金融DXの推進によって叶う勘定系システムの刷新|4つの取り組み例を紹介
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インターネットバンキングやキャッシュレス決済が普及する中で、金融業界のDX推進は急務となっています。本記事では、金融DXの概要やアプリ開発の重要性、セキュリティ対策のポイントについて丁寧に解説します。
インターネットバンキングやキャッシュレス決済が日常的に利用されるようになった今、金融業界はかつてないスピードでデジタルシフトを進めています。しかし、利便性が高まる一方で個人情報や資産を狙ったサイバー攻撃も巧妙化しており、金融機関にとってセキュリティ対策は最優先課題となっています。「業務効率を上げながら、顧客の信頼も獲得したい」そう考える担当者の方にとって、DX(デジタルトランスフォーメーション)とアプリ開発の両立は避けて通れません。
本記事では金融業界におけるDXの概要や直面する課題に触れながら、なぜアプリ開発がDX推進に不可欠なのかを解説します。さらに、DX推進に伴い増大するセキュリティリスクへの具体的な対処方法や信頼できる開発パートナーの選び方についても触れていきます。この記事を読むことで、金融業界で求められる最新のデジタル戦略とそれを安全に進めるための実践的なアプローチが理解できるでしょう。
金融業界におけるDX推進は単なるIT化にとどまるものではなく、業界全体のあり方を革新する取り組みです。顧客体験を向上させ、組織の業務を根本的に再構築することを目的としています。
この変革の中で、アプリケーション開発は顧客との接点を強化するための非常に重要な手段として注目を集めています。金融業界のDXの本質や現状を理解してアプリ開発がどのように役立つのかを把握することで、次に進むべき方向性が明確になるでしょう。
DXとは、デジタル技術を活用してビジネスモデルや組織文化を抜本的に変革する動きです。金融業界におけるDXは、オンラインバンキングや電子決済の導入といった目に見えるサービスだけでなく、バックオフィスの業務プロセスをデジタル化して業務の効率化と正確性を追求する取り組みも含まれます。
例えば、AIを活用した与信判断やRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)による定型業務の自動化などが挙げられます。これにより、業務負担の軽減や人為的ミスの削減が可能になるのです。
国内外の多くの金融機関がDX推進を急ピッチで進めていますが、進捗度にはばらつきがあります。大手都市銀行ではデジタル人材の育成や専門部署の設置が進んでおり、先端技術の導入も積極的です。一方で地域金融機関や中小規模の組織では、導入コストや人的リソースの不足が足かせとなっているケースも少なくありません。
また、DXの名のもとにツールを導入しても業務プロセスの見直しや現場との連携が不十分な場合、期待した効果が得られないこともあります。こうした背景から、技術導入の前段階である「目的の明確化」と「業務フローの可視化」が重要視されています。
金融機関がDXを推進する背景には、いくつかの共通した課題があります。
まず、少子高齢化に伴う人口減少により従来型の店舗運営だけでは収益性を維持するのが難しくなってきています。さらに、フィンテック企業の台頭により、革新的なサービスを提供しない金融機関は顧客の選択肢から外れてしまうかもしれません。
加えて、サイバー攻撃やマネーロンダリングといったリスクにも迅速に対応しなければなりません。これらの課題を解決するには、アナログ業務を見直してリアルタイムで状況を把握できるデジタル基盤を構築する必要があります。その中心にあるのがDXであり、アプリ開発はその具体的な成果物の1つとして位置づけられています。
金融DXが進む中で、多くの金融機関がモバイルアプリやWebアプリの開発に注力しています。では、なぜアプリが重要なのでしょうか。顧客接点の強化・サービスの高度化・UX(ユーザーエクスペリエンス)の向上など理由は多岐にわたります。
これまでの金融サービスは、支店やATMなど物理的な接点を中心に展開されていました。しかし、非対面でのやりとりが主流となった今、アプリを通じたサービス提供は不可欠です。ユーザーがいつでもどこでも手続きや確認を行える環境を整えることが、顧客満足度の向上につながります。
また、アプリは双方向のコミュニケーションを可能にする手段でもあります。通知機能やチャットボットの導入によって必要な情報をタイムリーに届けられるため、顧客との関係性をより強固にできるのです。
近年の顧客は、画一的なサービスではなく自分の状況や嗜好に合った情報を求めています。この時代に、アプリはユーザーの行動履歴や属性情報をもとにした最適な商品やサービスを提示するプラットフォームとして機能します。例えば、家計簿アプリと連携した資産管理機能や目標に応じた投資アドバイスなどが好例です。
このようなパーソナライズされた体験は顧客のロイヤルティを高め、長期的な関係構築にも寄与します。アプリ開発を通じて顧客ごとのニーズを的確に把握し、サービスへ反映させる力が今後さらに求められていくでしょう。
アプリを介したやり取りはリアルタイムでのデータ取得と処理を可能にします。残高照会や送金、投資商品の購入などを即時に反映する仕組みを整えることで、顧客の利便性が向上するのです。加えて、ユーザーの利用状況をもとに継続的にUI(ユーザーインターフェース)を改善すると、操作性も高まるでしょう。
一方でリアルタイム性は、セキュリティ面のリスクも伴います。これに対して不正アクセスや異常検知を即時にアラートできる体制を構築することで、被害の拡大を未然に防ぐ効果が期待できます。アプリは単なる顧客サービスの窓口ではなく、安全性を担保する重要なセキュリティツールでもあるのです。
金融DXが加速する中、ユーザー体験の質を向上させて業務効率を高めるために、多くの金融機関が独自のスマートフォンアプリを開発しています。単なる利便性向上にとどまらず、セキュリティ強化やパーソナライズされたサービスの提供、リアルタイムな取引処理を実現している点が特徴です。
ここでは、DXの推進により生まれた注目のアプリを7つ紹介します。実際に導入されたアプリを通して、金融DXの具体的な成果を読み解いていきましょう。
DNP(大日本印刷)が開発した「金融向け総合アプリ」は地方銀行を中心に導入されており、顧客との接点を強化するために設計されています。最大の特徴は、複数の機能を1つのアプリ内に統合している点です。残高確認や入出金明細の確認はもちろんのこと、振込、ATMの検索、店舗情報の提供までシームレスな操作を可能にしています。
このアプリの強みは、利用者ごとのニーズに応じた画面表示のカスタマイズ機能です。この機能によってパーソナライズされた金融体験を実現し、エンゲージメントの向上に寄与しています。セキュリティ面でも、アプリ内に生体認証やワンタイムパスワードの機能を組み込むことで、不正アクセスへの対策が徹底されています。
参考:DNP金融向け総合アプリ
みずほ銀行が提供するスマートフォン向け口座開設アプリは、非対面での迅速な手続きに対応しています。本人確認書類の撮影と顔写真の照合によるeKYC(電子的本人確認)技術が搭載されており、来店不要で口座の開設が完了します。
このアプリの導入により、従来の紙ベースの手続きと比較して時間短縮が可能となり、ユーザーは数分で必要な金融サービスにアクセスできるようになりました。また、申請の途中経過やステータスをリアルタイムで確認できる点も、利用者の安心感を高めています。
ソニー銀行が提供するアプリは、洗練されたインターフェースと操作性が高く評価されています。為替取引、定期預金、住宅ローンなど、多岐にわたる機能をスマートフォン1つで完結できる点が魅力です。特に注目すべきは、グローバルな通貨取引をリアルタイムで行える機能であり、個人投資家のニーズに対応しています。
また、アプリ上での通知機能が充実しており、為替レートの変動や取引履歴を即座に把握できます。さらにセキュリティ面では、デバイス認証や不正アクセス検知システムの導入によって、利用者の資産を守る体制が整っています。
参考:ソニー銀行アプリ
「紙の通帳を持ち歩く時代は終わった」と感じさせるのが、ゆうちょ銀行の「ゆうちょ通帳アプリ」です。預金残高や取引履歴の確認、定期貯金の管理などがスマートフォンで可能となり、高齢者を含む幅広い世代から支持されています。
特に便利なのは、入出金明細をカテゴリごとに自動分類して視覚的に家計の状況を把握できる機能です。これにより、ユーザー自身が金融リテラシーを高めやすくなっています。また、アプリ導入によってペーパーレス化が進み、印刷コストや郵送コストの削減にも貢献しています。
参考:ゆうちょ通帳アプリ
クレジットカード会社であるセゾンが展開する「セゾンPortal」は、カード会員向けの利便性を徹底追求したアプリです。利用明細の閲覧やポイント確認、キャンペーン情報の配信など、日常的に必要な情報へ瞬時にアクセスできます。
さらに、支出管理機能も充実しており、月ごとの支払い状況をグラフで表示可能です。セキュリティ面では、一定時間の非操作による自動ログアウト機能やパスコードと生体認証の併用が導入されており、不正利用のリスクを可能な限り抑えられています。
参考:セゾンPortal
家計簿アプリ「Zaim」は、金融機関とは異なる立場からユーザーの資産管理をサポートしています。複数の銀行口座やクレジットカード、電子マネーと連携できるため、資産全体を一元管理できる点が魅力です。利用者の消費傾向を自動で分析し、節約アドバイスを提示する機能も備えています。
またZaimは、プライバシー保護の観点からデータの暗号化や匿名化にも力を入れています。サードパーティのサービスは重要な役割を果たしており、銀行とのAPI連携によってより高度な資産運用支援が可能です。
参考:家計簿Zaim
楽天カードが提供するアプリは、楽天経済圏と密接に結びついています。ショッピング履歴の管理、ポイント残高の確認、利用明細の閲覧といった基本機能に加え、キャンペーンへの簡単な参加やクーポンの取得など利便性が極めて高いのが特徴です。
注目すべきは利用額に応じたリスク分析とリコメンド機能であり、ユーザーの行動履歴をもとに最適な提案を自動で表示します。これはビッグデータとAIを活用した成果であり、金融DXの先進的な取り組みとして評価されています。セキュリティ対策にも余念がなく、ログイン時の認証プロセスは厳格でありながらもスムーズです。
参考:楽天カードアプリ
金融業界におけるDXの進展により、アプリ開発は単なるシステム開発ではなく、顧客体験(CX)向上のための戦略の一部となりました。特にユーザーの利便性やセキュリティに直結する金融アプリにおいては、徹底した計画と運用体制が求められています。
ここでは、金融DXを推進する上で欠かせないアプリ開発の5つのステップについて、具体的に紹介します。
アプリ開発をスタートする際、まず取り組むべきは既存業務の棚卸しです。
なぜなら、現行の業務プロセスにどのような課題や非効率が存在するかを把握することで、アプリ開発における明確な目的を導き出せるからです。例えば、顧客対応に時間がかかっていたり紙ベースの手続きが多く残っていたりする場合、それらをデジタル化するだけでも業務改善が期待できます。
業務フロー図の作成や従業員・顧客へのヒアリング、KPI(重要業績評価指標)の分析などを通じて現場の実態を把握しましょう。この段階で本質的な問題を見誤ると、アプリ開発後に想定外の修正が必要になるケースもあります。
効果的なアプリを開発するためには、単に機能を盛り込むだけでなく「なぜそのアプリを作るのか」という目的を明確にすることが重要です。
目的が曖昧なままプロジェクトを進めてしまうと開発の方向性がぶれてしまい、最終的な成果物が中途半端になるリスクがあります。「顧客満足度の向上」や「口座開設プロセスの簡略化」など、実現したい成果を具体的に言語化しましょう。
目標の設定においては、SMART(Specific, Measurable, Achievable, Relevant, Time-bound)というフレームワークが有効です。例えば、「半年以内にアプリからの口座開設件数を30%増加させる」といった定量的な目標を掲げることで、開発後の効果測定もしやすくなります。
アプリ開発では自社内に技術リソースが不足している場合が多く、信頼できる外部パートナーの選定が成否を分けます。
まずは自社のITスキルセットや開発体制を見直し、足りない部分を補える技術やツールを明確にします。特に、セキュリティ・UI/UXデザイン・クラウド環境・API連携など金融アプリ特有の要件に対応できる技術があるかを見極めることが大切です。
パートナー選定においては、過去の実績や開発体制、サポート体制の確認も不可欠です。また、アジャイル開発などの柔軟な開発手法に対応できる企業であれば仕様変更にもスムーズに対応できるため、開発後の満足度も高くなるでしょう。
どれだけ高機能なアプリであっても、ユーザーが使いにくければ意味がありません。金融アプリにおいては、ユーザーインターフェース(UI)とユーザーエクスペリエンス(UX)の最適化が重要です。
例えば、操作手順が複雑だったり専門用語が多くて理解しづらい画面構成になっていたりすると、ユーザー離れが起きやすくなってしまうでしょう。高齢者やITリテラシーが低い層にも配慮する必要があります。
設計の際には、カスタマージャーニーマップを用いてユーザーがどのような流れでアプリを利用するかを可視化しましょう。プロトタイプを用いたユーザーテストを実施し、実際の利用者からフィードバックを得ることも効果的です。
アプリの品質を担保する上で欠かせないのが、徹底したテストと継続的な改善です。
開発直後の段階ではバグや仕様の不備が潜んでいる可能性が高く、ローンチ前にそれらを洗い出すためのテストフェーズが必要です。テストには、機能テスト・負荷テスト・セキュリティテストなどさまざまな視点からの確認が求められます。
さらに、リリース後もユーザーのフィードバックを収集し、それをもとに継続的にアップデートを行うことが長期的なユーザー満足度の維持につながります。これを「PDCAサイクル」として回していくことでアプリの精度は徐々に高まり、他社との差別化にもつながるでしょう。
金融DXは、業務の効率化や競争力の向上といった大きなメリットをもたらす一方で、その推進には慎重さが求められる重要なポイントもいくつか存在します。
特に、ここで紹介する3つの要素はアプリ開発において避けて通れない課題であり、これらをしっかりとクリアすることが不可欠です。適切な対策を講じることにより、最終的には信頼性の高い、安全で安定したサービスの提供ができるでしょう。
金融サービスは多くの個人情報や資産情報を取り扱うため、セキュリティ対策の強化が最優先事項です。具体的には、通信の暗号化や多要素認証の導入、脆弱性診断の定期実施などが挙げられます。
また、システム開発の段階から「セキュリティ・バイ・デザイン」の考え方を取り入れることが重要です。これは設計段階からセキュリティを確保するためのアプローチで、リリース後に発生するリスクを最小限に抑える効果があります。
ユーザーの安心と信頼を確保するためにも、サイバー攻撃に備えた包括的な対策を講じましょう。
金融業界は、他業種に比べて規制が厳しく複雑です。アプリ開発を行う際には、金融商品取引法や資金決済法、など複数の法令を正しく理解し、順守する必要があります。
特に電子決済や送金機能を搭載する場合には、関係当局への届出やライセンス取得が求められるケースもあります。これらの手続きを怠ると行政処分や罰則の対象になる可能性があるため、法務担当者や専門家と連携しながら慎重に進めましょう。
常に最新の法改正にも目を配り、柔軟に対応する体制を整えることが欠かせません。
参考:金融庁(金融商品取引法)
参考:金融庁(資金決済法)
参考:金融庁(個人情報保護法)
金融アプリは利用者の資産管理や取引に直結するため、トラブル時のサポート体制が重要です。この体制を予め整えることで、アプリの操作方法がわからない、ログインできない、入出金ができないといった事例に迅速かつ的確に対応できます。
電話やチャット、FAQなど複数のチャネルを用意し、問い合わせ内容に応じた柔軟な対応を行える体制を構築しましょう。ユーザーの声を反映した継続的な改善も不可欠です。
サポート体制の充実はユーザー満足度の向上につながり、結果的にサービスの定着と継続利用につながるでしょう。
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金融DXの第一歩を確実に踏み出すために、ぜひ一度、株式会社 TWOSTONE&Sonsにご相談ください。
金融DXは、業務の効率化と顧客満足度の向上を同時に実現する可能性を秘めています。その成功のカギは、明確な目的の設定と適切な技術・パートナーの選定にあります。
アプリ開発をスムーズに進めるためには、現行業務の棚卸しから始まり、ユーザー視点を大切にした設計、そしてリリース後の継続的な改善が必要です。また、セキュリティや法規制といった基本的な要件を怠らず万全の体制を整えることが重要です。
このような複雑なプロジェクトを円滑に進めるためには、信頼できる専門パートナーの存在が欠かせません。DX推進を支援する実績を持つ『株式会社TWOSTONE&Sons』とともに、自社のビジョンを具現化するアプリ開発を目指しましょう。