金融DXの推進によって叶う勘定系システムの刷新|4つの取り組み例を紹介
金融

金融業界では急速なデジタル化の波が押し寄せ、従来のビジネスモデルだけでは顧客のニーズに応えきれない時代に突入しました。これまで通りの金融商品やサービスでは競争力を維持することが難しくなりつつあります。「新しい価値をどう提供するか」「どこに投資すべきか」と頭を悩ませる経営者や企画担当者も少なくありません。
そのような中、注目を集めているのが「金融DX(デジタルトランスフォーメーション)」の推進と、それに伴う「新規サービスの開発」です。これは単なるIT導入ではなく、企業文化や組織体制を含めた抜本的な改革です。
この記事では、金融DXの定義からはじめ新規サービス開発の必要性、さらに実際に展開されている先進的なサービス事例を紹介します。加えて、こうした取り組みを進める上で欠かせない「外部パートナー活用」のポイントにも触れていきます。
DXという言葉が飛び交う中で、単なるデジタル技術の導入にとどまらず、本質的な変革が求められています。特に金融業界では、顧客接点や業務オペレーションの在り方を根本から見直す必要があるでしょう。
金融DXとは、金融機関がデジタル技術を活用して顧客体験の向上・業務効率化・組織の変革を目指す取り組みです。単に業務をオンライン化するのではなく、データを軸にした意思決定やAIやクラウドを活用した柔軟なサービス提供が中心に据えられます。
例えば、従来対面が中心だった手続きをアプリ上で完結させるだけでなく、その過程で得られたデータを分析して個別の顧客ニーズに応じた提案へとつなげるといった取り組みが含まれます。
こうしたデジタル改革は、単なるIT化ではなく企業の提供価値そのものを再定義する試みといえるでしょう。
顧客の価値観や行動が急速に変化している今、既存の金融サービスだけでは満足度を維持するのが難しくなっています。スマートフォンで即時にサービスを利用できるのが当たり前となった現代において、手続きが煩雑で時間がかかるサービスは敬遠されやすくなっているでしょう。
加えて、フィンテック企業の台頭によって新しいプレイヤーが柔軟かつ低コストで革新的なサービスを提供しています。これに対抗するためには、金融機関自身もスピード感を持って新しい価値を生み出す姿勢が求められます。
新規サービス開発は、競争優位性を築くだけでなく既存顧客の維持や新規顧客の獲得にも直結する重要な戦略といえるでしょう。
金融DXと新規サービス開発は切り離して考えることができません。DXの本質は顧客に新たな価値を届けるための変革であり、それは多くの場合、新しいサービスとして具現化されます。
AIを活用した融資審査の自動化やチャットボットによるカスタマーサポートの導入は、顧客体験を革新する一方で、業務効率の向上にも寄与しています。こうした新しい取り組みを支えるのがDXであり、それを形にするのがサービス開発です。
それでは、具体的にどのようなサービスが金融DXの中で生まれているのでしょうか。実際の事例をもとに、イメージを深めていきましょう。
近年、スマートフォンを中心とした完全オンライン型の銀行サービスが拡大しています。口座開設から振込、資産運用までをアプリ1つで完結できる仕組みは、多忙な現代人にとって魅力的です。
また、ユーザーインターフェースや通知機能の進化により、金融情報へのアクセス性も向上しています。この機能により、従来は接点の少なかった若年層との関係構築も可能になるでしょう。
従来のクレジットスコアは、年収や職業、過去の借入履歴など限られた指標によって算出されてきました。しかしAIの導入により、SNSの活動や購買履歴、通信履歴といった非伝統的データを加味したスコアリングが実現しています。
AIの導入によってこれまで与信が難しかった層にも適切な金融サービスの提供が可能となり、新たな顧客層の開拓につながるでしょう。
ブロックチェーン技術は、送金の信頼性と透明性を担保する技術として注目されています。特に国際送金においては、従来よりも短時間かつ低コストで処理が可能になりつつあります。
また、トレーサビリティの高さにより、不正取引の抑制や法規制への対応も容易になる点もこの技術の利点です。
資産形成を始めたいものの投資に詳しくないという層に対し、ロボアドバイザーは有効な選択肢となっています。自動でポートフォリオを組んで定期的にリバランスする仕組みは、金融知識が乏しい顧客にも安心感を与えるでしょう。
加えて、データに基づく提案が可能なため、偏りのない合理的な運用を実現しやすい点も支持されています。
保険業界でも、スマートコントラクトを活用したサービスが登場しています。スマートコントラクトとは、契約条件をプログラムにより自動実行できる仕組みで、例えば遅延や事故が発生した場合に、事前に定められた条件に基づき自動で保険金が支払われるといった使い方が可能です。
これにより、手続きの煩雑さが軽減されるだけでなく、顧客の信頼感も高まるでしょう。
金融DXが進展する中で、新規サービスの開発に成功した企業の事例は今後の取り組みの参考になります。ここでは、実際に顧客視点での価値提供や業務効率化に成功した事例を紹介します。
MUFGが提供する「ことら送金」は、スマートフォンアプリで個人間送金を手軽に行えるサービスです。この取り組みは、これまで金融機関間での送金に必要だった口座番号や銀行コードを不要にし、電話番号やメールアドレスなどの簡易な情報のみで送金を完結できる仕組みを実現しています。
このサービス開発の背景には、キャッシュレス社会の拡大とともに生まれた「リアルタイムかつ低コストな送金サービスを求める声」がありました。MUFGはこのニーズに応える形で複数の金融機関との連携を実現し、「ことら送金」をリリースしました。この新サービス開発によって、若年層を中心に送金のハードルが下がり利便性の高いサービスとして定着しています。
この成功の要因は、単独での技術革新に留まらず、外部パートナーとのAPI連携や共通インフラを活用した点にあるといえるでしょう。DX時代の金融サービスにおいて、オープンな協働姿勢は欠かせない要素になりつつあります。
ソニー銀行では、顧客対応にAIチャットボットを導入することで新たなUX(ユーザーエクスペリエンス)を実現しました。従来電話やメール対応が中心だったサポート業務をAIによって自動化し、24時間いつでも利用可能な環境を構築しています。
この施策により、問い合わせ対応の待機時間が減少し、顧客満足度が向上しました。また、AIが収集したユーザーデータをもとに顧客の関心や行動傾向を分析し、最適な商品提案につなげる取り組みも進められました。
AIの導入に成功した要因は、システムの内製化にこだわらず技術力のある外部ベンダーとの協力体制を築いたことにあります。専門性の高い技術領域では、パートナー企業との協業が競争優位性の確保につながるケースが増えているのです。
参考:ソニー銀行
三井住友信託銀行では、証券管理業務においてDXを推進しています。これまで紙やExcelで管理していた各種証券情報をクラウドベースのシステムに移行し、情報の一元管理とリアルタイムな更新を実現しました。
この施策により業務の属人化を防ぎ、複数部門間での情報共有がスムーズになりました。また、顧客への報告書作成にかかる工数も削減され、業務効率の向上と人的リソースの再配置が進んでいます。
この成功事例では、クラウド環境を活用することで社内システムの刷新だけでなく、外部のシステムベンダーとの連携を通じたスムーズな導入がカギとなりました。これにより保守運用の負担が軽減され、本来注力すべき顧客対応やサービス企画に集中できる体制が整えられています。
参考:三井住友信託銀行
デジタル技術の進化は、金融業界のサービス設計にも直接的な影響を与えています。
ここでは、金融DXが新規サービスの開発につながる代表的な4つの理由について解説します。
従来、金融サービスの新規立ち上げには長期間のインフラ構築と多額の初期投資が必要とされてきました。しかし、クラウド基盤を用いることで必要なリソースを即時に確保でき、開発からリリースまでのスピードが格段に向上しています。
また、クラウド環境はスケーラビリティに優れており、利用者数の増減に応じた柔軟な対応が可能です。新規サービスをテスト的にリリースしてから市場の反応を見て改善する、いわゆるアジャイル開発にも適しています。これにより、ユーザー視点でのサービス提供がより実現しやすくなっているのです。
金融機関が保有する顧客データは膨大であり、これらのデータを分析することで潜在的なニーズや行動傾向を把握できるのです。近年ではAIやビッグデータ解析技術の進化により、より高度なパーソナライズが実現しつつあります。
例えば、過去の取引履歴やライフイベントをもとに最適なタイミングで住宅ローンの提案を行うなど、顧客一人ひとりに合わせたサービス設計が求められるようになっています。これにより、単なる商品提供ではなく、体験としての価値を創出できるようになるでしょう。
RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)は、定型的な業務を自動化する技術です。口座開設手続き・融資書類のチェック・定期的なレポート作成など多くの金融業務に導入されており、人的リソースの削減につながっています。
PRAの導入で、これまで手作業に追われていた人材がより創造的な業務に従事できるようになります。新規サービスの企画やプロトタイプ開発など競争力を高める活動に時間とリソースを割けるのです。
また、RPAは比較的短期間で導入効果を得られるため、DX初期フェーズでの成功体験としても有効です。導入にあたっては業務フローの見直しや社内教育が重要になるため、外部パートナーとの連携もカギとなります。
API(Application Programming Interface)は、異なるシステム間で情報を連携するための仕組みです。これを活用することで金融業界は他の業界と連携しやすくなり、異なる分野の技術やノウハウを取り入れた新たなサービスを創出しやすくなるのです。
例えば、保険業界と連携して健康アプリと連動した保険商品の提供やEC業界と連携して購買履歴に応じたポイント付与サービスを展開するなど、業界の垣根を越えたコラボレーションが進んでいます。
このようなオープンなサービス開発を推進するには、API連携に対応した柔軟なシステム設計と共通基盤を持つ外部パートナーの存在が重要になります。DX時代においては、技術だけでなく連携力も競争優位性の1つと捉える必要があるでしょう。
新規サービスの開発は多くのメリットをもたらす一方で、慎重に進めるべき側面もあります。特にセキュリティや法規制への対応、そして従業員の教育体制はプロジェクトの成功を左右する重要な要素といえるでしょう。
デジタル化によって業務が効率化される一方で、サイバー攻撃や情報漏えいのリスクが高まる可能性があります。特に金融機関では、個人情報や資産情報などの機密性の高いデータを扱うためセキュリティ体制の整備は欠かせません。
クラウド環境の活用が進む中で、ゼロトラストセキュリティの導入が注目されています。これは「すべてのアクセスを信頼しない」という前提で、ユーザー認証や通信の暗号化、アクセス制御を徹底するアプローチです。セキュリティの強化に向けては、技術的対策だけでなく従業員への定期的なセキュリティ教育の実施も求められるでしょう。
金融業界は他業種に比べ、法規制が厳格で多岐にわたるという特徴があります。デジタル化によってサービスの内容や提供方法が変わる場合、それに伴い法令対応の確認も必要になるでしょう。
例えば、個人情報保護法や金融商品取引法に加え、最近では電子契約や電子交付に関するガイドラインも見直されています。これらに違反すると行政指導や罰則の対象となる可能性があるため、法務部門や外部の専門家と連携し、慎重に進めることが重要です。
特に新規サービスを開発する際には、企画段階から法規制を意識しておくことで、後々の設計変更やリスク回避につながるでしょう。
どれほど優れたシステムを導入しても、それを使いこなせる人材がいなければ意味がありません。金融DXを成功させるには現場の従業員がIT技術に対する基本的な理解を持ち、積極的に新しいツールを活用できる環境が必要とされます。
まずは、社内での研修体制を強化してデジタルツールの基本操作や活用事例を共有するところから始めましょう。加えて、OJTや外部セミナーの活用も有効です。特に中堅層や管理職に対しては、データ活用の重要性や意思決定のスピードを高めることの意義を伝える必要があると考えられます。
デジタルリテラシーの底上げは単なる教育ではなく、企業の文化として根付かせる必要があるのです。
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同社は、ビジネスモデル設計からシステム開発、運用支援に至るまで、金融DXを包括的に支援しています。特に以下のようなサービスが特徴です。
金融業界で培った知見と最新技術を組み合わせることで、事業成長につながるDX推進が期待できるでしょう。金融DXを推進してサービス開発を効率よく行いたい企業様は、ぜひ一度ご相談ください。
ここまで金融DXが新規サービス開発に与える影響について、多角的に見てきました。実際にMUFGの「ことら送金」、ソニー銀行のAI対応、三井住友信託銀行の証券管理といった事例は、テクノロジーの活用によってサービスの幅が広がっていることを示しています。
その背景には、クラウド基盤の柔軟性やデータ分析の高度化、RPAによる業務効率化、API連携による業界横断的な協業といった要素があります。こうした仕組みを導入すれば、顧客ニーズをより的確に捉えたサービス展開が期待できるでしょう。
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