法務DXの進め方完全ガイド |6ステップとツール選び

法務DXの進め方に悩んでいませんか?本記事では、現状分析から目標設定、ツール選定、導入後の改善まで、失敗しないための具体的なステップを解説。主要なリーガルテックツールの種類や選び方のポイント、成功事例も紹介します。

「契約書の確認に時間がかかる」「押印のためだけに出社が必要」といった課題はありませんか?アナログな業務は事業の停滞を招きます。その解決策が法務DXです。

本記事では、法務DXの基本から具体的な進め方、ツール選定までを網羅的に解説します。何から始めるべきか分からない担当者の方でも、自社のDX推進に向けた第一歩を踏み出せるよう、分かりやすくガイドします。

法務DXとは何か

法務DXは、単なるツールの導入ではありません。法務業務のあり方を根本から見直し、企業の競争力を高めるための重要な取り組みです。ここでは、その基本的な考え方と、なぜ今その必要性が高まっているのかについて解説します。

法務DXの基本的な定義

法務DXとは、AIやクラウドなどのデジタル技術を用いて、契約書の作成・審査・締結・管理といった法務業務のプロセス全体を変革することです。目的は、紙の書類を電子化するだけでなく、業務フローそのものを効率化・高度化することにあります。

定型的な作業を自動化することで、法務担当者はより専門性が求められる戦略的な業務に集中できるようになり、企業価値の向上に貢献します。

なぜ今、法務DXが求められるのか

現在、多くの企業で法務DXへの取り組みが急務とされています。その背景には、老朽化したITシステムが経済的損失を生むとされる「2025年の崖」問題への対策があります。

また、テレワークの普及に伴い、押印のためだけに出社する旧来の働き方を見直す必要性も高まっています。さらに、企業のコンプライアンス意識の高まりから、契約管理プロセスをデジタル化し、内部統制を強化する動きも活発化しています。

出典参照:DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~|経済産業省

法務DXがもたらす4つのメリット

法務DXを推進することは、業務効率化やコスト削減に留まらず、企業の基盤強化にも繋がる多くのメリットをもたらします。このセクションでは、その代表的な4つのメリットについて具体的に見ていきましょう。

メリット1 業務効率化による生産性向上

法務DXがもたらす最大のメリットは、業務効率の飛躍的な向上です。AI契約書レビューツールはリスクのある条文を瞬時に検知し、電子契約サービスは印刷・製本・郵送といった物理的な作業を不要にします。

これにより、契約締結までの時間が劇的に短縮され、法務担当者は単純作業から解放されます。創出された時間を、より付加価値の高い戦略的な業務に充てることで、部門全体の生産性を高めることができます。

メリット2 コスト削減と人的リソースの最適化

契約業務をデジタル化することは、直接的なコスト削減に繋がります。紙の契約書で発生していた印刷代、郵送費、印紙税(一部契約を除く)、さらには書類の保管スペースにかかる費用も不要になります。

このようにして削減されたコストや、業務効率化によって生まれた人的リソースを、事業成長に繋がる他の領域へ再投資することが可能となります。こうしてより戦略的な経営資源の活用が実現します。

メリット3 内部統制とコンプライアンスの強化

契約書や関連書類をデジタルデータとして一元管理することは、内部統制とコンプライアンスの強化に大きく貢献します。

契約管理システムを導入すれば、誰がいつどの契約書にアクセスしたかの記録が正確に残り、不正な持ち出しや改ざんのリスクを低減できます。また、契約更新の期限を自動で通知する機能を活用すれば、更新漏れといった人為的ミスを防ぎ、契約管理の精度を格段に高めることができます。

メリット4 テレワークなど多様な働き方への対応

法務DXは、場所や時間に縛られない柔軟な働き方を実現するための基盤となります。契約業務の全プロセスがクラウド上で完結するようになれば、押印や書類確認のためだけに出社する必要がなくなります。

これにより、法務部門でもスムーズにテレワークを導入できるようになり、従業員のワークライフバランス向上に繋がります。結果として、優秀な人材の確保や定着にも好影響をもたらすでしょう。

法務DXの進め方6つの基本ステップ

法務DXを成功に導くためには、場当たり的に進めるのではなく、計画的かつ段階的なアプローチが不可欠です。ここでは、導入をスムーズに進めるための基本的な6つのステップを解説します。

ステップ1 現状業務の可視化と課題の特定

最初のステップは、現在の法務業務の全体像を正確に把握することです。契約書の作成から管理に至るまで、どのようなフローで、誰が、どれくらいの時間をかけて業務を行っているのかを詳細に洗い出します。

このプロセスを通じて、「契約書のレビューに時間がかかりすぎている」「過去の契約書を探すのに手間取っている」といった、具体的な課題や業務のボトルネックとなっている箇所を明確に特定します。

ステップ2 DX化の目的とゴール(KPI)の設定

次に、特定した課題に基づき「何のためにDXを行うのか」という目的を明確にし、具体的なゴールを設定します。

この際、「契約レビューにかかる時間を50%削減する」や「契約締結までのリードタイムを平均3日短縮する」といった、数値で測定可能なKPI(重要業績評価指標)を設定することが重要です。

具体的な目標を立てることで、導入効果を客観的に評価し、関係者の共通認識を醸成しやすくなります。

ステップ3 導入範囲の決定とスモールスタート計画

全社で一斉に導入するのではなく、特定の業務や部署に範囲を絞って小さく始める「スモールスタート」が成功の鍵です。例えば、「まずは秘密保持契約(NDA)の締結業務のみを電子化する」といった形で対象を限定します。

小さな範囲で試行することで、導入における課題を早期に発見し、改善策を講じることができます。この成功体験を基に段階的に対象を広げていくことで、全社展開時の失敗リスクを最小限に抑えられます。

ステップ4 ツール・ベンダーの比較検討と選定

次は設定した目的とゴールを達成するために、最適なツールやサービスを選定する段階です。

法務DXツールには様々な種類があるため、複数の製品を比較検討し、自社の課題解決に最も貢献してくれるものを選びましょう。機能だけでなく、操作の分かりやすさも重要な判断基準です。

多くのサービスが提供している無料トライアルなどを活用し、実際に操作性を確認した上で決定することが望ましいです。

ステップ5 全社展開に向けた運用体制の構築

スモールスタートで効果が確認できたら、全部門への展開に向けた準備を進めます。新しい業務フローやツールの使い方を定めた社内ルールを整備し、誰でも理解できるよう、簡単なマニュアルを作成します。

また、営業部門や経理部門など、関連部署への説明会や研修会を丁寧に実施することが不可欠です。こうして全社的な理解と協力を得ることで、スムーズな導入と定着を実現できるでしょう。

ステップ6 定期的な効果測定と改善活動

ツールの導入はゴールではなく、継続的な改善活動のスタートです。

導入後は、ステップ2で設定したKPIを基に定期的に効果を測定し、期待した成果が出ているかを確認します。実際にツールを利用する従業員からフィードバックを収集し、より使いやすい運用方法を検討するなど、PDCAサイクルを回し続けることが重要です。

このような地道な改善活動が、法務DXの効果を最大化させます。

法務DX推進で直面する代表的な課題

法務DXの推進は、常に順調に進むとは限りません。多くの企業が直面する可能性のある代表的な課題と、その対策をあらかじめ理解しておくことで、よりスムーズな導入が可能になります。

課題1 導入・運用にかかるコストの確保

ツールの導入には、初期費用や月額利用料といったコストが発生します。

この費用を確保するためには、経営層への説明が不可欠です。導入によってどれだけの業務が効率化され、人件費や印紙代などのコストが削減できるのかを具体的に算出し、費用対効果を明確に示しましょう。

また、国や自治体が提供しているIT導入補助金制度などを活用することも、コスト負担を軽減する有効な手段です。

出典参照:IT導入補助金2025|サービス等生産性向上IT導入支援事業事務局

課題2 関連部署からの協力体制の構築

法務DXは、法務部だけで完結するものではなく、営業や経理など多くの部署を巻き込む改革です。そのため、新しい業務フローへの変更に対して、関連部署から反発を受ける可能性も少なくありません。

そのため事前にDXの必要性や、導入によって各部署が得られるメリットを丁寧に説明し、関係者を巻き込みながら進める「チェンジマネジメント」の視点を持つことが、円滑な導入の鍵となります。

課題3 取引先の電子化への対応

自社が電子契約システムを導入しても、取引先が従来通りの紙の契約書を希望するケースは少なくありません。とはいえ全ての取引先に電子契約を強制することは現実的ではないため、柔軟な対応が求められます。

電子契約の安全性や利便性を丁寧に説明して理解を求めつつ、当面は電子契約と紙の契約を併用する運用体制を整えるなど、段階的に移行を進めるのが賢明です。取引先に理解してもらえるような働きかけも進めましょう。

課題4 情報セキュリティリスクの管理

契約書という企業の機密情報をクラウド上で扱うことに対し、セキュリティ面の不安を感じる声は根強くあります。この懸念を払拭するためには、信頼性の高いツールを選定することが大前提です。

通信の暗号化やアクセス制限、二段階認証など、高度なセキュリティ機能を備えているかを確認しましょう。同時に、社内での情報管理ルールを徹底し、従業員のセキュリティ意識を高める教育も重要です。

法務DXを実現する主要ツール

法務DXを支える「リーガルテック」と呼ばれるツールは多岐にわたります。自社の課題に合わせてこれらのツールを組み合わせることで、DXの効果を最大化できます。ここでは代表的なツールを紹介します。

電子契約サービス

電子契約サービスは、契約書の作成から締結、保管までをクラウド上で完結させるツールです。印紙税や郵送費といったコストを大幅に削減し、契約締結までのスピードを飛躍的に向上させます。場所を問わずに署名・捺印ができるため、テレワークの推進にも直結します。

締結した契約書は法的な有効性を担保したまま安全に一元管理され、検索性も向上します。これにより、事業機会を逃さない迅速な意思決定を支援し、企業の競争力強化に大きく貢献します。

AI契約審査支援システム

AI契約審査支援システムは、AIが契約書に潜む不利な条文やリスクを自動で検知し、修正案を提示するツールです。経験の浅い担当者でもレビュー品質を担保できるほか、ベテラン担当者の二重チェックの負担を軽減し、より高度な戦略法務に集中する時間を創出します。

自社の法務基準を反映させることで、審査業務の品質向上と標準化を実現できます。属人化を解消し、法務部門全体の業務レベルを引き上げることで、事業のスピードを損なわない安全な取引を可能にします。

契約書管理システム

契約書管理システムは、締結済みの契約書を電子データとして一元管理するツールです。キーワードや取引先名などで瞬時に検索でき、過去の契約書を探す手間が不要になります。

契約期間の満了が近づくと自動でアラートを通知する機能は、更新漏れなどの重大なリスクを未然に防ぎます。部署ごとにアクセス権限を設定できるため、情報漏洩のリスクを低減し、セキュリティの高い情報共有が可能です。これにより、契約管理の精度と安全性を高め、企業全体のガバナンス強化に大きく貢献します。

リーガルリサーチツール

リーガルリサーチツールは、膨大な法令や判例、法律関連の文献などを効率的に検索できるツールです。法改正の情報を迅速に収集したり、類似判例を調査したりする時間を大幅に短縮します。

信頼性の高い情報源へ横断的にアクセスできるため、リサーチ業務の負担が軽減され、法務担当者はより正確かつ迅速な法的判断を下すための時間を確保できます。これにより、変化の速い法務環境に的確に対応し、事業判断を支えるための重要な基盤を構築します。

失敗しないツール選定3つのポイント

ポイント1 解決したい課題を明確にする

ツール選定で最も重要なのは、「なぜ導入するのか」という目的を常に意識することです。「契約締結のスピードを上げたい」「レビューの品質を均一化したい」など、自社が最も解決したい課題を明確にしましょう。

その課題解決に直結する機能を備えたツールを選ぶことが、導入効果を実感するための最短ルートです。流行りや多機能性だけで選ぶのではなく、自社の課題に寄り添ったツールを選定する視点が不可欠です。

ポイント2 操作性とサポート体制を確認する

ツールは法務担当者だけでなく、ITに不慣れな従業員も利用する可能性があります。そのため、誰にとっても直感的で分かりやすい操作画面であるかは非常に重要な選定ポイントです。

また、導入時や運用中に問題が発生した際に、迅速かつ丁寧に対応してくれる手厚いサポート体制が整っているかも必ず確認しましょう。無料トライアル期間などを活用し、実際の使用感を試した上で判断することをお勧めします。

ポイント3 セキュリティ要件を定義する

企業の機密情報である契約書を預ける以上、セキュリティの堅牢性は譲れないポイントです。まずは自社のセキュリティポリシーで定められている要件を明確にし、それを満たすツールを選定しましょう。

具体的には、通信やデータの暗号化、IPアドレス制限や二段階認証といった不正アクセス対策、国際的なセキュリティ認証の取得状況などを総合的に評価し、安心して利用できるサービスを選びましょう。

法務DXの導入成功事例

法務DXを導入することで、企業は具体的にどのような成果を上げているのでしょうか。ここでは、AI契約書レビュー支援サービスなどを活用した3つの成功事例を紹介し、導入後の効果をイメージします。

事例1:契約業務のリードタイムを大幅に短縮

株式会社東海理化におけるHubble導入事例の1つとして、契約業務のリードタイムが大幅に短縮されました。

具体的には、Hubble導入前は、従来の契約書審査依頼から審査までのスピード感では、新規事業に関連する契約審査や、社会・技術の変化への適応が困難になるという危機感がありました。

Hubble導入後、この課題が解決され、法務室・知的財産室と事業部門の連携が強化されました。その結果、契約書の審査依頼のリードタイムは、最大3週間かかっていたものが最短1営業日まで短縮されました。

出典参照:【Hubble活用事例】時代の変化に合わせた全社DXを実現!Hubbleで事業部門と法務の連携を強化しビジネススピードを加速した東海理化の「Hubble」活用事例を公開|Hubble(ハブル) – 契約書管理クラウドサービス

事例2:契約書業務を効率化し法務リソースを最適化

「契約書業務を効率化し法務リソースを最適化」というテーマに沿って行った、株式会社Grand CentralのHubble導入事例があります。

同社は事業拡大に伴う契約審査の倍増により、一人法務での対応困難、契約書管理の自動化不足、情報の散在といった課題に直面していました。

Hubble導入後、契約締結までのリードタイムを大幅短縮し、営業効率が向上しました。また、契約関連情報を一元的・自動的に管理することでナレッジマネジメントを実現。事業部門が自ら契約書を参照できるようになり、全社の契約リテラシーが向上した結果、法務リソースの最適化に繋がりました。

出典参照:【Hubble活用事例】月300件の契約に応える強い法務体制へ!一人法務が挑んだ攻めと守りの契約DXーGrand Centralの「Hubble」活用事例を公開 | 株式会社Hubbleのプレスリリース

事例3:AIレビューで英文契約審査を効率化

「AIレビューで英文契約審査を効率化」の事例は、富士カプセル株式会社におけるLegalForce導入によって実現しました。

同社では、一人で知財管理と契約審査を兼務する担当者が、英文契約審査の負担や社内で審査できる契約の幅を広げることが課題でした。

LegalForce導入後、AI自動レビュー機能により、英文契約書の工数が4割以上削減されました。AIがアラートを出し、修正文例に日本語訳が付くことで、英語が苦手でも迅速かつスムーズに審査が可能に。これにより社内審査の幅が広がり、法的リスク低減に繋がりました。一人法務や中小企業にも推奨される事例です。

出典参照:知財畑出身ながら契約審査も1人で担う 英文契約で4割以上の工数削減を実感|株式会社LegalOn Technologies

今こそ法務DXの導入を進めよう

法務DXは、単なる業務効率化の手段ではありません。それは、法務部門が定型業務から解放され、より戦略的で付加価値の高い役割を担うための変革であり、ひいては企業全体の競争力を高めるための重要な経営戦略です。

何から手をつければよいか分からないと感じるかもしれませんが、まずは自社の業務フローを可視化し、課題を特定することから始めてみましょう。そして、今回ご紹介したステップに沿って、小さな範囲からでも第一歩を踏み出すことが成功への鍵となります。