金融DXの推進によって叶う勘定系システムの刷新|4つの取り組み例を紹介
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金融DXとしてデータ分析に取り組めば、市場動向のリアルタイムでの把握や、収益の最大化が図れるなどがメリットです。金融機関が保有しているデータはBIツールやRPAツールなどで分析します。データ分析は全社的な取り組みとして進めていきましょう。
金融機関はさまざまなデータを保有しています。
金融DXの一環として金融機関が保有しているデータを分析すれば、単なる効率化にとどまらず、競争力の強化にもつながるでしょう。
しかし、データ分析を実施する際には、慎重な個人情報の取り扱いや高精度なデータ管理が必要です。
さらに、分析しやすくするために、専用のツール導入などによってデータの加工が必要です。
この記事では、金融DXにおけるデータ分析のメリットを6つに分けて紹介し、それぞれの実践方法と活用ツールを詳しく解説していきます。
金融DXでデータ分析に取り組むメリットは次のとおりです。
それぞれのメリットについて詳しく解説します。
金融市場は常に動いており、迅速な対応が求められます。
従来の金融機関では、時差や手動の作業が影響し、情報の遅れやミスが発生する可能性がありました。
しかし、金融DXの一環としてデータ分析に取り組めば、市場データや経済指標をリアルタイムで監視・分析が可能です。
例えば、AI(人工知能)を活用すれば、膨大な取引データを瞬時に分析し、瞬時に市場のトレンドの把握が可能となります。
その結果、金融機関は市場動向を素早く把握し、迅速かつ適切な意思決定につながり、競争優位性を確保できるでしょう。
金融機関において、与信審査は顧客への貸し付けや融資に関する重要な判断を伴います。
従来の審査方法では、限られた情報に基づいた判断が行われていましたが、金融DXに取り組めば、分析したデータを活用して高度な与信審査の実現が期待できるでしょう。
例えば、顧客の銀行取引履歴・SNSの投稿内容・消費行動データなど、これまで活用していなかった情報も解析対象となります。
さらに、AIを活用すれば過去の与信データを学習、分析してより高精度なリスク予測が可能です。
金融DXによるデータ分析を実施すれば、審査結果が迅速かつ精度高くなり、貸し倒れのリスクを最小限に抑えられるでしょう。
金融業界では、顧客に最適な金融商品を提供することが成功の鍵を握っています。
例えば、結婚・出産・教育資金準備など、ライフステージに応じた金融ニーズを把握して、商品を提案する必要があります。
従来の方法では一律な商品提案に傾倒してしまい、個々の顧客のニーズに応じた提案が難しい傾向にありました。
一方、金融DXによってデータ分析に取り組むと、顧客の財務状況・過去の取引履歴・生活スタイルに基づいてパーソナライズした商品提案が可能となります。
具体的にはAIが顧客の消費行動を分析し、どの金融商品が最適かを予測できるため、これにより顧客満足度の向上が期待できます。
顧客一人ひとりに合わせた提案が行えるため、販売戦略がより効果的になるでしょう。
参考:生成 AI を活用した新たなコンタクトセンターシステムの構築について | 株式会社みずほ銀行
金融業界では、取引の不正や詐欺が発生するリスクが潜んでいます。
不正のリスクに対応するため、金融機関はリアルタイムで取引を監視し、異常を検知するシステムを構築する必要があります。
例えば、取引データをリアルタイムで分析すれば、過去の不正取引のパターンに応じて疑わしい取引を自動的に検出可能です。
その結果、不正取引を早期に発見し、迅速に対応できるでしょう。
さらに、不正行為を未然に防ぐための予防策を強化でき、顧客や企業の信頼性を維持できます。
従来、金融機関の経営方針はプロダクトアウト型であることが多く、自社の都合や利益を優先した商品開発が行われてきました。
プロダクトアウトとは市場のニーズよりも、会社の作りたいものや売りたい商品を開発、販売する手法です。
金融DXによってデータを分析すれば、データに基づいた潜在的なニーズを把握でき、顧客の視点から商品の提供が可能になります。
顧客視点に立てば、顧客にとって本当に価値のある商品やサービスを提供できるため、顧客満足度の向上とともに、企業のブランド価値向上も期待できます。
データに基づいた経営方針に転換すれば、より競争力のある金融商品を市場に提供できるでしょう。
金融DXによるデータ分析は業務の最適化によって無駄を省き、リスク低減に有効です。
例えば、顧客の投資履歴や市場動向を解析すれば、最適な経営戦略を立案できます。
また、AIによる予測分析を活用して、収益を最大化するための戦略を立て、効果的なマーケティング戦略の実施が可能です。
このようにデータ分析に取り組めば、企業の収益は飛躍的に向上し、競争力を維持できます。
金融DXでデータ分析に取り組む際は、金融業界が扱うデータの種類を把握しておきましょう。
銀行や証券会社をはじめとする金融機関では、顧客に関する詳細な情報を膨大に保有しており、これらのデータは業務運営において重要な役割を果たしています。
特に金融機関は、顧客の財務状況や取引履歴を含む豊富なデータを収集・保管・管理しており、その利用によって効率的なサービス提供やリスク管理が行われています。
具体的には以下のようなものが金融業界の扱うデータです。
データの種類 | 主な例 |
顧客情報 | 勤務先や収入の情報、他金融機関での借り入れ状況など |
購買データ | クレジットカードの決済データ |
一般企業が扱うデータと異なり、金融業界の顧客情報は収入や借り入れ状況など、より詳細なデータが特徴です。
上記のような情報は金融機関が利用しているシステムから収集できます。
金融DXのデータ分析で用いるデータは構造化と非構造化に分けられます。
データ分析に取り組む際はそれぞれの特徴を把握しておきましょう。
構造化データとは、規則的な形式のデータです。
表形式で保存されることが多く、各データポイントは定義されたフィールドに収められます。
例えば、顧客情報・取引履歴・口座残高などが構造化データに該当します。
これらのデータは、データベースやスプレッドシートなどで簡単に管理・分析が可能です。
構造化データの利点は、整然とした形式で保存されているため、既存の分析ツールを使って容易に処理できる点です。
金融業界では、これらのデータを基に顧客の信用スコア算出やリスク評価を実施します。
また、金融機関が提供するローンの審査や保険の契約においても、構造化データを使って迅速かつ正確な判断につなげられます。
非構造化データは規則的な形式で整理されていないデータです。
例えば、顧客のメール・SNSの投稿・通話録音・ビデオ・写真などが該当します。
このようなデータは数値や文字列といった定型的な形ではなく、自由形式で表現されるため、解析に工夫や高度な技術が必要です。
非構造化データは、テキストマイニングや自然言語処理(NLP)・画像解析・音声認識などの技術を駆使して分析します。
金融機関では、SNSの投稿から顧客の感情やトレンドを分析したり、カスタマーサポートの通話録音を解析して顧客満足度を測定したりする際に使用します。
非構造化データを活用すれば、顧客のニーズや行動パターンをより深く理解することができ、サービスの改善が期待できるでしょう。
金融DXにおけるデータ分析は次のような方法で進めていきましょう。
各ステップを詳しく解説します。
データ分析を進める第一歩は、現状を正しく把握することです。
現在、どのようなデータを収集し、どのように活用しているのかを確認しましょう。
この段階では、データの質や整合性・アクセス権限・業務フローなどを評価し、どの部分に改善が必要かを見極めます。
次に、分析の目的を明確にするために目標設定を行います。
例えば顧客の購買履歴を基にパーソナライズした金融商品を提案する、不正取引の検出を強化するなど、具体的な目標設定が必要です。
目標が明確になれば、必要なデータや分析手法も明確になり、実行可能なプランを立てやすくなります。
データ分析を行うためには、適切な環境の整備が不可欠なため、システムやツールを選定しましょう。
例えば、クラウドベースのデータストレージやデータベースを利用することで、データを効率的に収集・保存・管理が可能です。
さらに、データの安全性を確保するためのセキュリティ対策も重要です。
金融業界では顧客情報や取引情報など、機密性の高いデータを取り扱うため、情報漏洩を防ぐための強固なセキュリティ対策が求められます。
データ分析の前提として、データの収集と加工が必要です。
例えば金融機関では、顧客の金融取引情報や支払い履歴、ローンの返済状況など、さまざまなデータを収集しているものの、そのままでは分析できない可能性があります。
そのため、データ加工に取り組みましょう。
データ加工には、欠損データの補完・異常値の処理・データの標準化などが含まれます。
データ分析の段階では、収集したデータを基に顧客がどのような潜在的ニーズを抱えているのかインサイトを導き出します。
AIや機械学習の活用によって、膨大なデータに基づく予測分析が可能です。
データ分析の結果を基に、具体的なアクションを起こします。
例えば、顧客に適した金融商品を提案するためのマーケティング戦略を策定したり、リスクを予測して取引のルールを見直したりします。
分析結果を基に、システムや業務プロセスの改善を目指すことも可能です。
さらに、分析結果はベースにした新たなビジネスモデル構築やサービス提供にもつながります。
金融業界におけるデータ分析は、効率的な業務運営や新たな価値創出に貢献する重要な要素ですが、データの取り扱いには慎重さが求められます。
特に、金融機関が取り扱うデータは顧客の個人情報や取引履歴、信用情報などは機密性が高いため、適切な方法で管理しなければなりません。
データ分析に当たっては次のような点に注意しましょう。
ここではそれぞれの注意点について詳しく解説します。
金融機関が収集・分析するデータの中で重要かつ機密性の高い情報が顧客の個人情報です。顧客の名前・住所・電話番号・口座情報、さらには給与情報やクレジットカード利用履歴など、個人を特定できる情報は特に厳重に管理しなければなりません。
これらの情報が漏洩した場合、顧客の信頼を失うだけでなく、法的な問題を引き起こす可能性もあります。
金融機関がデータ分析を行う際には、個人情報を適切に匿名化する方法が重要です。
顧客情報を使って分析を行う場合でも、特定の個人が識別できないように、情報を匿名化したり、集約したりすることが求められます。
また、データを扱う従業員には十分な教育を行い、個人情報保護法のように個人情報の取り扱いに関する法令を遵守しましょう。
データ分析や金融DXは単独の部署やチームだけで行うものではなく、組織全体で取り組むべき課題です。
営業・マーケティング・リスク管理・IT部門など、さまざまな部署が連携し、データの活用を最大化するための体制整備が重要です。
例えば、営業部門が顧客の購買履歴を基に新たな金融商品を提案する際、IT部門が提供するシステムやツールを活用できます。
また、マーケティング部門がデータ分析を通じてターゲット顧客を絞り込むと、より効果的な広告やキャンペーンを展開できるでしょう。
このように部門が一体となってデータ活用に取り組むことで、データの価値をより引き出し、業務の効率化や新たなビジネスチャンスの創出につながります。
データ分析を行う際に重要なのが分析に使用するデータの信憑性です。
金融機関が扱うデータは多岐にわたるため、データの品質が分析結果に影響を与え、場合によっては誤った意思決定を招く可能性があります。
信憑性の高いデータを使用するためには、データ収集段階で品質を確保しなければなりません。
例えば、データに欠損値や異常値が含まれているのであれば、適切な方法で処理し、信憑性を保ちましょう。
データ分析に役立つツールは、以下の5つです。
それぞれに特徴があるため、導入前に把握しておきましょう。
BI(Business Intelligence)ツールは、データを視覚的に分析し、ビジネスの意思決定に活用するためのツールです。
BIツールは、膨大なデータをダッシュボード・グラフ・チャートとして可視化でき、データの傾向やパターンを迅速に把握可能です。
金融業界では、業績の分析や市場動向の把握にBIツールが使用されます。
代表的なBIツールとして挙げられるのがTableau・Power BI・QlikViewなどです。
これらのツールは、金融機関が顧客データや取引データを集約し、業績分析を行う際に役立ちます。
例えば、顧客の属性や取引履歴をベースにした売上傾向の分析やリスク管理におけるパフォーマンス監視に活用可能です。
RPA(Robotic Process Automation)ツールは、反復的で定型的な業務を自動化するためのツールです。
金融機関では、事務処理・データ入力・定型的なレポート作成など、手作業で行う業務が多くあるため、RPAツールの活用によって、業務を効率化できます。
例えば、顧客の口座開設手続きをRPAで自動化したり、取引データを定期的に集計してレポートを作成したりすることができます。
データ分析業務にRPAツールを導入すれば業務の効率化が図られ、人為的ミスのリスクも減少するでしょう。
代表的なRPAツールには、UiPathやAutomation Anywhere、Blue Prismなどがあります。
CRM(Customer Relationship Management)ツールは、顧客との関係を管理するためのツールであり、営業活動の効率化や顧客対応の質の向上に役立ちます。
金融機関では、顧客のニーズや嗜好、過去の取引履歴などを把握し、パーソナライズされたサービスを提供するためにCRMツールが活用されています。
SalesforceやHubSpot、Microsoft Dynamics 365などの代表的なCRMツールは、顧客データの管理や顧客とのコミュニケーション履歴を一元的に管理できるのが特徴です。営業活動の最適化やカスタマーサポートの強化にもつながるでしょう。
MA(Marketing Automation)ツールは、マーケティング活動を自動化するためのツールです。
金融機関が顧客に対してパーソナライズしたプロモーションやキャンペーンを展開する際に、MAツールが有効です。
MAツールによって顧客の行動データや嗜好を分析すれば、メールやWebサイトでのターゲティング広告の自動化につながります。
代表的なMAツールとして挙げられるのが、Marketo・HubSpot・Marketing Cloud Account Engagement(旧:Pardot)などです。
これらのツールを使用することで、金融機関は効率的にターゲットを絞り込んだマーケティングが可能です。
SFA(Sales Force Automation)ツールは、営業支援を目的としたツールです。
営業担当者が顧客と接する際に、その活動を管理・記録し、営業プロセスを効率化するためのツールです。
金融機関では、営業担当者が顧客に対して最適な金融商品を提案する際に、SFAツールを活用して営業活動の進捗状況を分析すれば、適切なタイミングで顧客に提案できます。
代表的なSFAツールには、Salesforce・PandaDoc・Zoho CRMなどがあります。
これらのツールは、営業プロセスを標準化し、営業活動をデータとして管理することができ、営業効率の向上につながります。
データ分析を活用した金融DXの事例は次のとおりです。
それぞれの事例を詳しく解説します。
株式会社三井住友フィナンシャルグループは株式会社電通グループと、広告・マーケティング事業を行う合弁会社SMBCデジタルマーケティングを設立しました。
事業を進めるにあたっては、株式会社三井住友銀行に蓄積された顧客の属性情報や利用履歴を活用しています。
顧客情報の分析によって潜在的な興味関心やライフスタイルを予測し、企業に対しターゲット層を提案します。
さらに、三井住友銀行アプリを広告メディアとして活用しているのも特徴です。
参考:三井住友フィナンシャルグループと電通グループが合弁会社、SMBCデジタルマーケティングを設立。広告・マーケティング事業を展開 | 株式会社三井住友フィナンシャルグループ
日本銀行はスマホから得た位置情報などのビッグデータを活用して、経済動向の予測や市場のトレンド分析を行っています。
従来の経済指標に加えて、より迅速かつ詳細な市場の変化を把握可能になっています。
スマホが一般的になるまではデータ収集、分析に時間がかかっていました。
しかし、スマホが広く普及したことで、ビッグデータをスムーズに収集し分析できるようになっています。
金融DXを進めるうえで蓄積したデータを活用すれば、さまざまなメリットが期待できるものの、専門的な知識が必要です。
そのため、データ分析を進めようとしても、期待した結果が得られない可能性があります。
データ分析の方向性に悩む企業は、『株式会社 TWOSTONE&Sons』にご相談ください。
当社は金融DXに役立つITソリューション提供やITエンジニア紹介などを行っています。
データ分析によってリアルタイムでの市場動向把握や収益の最大化を検討している場合は、ぜひ当社にご連絡ください。
金融機関はさまざまなデータを保管しています。
金融機関が保管しているデータは構造化と非構造化に大別でき、分析すれば市場動向をリアルタイムで把握できるだけでなく、顧客に応じた金融商品の提案や収益の最大化などが期待できます。
BIツールやRPAツールなど専用のツールを通じたデータ分析を進めるうえでは、個人情報の慎重な取り扱いや社を挙げてのデータ分析への取り組みなどが必要です。
分析したデータをマーケティングなどに活用して金融DXを成功につなげましょう。