薬局の医療DX「オンライン服薬指導」とは?導入のメリットや主な要件

これからの「かかりつけ薬局」に求められるのは、対面だけでなく、オンラインによる服薬指導です。この記事では、医療DXの重要な柱である「オンライン服薬指導」について、制度の基本から、導入によるメリット、失敗しないシステムの選び方などを網羅的に解説します。

オンライン診療の普及に伴い、病院やクリニックだけではなく薬局に対するニーズも大きく変化しています。これからの「かかりつけ薬局」に求められるのは、対面だけでなく、オンラインも活用した新しい患者との関わり方です。

そこでこの記事では、医療DXの重要な柱である「オンライン服薬指導」について、制度の基本から、導入によるメリット、失敗しないシステムの選び方、そして具体的な活用事例までを網羅的に解説します。

薬局の未来を考え、次の一手を模索する全ての薬局経営者・薬剤師の皆様、必見の内容です。ぜひ最後までご覧ください。

オンライン服薬指導とは?医療DXにおける位置づけ

オンライン服薬指導は、患者が自宅などから薬剤師と映像通話で服薬指導を受けられるサービスです。

今後、オンライン服薬指導は医療サービスの一形態として定着し、患者と薬剤師の新たなコミュニケーション手段として重要な役割を果たすと考えられます。

ビデオ通話で服薬指導をおこなう新しい薬剤提供の方法

オンライン服薬指導は、薬剤師が映像と音声を通じて患者の表情や状態を確認しながら、対面と同じように薬の効果や注意点を説明し、質問に答える新しい服薬指導の形です。

オンライン診療などによって医療機関から処方箋が薬局に送られたあと、あらかじめ予約された日時に患者と薬剤師がオンラインでつながり、服薬指導を受けます。服薬指導が終わると、薬は自宅へ配送されるため、患者は一度も薬局へ足を運ぶことなく、必要な薬を受け取ることが可能となります。

2022年の法改正と「0410事務連絡」で原則解禁へ

2022年4月の薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)改正と、それに先立つ「0410事務連絡」によって、これまで制限が多かったオンライン服薬指導が原則として解禁されました。

出典参照:新型コロナウイルス感染症の拡大に際しての電話や情報通信機器を用いた診療等の 時限的・特例的な取扱いについて|厚生労働省医政局医事課

以前は、初診の患者には対面での服薬指導が必須でした。しかし、コロナ禍における特例的な措置(0410事務連絡)を経て、その有効性と安全性が確認され、法律が改正されたのです。これにより、初診からでもオンライン服薬指導が可能になりました。

オンライン服薬指導の注目度が高まっている理由

オンライン服薬指導の注目度が高まっているのは、法改正による制度的な後押しに加え、オンライン診療の普及や、患者の利便性向上へのニーズが高まっているからです。

医師の診察をオンラインで受けた後、薬の受け取りだけのために薬局へ行くのは、患者にとって二度手間です。そのため、診察から薬の受け取りまでを、一貫してオンラインで完結させたいという需要は年々高まっています。

出典参照:令和5年1月~3月の電話診療・オンライン診療の実績の検証の結果|厚生労働省

また、高齢化社会における在宅医療の推進という観点からも、重要な役割が期待されています。

オンライン服薬指導を導入する3つのメリット

オンライン服薬指導を導入することで、以下3つのメリットを享受できます。

  • かかりつけ薬局機能が強化される
  • 在宅医療や遠隔地の患者へのアプローチが拡大する
  • 薬局内の業務効率化と働き方改革の推進につながる

薬局にとってどのようなメリットがあるのか、一つずつご紹介していきます。

かかりつけ薬局機能が強化される

オンライン服薬指導は、患者が地理的な制約なくいつも同じ「かかりつけ薬局」に相談できる環境を提供し、継続的な健康管理を実現します。

たとえば、転居や出張などで薬局から離れてしまっても、慣れ親しんだ薬剤師にオンラインで相談できます。これにより、患者の服薬情報やアレルギー歴などを一元的に把握しやすくなり、より安全で質の高い薬学的管理が可能です。

在宅医療や遠隔地の患者へのアプローチが拡大する

オンライン服薬指導の導入は、薬局へ足を運ぶのが困難な高齢者や在宅医療を受けている患者や、近くに薬局がない遠隔地の患者に対し、質の高い薬剤サービスの提供を可能にします。

これまで、薬剤師が訪問できる範囲には限りがありました。しかし、オンラインを活用することで、より広範囲の患者をサポートできるようになります。地域包括ケアシステムの重要な一翼を担い、医療アクセスに課題を抱える人々を支えるうえで、非常に大きなメリットです。

出典参照:地域包括ケアシステム|厚生労働省

薬局内の業務効率化と働き方改革の推進につながる

オンライン服薬指導は、患者の来局が集中する時間帯を避け、空いた時間にオンラインで服薬指導をおこなえるため、薬剤師の業務を平準化し、働き方改革を推進します。

多くの薬局では、夕方など特定の時間に患者が集中することが多く、薬を受け取るまで待ち時間が長くなる傾向にあります。一方オンライン服薬指導を活用し予約制度を設けることで、薬剤師が計画的に業務を進められるようになり、待ち時間も少なくなります。

また、場所を選ばずに服薬指導できるため、薬剤師のテレワークといった多様で柔軟な働き方の実現にもつながるでしょう。

オンライン服薬指導の主なルールと要件

オンライン服薬指導の主なルールと要件について、以下3つの観点から解説していきます。

  • オンライン服薬指導の対象となる患者の条件
  • 薬剤師がおこなうべきこと
  • 処方箋の取り扱いについて

それぞれ見ていきましょう。

オンライン服薬指導の対象となる患者の条件

オンライン服薬指導の対象となる患者には、以下の条件が設けられています。

  • オンライン診療を受けた患者
  • 過去3ヶ月以内に対面での服薬指導を受けた患者
  • 服薬指導計画の作成と患者の同意
  • 薬剤師の判断による実施

出典参照:オンライン服薬指導|厚生労働省

複数の患者が居住するような介護施設の患者や基礎疾患の情報が把握できない患者の場合、オンライン服薬指導の対象外とされることがあります。

薬剤師がおこなうべきこと

薬剤師は、対面での服薬指導と同等の質を担保するため、患者の状態を映像と音声でしっかり確認し、指導内容を薬剤服用歴に詳細に記録する義務があります。

服薬指導の前には、運転免許証やマイナンバーカードなどによる本人確認が必要です。指導中は、薬の現物を見せながら説明したり、患者からの質問に丁寧に答えたりします。

また、通信が途絶えた場合の対応なども、あらかじめ決めておく必要があります。

処方箋の取り扱いについて

オンライン服薬指導をおこなうには、原則として、医療機関から薬局へ直接FAXやメールで送付される処方箋、または電子処方箋を活用する必要があります。これは、患者による処方箋の改ざんなどを防ぎ、安全性を確保するためです。

とくに、国が推進する「電子処方箋」の仕組みを利用すると、処方箋の原本をあとから郵送する必要がなくなり、よりスムーズな連携が可能になります。紙の処方箋の場合は、後日、原本を薬局が回収するのがルールです。

出典参照:電子処方箋|厚生労働省

オンライン診療から薬が配送されるまでの流れ

オンライン服薬指導のサービスを導入した場合、以下のような流れで診療〜薬の発送まで進んでいきます。

  1. オンライン診療と電子処方箋の発行
  2. 患者による薬局の選択と処方箋の送付
  3. ビデオ通話によるオンライン服薬指導の実施
  4. オンライン診療と電子処方箋の発行

順を追って解説します。

①オンライン診療と電子処方箋の発行

まず、患者がスマートフォンやパソコンを使い、オンラインで医師の診察を受け、その結果にもとづいた医師が処方箋の発行が必須です。

患者と医師がビデオ通話でつながり診察がおこなわれ、診察の結果薬が必要だと判断されると、医師は処方箋を発行します。

近年は、処方データを安全なネットワーク上で送受信する「電子処方箋」の発行が増えており、その後の薬局との連携がよりスムーズになっています。

②患者による薬局の選択と処方箋の送付

処方箋が発行されると、患者はオンライン服薬指導に対応している薬局のなかから希望する薬局を選択します。その際、選択した薬局に対し処方箋を送ってもらうよう医療機関に依頼するか、患者自ら電子処方箋の情報を共有します。かかりつけの薬局が選ばれることが多いです。

電子処方箋の場合は、マイナンバーカードなどを使ってどの薬局に自分の処方箋情報を共有するかを選択できます。紙の処方箋の場合は、医療機関から直接、希望の薬局へFAXなどで送付してもらいます。

③ビデオ通話によるオンライン服薬指導の実施

薬局で薬の準備ができたあと、患者は予約した日時に、薬剤師とビデオ通話をおこない、薬の飲み方や注意点などについて、対面と同様の服薬指導を受けます。

薬剤師は、患者の本人確認をおこなったうえで、画面越しに薬の現物を見せながら、効果や副作用、保管方法などを説明します。それに対し患者は、その場で分からないことや不安な点を直接質問することが可能です。これにより、自宅にいながらでも安心して薬を使用できます。

④オンライン決済と薬の配送

服薬指導が終わると、患者はクレジットカードなどでオンライン決済をおこない、支払いが確認され次第、薬が薬局から指定の場所へ配送されます。

この流れに沿って、オンライン診察から薬の受け取りまで、全ての工程が自宅で完結します。

失敗しないためのオンライン服薬指導システムの選定ポイント5選

オンライン服薬指導システムの導入を検討されている方は、以下5つのポイントを意識してツール選びを失敗しないようにしましょう。

  • セキュリティ体制は万全か
  • 患者と薬剤師双方にとって使いやすいか
  • 処方箋の受付から決済・配送までを網羅する機能性があるか
  • サポート体制は整っているか
  • システムと料金が見合っているか

それぞれ解説します。

セキュリティ体制は万全か

患者の極めて繊細な個人情報を取り扱うため、厚生労働省のガイドラインに準拠した、信頼性の高いセキュリティ対策が講じられているかが最も重要な選定ポイントです。

たとえば、通信が暗号化されているか、利用者ごとにアクセス権限を細かく設定できるか、といった点を確認しましょう。万が一の情報漏洩は、薬局の信用を根底から揺るがしかねません。システムの安全性を最優先に考えるべきです。

患者と薬剤師双方にとって使いやすいか

システムは、薬剤師だけでなく、ITに不慣れな高齢の患者でも、迷わず簡単に操作できる分かりやすいデザインであることが不可欠です。

患者にとっては、専用アプリのインストールが不要で、Webブラウザから簡単に利用できると、利用のハードルが下がります。また、薬剤師にとっては、予約管理や薬歴の確認、ビデオ通話の開始といった一連の操作が、少ない手順でスムーズにおこなえるかを確認しましょう。

処方箋の受付から決済・配送までを網羅する機能性があるか

オンライン服薬指導の業務をスムーズにおこなうためにも、ビデオ通話機能だけでなく、処方箋の受付、オンライン決済、そして薬の配送手配までを一元管理できる機能が揃っているかが重要です。これらの機能がバラバラだと、薬剤師は複数のシステムを使い分ける必要があり、かえって業務が煩雑になってしまいます。

処方箋の画像を簡単にアップロードでき、クレジットカード決済に対応しているなど、一連の業務を一つのシステムで完結できるかを確認しましょう。

サポート体制は整っているか

導入後に操作方法で困ったり、システムトラブルが発生したりした際に、電話やチャットなどですぐに相談できる、手厚いサポート体制が整っているかを確認しましょう。たとえば、「予約時間になっても患者とビデオ通話がつながらない」といったトラブルが起きた場合、すぐに対応してもらえなければ患者の信頼を損ねてしまいます。

サポートの対応時間や連絡手段、そしてレスポンスの速さなどを、導入前にしっかり確認しておくと安心です。

システムと料金が見合っているか

初期費用や月額費用といった料金だけでなく、その料金でどのような機能やサポートが提供されるのか、費用対効果をしっかりと見極める必要があります。

単に料金が安いというだけで選んでしまうと、必要な機能がオプションで別料金だったり、サポートが不十分だったりする場合があります。オンライン服薬指導をおこなうにあたって必要な機能をリストアップし、複数のシステムの料金と機能を比較して、納得感のある、最もバランスの取れたシステムを選ぶことが賢明です。

おすすめのオンライン服薬指導ツール5選

CARADA オンライン診療

CARADA オンライン診療は、薬局向けに設計された、オンライン服薬指導を簡単におこなえるシステムです。

予約から薬の配送までシームレスな対応が最大の特徴です。ビデオ通話での服薬指導、決済機能、最短当日配送で、効率的な業務運営が可能に。さらに、導入後の手厚いサポートで運用も安心です。

セキュリティ対策も万全で、業務の効率化や患者満足度の向上を実現します。

出典参照:CARADA オンライン診療|株式会社エムティーアイ

くすりの窓口オンライン服薬指導

「くすりの窓口オンライン服薬指導システム」は、予約から服薬指導、クレジットカード決済、お薬の配送まで、オンライン服薬指導に必要な全機能を網羅したサービスです。

処方箋データ受け取り後の時間調整から、オンライン通話による服薬指導、決済機能による未収リスク軽減、さらには宛名ラベル印刷による配送効率化まで、一連の業務をスムーズにサポートします。

強固なセキュリティ体制で、患者の個人情報を保護し、薬局のオンライン服薬指導業務を効率化と患者への安心と信頼を提供するツールです。

出典参照:オンライン服薬指導システム|株式会社くすりの窓口

クロンお薬サポート

「curonお薬サポート」は、株式会社MICINが提供する処方箋ネット受付サービスです。スマホで処方箋画像を薬局に事前送信・予約することで、薬局での待ち時間を短縮し、好きな時間に好きな場所で薬を受け取れます。

忙しい方や、調剤に時間がかかる方、お子様連れの方に最適。複数の薬局チェーンで利用可能で、患者の利便性向上に貢献します。

出典参照:クロン処方箋ネット受付|株式会社MICIN

Pharms

「Pharms(ファームス)」は、かかりつけ薬局支援システムです。オンライン診療システムCLINICSと連携し、処方箋獲得からオンライン服薬指導、ネット受付、キャッシュレス決済まで、かかりつけ薬局に必須の機能をオールインワンで提供するツールです。

15,000店舗以上の導入実績があり、充実したサポート体制も魅力です。月額0円からのライトプランもあり、薬局の業務効率化と患者・医療機関との連携強化を支援します。

出典参照:Pharms| 株式会社メドレー

SOKUYAKU

「SOKUYAKU(ソクヤク)」は、患者と医師・薬剤師を繋ぐオンライン医療プラットフォームです。スマホやPCから自宅や職場で診療・服薬指導を受けられ、待ち時間短縮や移動負担軽減を実現します。

内科、皮膚科、小児科など幅広い診療科に対応し、保険診療・自費診療も可能。予約から診察、薬の郵送または薬局受取までワンストップで提供し、最短当日または翌日配送にも対応しています。

出典参照:SOKUYAKU|ジェイフロンティア株式会社

【まとめ】オンライン服薬指導は未来の薬局のスタンダードへ

この記事では、オンライン服薬指導の制度からメリット、システムの選び方までを多角的に解説しました。

オンライン服薬指導は、単なる「非対面」の指導ではありません。通院が困難な患者に薬を届け、薬剤師の働き方を改善し、そして患者との継続的な関係を築くことで「かかりつけ薬局」としての価値を深化させる戦略的な一手です。

導入には準備も必要ですが、その先には大きな可能性があります。まずは自薬局の強みと課題を見つめ直し、新しい患者サービスの形として検討を始めてみてはいかがでしょうか。