調達DXツール比較10選！失敗しない選び方と導入事例

企業の利益を最大化するために、調達・購買業務の見直しは欠かせないテーマです。しかし、「コストが適切か分からない」「担当者によって業務がバラバラ」といった課題を抱えている企業は少なくありません。そのような悩みを解決するのが「調達DXツール」です。

この記事では調達DXの基本から、おすすめのツール、そして自社に合ったツールの選び方まで、分かりやすく解説していきます。

ツール導入を成功させるための具体的なステップや、他社の成功事例も紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

そもそも調達DXとは？

調達DXとはデジタル技術を使って、これまでの調達業務のやり方をより良く変えていく取り組みのことです。単にシステムを導入するだけでなく、データを使って賢い判断ができるようにし、会社全体の成長につなげることを目指します。

ここでは調達DXの基本的な意味から、それによって解決できる課題、そして最近の法律の変更にどう対応していくかを見ていきましょう。

調達DXの定義と求められる背景

調達DXとは、デジタル技術の力を借りて、調達業務のプロセス全体を根本から見直す活動を指します。具体的には見積もりを取ったり、発注したり、支払いを行ったりする一連の作業をデジタル化し、集まったデータを活用して業務を最適化していくことです。

最近では世界的な競争が激しくなったり、部品などを仕入れるルートが複雑になったりして、コスト削減や効率化への要求がますます高まっています。これまでの経験や勘に頼るやり方では、こうした変化に対応するのが難しくなってきました。

そのため、客観的なデータに基づいた戦略的な調達業務へと変えていくことが、多くの企業にとって重要なテーマになっているのです。

従来の調達業務が抱える代表的な課題

これまでの調達業務には、多くの会社が同じような課題を感じています。その代表的なものが、業務が特定の人にしか分からない「属人化」という問題です。担当者だけが取引先や価格交渉のノウハウを握っているため、その人が異動や退職をすると、業務がスムーズに進まなくなるリスクがありました。

また、紙やExcelを使ったアナログな管理方法では、見積もりや発注の作業に時間がかかりすぎるだけでなく、手作業によるミスも起こりがちです。さらに、部署ごとに文房具などの間接材をバラバラに購入していると、会社全体で「何を」「どこから」「いくらで」買っているのかが分からなくなります。その結果、コスト管理が甘くなってしまう点も、大きな課題といえるでしょう。

電子帳簿保存法・インボイス制度への対応

調達DXは法律の変更に対応するという面でも、ますます重要になっています。特に、「電子帳簿保存法」と「インボイス制度」への対応は、すべての企業にとって待ったなしの状況です。

電子帳簿保存法により、メールなどで受け取った請求書は、原則としてデジタルのまま保存することが必要になりました。また、インボイス制度が始まったことで、決められた形式の請求書（インボイス）を受け取り、きちんと保存しなければなりません。

これらの法律を守るためには、請求書をデータでまとめて管理し、必要な時にすぐ探せるシステムが不可欠です。調達DXツールを導入すれば、こうした法改正にしっかりと対応できるだけでなく、紙をなくすことで業務が効率的になり、コスト削減も同時に実現できます。

調達DXツール導入の3大メリット

調達DXツールを導入するメリットは、単に仕事が楽になるだけではありません。ここでは、ツールを導入することで得られる、特に大きな3つのメリットについて詳しく見ていきましょう。

コスト削減と利益率の向上

ツール導入の最も大きなメリットは、なんといってもコストを削減し、会社の利益を増やすことができる点です。調達DXツールを使えば、複数の取引先からの見積もりをシステム上で簡単に比べられるため、いつでも一番良い条件で買い物ができます。

また、会社全体の購買データが見えるようになることで、無駄な出費や割高な買い物をすぐに見つけ出し、改善することが可能です。これにより、調達にかかる費用そのものを直接的に減らせます。

さらに、見積もり依頼や発注といった作業が自動化されることで、担当者の手間が大幅に減り、人件費という間接的なコストの削減にもつながります。これらの効果が合わさって、会社全体の収益アップに大きく貢献してくれるのです。

業務効率化と属人化の解消

調達DXツールはいつも繰り返している定型的な作業を自動化し、業務の進め方を標準化してくれます。これまで担当者が一つひとつ手作業で行っていた見積もり依頼や発注書の作成などをシステムが代行してくれるため、業務時間を大きく短縮できるでしょう。

その結果、担当者はさらに付加価値の高い、例えば価格交渉や新しい取引先の開拓といった戦略的な仕事に集中できるようになります。また、購買に関するルールや取引先の情報がシステムにまとまることで、仕事のやり方が標準化されます。

これにより、特定の人しかやり方を知らない「属人化」の状態がなくなり、担当者が変わっても仕事の質を保つことができるようになります。

内部統制の強化とコンプライアンス遵守

購買のプロセスをデジタル化してシステムで管理することは、社内のルールを守り、不正を防ぐことにも直接つながります。ツールを導入すると、誰が、いつ、何を、いくらで買ったのかという記録がすべて残ります。承認のプロセスもシステム上で行われるため、ルール違反の発注や個人的な利用を防ぐのに役立ちます。

購買のプロセスが透明になることで、会社のルールに沿ってきちんと取引が行われているかを簡単にチェックできるようになります。これは、会社の健全な経営を保ち、ガバナンスを強化する上で非常に大切です。同時に、電子帳簿保存法などの法律をきちんと守ることにもつながり、企業の社会的な信頼を維持することに貢献します。

【機能で比較】調達DXツールおすすめ10選

世の中には多くの調達DXツールがあり、それぞれに得意なことや特徴があります。ここでは、多くの企業で使われている代表的なツールを10個ご紹介します。

intra-mart Procurement Cloud

NTTデータイントラマートが提供している、クラウド型の購買・調達システムです。見積もりから支払いまで、一連の購買プロセスをすべてカバーしてくれます。

特に、企業の複雑な承認ルートにも柔軟に対応できるワークフロー機能が強みとなっています。購買システムだけでなく、経費精算など他の業務システムと連携させて拡張することも可能です。

出典参照：intra-mart Procurement Cloud｜株式会社エヌ・ティ・ティ・データ・イントラマート

リーナー購買

株式会社Leaner Technologiesが提供する、文房具や備品といった間接材の購買に特化したサービスです。過去の購買データを分析して、コスト削減できそうなポイントを自動で教えてくれるユニークな機能があります。

支出を見える化して、コストをしっかり削減したい企業におすすめです。直感的で分かりやすい画面デザインにも定評があり、ITツールに不慣れな方でも安心して使えます。

出典参照：リーナー購買｜株式会社Leaner Technologies

楽々ProcurementII

住友電工情報システム株式会社が提供する、Web購買システムです。これまでに4,000社以上が導入しているという豊富な実績があり、安心して利用できるのが魅力です。

カタログからの購入や見積もりを取ってからの購入など、様々な買い方に対応しており、会社の規模や業種を選びません。クラウド版だけでなく、自社サーバーで運用するオンプレミス版も選択できるため、セキュリティポリシーにも柔軟に対応できます。

出典参照：楽々ProcurementII｜住友電工情報システム株式会社

Hi-PerBT 購買管理

株式会社日立ソリューションズ西日本が提供しているシステムで、特に製造業の購買業務を得意としています。会社の基幹システム（ERP）と連携することを前提に作られているため、生産管理と連動した発注や納期の管理がスムーズに行えます。

部品表（BOM）と連携した発注や、外注先への支給品管理といった、製造業特有の複雑な取引にも対応しています。

出典参照：Hi-PerBT 購買管理｜株式会社日立ソリューションズ西日本

eBuyerBrains

BIPROGY株式会社が提供する、中堅・中小企業向けのクラウド型購買システムです。月額5万円から始められる手頃な価格が大きな魅力で、まずは小さな範囲から調達DXをスタートしたいと考えている企業にぴったりです。

取引先とのやり取りを効率化するサプライヤーポータル機能も備わっており、コストパフォーマンスに優れています。

出典参照：eBuyerBrains｜BIPROGY株式会社

BtoBプラットフォーム 見積

株式会社インフォマートが提供する、企業と企業の間で行われる取引をデジタル化するプラットフォームです。特に、見積もりを依頼するプロセスに強みを持っており、新しい取引先を探したり、複数の会社から見積もりを取ったりする作業を効率化してくれます。

多くの企業が利用しているため、すでに取引先が導入済みであるケースも少なくありません。

出典参照：BtoBプラットフォーム 見積｜株式会社インフォマート

ビズネット

ビズネット株式会社が提供する、オフィス用品や工場の消耗品といった間接材の購買に特化したサービスです。多くの大手サプライヤーのカタログとつながっており、幅広い商品を競争力のある価格で購入できるのが特徴です。

顧客ごとの在庫を管理してくれるサービスもあり、欠品を防ぎながら在庫を最適化することもできます。

出典参照：ビズネット｜ビズネット株式会社

ソロエルアリーナ

アスクル株式会社が提供する、中堅・大企業向けの購買サービスです。アスクルが取り扱う豊富な商品を、部署ごとの予算管理や承認ルートを設定した上で購入できます。

社内ルールをしっかり守りながら、間接材の購入を効率的に進めたい場合に最適です。部署ごとや商品カテゴリごとの購入実績をグラフで確認できるため、経費の見直しにも役立ちます。

出典参照：ソロエルアリーナ｜アスクル株式会社

TWX-21

株式会社日立製作所が提供する、企業間の取引をサポートするWeb-EDIサービスです。長年の運用実績があり、特に大手製造業のサプライチェーンで広く使われています。

高いセキュリティが求められる、大規模な取引に向いています。国内だけでなく海外の取引先ともスムーズに連携できるため、グローバルなサプライチェーンの構築にも貢献します。

出典参照：TWX-21｜株式会社日立製作所

RFQクラウド

A1A株式会社が提供する、製造業の購買・調達部門向けの見積もり査定サービスです。過去の見積もりデータをAIが分析し、提示された価格が妥当かどうかを評価してくれる機能が特徴です。

価格交渉の精度を高めたい企業にとって、心強い味方になるでしょう。見積もりに関するサプライヤーとのやり取りをシステム上で一元管理できるため、コミュニケーションの効率も上がります。

出典参照：RFQクラウド｜A1A株式会社

失敗しない調達DXツールの選び方

多くの調達DXツールの中から、本当に自社に合ったものを選ぶためには、しっかりとした判断基準を持つことが大切です。ここではツール選びで後悔しないための、3つの重要なポイントを解説します。

解決したい課題の優先順位で選ぶ

ツール選びで最も大切なのは、「導入によって何を解決したいのか」という課題の優先順位をはっきりさせることです。例えば、「間接材のコストをとにかく下げたい」という目的であれば、支出を分析する機能が優れたツールが良いでしょう。「見積もり業務を効率化して、特定の人に頼るのをやめたい」なら、見積もり依頼や比較の機能が充実したツールが適しています。

また、「法律の変更への対応が最優先」ということであれば、電子帳簿保存法などにきちんと対応している実績のあるツールを選ぶべきです。すべての課題を完璧に解決してくれる万能なツールはありません。自社にとって一番大きな課題は何かを考え、その解決に最も役立つツールを選ぶことが、成功への近道になります。

既存システムとの連携性で選ぶ

特に中堅以上の規模の企業では、すでに社内で使っている基幹システムや会計システムと、新しいツールがうまく連携できるかどうかが非常に重要です。もしツールが既存のシステムと連携できないと、同じデータを二度入力する手間が発生したり、情報がバラバラになったりして、かえって仕事が非効率になってしまうかもしれません。

ツールを選ぶ際には、今使っているシステムと連携できるか、そのための実績は十分にあるかなどを必ず確認しましょう。システム間のデータ連携がスムーズにできれば、購買データと会計データを組み合わせて分析するなど、より高度なデータの活用も可能になります。

サポート体制と実績で選ぶ

ツールの導入はゴールではなく、あくまでスタートです。導入した後に、社内でツールがきちんと使われるようになるかどうかは、提供元の会社のサポート体制に大きく左右されます。導入時の初期設定の支援や、使い方を教えてくれる研修、運用が始まってからの問い合わせ対応など、手厚いサポートをしてくれる会社を選びましょう。

特に、DXにあまり慣れていない企業の場合は、専任の担当者がついて一緒に進めてくれるようなサポートがあると心強いです。また、自社と同じ業界や同じくらいの規模の会社での導入実績が豊富かどうかも、チェックしておきたいポイントです。実績が多い会社は、業界特有の課題にも詳しいため、より的確なアドバイスやサポートが期待できます。

調達DXツールの導入事例

ツールを導入すると、具体的にどのような良い変化があるのでしょうか。ここでは、実際に調達DXツールを導入して、課題の解決に成功した企業の事例を2つご紹介します。

株式会社アルファーシステムズ｜CADDi Quoteで見積業務の属人化を解消

FA装置の設計・製造を手がける株式会社アルファーシステムズでは、図面をもとにした見積もり作業が特定の担当者に集中し、業務が属人化しているという課題がありました。そこで同社は、図面をアップロードするだけでAIが自動で原価を計算してくれる「CADDi Quote」を導入しました。

その結果、これまでベテラン担当者に頼っていた見積もり作業を、誰でも簡単に行えるようになりました。これにより、見積もりにかかる工数を91%も削減することに成功し、担当者の負担を大幅に減らすことができたのです。空いた時間で新しい取引先を探すなど、より戦略的な業務に取り組めるようになったそうです。

出典参照：見積の効率化と属人化の解消 ― 個人の知見を会社の共有資産に｜株式会社アルファーシステムズ

花王株式会社｜パーチェスワンクラウドで間接材購買を可視化しコスト削減

大手化学メーカーの花王株式会社では、研究開発部門で使う試薬や器具といった間接材の購入が、各担当者に任されていました。

そのため、会社全体として支出の実態を正確に把握することが難しく、発注業務も非効率な状態だったのです。

そこで、間接材の購買に特化した「パーチェスワンクラウド」を導入し、購買のプロセスをシステムに一元化しました。これにより、「誰が」「何を」「いくらで」購入しているかが完全に「見える化」され、購買データを分析できるようになったのです。

その結果、取引先との価格交渉や購入先の集約が進み、業務の効率化と大幅なコスト削減を同時に実現しました。

出典参照：利便性向上、コンプライアンス・ガバナンス強化、集約化により買い方改革を推進!｜花王株式会社

調達DXツールの導入4ステップ

調達DXツールの導入を成功させるには、行き当たりばったりではなく、計画的に進めることが非常に大切です。ここではツール導入をスムーズに進めるための、具体的な4つのステップをご紹介します。

ステップ1:課題の整理と目的の明確化

最初のステップは、自社の調達業務にどのような課題があるのかを具体的に洗い出し、ツールを導入する目的をはっきりさせることです。例えば、「見積もりの回答をもらうのに平均3日かかっている」のように、現状の課題を数字で把握することが大切です。

その上で、「見積もり業務にかかる時間を半分にする」といった具体的な目標を立てます。この目的がはっきりしていれば、ツールを選ぶ時に迷うことがなくなり、導入した後の効果測定もしやすくなります。

ステップ2:複数ツールの比較検討と選定

次に、ステップ1で決めた目的を達成できそうなツールをいくつかリストアップし、比較検討します。公式サイトや資料を見るだけでなく、必ず複数の会社の担当者からツールのデモンストレーションを受け、実際に操作感を確かめてみましょう。

その際には、自社の実際の業務の流れを伝え、ツールでそれがどのように実現できるかを確認することが重要です。機能、コスト、サポート体制などを総合的に評価して、自社に最も合うツールを一つに絞り込みます。

ステップ3:社内体制の構築と導入準備

導入するツールが決まったら、社内の準備を進めます。プロジェクトの責任者を決め、調達部門や情報システム部門など、関係する部署から担当者を集めてチームを作りましょう。

その後、ツール提供会社と協力しながら、具体的な導入スケジュールを立てていきます。既存の取引先情報のデータを新しいシステムに移したり、社員向けの使い方説明会を計画したりと、運用開始に向けた準備を丁寧に進めることが、スムーズな導入成功の鍵です。

ステップ4:導入効果の測定と改善

ツールの運用が始まったら、それで終わりではありません。最後のステップは、定期的に導入の効果を測定し、より良くしていくための改善を続けることです。

ステップ1で立てた目標が達成できているかを、実際のデータで確認します。もし目標に届いていない場合は、その原因を分析し、ツールの設定を見直したり、社内の運用ルールを改善したりといった対策を考えます。このように、計画、実行、評価、改善のサイクルを回し続けることで、ツールの導入効果を最大限に高めていくことができるのです。

最適なツールで調達業務のDXを始めよう

この記事では調達DXツールの基本から選び方、導入の進め方までを解説しました。調達DXは、単なるコスト削減や業務効率化にとどまりません。変化の激しい時代を勝ち抜くための、重要な経営戦略です。

成功への第一歩はツールを比較する前に、まず自社の課題を正確に把握することから始まります。本記事でご紹介した「ステップ1: 課題の整理と目的の明確化」にぜひ取り組んでみてください。現状をしっかりと見つめ直すことで、自社に最適な一手が見つかるはずです。