金融DXチーム編成のポイントは?改革が必要な理由や必要な役職を解説

金融DXを成功させるには、テクノロジーの導入だけでなく、組織文化やチーム体制の見直しが欠かせません。プロデューサーやエンジニアなどの適切な人材を配置し、専任チームを構成することが大切です。本記事で紹介するチーム編成のポイントを押さえて金融DX推進にお役立てください。

金融DXは顧客満足度向上や業務の効率化など、さまざまなメリットを金融機関にもたらす取り組みです。

しかし、金融DXによるメリットを金融機関が享受するためには、取り組みをけん引するチームの存在が欠かせません。

金融DX推進チームにはさまざまなスキルを持ったメンバーが必要なので、事前にどのような人材が求められるのか把握しておきましょう。

この記事では金融DXのチーム編成に必要な役職や編成のポイントなどを解説します。

金融DX成功にはチーム改革が必要な理由

金融業界におけるDXは、単にテクノロジーの導入だけでなく、組織文化やチーム構成の改革を伴うものです。

DXを効果的に推進するためには、企業全体の意識改革と、変革をけん引できる適切な人材配置が求められます。

IT人材が不足しているため

金融業界は、伝統的なビジネスモデルに依存している傾向にあるため、急速なIT技術の導入に対応できる人材が不足しています。

このようなIT人材の不足がDXの進行が遅れる一因になりかねません。

IT人材が不足している場合、専門的なスキルを持つ人材を確保し、従業員に対して再教育を実施しましょう。

具体的にはAIやデータ分析、クラウドコンピューティングなどの分野で専門的な知識を持つ人材が求められるため、積極的な採用活動や外部パートナーとの連携も検討しましょう。

DXに抵抗感を示す従業員がいるため

DXを進める過程で、従業員からの抵抗が生じることもあります。

特に、長年同じ業務を続けてきた従業員にとって、新しい技術や働き方への適応はストレスになりかねません。

従業員の抵抗感を克服するためには、従業員への理解とサポートが必要です。

トレーニングやワークショップを通じて、新しいツールやシステムの使用方法を学んでもらうとともに、DXの目的とメリットを明確に伝えることが、抵抗を減らす鍵といえるでしょう。

経営陣がITへの理解が少ない可能性もある

経営陣がIT技術の重要性やDXの意義を十分に理解していない場合、プロジェクトの推進が遅れる可能性があります。

経営層の理解と支持は、DX推進の成功に欠かせません。

経営陣に対して、デジタル技術が企業の競争力を高めること、デジタル技術導入がどのように業務の効率化やコスト削減につながるかを具体的に説明することで理解を得ましょう。

また、ITリーダーシップの強化や、外部専門家を招いてのアドバイザリー活動も有効な手段です。

金融DX推進のチーム編成に必要な役職

金融DXを成功させるためには、適切な役職を持つ専門家がチームに加わり、それぞれの分野で役割を果たすことが必要です。チーム編成時には、ビジネスとテクノロジー両面の知識を持つ人材を配置しましょう。

金融DX推進チーム編成に必要な役職は主に次のとおりです。

  • プロデューサー
  • エンジニア
  • UXデザイナー
  • データサイエンティスト
  • チェンジ・リーダー

それぞれの役職について、詳しく解説します。

プロデューサー

プロデューサーは、金融DXプロジェクト全体の進行管理や戦略的方向性の策定を担当します。

ビジネスの視点とテクノロジーの視点をバランスよく持ち、プロジェクトを成功に導くための存在といえるでしょう。

金融DX推進チーム編成におけるプロデューサーは次の2つに分けられます。

  • ビジネス系プロデューサー
  • テクノロジー系プロデューサー

2つのプロデューサーの特徴を解説します。

ビジネス系プロデューサー

ビジネス系プロデューサーは、DXプロジェクトにおいて顧客ニーズや市場動向を基に戦略を立案し、実行する役割です。

ビジネス系プロデューサーには、金融業界に関する深い知識と、市場動向を把握する能力が求められます。

ビジネス側の視点を重視し、デジタル技術がどのように顧客満足度を向上させ、業務効率化を実現できるかを明確にするのがビジネス系プロデューサーです。

また、チーム内での調整役として、関係部署との連携を強化し、DXの実行段階での障害を減らすこともビジネス系プロデューサーの任務です。

テクノロジー系プロデューサー

テクノロジー系プロデューサーは、チーム内で技術的なリーダーシップを発揮し、ビジネス目標と技術的な解決策を結びつける役割を担った役職です。

この役職には、システム開発・クラウドサービスの利用・AIの導入といったテクニカルスキルが求められます。

システムの選定や導入の際に、技術的な課題を事前に予測し、効果的に解決策を提供することもテクノロジー系プロデューサーに求められます。

エンジニア

エンジニアは、実際にシステムやプラットフォームの設計・開発を担当する役職です。

金融DXでは、セキュリティやデータ管理に関するスキルが求められます。

そのため、エンジニアがシステム開発や運用における課題を解決し、システム全体の安定性と信頼性を担保することがポイントです。

金融業界における規制や安全基準にも精通している必要があります。

UXデザイナー

UXデザイナーは、ユーザー体験(UX)の向上を図る役職で、顧客が使いやすいシステムやサービスを提供するために、UI(ユーザーインターフェース)とUXのデザインを担当します。ユーザーのニーズや行動を分析し、その結果をシステムに反映させる重要な役割を担います。

金融サービスをデジタル化する際には、顧客の利便性を第一に考え、直感的に使えるインターフェースの提供がポイントです。

データサイエンティスト

データサイエンティストは、大量のデータを解析し、有益なインサイトを導き出す役職です。

金融業界では、顧客データや取引データを活用し、ビジネスの意思決定に役立つ情報を提供することが求められます。

特にAIや機械学習を用いた予測分析は、金融サービスの向上に不可欠といえるでしょう。

さらに、データを扱う立場として、セキュリティやプライバシー保護にも配慮する必要があります。

チェンジ・リーダー

チェンジ・リーダーは、組織内での文化や意識改革を促進する役職です。

金融DXを推進させるには、従業員の意識改革が欠かせません。

チェンジ・リーダーは、DXに対する理解を深めてもらうための働きかけを行い、現場の抵抗感を和らげるように努めます。

また、従業員が新しいシステムや技術を積極的に活用できるよう、トレーニングやサポートを提供することも役割の一部です。

金融DX推進タイプ別のチーム編成

金融DXを進めるには、企業の規模や目的に応じたチーム編成が求められます。

企業のニーズに合わせてチームを編成すれば、よりスムーズな金融DX推進につながるでしょう。

具体的な金融DX推進タイプは次のとおりです。

  • IT部門拡張型
  • 事業部門主導型
  • 専門組織型

各タイプの特徴を解説します。

IT部門拡張型

IT部門拡張型は、既存のIT部門を拡充し、DXの推進役として強化する方法です。

主にIT担当者を中心に新たなスキルを持つメンバーを加えることで、既存のインフラを活用し、デジタル化を進めます。

社内のITリソースを活用できるため、スムーズな推進が可能となりますが、事業部門との連携強化が求められます。

事業部門主導型

事業部門主導型とは、事業部門の担当者が中心となってDXを推進する方法です。

業務内容への理解が深いメンバーが主導するため、現場の課題に即した実践的な解決策を導き出せる点がメリットです。一方で、IT部門との連携や技術的なサポートが必要になるケースもあるため、社内での連携体制を整えておく必要があるでしょう。

専門組織型

専門組織型はDX推進専用の組織を立ち上げ、メンバーを配置して推進を行う方法です。

プロジェクトごとに必要なスキルを持つ人材を集め、専門性の高い体制で効率的に運営します。

特定分野における課題解決には強い一方で、変化への柔軟な対応がやや難しくなる可能性があるため、体制の見直しを適宜行うのがポイントです。

金融DX推進のチーム編成のポイント

金融DX推進において、成功のカギを握るのはチーム編成です。

金融DX推進を成功させるためには、次のようなポイントを押さえてチーム編成に取り組みましょう。

  • DX推進の方向性が自社に適している
  • エンジニアやプロデューサーなど必要なメンバーをアサインする
  • 全社統一のDX推進部署
  • リーダーとしてCODを置く
  • メンバーの兼任は避ける
  • 経営陣と密なコミュニケーションを取る

それぞれのポイントを解説します。

DX推進の方向性が自社に適している

チーム編成を行う前に、企業が目指すDXの方向性を明確にしましょう。

自社の業態や強み、そして市場におけるポジショニングを考慮し、どのようなデジタル化を目指すかを定めることが、成功への第一歩となります。

この方向性に基づき、適切な人材を配置し、全員が共通のビジョンに向かって進む体制を作り上げて、DXを推進させましょう。

エンジニアやプロデューサーなど必要なメンバーをアサインする

DX推進に最適なメンバーをアサインできるかは、プロジェクトの成否を左右する要素です。

エンジニアやプロデューサー・UXデザイナー・データサイエンティストなど、各分野に精通した専門家を揃えましょう。

それぞれの役割を明確にし、適材適所に配置することで、効果的な進行が可能になります。

全社統一のDX推進部署

DX推進を一貫して進めるためには、全社統一で専任の部署を設けるのもポイントです。

専任部署は、プロジェクトごとの進捗管理やリソースの調整を行い、各部門と連携しながら全社的な取り組みを進めます。

DX推進部署を設立することで、各部門がバラバラに進めるのではなく、統一した戦略で進行できるため、効果的なDX推進が目指せます。

リーダーとしてCODを置く

COD(Chief Digital Officer)は、企業のDX推進を統括する役職で、リーダーシップを発揮し、組織全体を巻き込んでDX戦略を実行に移す役割を担っています。

CODは、デジタル技術の最前線に立ち、社内外の関係者との調整役としても活躍します。そのため、DXを成功に導くためには、力強く先導できるCODを設置することが欠かせないでしょう。

メンバーの兼任は避ける

DX推進においては、専門的な知識とスキルが求められるため、メンバーの兼任を避けるのがポイントです。

特定の従業員が複数の役割を担うと集中力が分散し、プロジェクトの進行に影響を与える可能性があります。

各メンバーがその業務に専念できる体制を整え、効率的に推進できる環境を整備してください。

経営陣と密なコミュニケーションを取る

DXを円滑に推進するためには、DX推進チームと経営陣との密なコミュニケーションを意識して取り組みましょう。

経営陣は、DXの方向性や進行状況を把握しながら、必要に応じてリソースの配分や戦略の見直しを行う役割を担います。

一方で、DX推進チームは定期的に進捗報告を行い、経営層からの理解とサポートを得るように努めてください。双方の連携が、組織全体でのDX推進を円滑に進める上で大きな力となるでしょう。

金融DXチーム編成のためには人材確保が重要

金融DXの成功には、適切な人材の確保が欠かせません。

特に、AI・データ分析・クラウド技術など、金融業界のデジタル化をけん引するための専門的なスキルを有する人材が求められます。

加えて、戦略的思考を持つリーダーシップを発揮できる人材や企業のビジョンに共感できる人材も金融DXチームに欠かせない存在です。

金融業界は急速にデジタル化が進んでおり、その変化に対応できる人材を適切に配置することで、DXをより効果的に進められるでしょう。

金融DXにおける人材確保のポイント

金融DXにおける人材確保のためは、次のポイントを押さえておきましょう。

  • 自社が求める人材を明確にする
  • ヘッドハンティングなどで積極的に採用を進める
  • 給与など候補者の希望条件を満たせるようにする

上記のポイントを押さえることで、金融DX促進につながる人材確保を進めやすくなります。

自社が求める人材を明確にする

金融DXを推進するにあたって、自社が求める人材を明確に定義しましょう。

AI・データサイエンス・クラウドコンピューティングなどの分野に精通した人材が求められます。

しかし、上記のようなITスキルだけでなく、金融業界特有の知識や経験も必要です。

自社の業務プロセスや顧客ニーズにマッチしたスキルを持つ人材をリストアップし、それに基づいて採用戦略を練りましょう。

具体的なスキルセットを明確にし、どの部門でどのようなスキルを活かせるかを十分に検討することで、適材適所の人材配置が目指せます。

ヘッドハンティングなどで積極的に採用を進める

金融DXを実現するために、ヘッドハンティングを活用し、業界内外から優れた人材を積極的に採用していきましょう。

特に、デジタルスキルを持つプロフェッショナルは他社も注目しており、競争が激しくなる可能性があります。

そのため、外部のエージェントやヘッドハンティングサービスを活用して、迅速に採用活動を進めましょう。

採用時には候補者の技術的なスキルだけでなく、企業文化やチームとの適合性も重視し、長期的に活躍できる人材を選定することが大切です。

給与など候補者の希望条件を満たせるようにする

競争が激化するDX分野での採用には、給与や福利厚生など候補者が重視する条件を満たしているかも見直すべきポイントです。

特に給与や福利厚生の水準は、優秀な人材を引きつける上で重要な要素となるでしょう。

そのため、競争力のある給与水準を提供し、さらにテレワークやフレックスタイム制など

柔軟な働き方を整えるのもポイントです。

候補者が求める条件を満たすことで、より優秀な人材を引き寄せることができるでしょう。

給与面に加えて職場環境や企業文化にも配慮し、候補者が長期的に働き続けたいと感じる職場づくりを進めることが成功のポイントです。

金融業界のDX人材育成事例2選

金融業界の中には、すでにDX人材の育成に積極的に取り組んでいる金融機関も存在します。

具体的には、以下のような施策が実施されています。

  • 株式会社三菱UFJ銀行 | DX推進人材育成研修の実施
  • 株式会社横浜銀行 | DXライセンスを独自の社内資格として設定

それぞれの人材育成の取り組みについて解説します。

1. 株式会社三菱UFJ銀行 | DX推進人材育成研修の実施

三菱UFJ銀行はDX推進を加速させる取り組みの一環として、2024年11月からDX推進人材育成研修「BASE研修」をスタートしました。

この研修は本部管理職の約2,200名を対象としており、DX推進に必要なマインドセットや自社の業務をテーマとしたDXプロジェクトの企画・推進の実践スキルの習得を目的としています。

研修はこれまで企業のDX人材研修を手がけてきた専門企業と共同で実施しており、実践的な内容が特徴です。

三菱UFJ銀行ではDX推進を担うコア人材を中心に人材育成を行ってきましたが、「BASE研修」により、従業員がDXスキルを身に着けられる体制の構築を目指しています。マネジメント層に対しても、デジタル技術への理解を深める機会となっており、部下が相談しやすい組織風土づくりにも効果が期待できるでしょう。

参考:全行員が変革を主導する時代へ2,000名規模のDX推進人材育成研修が始動 | 三菱UFJフィナンシャル・グループ

2. 株式会社横浜銀行 | DXライセンスを独自の社内資格として設定

横浜銀行では2022年10月〜2023年3月にかけて、本部企画部門や IT・デジタル部門での活躍を目指す行員を対象に「DXアカデミー」を開催しました。

このプログラムは、DX人材育成を支援する専門企業の協力のもと実施されています。

最新のITやDXの動向・分析力・要件定義力・プロジェクトマネジメント力など、実務に直結するスキルを体系的に学べる構成となっています。最終的には修了テストが行われ、合格者には独自の社内資格である「DXライセンス」が付与される仕組みです。

「DXライセンス」を取得することで、行員のスキルの可視化やキャリアアップの推進にもつながっており、今後のDX人材育成基盤として役割を果たしていくでしょう。

参考:横浜銀行の「DX 人財育成」のパートナーに選定 | 株式会社インソース

金融DXのチーム編成でお悩みの企業は『株式会社 TWOSTONE&Sons』にご相談ください

金融DXを推進するためには、テクノロジーの導入だけでなく、適切なスキルを持った人材によるチーム編成が必要です。

金融DXのためのチーム編成で悩んでいる企業の担当者は、『株式会社 TWOSTONE&Sons』にご相談ください。

『株式会社 TWOSTONE&Sons』は金融DX推進に必要な人材のマッチングだけでなく、IT研修サービスを実施しているため、従業員のスキルアップも目指せます。

まとめ | チーム編成のポイントを押さえて金融DXを進めよう

金融業界におけるDXの成功は、適切な人材の確保とチーム編成が左右します。

まずは社内で必要とされるスキルや役割を明確にしたうえで、ヘッドハンティングも活用しながら積極的に人材採用を進めるのがポイントです。

金融DXを推進するチームは、プロデューサー・エンジニア・UXデザイナー・データサイエンティストなど、多様な専門人材で構成するのが理想です。これらのメンバーが連携しながらDXを推し進めるには、全社的な協力体制を築くことが重要です。また、推進チームは経営陣と密なコミュニケーションを欠かさずに継続的に理解と支援を得るように努めましょう。