医療DXの補助金とは?活用法や申請手続きを解説

「医療DX推進に使える補助金の種類や内容を知りたい」

「医療DXにおける補助金の申請方法や手続きの流れを把握したい」

「医療DXの補助金で自院が対象となる条件や金額を確認したい」

医療DXを推進するにあたって、補助金を活用したいと考えている方のなかには上記のような考えをお持ちの方もいるのではないでしょうか。

医療DXで活用できる補助金には、IT導入補助金や医療情報化支援基金などがあります。この記事では、活用できる補助金の種類や申請から受給までのステップを解説します。

医療DXで補助金を利用する際の条件や申請期間、補助対象経費と補助率・補助上限額もご紹介しているため、ぜひ最後までご覧ください。

医療DXの補助金がなぜ必要なのか?

医療DXの補助金は、高額な導入コストといった障壁を取り除き、全国どの医療機関でもデジタル化を推進するために必要です。国は医療現場の効率化や人手不足の解消を目指していますが、新しいシステムの導入には多額の初期投資がかかります。とくに中小規模のクリニックにとって、この費用負担は医療のDX化を進めるうえでの課題です。

医療DXの推進において補助金制度は、経済的な理由でDX化が遅れるのを防ぐのに重要です。

国が「医療DX令和ビジョン2030」を推進している

医療DXの補助金が用意されているのは、国が「医療DX令和ビジョン2030」といった計画を掲げ、医療界全体のデジタル化を積極的に推進している背景が挙げられます。この計画では、電子処方箋や電子カルテ情報の全国共有、マイナ保険証の普及などが目標です。

しかし、すべての医療機関が自費で対応するのは簡単ではありません。国が補助金で医療DXツールやシステムの導入を後押しし、「医療DX令和ビジョン2030」の計画をスムーズに進められるようにサポートする必要があります。

出典参照:「医療DX令和ビジョン2030」厚生労働省推進チーム|厚生労働省

医療DXのツールを導入するのにコストがかかる

医療DXのツール導入に多額のコストがかかる点が、補助金が必要とされる理由の1つです。オンライン資格確認のための専用端末や、電子カルテと連携させるシステムの開発には数百万円単位の費用がかかる場合があります。

医療DXツール・システムの導入後も、システムの保守費用やスタッフへの研修費といったコストが継続的に発生するため、補助金の活用で初期投資の負担を軽くし、デジタル化への推進を図っています。

医療DXで使える5つの補助金・助成金制度

医療DXで使える主な補助金・助成金制度・インセンティブは、以下の5つです。

  • 【IT導入補助金】幅広いITツールが対象
  • 【医療情報化支援基金】国の医療DX方針に沿った専門補助金
  • 都道府県や市区町村が独自におこなう支援制度
  • 【医療DX推進体制整備加算】体制整備を診療報酬で評価する
  • 【医療情報取得加算】マイナ保険証での情報活用を評価する

1つずつ解説します。

【IT導入補助金】幅広いITツールが対象

IT導入補助金は、中小企業を対象に、業務効率化ツールの導入費用の一部を国が補助する制度で、医療機関にも活用できます。電子カルテや予約システム、会計ソフトといった幅広いITツールが対象です。申請する類型にもよりますが、導入費用の半分以上が補助される場合もあります。

IT導入補助金は、医療DXを進めるための初期投資を抑え、デジタル化を進めるのに役立ちます。

出典参照:サービス等生産性向上IT導入支援事業『IT導入補助金2025』の概要|経済産業省

【医療情報化支援基金】国の医療DX方針に沿った専門補助金

医療情報化支援基金は、国が進める医療DX計画に沿ったシステム導入を後押しする、医療機関を対象とした専門の補助金です。主に、オンライン資格確認や電子カルテの情報共有といった、地域医療の連携強化に必要な設備の導入費用を支援します。

国の計画に合わせて今後も内容が変わる可能性もあるため、社会保険診療報酬支払基金のWebサイトで、最新の情報を確認しましょう。

出典参照:医療情報化支援基金等|社会保険診療報酬支払基金

都道府県や市区町村が独自におこなう支援制度

国の制度とは別に、各都道府県や市区町村が、地域内の医療DXを推進するために独自の補助金制度を設けている場合があります。補助の対象となるシステムや金額、申請の条件は自治体によってさまざまです。

例として、過疎地域のオンライン診療導入を支援する制度が挙げられます。自院の地域の自治体Webサイトや、商工会議所の情報をこまめに確認し、活用できる制度がないか探してみましょう。

出典参照:自治体DXの推進|都道府県と市町村の連携によるDX推進体制|総務省

【医療DX推進体制整備加算】体制整備を診療報酬で評価する

医療DX推進体制整備加算は、補助金ではなく、医療DXの体制整備を診療報酬に上乗せして評価するインセンティブ制度です。オンライン資格確認や電子処方箋の導入など、国が定める条件を満たした医療機関が、初診時に月1回算定できます。

医療DX推進体制整備加算は導入費用を直接補助するのではなく、デジタル化に積極的に取り組む姿勢を評価する制度なため、患者さんへのポスター掲示やマイナ保険証の利用実績、システム環境の整備といった要件も満たす必要があります。

出典参照:医療DX推進体制整備加算及び在宅医療DX情報活用加算の見直し|厚生労働省

出典参照:医療DX推進体制整備加算等の要件の見直しについて|厚生労働省

【医療情報取得加算】マイナ保険証での情報活用を評価する

医療情報取得加算は、マイナ保険証を通して患者さんの過去の薬剤情報を取得し、診療に役立てる取り組みを評価する診療報酬です。質の高い医療の提供を後押しするのが目的で、従来の保険証を使った場合よりも、マイナ保険証を利用したほうが高い点数が算定されます。

医療情報取得加算の取り組みは、単に医療DXツール・システムを導入するだけでなく、積極的に情報を活用する医療機関を評価する仕組みです。

出典参照:医療DX推進体制整備加算医療情報取得加算の見直しについて|厚生労働省保険局医療課

医療DXで補助金を活用する3つのメリット

医療DXで補助金を活用するメリットは、以下の3つです。

  • 補助金でツール・システムを導入するコストを軽減できる
  • 導入したツール・システムで業務を効率化できる
  • 最新技術の導入で競争力を強化できる

それぞれご紹介します。

補助金でツール・システムを導入するコストを軽減できる

補助金を活用するメリットは、医療DXに必要なシステムの導入にかかる高額な初期費用を軽減できる点です。補助金を利用すると、自己資金の出費を抑えて最新のITツールを導入できるため、経営への負担軽減が可能です。

電子カルテやオンライン資格確認端末の整備には、数百万円規模の資金が必要になる場合もあります。医療DXの推進で補助金を活用するのは、資金面のハードルを下げ、デジタル化への促進につながります。

導入したツール・システムで業務を効率化できる

補助金で導入したシステムは、受付から会計までの業務を効率化し、スタッフの負担を減らすのに有効です。電子カルテを使った場合、情報の検索や共有が一瞬でおこなえるため、紙のカルテを探す手間がなくなり、スタッフはよりほかの業務に集中できます。

医療DXで補助金を活用し、ツール・システムを導入すると、患者さんの待ち時間短縮につながり、利便性の高い医療サービスの提供に役立ちます。

最新技術の導入で競争力を強化できる

補助金で最新の医療DXツール・システムを導入するのは、他院との差別化につながり、地域における競争力向上に効果的です。時代の変化に対応したクリニックといった評判が口コミで広がった場合、新規患者の獲得にも結びつきます。

Web予約やオンライン診療に対応しているなど、利便性の高い医療機関は、患者さんにとって魅力的です。補助金を活用して医療DXを推進するのは、将来にわたって安定した経営をおこなうための、重要な投資であり、競争力強化につながります。

医療DXで補助金を利用する際のデメリット・注意点

医療DXで補助金を利用する際のデメリット・注意点は、以下の3つです。

  • 申請手続きが複雑で時間がかかる場合がある
  • 対象経費や期間など厳しい条件や制約がある
  • 補助対象外のランニングコストは自己負担となる

1つずつ解説します。

申請手続きが複雑で時間がかかる場合がある

補助金を利用する際の注意点は、申請手続きが複雑で、実際に受け取るまでに時間がかかる点です。申請してから採択が決まり、実際にお金が振り込まれるまでには数カ月以上を要するのが一般的です。事業計画書の作成や多数の添付書類の準備など、専門的な知識が求められるケースも少なくありません。

余裕を持ったスケジュール管理や、場合によっては専門家への相談も検討しましょう。

対象経費や期間など厳しい条件や制約がある

補助金制度には、対象となる経費や事業期間が厳しく定められており、ルールを守らないと補助が受けられない場合があります。また、決められた期間内にシステムの導入や支払いを終え、実績を報告する義務も生じます。たとえば、「パソコン本体の購入費は対象外」といった、使える費用に細かい制約があるのが一般的です。

仮に規定外の利用が発覚すると、補助金の返還を求められるため、公募要領をよく確認しましょう。

補助対象外のランニングコストは自己負担となる

補助金は導入時の初期費用が対象の場合が多く、導入後に継続してかかる保守費用といったランニングコストは自己負担です。補助金で安く導入できても、毎月の維持費が高額では経営を圧迫しかねません。システムの年間利用料やサーバーの維持費、ソフトウェアの更新費用などが維持費に当たります。

医療DXツール・システムの導入を検討する際は、初期費用だけでなく、長期的にかかる費用全体を把握したうえで判断しましょう。

医療DXの補助金における補助対象経費と補助率・補助上限額

医療DXの補助金では、対象となる経費や補助割合(補助率)、上限額が各制度で定められており、事前に確認するのが重要です。主にソフトウェアの購入費やクラウドサービスの利用料、導入支援にかかる専門家への費用などが対象になります。

補助率は導入費用の2分の1や3分の2などさまざまで、補助金の種類によって数百万円から数千万円の上限が設定されています。自院の計画に合う制度を見つけるため、公募要領をよく読み比べましょう。

出典参照:「IT導入補助金2025」概要|経済産業省

出典参照:「医療情報化支援基金」公募要領|厚生労働省

医療DXで補助金を申請する際の公募期間・申請スケジュール

医療DXの補助金には、それぞれ申請できる期間が決められており、スケジュールを把握して準備を進めるのが大切です。申請には事業計画や見積書の準備が必要なため、公募開始前から情報収集を始め、余裕をもって動く必要があります。ほとんどの制度は春から夏にかけて募集がおこなわれますが、受付期間は1カ月程度と短い場合もあります。

各補助金の公式Webサイトを定期的に確認し、来年度のスケジュールを見逃さないようにしましょう。

出典参照:ICT利活用の促進|地域社会DX推進パッケージ事業|総務省

【課題別】自院に合った医療DX補助金の選び方

自院に合った医療DX補助金の選び方は、以下の3つです。

  • 受付業務の効率化とペーパーレス化で人手不足とコストを削減する
  • オンライン資格確認や電子処方箋など国の必須施策に対応する
  • オンライン診療をはじめとする新しい医療サービスで他院と差別化する

1つずつ見ていきましょう。

受付業務の効率化とペーパーレス化で人手不足とコストを削減する

受付業務の混雑や紙媒体の管理といった課題解決には、IT導入補助金の活用が適しています。この補助金は、Web予約システムや電子カルテなど、日々の事務作業を楽にする幅広いツールが対象です。

Web予約システムや電子カルテを導入すると、電話対応や紙の保管にかかっていた人件費や消耗品費を削減できます。IT導入補助金を活用して、医療DXツール・システムを導入するのは、人手不足に悩むクリニックが少人数で業務を回せる体制づくりに効果的です。

オンライン資格確認や電子処方箋など国の必須施策に対応する

国が推進するオンライン資格確認や電子処方箋への対応には、医療情報化支援基金での補助金がおすすめです。医療情報化支援基金は、国の計画に沿ったシステム導入を重点的に支援するもので、必須となりつつある設備の費用負担を軽くできます。

医療DXツール・システムの導入は、診療報酬の医療DX推進体制整備加算の算定要件にも関わるため、経営においてもメリットです。

医療情報化支援基金の活用は、国の推進する医療DX令和ビジョン2030に対応するうえで、最適な補助金です。

オンライン診療をはじめとする新しい医療サービスで他院と差別化する

オンライン診療の導入で他院との差別化を図りたい場合は、IT導入補助金や、自治体独自の支援制度を活用するのがおすすめです。補助金を使ってオンライン診療を活用すると、通院が困難な患者さんへの対応といった新しいサービスの提供につながります。とくに、地域医療の充実を目的とした自治体の補助金では、遠隔医療システムが対象となるケースもあります。

コストを抑えて付加価値の高い医療を実現し、自院の競争力強化につなげる場合は、IT導入補助金や自治体独自の支援制度を活用した医療DXツール・システムの導入を検討しましょう。

補助金を活用できる医療DXへの具体的な取り組み

医療DXの推進に成功した事例は、以下の3つです。

  • オンライン資格確認で受付業務を効率化|北野病院
  • 電子処方箋の導入により医療DXのさらなる拡充へ|日本海総合病院
  • 電子カルテシステムとオンライン資格確認の連携で患者さんにより良い医療を|あかいしクリニック

1つずつご紹介します。

オンライン資格確認で受付業務を効率化|北野病院

北野病院では、オンライン資格確認の導入によって、受付業務の効率化と患者サービスの向上に成功しています。これまで手作業でおこなっていた保険証情報の入力を自動化し、入力ミスや確認の手間を削減しました。患者さんの待ち時間が短くなっただけでなく、同意がある場合、過去の薬剤情報も確認できるため、より安全な医療の提供につながっています。

補助金を活用してオンライン資格確認を導入した結果、医療機関側と患者さん双方の満足度を高めた好事例です。

出典参照:医療機関等向け総合ポータルサイト導入事例紹介|オンライン資格確認事例|病院|北野病院様|厚生労働省

電子処方箋の導入により医療DXのさらなる拡充へ|日本海総合病院

日本海総合病院は、電子処方箋システムを導入し、医療の安全性向上と医療DXのさらなる推進を実現しています。複数の医療機関で同じ薬が処方される重複投薬や、危険な飲み合わせをリアルタイムで確認できるため、薬剤師が処方箋を手入力する手間も省け、患者さんへの服薬指導により時間をかけられるようになりました。

補助金を活用して電子処方箋を導入し、地域全体の医療の質を高めるのに役立った事例です。

出典参照:医療機関等向け総合ポータルサイト導入事例紹介|電子処方箋事例|病院|日本海総合病院様|厚生労働省

電子カルテシステムとオンライン資格確認の連携で患者さんにより良い医療を|あかいしクリニック

あかいしクリニックでは、電子カルテとオンライン資格確認を連携させ、診療の質の向上につなげています。マイナ保険証で得た患者さんの過去の薬剤情報を、診察前に医師が電子カルテ上で確認できる体制を整えた効果として、薬の重複防止やより的確な診断が可能になりました。

補助金を活用して、電子カルテやオンライン資格確認を導入で得た情報を診療に活かし、安全性の高い医療提供を実現している事例です。

出典参照:医療機関等向け総合ポータルサイト導入事例紹介|オンライン資格確認事例|医科診療所|あかいしクリニック様|厚生労働省

医療DXにおける補助金の申請から受給までの4ステップ

医療DXにおける補助金の申請から受給までのステップは、以下の4つです。

  • ステップ1:自院が対象か確認し導入したいツールを決める
  • ステップ2:必要書類を揃え公募要領に従って申請する
  • ステップ3:交付決定後にITツールを発注・導入する
  • ステップ4:導入実績を報告して補助金を受け取る

1つずつご紹介します。

ステップ1:自院が対象か確認し導入したいツールを決める

補助金申請における最初のステップは、自院が補助の対象になるかを確認し、導入したいITツールやシステムを具体的に決めることです。まずは利用を考えている補助金の公式Webサイトで、医療機関の規模といった条件を確認します。次に、自院の課題を解決するために最適な電子カルテや予約システムなどを選びましょう。

医療DXを導入する目的を明確にすると、どのツール・システムが必要で、どの補助金が活用できるのかが見えてきます。

ステップ2:必要書類を揃え公募要領に従って申請する

申請する補助金が決まったら、公式Webサイトで公募要領を熟読し、必要な書類を期限内に不備なく提出するのが重要です。申請書だけでなく、導入ツールの見積書や、IT化によってどう業務を改善するかの計画書なども求められます。

書類に不備があると受け付けてもらえないため、提出前には何度か確認しましょう。余裕を持ったスケジュールで準備を進めるのが大切です。

ステップ3:交付決定後にITツールを発注・導入する

補助金の申請が採択されたら、交付決定通知が届いたのを確認し、ツールの発注や契約をおこないます。交付決定前に発注や支払いをしてしまうと補助の対象外となるため、順番を間違えないよう注意が必要です。

補助金の活用には、決められた期間内にシステムの導入から支払いまでを完了させる必要があり、計画的な進行が求められます。

ステップ4:導入実績を報告して補助金を受け取る

システムの導入が完了したら、事業の実績をまとめた報告書と、支払いを証明する書類などを事務局へ提出します。提出された報告内容が審査され、問題がない場合は補助金額が確定し、指定の口座へ振り込まれる流れです。

書類に不備があると支払いが遅れる原因になるため、最後まで気を抜かずに丁寧な準備を心がけましょう。

【まとめ】補助金をうまく活用し医療DXを推進しよう

医療DXの推進には、補助金の活用が費用負担を軽減するうえで重要であり、各補助金の制度を理解して計画的に準備を進めるのが成功ポイントです。

国や自治体の支援制度のなかで、自院の課題解決に合ったものを選びましょう。補助金の申請手続きには注意点もありますが、自己負担をできる限り抑えて最新のITツールを導入できる便利な制度です。

補助金をきっかけに業務効率と医療の質を高め、患者さんに選ばれるクリニックを目指しましょう。