金融DXの推進によって叶う勘定系システムの刷新|4つの取り組み例を紹介
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金融DXを推進するためには「DX推進ガイドライン」を指標とした計画策定に取り組みましょう。計画策定にあたってはスキルマップで組織のスキルを可視化する、DXをけん引するリーダーを育成するなどのポイントを押さえましょう。
金融DXに取り組めば金融機関における業務の根本的な改革が期待できます。例えば、専用のツール導入によって手作業を自動化できるため、業務効率の向上につながるでしょう。
しかし、金融DXによって業務の改革を成功させるためには計画策定が重要です。
無計画に金融DXを進めようとしても、満足できる結果が得られない可能性があるでしょう。
この記事では金融DXに取り組む際の計画策定の重要性や手順、ポイントなどを解説します。
金融DXをテクノロジーの導入に終えず、根本的な改革につなげるためには、適切な計画策定が求められます。
計画的なアプローチなしでは、適切なリソースの配分や施策の遅延、さらに目標の達成が困難になる可能性があります。
金融機関は、業務効率化や顧客サービスの向上を図るため、目的と優先順位を明確にした計画を策定し、段階的に実行しましょう。
計画策定により、従業員と経営陣が共通の目標に向かって協力しやすくなり、組織全体の調和が期待できます。
「DX推進ガイドライン」は、デジタルコードガバナンス・コードの名でも知られ、経済産業省が発表しているガイドラインで、金融業界におけるDXを進めるための指針として活用可能です。
ガイドラインは、DXの推進における具体的な目標、必要なリソース、及び順守すべき規範を明確にしているため、無駄のないプロジェクト進行を目指す際に役立つでしょう。
金融機関は、進捗を評価し、状況に応じた柔軟な対応を実現できるため、業界全体での一貫性が確保され、共通の基準で効果的なDXの実現が可能となります。
「DX推進ガイドライン」の構成要素は経営戦略とITシステムの構築です。
経営戦略は、組織のデジタル化を推進するために、トップダウンでの強力なリーダーシップと明確なビジョンの提示が求められます。
一方、ITシステムの構築は、データ統合・業務プロセスの自動化・セキュリティ対策などが重要な要素です。
金融DXを成功させるためには、経営の在り方が大きな役割を果たします。
経営陣は、単に新しい技術を導入するだけでなく、組織文化の改革や業務プロセスの見直しが必要です。
例えば、トップダウンでの強いリーダーシップと明確なビジョンを持ち、従業員がその方向性に賛同し、協力できる体制の整備が求められます。
また、経営者は、DXの進行状況を常に監視し、問題点に迅速に対応する姿勢も求められます。
これにより、組織全体がDXに対して一貫した意識を持ち、成功につなげられるでしょう。
DXを進めるためには、信頼性の高いITシステムの整備も欠かせません。
システム整備にはデータの統合や分析能力を高めることが含まれます。
多くの金融機関では、顧客情報や取引データなどが複数のシステムに分散していますが、これの統合によって、データの一元管理が可能となり、効率的な業務運営が目指せます。
また、セキュリティ面でも強固な対策を講じる必要があり、顧客の信頼を得るためには、高い水準の情報保護を意識しましょう。
金融DXの計画策定は次のような手順で進めていきましょう。
それぞれの手順を詳しく解説します。
DX計画を進めるには、まず自社の現状を分析しましょう。
現状分析では、自社のITシステムの整備状況やデジタル化に対する従業員の意識、さらに現在の業務プロセスの効率性などを評価します。
具体的には、既存のITインフラがどれだけ最新のテクノロジーに対応しているか、また従業員がデジタル化に対してどの程度理解し、協力する準備ができているかを見極めます。
現状を正確に把握することで、次のステップに進むために必要なベースの整備が可能です。
現状分析を基に、次に重要なのは課題の明確化です。
現状分析で得られた情報を基に、どの領域がデジタル化に対応できていないのか、どの業務プロセスが非効率なのかを洗い出します。
例えば、データのサイロ化や情報共有の不十分さ、手作業での業務が多いことなどが課題として浮かび上がるでしょう。
課題の明確化によって、どの部分に重点を置いて改善を進めるべきかが見えてきます。
課題が明確化された後、次に行うのが目標設定です。
目標は定性的(質的)なものと定量的(数値的)なものの両方を設定するのがポイントです。
例えば、顧客満足度の向上や業務効率の改善などは定性的な目標であり、売上の増加やコスト削減などは定量的な目標です。
定量的な目標は数値化できるため、進捗を把握しやすく、達成度を測れます。
一方、定性的な目標は組織全体の文化や価値観に関わる部分であり、長期的な視点での評価が求められます。
目標が設定された後は、実際にその目標を達成するための戦略を立案しましょう。
戦略は、全体的な方向性を示すものであり、具体的な施策が含まれます。
戦略立案は、目標を現実のものにするための指針となり、各部門が一致団結して取り組むべき方向が見えてくるでしょう。
具体的な戦略例として以下が挙げられます。
それぞれの戦略を解説します。
BI(Business Intelligence)ツールは、企業が保有する膨大なデータを効率的に分析し、意思決定に役立てるためのツールです。
金融業界においては、顧客情報や取引履歴、マーケットデータをリアルタイムで分析することが求められます。
BIツールを導入することで、データを視覚化し、経営陣や現場担当者が迅速かつ的確な意思決定が可能です。
さらに、データ分析を通じて新たなビジネスチャンスの発見や、業務の効率化が期待できます。
RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)は、手作業の業務を自動化するための技術です。
金融業界においても、顧客対応や請求処理、報告書作成などの反復的で定型的な業務が多くあります。
これらの業務にRPAを導入することで、作業の効率化を図るとともに、ヒューマンエラーが減少し、従業員がより創造的な業務に集中できる環境の整備が可能です。
戦略が決定した後は、実行に向けての詳細なロードマップを作成しましょう。
ロードマップは、各施策をいつまでに実行するのか、どのリソースを投入するのかを具体的に計画するもので、DXを実現するためのタイムラインを示します。
ロードマップにより、プロジェクトが進行しているかどうかを把握でき、期日内に目標を達成するためのスケジュール管理が可能となります。
DXは実行と評価の繰り返しがポイントです。
計画に基づいて戦略を実行した後は、成果を定期的に評価し、改善点を洗い出します。
評価は定量的・定性的な目標に基づいて行い、必要に応じて施策を修正していきます。
このプロセスの繰り返しによって、DXは進化し続け、最終的には企業全体におけるデジタル化が加速するでしょう。
評価と改善のサイクルを回すことで、持続可能なDX推進につなげられます。
金融DXを効果的に進めるためには、次のような手順でポイントを押さえて進めましょう。
ここでは計画策定を進める際のポイントを詳しく解説します。
金融DXを推進するためには、組織内のスキルや能力を可視化し、どこにギャップがあるのかを明確にしましょう。
具体的にはスキルマップを活用することで、従業員一人ひとりの得意分野や改善点を可視化できるため、組織の強みや弱みを把握可能です。
組織の強み、弱みを把握できれば、必要なスキルを持つ人材の育成計画を立てたり、外部からの人材補充を行ったりする際に役立ちます。
また、スキルマップは、組織全体の能力向上を目指すための出発点となり、DX推進のために必要な具体的な施策を特定するのにも効果的です。
金融DXを推進するためには、強力なリーダーシップを発揮できる従業員を育成しましょう。
DXをけん引するリーダーは、マネジメント能力だけではなく、テクノロジーへの理解、変革への意欲、そして全従業員を巻き込んで前進する力が求められます。
リーダーを育成するためには、教育プログラムや指導体制を整備し、リーダーシップスキルを向上させるのが有効です。
また、企業の文化を変えるためのビジョンを示し、従業員のモチベーションを高める能力も育成しましょう。
リーダー育成方法の主な手段は次のとおりです。
それぞれの手段を詳しく解説します。
座学によるスキル学習は、金融DXのリーダーシップを育成するうえで基本的な部分の構築に有効です。
具体的には、DXの概念やトレンド、そして新しいテクノロジーに関する知識を座学で学びます。
座学のメリットは、体系的に知識を吸収できる点です。
特に、デジタル化における戦略やフレームワーク、リーダーシップ論など、理論的な知識をしっかりと理解することは、実践においても非常に重要です。
座学を通じて得た基礎知識を実務に適用するための土台を構築しましょう。
座学で得た知識を実際に活かすための育成方法が、OJT(On-the-Job Training)です。
OJTでは、リーダー候補が実務の中で経験を積み、実際の課題に取り組みながらスキルを磨いていきます。
金融DXの実務は、座学だけでは得られない知識や能力を身につける場となります。
実務経験を通じて、問題解決能力やチームワークを育み、リーダーとしての資質が向上するでしょう。
リーダーの育成においては、社外の知見を取り入れることも検討してみましょう。
具体的には次のような手段が挙げられます。
社外の専門家に依頼すれば、最新の情報や他業界の事例を学べます。
また、社内だけでは得られない視野の広がりが生まれ、新たなアイデアや戦略が生まれる可能性を高められるでしょう。
DXの進捗を効果的に管理するために活用できるのが、KPI(Key Performance Indicator)です。
KPIは、DXの取り組みが目標に向かって進んでいるかどうかを測るための具体的な指標となります。
KPIによって定量的な数値を用いることで、プロジェクトの成果を定期的に評価し、必要に応じて軌道修正がしやすくなります。
例えば、業務効率化を目指したDXの進捗を測るためには、作業時間の削減率やコスト削減率をKPIとして設定するのが有効です。
金融DXの計画策定に成功した事例として以下が挙げられます。
2つの成功事例について詳しく解説します。
みずほフィナンシャルグループは、2019年度からの5年間を計画期間とする5ヵ年経営計画を策定しました。
デジタル化や少子高齢化、グローバル化等の経済・産業・社会の変化を受けて、金融機関を取り巻く環境は変化しています。
このような変化に対して、みずほフィナンシャルグループはデジタル技術を積極的に活用し、新たな時代の顧客ニーズに対応する新たな価値の創造を目指しています。
みずほフィナンシャルグループは、デジタル技術活用による次世代金融への転換に向けて、グループ各社だけでなく外部企業との積極的な協働も、経営計画に盛り込んでいるのも特徴です。
参考:5ヵ年経営計画 | 株式会社みずほフィナンシャルグループ
北國銀行はデジタルをトリガーにしたDXによる大規模な組織改革、サービス開発の計画を策定しました。
デジタル化によってコストを削減していくだけでなく、マネジメントも変化させて全社改革を目指しています。
このような改革を進めるための計画策定を主導、管轄するのがCEOもしくは、COO直轄です。
組織の上部にいる従業員がDX推進の模範を示すことで、部下たちも安心して改革に取り組めています。
参考:2021年6月号 特集 DXとはデジタルをトリガーにした全社改革である:北國銀行が「DXには終わりがない」と語る理由 | 一般社団法人 行政情報システム研究所
金融DXの成功を左右する計画策定で悩んでいる企業は、DXのさらなる推進に必要なソリューションを提供する『株式会社 TWOSTONE&Sons』にご相談ください。
ITパーソンのマッチングや研修サービス実施だけでなく、戦略コンサルティングにも対応しています。
目標実現に適したKPIの設計や人員計画の作成と構築などを、戦略コンサルティングとしてサポートします。
金融DXを成功に導くために有効なのが事前の計画策定です。
計画策定にあたり金融機関は、現状のITシステムや従業員の意識を分析し、課題の明確化から始めましょう。
計画を策定する際はスキルマップで組織のスキルを可視化する、DXをけん引するリーダーを育成するなどのポイントを押さえておくのも大切です。
事前に入念な計画を策定して、金融DXをスムーズに進めましょう。