金融DXで進化するEmbeddedファイナンスの基本懸念や具体例を解説

金融DXの推進によってEmbeddedファイナンスの導入が加速し、顧客体験が向上します。株式会社 TWOSTONE&Sonsでは、戦略立案から技術開発、法務対応までワンストップで支援し、安全かつ効果的な金融サービスの組み込みを実現します。

金融業界でデジタルトランスフォーメーション(DX)が加速する中、Fintechの役割はますます重要になっています。特に利用者の利便性を高める「Embedded(組み込み型金融)」は、金融サービスの提供形態を根本から変える可能性を秘めています。

「Embedded」とは何か、そして実際にどのように活用されているのか理解すれば、今後の金融DX推進に欠かせない視点を得られるでしょう。

本記事では、Embeddedの基本概念から具体的な事例まで詳しく解説し、金融DXを成功に導くための知識を提供します。これを知れば、自社のサービスにおけるFintechの活用方法が見えてくるでしょう。

Embedded(エンベデッド)とは

Embeddedファイナンスの本質は、金融サービスを別々の専門企業に頼るのではなくユーザーが普段使うプラットフォームやサービス内に自然に組み込む点にあります。この仕組みにより、ECサイトやモバイルアプリ内で銀行口座の開設や決済、融資、保険加入がスムーズに行えるのです。ユーザーは複数のサービス間で煩雑な手続きを経る必要がなく、ワンストップで完結できるのが大きな特徴です。

このようにEmbeddedは、金融の専門性を活かしつつ非金融事業の顧客接点を拡大するための戦略的な手法として注目されています。

Embedded(エンベデッド)ファイナンスの具体例

Embeddedファイナンスの理解を深めるためには、実際の活用例を見ることが効果的です。ここでは代表的な4つのケースを取り上げ、それぞれの特徴とユーザーへのメリットを説明します。

例1:ECサイトでの後払い決済サービス

ECサイトに組み込まれた後払い決済は、消費者が商品を受け取った後に支払いを行える仕組みです。これにより購入時の心理的ハードルが下がり、顧客の購買意欲を高める効果が期待できます。

例えば、株式会社ネットプロテクションズが提供する「NP後払い」は、商品を受け取った後にコンビニや銀行で支払いができる後払い決済サービスです。クレジットカード情報の登録が不要で、購入者は安心してお買い物を楽しむことができます。また、通販事業者は未回収リスクを同社が100%保証するため、安心して導入できます。

この後払い決済サービスでは、与信審査や決済処理を金融機関が担うため、ECプラットフォーム側は自社サイト内で決済体験を完結させることが可能です。ユーザーにとっては手間のないスムーズな購入体験が提供される一方で、売り手にとっても未回収リスクを金融機関が引き受けるケースが多く、安心して導入できる点が魅力です。

参考:株式会社ネットプロテクションズ

例2:ライドシェアアプリ内での保険加入

ライドシェア利用中のリスクに備える手段として、アプリ内で手軽に保険契約ができる仕組みは、Embeddedファイナンスの代表的な事例の1つです。ユーザーは乗車予約とあわせて保険への加入までを同じアプリ上で完了できるため、わざわざ保険会社のサイトにアクセスする必要がありません。これにより、手続きの手間が減り、スムーズな体験が可能になります。

その結果、保険加入のハードルが下がり、利用者はより安心してサービスを利用できるでしょう。サービスを提供する側にとっても、顧客満足度の向上に加えて、新たな収益源を確保できるというメリットがあります。

例3:中小企業向けB2B決済システム

B2B決済システムとは、中小企業間の取引において、オンライン上で即時決済や請求書の発行を行える仕組みです。これまで煩雑だった支払いプロセスを効率化し、キャッシュフローの管理が格段にしやすくなります。また、金融機関による与信機能や決済代行の仕組みを組み込めるため、取引の安全性も高く保たれているのが特徴です。

例えば、フリー株式会社が提供する「freee」は、会計や人事労務などの業務をクラウド上で一元管理できる統合型経営プラットフォームです。中小企業向けに、請求書の発行や支払い管理などのB2B決済機能を提供し、業務の効率化を支援しています。

このようなB2B向けのEmbeddedファイナンスは、業務の効率化を支援するだけでなく、金融DXの実践的な成功事例としても注目されているでしょう。

参考:フリー株式会社

例4:飲食店アプリでの即時融資機能

飲食店オーナーが経営資金を急に必要とした際に、普段利用するアプリ内で即時に融資申請や受け取りができる機能もEmbeddedの一種です。アプリが売上データなどをリアルタイムに分析し、信用度を評価することで迅速な審査が可能となります。オーナーは面倒な書類提出や銀行訪問を省略でき、必要な資金をタイムリーに調達できます。

例えばKDDI株式会社は、クラウド基盤サービス「KDDI クラウドプラットフォームサービス(KCPS)」を通じて、飲食店などの中小企業向けに柔軟なクラウドサービスを提供しています。これにより、業務の効率化や迅速な資金調達が可能となり、経営の安定化に寄与しているのです。

このように融資機能の組み込みはユーザーの経営リスク軽減に貢献し、サービス提供側は顧客の長期的な関係構築が期待できるのです。

参考:KDDI株式会社

金融DXの推進がEmbeddedファイナンスの進化につながる理由

金融DX(デジタルトランスフォーメーション)が加速する背景には、従来の金融サービスが抱えていた多くの課題が存在します。例えば手続きの煩雑さや時間的制約、顧客接点の限定、コストの増大などが挙げられます。これらの課題に対処するために、企業はデジタル技術を活用して金融サービスを効率化し顧客体験の向上を図ろうとしているのです。

特にEmbeddedファイナンスは、金融DX推進の中心的役割を担っています。これは金融サービスを既存の非金融プラットフォームに「組み込む」ことで、ユーザーがわざわざ金融機関のサービスを使い分ける必要をなくし、シームレスな体験を提供する手法です。金融DXは単なるデジタル化を超え、業務の抜本的な見直しと新たなサービスモデルの創出を目指しますが、Embeddedファイナンスはまさにその具体的な形態といえます。

Embeddedファイナンスのメリット・デメリット

Embeddedファイナンスは多くの可能性を秘めていますが、一方で留意すべき課題も存在します。ここではまずメリットを具体的に説明し、その後でデメリットについても触れていきます。両面を理解することで、導入の判断材料を整えられるでしょう。

Embeddedファイナンスのメリット

Embeddedファイナンスの導入によって得られる主なメリットは3つあります。顧客体験の向上、企業の収益源の多様化、そして顧客ロイヤルティの向上です。これらがどのように実現されるか順に見ていきましょう。

①顧客体験の向上

まず何よりも、ユーザーにとっての利便性向上がメリットです。例えばECサイトでの後払い決済やライドシェアアプリ内の保険加入など、ユーザーはサービスを使いながら金融機能をシームレスに利用できるため手続きの負担が軽減されます。

これはユーザー体験を改善し、サービスの利用継続や満足度の向上に直結します。金融手続きが複雑で面倒だった従来のイメージを覆しスムーズにサービスを完結できる環境を提供できるため、顧客離れの防止にも効果的です。

②企業の収益源の多様化

次に、Embeddedファイナンスは企業にとって収益源の多様化を促します。金融機能を組み込むことで、単なるサービス提供だけでなく、決済手数料や融資利息、保険料などの収益を新たに得られるからです。

これにより非金融企業は自社の顧客基盤を活かしつつ、新しいビジネスモデルを展開可能になります。収益構造が多角化すれば景気変動の影響を受けにくく安定経営が期待できるため、長期的な企業成長につながるでしょう。

③顧客ロイヤルティの向上

さらにEmbeddedファイナンスは顧客との関係強化にもつながります。金融サービスが組み込まれることでユーザーはサービス内でより多くのタッチポイントを持ち、その分だけ企業との接点が増えるためです。

結果として、顧客のロイヤルティ向上やリピート利用の促進につながりやすくなります。例えば飲食店アプリの即時融資機能があれば経営者はそのサービスに信頼を寄せやすくなるため、他のサービスにも積極的に触れてもらえる可能性が高まります。

Embeddedのファイナンスのデメリット

一方で、Embeddedファイナンスの導入には避けて通れない課題もあります。特にセキュリティや法規制、システム統合の面で慎重な対応が求められます。ここでは3つの代表的な課題を詳しく見ていきましょう。

①セキュリティと個人情報保護の課題

Embeddedファイナンスは金融サービスを他のサービス内に組み込むため、多くの個人情報や取引データが複数のシステム間でやり取りされます。このため情報漏えいや不正アクセスのリスクが高まる傾向があり、セキュリティ対策は最優先の課題です。ユーザーの信用情報や決済情報を安全に管理し、適切なアクセス制御や暗号化技術を導入する必要があります。

②金融関連法規制の理解と遵守の必要性

金融サービスには独自の法律や規制が多数存在し、それらを理解し正しく対応することは重要です。Embeddedファイナンスの事業展開では、例えば資金決済法・銀行法・保険業法など多方面の法規制が絡んできます。

特に非金融企業が金融機能を取り扱う場合、適切な許認可の取得や監督機関への報告義務など法的なハードルが高くなります。これを怠ると、罰則や営業停止などのリスクがあるため、法務面の専門家と連携しながら進めましょう。

③システム統合の複雑さ

Embeddedファイナンスは異なるシステムやサービス間の連携が不可欠です。そのため、システムの設計や開発、運用に高い技術力が必要となります。

金融サービス特有の高い可用性や安全性を確保しつつ非金融サービスとスムーズに統合するためには、API設計やデータ連携の仕組みを綿密に構築する必要があります。またシステム障害や不具合が発生すると顧客の信頼を失うため、運用体制の整備や障害対応の準備も欠かせません。

Embeddedファイナンス導入のための金融DX推進5ステップ

Embeddedファイナンスを効果的に導入するには、段階的かつ戦略的なアプローチが不可欠です。

ここでは、実務において特に重要となる5つのステップを順番に解説していきます。これらのステップを着実に踏むことで、金融機能のスムーズな組み込みが可能となり、顧客満足度の高いサービスを提供できるようになるでしょう。

ステップ1:現行業務のデジタル化を徹底する

Embeddedファイナンスを導入する前提として、まずは自社の既存業務をデジタル化し、業務フローを見直すことが重要です。なぜなら、金融サービスをシームレスに統合するには基盤となる業務プロセスがデジタルで効率化されている必要があるからです。

具体的には、紙ベースの手続きをオンライン化したり顧客対応のチャネルをデジタル化したりすることが挙げられます。これにより業務の透明性やスピードが向上し、金融機能導入時の負担を軽減できます。また、内部システムのデジタル連携を整備することで、後のAPI連携や顧客データ管理が円滑に進みやすくなるでしょう。

ステップ2:API連携の基盤を整備する

次に必要となるのが、API(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)連携の基盤整備です。APIとは異なるシステム同士が情報をやり取りするための橋渡し役であり、Embeddedファイナンスの根幹を成します。

API連携を強化することで金融サービスを既存のプラットフォームにスムーズに統合でき、ユーザーは違和感なく金融機能を利用できるようになります。例えば決済システムやローン申請、保険加入などの機能をAPI経由で提供することで、ワンストップのサービス体験が実現可能です。

このため、APIの設計には高い安全性と拡張性を確保することが求められます。将来的な機能追加や他システムとの連携に柔軟に対応できる設計が望ましいでしょう。

ステップ3:顧客データを活用した分析体制を整える

Embeddedファイナンスの価値を最大化するには、顧客データの活用が不可欠です。膨大なデータを収集・分析し、顧客のニーズや行動パターンを把握することで最適な金融サービスを提供できます。

このためにはまず、顧客情報を一元管理するデータプラットフォームを整備しリアルタイムでのデータ更新や高度な分析が可能な体制を築きましょう。さらに、AIや機械学習技術を活用して顧客ごとにパーソナライズされたサービスの提案やリスク管理を行うことが、競争優位性を高めるポイントとなります。分析結果を活用することで潜在顧客の掘り起こしや不正検知、サービス改善にもつながるため、継続的なデータ活用体制の構築が重要です。

ステップ4:金融機関やFintech企業と連携する

Embeddedファイナンスは自社だけで完結するものではなく、多様な金融プレイヤーとの連携が不可欠です。特に銀行や保険会社、Fintech企業など専門性の高いパートナーとの協力によってサービスの信頼性や幅が広がります。

連携の際は、相手企業のサービス内容や技術力、法規制対応状況を慎重に見極めることが重要です。また、共通のAPI仕様を採用したりセキュリティ基準を統一したりすることで、運用リスクを抑制しながら効率的な連携を実現しましょう。協業の中で互いの強みを活かし合い、顧客にとって使いやすく安全な金融サービスの提供を目指すことが大切です。

ステップ5:法務・リスク管理体制を強化する

最後に見逃せないのが、法務面とリスク管理の強化です。Embeddedファイナンスは金融取引を含むため多数の法規制が関わり、その遵守は企業の信用を守る上で最重要課題となります。

具体的には、個人情報保護法や資金決済法、金融商品取引法などの関連法規に準拠した運用が求められます。これらの法規制をクリアするために、専門の法務担当者を配置して常に最新の法改正情報をキャッチアップする体制を整える必要があるのです。

さらに、内部統制やコンプライアンス教育、情報セキュリティの強化によってリスクの早期発見と対策を徹底しましょう。こうした法務・リスク管理体制の強化は、サービスの安定運用と顧客信頼の獲得に直結します。

Embeddedファイナンスの進化に向けた金融DXは『株式会社 TWOSTONE&Sons』へご相談ください

Embeddedファイナンスの導入・拡大には、多くの技術的・法務的なハードルがあります。そのため、専門的な知見と豊富な実績を持つパートナー選びが重要です。

『株式会社 TWOSTONE&Sons』は、金融DXに特化したソリューション提供企業です。
当社では、デジタル化戦略の策定からAPI設計・顧客データ活用・法務対応までワンストップで支援いたします。さらに、金融機関やFintech企業との連携経験も豊富なため、最適なパートナー選定や協業体制の構築もお任せください。

Embeddedファイナンスの導入によって御社のサービスがより魅力的に進化し、顧客体験が革新的に向上する未来を共に創りましょう。金融DXに関するご相談や具体的な導入支援のご依頼は、ぜひ『株式会社 TWOSTONE&Sons』までお気軽にお問い合わせください。

まとめ|金融DXの推進でEmbeddedファイナンスを進化して顧客体験を革新しよう

今回ご紹介したように、金融DXの推進はEmbeddedファイナンスの普及と進化に欠かせない要素です。現行業務のデジタル化・API連携基盤の整備・顧客データ活用・パートナー連携、そして法務・リスク管理体制の強化という5つのステップを着実に進めることで、金融サービスの組み込みが円滑に進みます。

Embeddedファイナンスは顧客体験を向上させ、企業の新たな収益源としても注目されていますが、同時に複雑な課題も抱えています。だからこそ、専門的なサポートが必要不可欠です。

『株式会社 TWOSTONE&Sons』は金融DXの最前線で培った知見を活かし、お客様のEmbeddedファイナンス導入を全面的にバックアップいたします。まずはお気軽にお問い合わせいただき、新しい金融サービスの可能性を一緒に切り拓きましょう。