時間が短縮できた」「これだけのコストが削減できた」という具体的な成果をまとめます。

この成功事例をもとに、社内説明会を開いたり、分かりやすいマニュアルを準備したりして、他の部署にも展開していく準備を進めます。一度導入して終わりではなく、定期的に利用状況を確認し、改善を繰り返していくことで、法務DXは会社全体に定着していきます。

中小企業が法務DXを成功させるポイント

「法務DXは大企業の話では?」と感じるかもしれませんが、実は人手が限られる中小企業にこそ、そのメリットは大きいのです。中小企業が法務DXを成功させるためのポイントを解説します。

まず、導入コストを抑えられるクラウド型のツールを選ぶことが重要です。初期費用が安く、月額料金で利用できるサービスなら、大きな投資をしなくても始められます。

次に、何から手をつけて良いか分からない場合は、ツールの提供会社など専門家のサポートを活用するのも良い方法です。自社の悩みを相談すれば、ぴったりのツールや進め方を提案してくれるでしょう。

最後に、従業員が使いやすいシンプルな機能のツールを選ぶことを心がけてください。

多機能すぎるとかえって難しくなってしまうため、自社の課題解決に必要な機能がそろった、直感的に使えるツールがおすすめです。

法務DX導入における3つの課題と解決策

法務DXを進める上では、いくつかの壁にぶつかることもあります。あらかじめ課題を知り、対策を考えておくことが成功の鍵です。

課題1:導入・運用コストの確保

一つ目の課題は、ツールの導入や運用にかかるコストです。新しいツールを入れるには予算が必要ですが、その効果をきちんと説明できなければ、会社の承認を得るのは難しいかもしれません。この課題に対しては、削減できる印紙代や人件費、業務効率化によるメリットなどを具体的な金額で示し、投資する価値があることを伝えるのが有効です。

「このツールを導入すれば、年間でこれだけのコストが削減でき、投資額を2年で回収できます」といったように、具体的な数字で費用対効果を示すことが重要です。また、ビジネススピードの向上やリスク低減といった、金額では表しにくい価値についても合わせて説明し、多角的な視点からメリットを伝えましょう。

課題2:現場のITリテラシーと定着

二つ目の課題は、現場の従業員が新しいツールに慣れることです。変化を好まなかったり、ITツールが苦手だったりする人から、戸惑いの声が上がる可能性があります。

解決策としては、導入の目的やメリットを丁寧に説明し、なぜこれが必要なのかを理解してもらうことが不可欠です。導入初期には、気軽に質問できる相談会を設けたり、操作に詳しい担当者を各チームに配置したりするなど、手厚いサポート体制を整えることが定着の鍵となります。

一部の部署で成功事例を作り、その便利さを社内に広めていくことで、「自分たちも使ってみたい」という前向きな雰囲気を醸成することも効果的です。

課題3:情報漏洩とセキュリティ対策

三つ目の課題は、セキュリティへの不安です。大切な契約書をインターネット上のクラウドで管理することに、情報漏洩のリスクを感じる方もいるでしょう。この点については、国際的なセキュリティ認証を取得しているかなど、ツールの安全対策を事前にしっかり確認することが大切です。

ツールの提供会社がどのようなデータ管理体制を敷いているのか、第三者機関による客観的な評価を受けているかなどをチェックリスト化して確認しましょう。また、社内でもアクセス権限を役職や担当業務に応じて細かく設定したり、定期的にパスワードを変更するルールを徹底したりするなど、ツールと運用の両面からセキュリティ対策を講じることが求められます。

自社の課題を整理し最適な法務DXを始めよう

この記事では、法務DXの基本からメリット、導入のステップまで、幅広く解説しました。法務DXは、もはや一部の特別な企業だけのものではありません。

これからの時代、会社の競争力を保ち、成長していくために欠かせない取り組みです。

もし「何から始めればいいか分からない」と感じているなら、まずは自社の法務の仕事で、何に一番困っているのかを整理することから始めてみてください。課題がはっきりすれば、進むべき道もおのずと見えてくるはずです。