建設DXでペーパーレス化は可能?メリットや成功のステップを解説

建設DXの一環としてペーパーレス化に取り組むメリットと実施ステップを解説します。ペーパーレス化に取り組むことで、業務効率化やコスト削減、情報共有の迅速化、セキュリティ向上につながります。ペーパーレス化を進める際はスモールスタートを意識しましょう。

建設業界では、契約書や図面、報告書、見積書など多種多様な書類が日々やり取りされています。現場作業が中心となる業種であるため、長年にわたり紙媒体による運用が主流でした。しかし、紙ベースの業務は作成や保管、共有に多くの時間とコストを要し、業務効率化や情報活用の妨げとなっています。

近年では建設DXの一環として、ペーパーレス化を進める企業が増加傾向にあります。ペーパーレス化は単なる紙削減ではなく、業務のスピードや正確性を向上させ、コスト削減やセキュリティ強化にもつながる取り組みです。この記事では、建設業が抱える紙文化の課題を深掘りし、ペーパーレス化のメリット、成功へのステップ、そして実際の事例をわかりやすく解説します。

建設業が抱える紙文化の3つの課題

建設業では紙文化が根強く残っており、業務効率や情報共有に多くの制約を与えています。特に契約書や図面、各種報告書といった書類は紙でやり取りされるケースが多く、現場と事務所間での情報伝達に時間がかかってしまうのが課題です。

建設業は現場作業が中心の業種であるため、オフィスに戻らなければ更新や承認ができないといった非効率さが残り、業務のスピード感を損ないます。こうした課題は、デジタル化の遅れによって一層深刻化しやすいでしょう。

1.書類作成・管理の手間による非効率な業務

契約書や設計図、工程表などの作成・印刷・配布には時間と労力がかかります。さらに、現場や部署ごとに保管場所が異なり、必要な書類を探すだけで長時間を費やすことも少なくありません。紙書類は更新のたびに印刷し直す必要があり、バージョン管理も複雑化します。結果として、本来の業務に割ける時間が減り、生産性が低下する原因になりかねません。

加えて、過去の案件や図面を参照する際にも紙書類では検索性が低く、探し出すのに多くの時間を要します。書類保管スペースの確保や整理整頓にも人員とコストがかかり、業務負担が増大してしまうでしょう。これらの非効率は、特に長期・大規模プロジェクトでは顕著で、進行スピードや品質管理にも悪影響を及ぼします。

2.書類の回覧や承認作業に時間がかかる

紙の稟議書や承認書は、関係者間で回覧して情報が共有されます。そのため、承認者が不在の場合や別拠点にいる場合、書類が滞留して進行が遅れることも珍しくありません。特に建設現場では工程管理や契約締結などのスピードが求められますが、紙による承認プロセスでは迅速な意思決定が難しくなります。

さらに、回覧中の書類が紛失した場合、再発行や再確認に時間を要し、スケジュール全体の遅延が発生するリスクがあります。承認フローが複雑な案件では、複数の管理職や発注者の押印が必要となり、物理的移動や郵送によって日数がかかってしまうでしょう。このタイムロスは、工期短縮やコスト削減の妨げとなり、競争力の低下につながりかねません。

3.現場と事務所間の情報共有がスムーズに進まない

現場で発生した出来事や変更点を紙の報告書にまとめ、事務所へ郵送・持参する方法ではタイムラグが生じます。その間に状況が変化し、古い情報に基づいて判断してしまうケースもあるでしょう。現場写真や計測データも紙資料に添付して共有する場合、解像度や情報量が制限されるため、正確な伝達が難しくなります。

また、現場担当者と事務所スタッフが別の場所で作業しているため、リアルタイムでの情報更新ができず、問い合わせや確認作業が増えます。その結果、電話やメールでの補足が必要となり、双方の業務効率を低下させかねません。重要な変更情報が全員に行き渡らないまま作業が進み、品質不良や手戻りの原因となることもあります。

建設業のペーパーレス化で得られる4つのメリット

建設業におけるペーパーレス化は、単なる紙の削減にとどまらず、業務全体の質やスピード、コスト構造を改善する効果があります。書類の電子化によって、作成から承認、共有までの流れがスムーズになり、時間と費用を削減できるでしょう。

また、データ管理が容易になり、必要な情報をすぐに取り出せることで、現場の意思決定や対応スピードも向上します。さらに、紙の物理的な保管や運搬が不要になることで、業務の場所や時間の制約も減ります。

1.書類作成や管理業務の効率化

電子化された書類は、検索や編集、共有が容易になり、従来の紙運用に比べて作業時間を短縮できるでしょう。更新時もオンライン上で最新版が自動反映されるため、古い情報を使ってしまうミスや二重作業を防げます。

さらに、現場から直接タブレットやスマートフォンで報告書や図面を送信できるため、事務所への移動や郵送は不要です。承認フローも電子化できれば、関係者が場所を問わず迅速に確認・決裁でき、意思決定のスピードが向上します。

加えて、データはクラウド上に保存されるため、物理的な保管場所や整理整頓の負担も軽減可能です。このように、ペーパーレス化は業務全体の流れを効率化し、生産性の向上に寄与するでしょう。

2.紙・インク・印刷代などのコストを削減

紙やインク、トナー、プリンタ保守といった印刷関連コストは、長期的に捉えると企業にとって無視できない固定費です。ペーパーレス化により、これらの支出を削減でき、さらに書類の郵送費やコピー代などの細かなコストも抑えられます。

また、紙資料の保管スペースが不要になることで、倉庫や書庫の賃料削減にもつながります。オフィススペースを有効活用できれば、会議室や作業スペースの拡大も可能です。さらに、紙の使用量削減は環境負荷の軽減にも寄与します。

企業の環境配慮姿勢は取引先評価においてひとつのポイントとなっており、コスト削減と同時に企業イメージの向上にもつながるでしょう。このように、ペーパーレス化は短期的な経費節減だけでなく、中長期的な経営戦略にもメリットをもたらします。

3.情報共有の迅速化と属人化の解消

クラウド上でデータを一元管理することで、必要な情報に関係者が即時アクセスできるようになります。これにより、担当者が不在でも業務が滞らず、誰でも同じ情報をもとに判断・対応できるでしょう。

特に建設業では、工程変更や現場対応が発生した際の迅速な対応が欠かせません。紙運用では情報伝達に時間がかかり、その間に状況が変わってしまうこともある一方、電子化された環境ではリアルタイムで最新情報を共有できます。

また、属人化の解消は品質や安全管理にも直結する取り組みです。情報が特定の担当者だけに集中せず、全員がアクセス可能な状態を整備すれば、ミスや認識のズレが減り組織全体の対応力を強化できます。結果として、顧客満足度やプロジェクト成功率の向上にもつながるでしょう。

4.紛失や盗難防止によるセキュリティの強化

紙書類は紛失・盗難・破損といった物理的リスクにさらされている媒体です。例えば、社外秘の重要書類が外部に漏れると、契約トラブルや企業信用の失墜といった深刻な問題を引き起こす可能性があります。電子化することで、データにはアクセス権限を設定でき、権限のないユーザーによる閲覧や編集を防げます。

さらに、通信は暗号化され、ログ管理によって誰がいつアクセスしたかを追跡できるため、不正利用や漏えいの抑止力となり得るでしょう。また、災害時のリスク対策にも有効です。紙書類は火災や水害が発生した際に消失する可能性がありますが、クラウドに保管されたデータはバックアップが容易で、遠隔地からの復旧も可能です。

建設DXでペーパーレス化を成功させる3つのステップ

ペーパーレス化は単に紙をデジタル化するだけでは効果が十分に発揮されません。業務フロー全体を見直し、段階的に進めていきましょう。まずは現状を正確に把握し、何のためにペーパーレス化を行うのか目的を明確にします。そのうえで、すべてを一度に変えるのではなく、影響範囲が小さい業務から着手するスモールスタートが有効です。

ここでは建設DXでペーパーレス化を成功させるための3つのステップについて、詳しく解説します。

ステップ1.現状の課題を洗い出し目的を明確化

ペーパーレス化に取り組む前に、まず自社の業務フローを詳細に分析し、紙業務のどこに無駄や非効率があるのかを洗い出します。例えば、承認待ちで滞留する書類や、保管場所が分散して探すのに時間がかかるケース、更新のたびに印刷し直している業務フローは非効率な業務に該当するでしょう。この調査は、現場と事務所の両方からヒアリングすれば、実態を正しく把握できます。

次に、ペーパーレス化の目的を明確に設定します。コスト削減や承認スピード向上、品質管理強化など、優先順位をつけることで、導入後にスムーズな効果測定が可能です。

目的が曖昧なままではツール選定や運用ルールがブレやすく、結果として現場で活用されない恐れがあります。

ステップ2.対象業務と範囲を絞ったスモールスタート

ペーパーレス化を一気に全社展開すると、現場の負担や混乱が予想され、定着が難しくなります。そのため、影響範囲が限られた業務から始めるのが効果的です。

例えば、日報や稟議書、工程表など、比較的シンプルで利用頻度が高い書類の電子化から着手します。小さな成功事例を積み重ねることで、現場スタッフの抵抗感が減り、徐々に業務範囲を広げられるでしょう。

また、この段階で運用ルールやマニュアルを整備しておくと、後の全社展開がスムーズになります。小規模導入時の課題や改善点を洗い出し、本格導入前に修正するのが、失敗を防ぐポイントです。さらに、試験導入で得られた成果や改善効果を社内で共有しておけば、社内から導入への理解と賛同を広げやすくなります。

ステップ3.ITリテラシーに応じたツールの選定

ペーパーレス化のためのツール選定は、利用者のITスキルや業務特性を踏まえて行う必要があります。操作が複雑すぎると現場で使われなくなり、逆に簡易すぎると必要な機能を満たせない恐れがあるためです。

建設業向けのツールには、図面や写真の共有、進捗管理に特化したクラウドサービスや、電子契約システムなどが多数あります。選定時には、現場からのフィードバックを取り入れ、操作性やサポート体制、モバイル対応の有無を確認します。

さらに、導入後の教育やフォローアップ体制も構築しておきましょう。短時間で習得できる研修や、マニュアル・動画の提供など、定着を支援する仕組みをセットで整備すればペーパーレス化が長期的に根付く環境を作れます。

建設業でペーパーレス化に取り組んだ事例

建設業界では、現場と事務所間の情報共有や書類管理の効率化を目的に、ペーパーレス化を進める企業も存在しています。

例えば株式会社大林組は基幹システムを刷新し、契約から引き渡しまでのプロセスを電子化して承認スピードとコスト削減を実現しました。前田建設工業株式会社は現場情報共有ツールを導入し、写真や図面をリアルタイムで共有できる環境を整え、業務時間の短縮や残業削減にも成功しました。

ここではそれぞれの事例を詳しく解説します。

事例1.株式会社大林組|基幹システムを刷新してプロセス全体を電子化

株式会社大林組は、基幹システムを刷新し、契約から設計、施工、引き渡しまでの全プロセスを一元的に電子化しました。特に、現場からの報告や承認フローをオンライン化し、これまで数日かかっていた承認が数時間で完了するようになっています。

また、図面や契約書、検査記録などもクラウドで一元管理することで、最新情報を全員がリアルタイムで共有可能になりました。これにより、設計変更や工程調整も迅速に行える環境が整い、紙の印刷・郵送コストも削減されました。さらに、バージョン管理が自動化されたことで、古い情報を誤って使用するリスクも解消され、品質管理の精度向上にもつながっています。

出典参照:何より重視したのは「止まらない」こと 業務改善を目指し基幹システムを刷新

|日本電気株式会社 (NEC)

事例2.前田建設工業株式会社|専用ツールでコミュニケーションを活性化

前田建設工業株式会社は、建設業向けの現場情報共有ツールを導入し、現場と事務所間のコミュニケーションをデジタル化しました。紙の日報やチェックリストをタブレットで入力・共有できるようにし、書き込みもその場で可能になっています。これにより、施工中の変更点や問題点をリアルタイムに共有でき、意思決定のスピードが向上しました。

また、ペーパーレス化によって資料の持ち運びが不要となり、現場スタッフの負担軽減にも寄与しています。データはクラウドに保存されるため、事務所からもすぐにアクセスでき、工程管理や安全確認が効率化されました。導入後は、報告書作成にかかる時間が半減され、残業時間の削減や業務負担の平準化にもつながっています。

出典参照:朝礼や昼礼で、大型スクリーンにeYACHOの画面を映して情報共有 現場のコミュニケーションツールとして今後も期待|株式会社 MetaMoJi

まとめ|建設DXの一環としてペーパーレス化を促進し、コスト削減につなげよう

建設業のペーパーレス化は、業務効率化やコスト削減、情報共有の迅速化、セキュリティ向上といった多くの効果をもたらします。ペーパーレス化を成功させるには、現状の課題把握、段階的な導入、利用者に合ったツール選定が欠かせません。事例からも分かるように、現場と事務所の連携が強化されれば、品質向上や残業削減にも直結します。

さらに、紙業務の削減は環境負荷軽減にもつながり、企業の社会的評価の向上にも寄与します。建設DXの一環として、紙での書類管理からペーパーレスに移行し、持続的な生産性向上を実現しましょう。