リスキリングを通じてキャリアアップする方法は?支援制度も解説

リスキリングを通じたキャリアアップには、戦略的な計画と段階的なアプローチが重要です。本記事では、DX・デジタル技術からクリエイティブ・デザインまで効果的な5つの学習分野と、経済産業省や厚生労働省の支援制度について詳しく解説します。

リスキリングとは、職業上必要な新しいスキルや知識を学び直すことを指し、単なる自己啓発とは異なる戦略的な取り組みです。適切に実践することで、年収向上や職務範囲の拡大、転職機会の増加など、具体的なキャリアアップ効果を期待できます。

変化の激しい現代において、リスキリングによるキャリアアップは多くの働く人にとって重要な課題です。デジタル化の進展や働き方の多様化により、従来のスキルだけでは対応困難な場面が増えており、新たな知識や技能の習得が求められています。

しかし、効果的なリスキリングを実現するには、自己分析に基づく目標設定から学習分野の選定、実践的なスキル習得まで、体系的なアプローチが不可欠です。本記事では、キャリアアップに直結するリスキリング分野の紹介から具体的な実践ステップ、活用可能な支援制度まで、成功に向けた実践的な情報を詳しく解説します。

リスキリングとは

リスキリングとは、技術革新や産業構造の変化に対応するため、職業上必要な新しいスキルや知識を習得することです。経済産業省では「新しい職業に就くために、あるいは、今の職業で必要とされるスキルの変化に適応するために、必要なスキルを獲得する/させること」と定義しています。

従来の自己啓発や資格取得とは異なり、リスキリングは明確な目的意識を持って実施される戦略的な学び直しです。特に注目されているのは、DX推進に関わるデジタルスキルやデータ分析能力、プロジェクトマネジメント能力などです。デジタル技術の普及により多くの職種で求められるスキルが変化している現在、個人の競争力の維持や向上のために重要性が高まっています。

出典参照:リスキリングとは―DX時代の人材戦略と世界の潮流|経済産業省

リスキリングがキャリアアップにもたらす効果

リスキリングは、キャリアパーソンにとって多面的なキャリアアップ効果をもたらします。主な直接的な効果として、新しいスキルの習得により職務範囲が拡大し、より責任のあるポジションへの昇進機会の増加が挙げられます。また、希少性の高いスキルを身につけることで、労働市場における価値が向上し、年収アップの実現も期待できるでしょう。

転職市場においても、リスキリングによって獲得したスキルは大きなアドバンテージとなります。特にデジタル関連スキルやマネジメント能力を持つ人材への需要は高く、より良い条件での転職成功率が向上します。

リスキリングは単なるスキル向上を超えた、人生全体の質向上に寄与する重要な取り組みです。

キャリアアップに効果的な5つのリスキリング分野

現代のキャリアアップを実現するためには、将来性と需要の高い分野でのリスキリングが重要です。技術革新や社会変化に対応できるスキルを身につけることで、競争力の向上と安定的なキャリア形成が可能になります。

特にこれから紹介する5つの分野は、いずれも今後の成長が見込まれており、投資対効果の高いリスキリング領域といえます。これらの分野でスキルを習得することで、職種や業界を問わず活躍の場を広げることができるでしょう。

①DX・デジタル技術分野

DX・デジタル技術分野は、現在需要が高く、キャリアアップ効果の大きいリスキリング分野です。データ分析、プログラミング、クラウド技術、AI・機械学習などのスキルは、あらゆる業界で求められており、習得により年収向上が期待できます。特にPythonやSQLなどのデータ分析スキルは、マーケティング、営業、人事など様々な職種で活用可能です。

未経験者でも比較的短期間で基礎スキルを習得でき、オンライン学習プラットフォームや実践的なプロジェクトを通じて段階的にレベルアップできます。また、デジタル人材の慢性的な不足により、転職市場でも高く評価される傾向があります。

②マーケティング・営業分野

マーケティング・営業分野のリスキリングは、デジタル化により変革が進む顧客接点業務において高い効果を発揮します。従来の対面営業に加え、デジタルマーケティング、SNS活用、データドリブン営業などの新しい手法が求められており、これらのスキルを習得することで営業成果の向上と職域拡大が実現できるでしょう。

特に注目されているのは、MA(マーケティングオートメーション)ツールの活用、Webアナリティクス、コンテンツマーケティング、SEO対策などです。これらのスキルにより、従来の勘や経験に頼った営業から、データに基づく効率的なアプローチへの転換が可能になります。

また、営業・マーケティング分野は業界を問わず需要があり、習得したスキルの汎用性が高いことも魅力です。

③語学・グローバルスキル

語学・グローバルスキルは、国際化が進む現代において持続的なキャリアアップを支える重要な分野です。英語力の向上はもちろん、異文化コミュニケーション能力や国際的なビジネスマナーの習得により、グローバル企業での活躍機会や海外展開プロジェクトへの参画が可能になります。

特に、ビジネスレベルの英語力とプレゼンテーションスキルを組み合わせることで、海外クライアントとの交渉など、付加価値の高い業務を担当できるようになるでしょう。また、中国語やスペイン語など、成長市場の言語スキルも注目されています。

また、オンライン学習の普及により、語学習得の機会は増加しており、自分のペースで効率的に学習を進められます。

④経営・マネジメント分野

経営・マネジメント分野のリスキリングは、管理職への昇進や組織運営責任者として活躍するために重要なスキル習得領域です。戦略立案、組織マネジメント、財務分析、人材育成などの知識を体系的に学ぶことで、より上位のポジションへのキャリアアップが実現できます。

特に注目されているのは、アジャイル管理手法、データドリブン経営、ダイバーシティマネジメントなど、現代的な経営手法です。また、MBA取得やビジネススクールでの学習を通じて、理論と実践を組み合わせた高度なマネジメントスキルを習得する方法も効果的です。

⑤クリエイティブ・デザイン分野

クリエイティブ・デザイン分野のリスキリングは、デジタル化に伴い需要が急拡大している領域です。UI/UXデザイン、Webデザイン、動画編集、グラフィックデザインなどのスキルは、マーケティング部門や商品開発部門で高く評価され、専門性を活かしたキャリア形成が可能になります。

特に、ユーザーエクスペリエンス(UX)設計やデザイン思考は、IT企業以外でも重要視されており、顧客満足度向上や新サービス開発において中核的な役割を担えます。

フリーランスとしての独立や副業での収入確保にも適しており、働き方の多様化にも対応できるスキルと言えるでしょう。デジタルコンテンツの需要拡大により、クリエイティブスキルを持つ人材への市場価値は今後も上昇傾向が続くと予想されます。

リスキリングを効果的に行うためのステップ

リスキリングの成功には、計画的で体系的なアプローチが必要不可欠です。闇雲にスキル習得を始めるのではなく、まずは自己理解から始めましょう。そして、明確な目標設定、適切な学習方法の選択、実践的な経験の積み重ねというように段階的に進めていくことが効果的です。各ステップを丁寧に実行することで、投資した時間と労力に見合う確実なキャリアアップ効果を得ることができるでしょう。

ステップ1:自己分析とキャリア目標の設定

効果的なリスキリングの第一歩は、現在の自分を客観的に把握し、将来のキャリア目標を明確に設定することです。現在保有しているスキル、経験、強みと弱みを整理し、市場価値や転職可能性を冷静に評価します。同時に、5年後、10年後にどのような職種や役職で働いていたいかという具体的なビジョンを描いてみましょう。

目標設定では、年収水準、働き方、業界、職務内容などの要素を具体化し、実現可能性と優先順位を検討します。自己分析が不十分だと、必要のないスキル習得に時間を費やしたり、習得したスキルが実際のキャリアアップに結びつかなかったりするリスクがあるため、十分な時間をかけて行うことが重要です。

ステップ2:学習分野の選定と優先順位付け

自己分析とキャリア目標が明確になったら、習得すべきスキル分野を選定し、優先順位を決めましょう。目標達成に直結するスキルを最優先とし、学習期間、難易度、費用対効果を総合的に評価して順序を決定します。

例えば、営業職からマーケティング職への転身を目指す場合、デジタルマーケティングスキルを最優先に、データ分析やプロジェクトマネジメントを次の優先度として設定するのが良いでしょう。

実践的な効果を早期に実感するため、比較的短期間で成果の見えるスキルから着手することも有効な戦略です。

ステップ3:インプットによるスキル習得(オンライン学習・セミナー参加など)

選定した分野について、体系的な知識習得のためのインプット学習を開始します。オンライン学習プラットフォーム、書籍、セミナー、資格取得講座など、多様な学習手段を組み合わせて効率的にスキルを身につけましょう。

学習効果を高めるためには、インプットした知識を定期的にアウトプットすることも欠かせません。また、業界の最新動向や実践事例を学ぶため、専門書籍の読書や業界セミナーへの参加も効果的なアプローチと言えるでしょう。

資格取得を目標に設定することで、学習のモチベーション維持と客観的なスキル証明が可能になります。ただし、資格取得自体が目的とならないよう、実務で活用できる実践的なスキル習得を重視することが大切です。

ステップ4:実践の場でのアウトプット

習得した知識を実践的なスキルに変えるため、実際の業務や副業、個人プロジェクトでアウトプットする機会を積極的に作りましょう。現在の職場でプロジェクトへの参画を提案したり、新しいツールの導入を働きかけたり、学習したスキルを活用できる場面を見つけることが重要です。

転職が難しい場合、副業やフリーランス案件は、新しいスキルを試す絶好の機会となります。クラウドソーシングサイトでの小規模案件から始めて、実績を積み重ねながらスキルレベルを向上させてみるのも良いでしょう。

実践を通じて発見した課題や改善点は、次の学習テーマとして活用し、継続的なスキル向上につなげることで、理論と実践のバランスが取れた専門性を構築できます。

ステップ5:継続的学習

リスキリングは一度のスキル習得で完結するものではなく、継続的な学習習慣の確立が長期的なキャリアアップの鍵となります。技術革新や市場環境の変化に対応するため、定期的な知識のアップデートと新しい分野への挑戦を続けましょう。

学習習慣を維持するため、月次や四半期ごとの学習目標を設定し、進捗を定期的に振り返るのが有効です。業界のトレンド情報収集、専門誌の定期購読、オンライン講座の継続受講など、日常の中に学習時間を組み込む仕組みを構築してみてください。

また、同じ分野で学習する仲間とのネットワーク形成や勉強会への参加により、モチベーション維持と情報交換の機会になるでしょう。

活用できるリスキリング支援制度3選

リスキリングには時間と費用がかかりますが、国や自治体が提供する支援制度を活用することで、経済的負担を軽減しながら効果的な学習が可能です。個人の学習ニーズや現在の就業状況に応じて最適な制度を選択することで、質の高い教育プログラムを低コストで受講できます。

ここでは、多くの受講者がキャリアアップを実現している、3つのリスキリング支援制度について紹介します。これらの制度を上手に活用し、戦略的にリスキリングを進めましょう。

経済産業省|キャリアアップ支援事業

経済産業省の「リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業」は、在職者の転職やキャリアアップを総合的に支援する包括的な制度です。

第一段階として、民間の専門家によるキャリア相談を受けることができ、現在のスキルや経験を客観的に評価し、将来のキャリア目標に向けた具体的な道筋を明確にします。第二段階では、相談結果を踏まえて最適なリスキリング講座を受講でき、実務に直結するスキル習得が可能です。

最終段階では、習得したスキルを活かした転職支援まで一貫してサポートを受けられます。単独のサービスではなく、キャリア設計から学習、実際の転職活動まで連続性を持った支援体制が整備されている点が大きな特徴です。

出典参照:リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業とは?|経済産業省

​​厚生労働省|教育訓練給付制度

厚生労働省の教育訓練給付制度は、働く方々の主体的な能力開発やキャリア形成を支援することを目的とした給付制度です。一定の受給要件を満たす方が、厚生労働大臣指定の教育訓練を受講・修了した場合に、教育訓練経費の一部が支給されます。

給付金は、レベルに応じて3種類です。「専門実践教育訓練」では中長期的キャリア形成に資する訓練が対象で、教育訓練経費の50%(年間上限40万円)が支給され、資格取得と就職により最大80%まで支給率が向上します。「特定一般教育訓練」では速やかな再就職に資する訓練で40%(上限20万円)、「一般教育訓練」では20%(上限10万円)が支給されます。

対象講座は教育訓練講座検索システムで確認でき、申請手続きは管轄のハローワークで行います。

出典参照:教育訓練給付制度|厚生労働省

厚生労働省|求職者支援制度

求職者支援制度は、再就職、転職、スキルアップを目指す方が月10万円の生活支援給付金を受給しながら、無料の職業訓練を受講できる制度です。雇用保険を受給できない離職者や収入が一定額以下の在職者が対象となり、給付金の支給要件を満たさない場合でも無料で職業訓練を受講できます。

訓練コースは、基礎からIT、営業・販売・事務、医療事務、介護福祉、デザインなど多岐にわたり、訓練期間は2カ月から6カ月です。給付金受給には本人収入月8万円以下、世帯収入月30万円以下、世帯金融資産300万円以下などの要件があります。

出典参照:求職者支援制度|​​厚生労働省

リスキリング成功事例3選

リスキリングの効果的な実践方法を理解するには、実際に成功を収めている企業の取り組みを参考にすることがおすすめです。

ここでは、異なるアプローチでリスキリングを推進し、従業員のキャリアアップと企業の競争力向上を同時に実現している3つの企業事例を紹介します。

学習プラットフォームの活用、人材成長支援体制の構築など、リスキリング戦略を検討する際の貴重な参考資料となりますので、ぜひ自社にも取り入れてみてください。

①株式会社日立製作所|日立グループ独自の学習体験プラットフォーム導入

株式会社日立製作所は、「ジョブ型人財マネジメント」への転換を推進するため、2022年10月から学習体験プラットフォーム(LXP)「Degreed」を日立グループ全体に導入しました。従来の研修中心の学習から、日常業務の中で得られる学びも含めた包括的な学習支援への転換を図る取り組みです。

「Degreed」は、国内企業としては日立グループが最大規模の導入となっています。プラットフォームでは、研修動画から業務関連記事まで多様なコンテンツを提供し、AIによるリコメンド機能で個人の学習ニーズに応じた最適な学習プランを提案します。

特徴的なのは、社員同士が学習履歴を共有し、相互にフォローできる機能です。これにより、一人ひとりの「学び」が組織全体の「知」として蓄積され、企業の競争力向上につながる仕組みを構築しています。

出典参照:自分のキャリアを自分でつくる。 学びをもっと身近に、LXPによる新しい学習体験。|株式会社日立製作所

②LINEヤフー株式会社|社員のパフォーマンス最大化のための人材成長支援

LINEヤフー株式会社は、社員一人ひとりがパフォーマンスを最大限に発揮できるよう、包括的な人材成長支援体制を構築しています。同社では、プロダクト創りの担い手である社員の成長が企業の競争力の源泉と位置付け、自律・主体的な活躍を促進する多様な機会を提供しています。

特に注目すべきは、リスキリング支援における「いつでもどこでも学べる環境」の整備です。「GLOBIS学び放題」による体系的なビジネス知識習得など、社員の課題感や成長目標に応じて自由に選択できる学習プログラムを常時提供しています。

また、「AI活用アカデミア」では文理両軸でのAI人材育成を推進し、2024年度は約4,080人が受講しました。さらに、社会人ドクター進学支援制度により、働きながら博士号取得を目指す機会も提供しています。

出典参照:人材成長支援|LINEヤフー株式会社

③株式会社メルカリ|育児・介護から復帰した方向けのキャリア再開支援プログラム

株式会社メルカリは、2021年11月から「Mercari Restart Program」を開始し、出産・育児、介護等でキャリアを中断された方に対する包括的な復職支援を提供しています。このプログラムは、様々な事情で一度労働市場を離れた人材に3カ月程度の有給就業型インターンシップを提供し、職場復帰を支援する先進的な取り組みです。

プログラムの特徴として、日本全国どこからでも勤務可能な働き方制度「YOUR CHOICE」の活用、育児や介護に配慮した柔軟な勤務時間設定、経験やスキルに見合った適正な報酬の提示があります。参加者はプロフェッショナルとしてチームの一員となり、メンター社員による目標設定とオンボーディングサポートを受けながら実務に取り組みます。

多様なポジションで募集し、プログラム終了後は正社員としての採用選考への参加も可能です。

出典参照:メルカリ、育児・介護等でキャリアを中断した方を対象としたキャリア再開支援プログラム 「Mercari Restart Program」の募集を開始|株式会社メルカリ

まとめ|戦略的リスキリングでキャリアアップを実現しよう

リスキリングは、変化の激しい現代において持続的なキャリアアップを実現するために効果的な手段です。

自己分析に基づく明確な目標設定から始め、体系的なインプット学習、実践的なアウトプットと、段階的なアプローチを実践することで、無理なく成長できます。

本記事で紹介したように、経済産業省のキャリアアップ支援事業、厚生労働省の教育訓練給付制度や求職者支援制度などの公的支援制度を積極的に活用するのもおすすめです。先進企業の学習プラットフォーム導入や包括的な人材成長支援の取り組みを参考にすることで、効率的かつ効果的なリスキリングを実現させましょう。