医療DX促進のコツである人材育成プログラムと体制づくりのポイント

「医療DXに対応できる人材を院内で育成する方法を知りたい」

「医療DXを推進するにあたって、スタッフのITリテラシーを高める研修や教育プログラムを探している」

「医療DXツール・システムの導入を円滑に進めるための体制づくりや役割分担を理解したい」

医療DXの推進において、人材育成で上記のようなお悩みを抱えている方も多いのではないでしょうか。

ITリテラシーを持つ人材を育成する方法には、社内育成や中途採用、外部の専門家との連携があります。この記事では、医療DX人材を確保する方法や、人材育成で活用できる国のプログラム・補助金を解説します。

医療DX人材の育成に成功した事例や、人材育成を成功させる体制づくりのポイントもご紹介しているため、ぜひ最後までご覧ください。

医療DXとは何か

医療DXとは、デジタル技術で医療サービスや働き方を根本から変え、より質の高い医療を目指す取り組みです。高齢化や人手不足が進む日本の医療を持続可能にするために、医療DXの推進は不可欠です。

国が推進する「医療DX令和ビジョン2030」では、電子カルテの全国共有やオンライン診療の普及が目標とされています。単にツールを導入するだけでなく、それを使いこなす人材の育成が医療DXの推進を促すポイントです。

出典参照:「医療DX令和ビジョン2030」厚生労働省推進チーム|厚生労働省

出典参照:医療DXについて 医療DXとは|厚生労働省

医療DXに人材育成が必要な理由

医療DXに人材育成が必要な理由は、以下の3つです。

  • 導入したシステムが無駄になるのを防ぐため
  • 現場スタッフのITスキル不足とデジタルへの不安を解消するため
  • データを活用して医療の質と経営を改善するため

1つずつご紹介します。

導入したシステムが無駄になるのを防ぐため

医療DXで人材育成が必要な理由は、高額なシステムを導入しても、職員が使いこなせない場合、投資が無駄になるのを防ぐためです。どんなに優れたツールでも、その価値を最大限に引き出すには運用する人の知識と技術が欠かせません。

操作方法が分からないままでは、かえって現場が混乱し、業務効率が低下するリスクもあります。システムの効果を確実に発揮させるためにも、計画的な人材育成が必要です。

現場スタッフのITスキル不足とデジタルへの不安を解消するため

医療現場にはITが得意でない職員もいるため、デジタル化への不安を解消し、前向きな協力を得るうえで人材育成は重要です。紙の文化に慣れてきたスタッフにとって、新しいシステムの導入はストレスになり得ます。

研修を通して、操作が困難、仕事が増えるといった誤解を解き、DXが業務を楽にする便利なツールだと理解してもらうのが大切です。

データを活用して医療の質と経営を改善するため

医療DXの最終目的であるデータ活用を進め、医療の質と経営を改善するためにも人材育成が必要です。データ分析のスキルを持つ人材を育てることは、経験だけに頼らない、根拠にもとづく医療サービスの提供につながります。

電子カルテに蓄積された診療データを分析すると、より効果的な治療法の発見や、院内業務の無駄を見つけるのに役立ちます。

その結果、医療の質が高まるのにともない、患者満足度も向上するため、データ分析が可能な人材育成は医院経営を改善するうえで必要な取り組みです。

医療DXの人材育成がもたらす3つのメリット

医療DXの人材育成がもたらすメリットは、以下の3つです。

  • 業務の無駄をなくし生産性を高める
  • 医療の質と患者満足度を向上させる
  • 働きがいを高めて優秀な人材の離職を防ぐ

それぞれ見ていきましょう。

業務の無駄をなくし生産性を高める

医療DXの人材育成は、職員のITスキルを高め、院内業務の無駄をなくして生産性を向上させます。これにより、医師や看護師は診療といった専門的な業務に集中できます。

デジタル技術を理解した人材が増えると、手作業でおこなっていた予約管理やカルテ検索などの自動化が可能です。医療DXの推進に向けた人材育成は、限られた人員でも、より多くの業務を効率的にこなせる組織づくりに必要な取り組みです。

医療の質と患者満足度を向上させる

医療DXの人材育成は、データ活用を通じて医療の質を高め、患者満足度の向上につながります。蓄積された診療データを分析できる人材がいる場合、より精度の高い診断や治療法の選択が可能です。

また、Web予約やWeb問診で待ち時間が短縮されるのは、患者さんにとってもメリットです。安全で質の高い医療と、快適な受診体験の両方が、患者満足度向上につながります。

働きがいを高めて優秀な人材の離職を防ぐ

医療DXの人材育成は、職員の働きがいを高め、優秀な人材の離職防止につながります。デジタルスキルが身につくと、職員は自身の成長を実感しやすいです。

また、業務効率化によって残業時間が減り、ワークライフバランスが改善されるのも医療DXに対応できる人材を育成するメリットです。

医療DX人材の育成は、時代に合った働きやすい職場環境をつくり、職員のモチベーション向上や長期的な人材定着につながります。

医療DXの推進で求められる具体的な人材像

医療DX推進で求められる具体的な人材像は、以下の3つです。

  • DXの舵を取る「プロジェクトマネージャー」
  • データから価値を見出す「データサイエンティスト」
  • DXの技術を形にする「ITエンジニア」

1つずつご紹介します。

DXの舵を取る「プロジェクトマネージャー」

医療DXの推進には、計画全体のリーダーとなるプロジェクトマネージャーの存在が欠かせません。プロジェクトマネージャーの役割は、DXの目的を理解し、予算やスケジュールを管理しながら、計画をゴールまで導く船頭のような存在です。

プロジェクトマネージャーは、現場スタッフと経営層の間に立ち、意見を調整するコミュニケーション能力が求められます。まさに、プロジェクトを成功させるための中心人物です。

データから価値を見出す「データサイエンティスト」

医療DXで蓄積されたデータを分析し、価値ある情報を見つけ出すデータサイエンティストも重要な役割を担います。患者さんの来院傾向を分析して待ち時間を減らす工夫を考える、診療データをもとに、より効果的な治療法を提案するなどが、データサイエンティストの役割です。

データサイエンティストは、専門的な分析スキルで、客観的な根拠にもとづく医療の実現を支える重要な存在です。

DXの技術を形にする「ITエンジニア」

医療DXの構想を、実際に動くシステムとして作り上げるのがITエンジニアです。電子カルテのカスタマイズや、新しい予約システムの導入、各システムのデータ連携などを担当します。

医療現場の「こんなことができたら便利」という要望を、技術的にどう実現するかを考え、形にする専門知識が求められます。

ITエンジニアは、医師や看護師と対話し、現場のニーズを深く理解する力も必要なポジションです。

医療DX人材を確保する3つの方法

医療DX人材を確保する方法は、以下の3つです。

  • 社内育成・リスキリングで既存社員を育てる
  • 中途採用・ITに詳しい人を新たに採用する
  • 外部連携・コンサルやプロの力を借りる

それぞれ詳しく見ていきましょう。

社内育成・リスキリングで既存社員を育てる

医療DX人材を確保する基本は、既存の職員に必要なIT教育をおこない、院内で専門家を育てる社内育成(リスキリング)が効果的です。リスキリングとは、時代の変化に対応するために新しい知識やスキルを学び直すことを指し、医療従事者がデジタル技術を取り入れるうえで重要な取り組みです。

既存社員は医療現場の業務や文化をすでに理解しているため、新しいスキルを身につけると即戦力として活躍が期待できます。

外部研修への参加やeラーニングの導入など、社内育成の方法はさまざまです。国の人材開発支援助成金を活用するのも有効な手段です。

中途採用・ITに詳しい人を新たに採用する

即戦力となる専門知識を求めるなら、IT分野に詳しい人材を外部から中途採用する方法があります。自院にない新しい視点や技術をすぐに取り入れられ、DXプロジェクトの立ち上げを力強く推進してくれるのがメリットです。

ただし、医療業界特有の業務の流れや専門用語に慣れるまでには、一定の教育期間が必要な場合があります。採用した人材が孤立しないよう、現場スタッフとの連携体制を整えるのも大切です。

外部連携・コンサルやプロの力を借りる

自院にノウハウがない場合は、DX専門のコンサルタントやITベンダーといった外部のプロの力を借りるのも有効な手段です。何から手をつければ良いか分からない段階でも、課題の洗い出しから具体的なツール選定、導入支援まで一貫したサポートを受けられます。

専門家の客観的な視点を取り入れると、自院だけでは気づかなかった問題点や、より効果的な解決策が見つけやすいです。

医療DX人材の育成に成功した事例

医療DX人材の育成に成功した事例は、以下の3つです。

  • アイデミーで実現するデジタルスキル標準ベースの人材育成|シスメックス株式会社
  • DXの意識改革を狙うカリキュラムでDXリテラシー向上|JFEケミカル株式会社
  • 人材育成でDXを身近に感じてもらうのに成功|イオンディライト株式会社

1つずつご紹介します。

アイデミーで実現するデジタルスキル標準ベースの人材育成|シスメックス株式会社

シスメックス株式会社は、全社的な研修プログラムを導入し、社員のデジタルスキルを定量的に把握して育成する体制を整えています。以前は部署ごとに教育方針が異なりましたが、研修プログラムを通じて、統一基準で学ぶ機会を提供しました。

結果的に、社員が専門レベルのスキルを習得し、デジタル技術をビジネスに活かす風土が醸成されました。

全社的な研修プログラムが、デジタル技術を活用できる人材を育てた成功事例です。

出典参照:シスメックスの全社員DX人材育成事例|アイデミーで実現するデジタルスキル標準ベースの人材育成 | Aidemy Business|株式会社アイデミー

DXの意識改革を狙うカリキュラムでDXリテラシー向上|JFEケミカル株式会社

JFEケミカル株式会社は、DXへの意識改革を目的とした研修で、社員のデジタルリテラシー向上に成功しています。以前は「今までの方法で困っていない」と、新しいツールの導入に消極的な意見が多かったそうです。そこで、まずDXの重要性やメリットを学ぶ機会を設け、社員の意識底上げを図りました。

結果、職員の取り組み姿勢が前向きに変わり、自発的にスキルを学ぶ人が増えました。

出典参照:DXリテラシー向上、そのカリキュラムと運用の工夫とは_JFEケミカル株式会社様【Aidemy Business導入事例編】 | Aidemy Business|株式会社アカデミー

人材育成でDXを身近に感じてもらうのに成功|イオンディライト株式会社

イオンディライト株式会社は、IT専門家でない社員向けの人材育成で、DXを身近なものとして感じてもらう意識付けに成功しました。具体的な取り組み内容として同社は、「DXとは何か」という基礎を学び、自分の業務を楽にするための活用法を考える研修をおこないました。

研修後、社員からは「DXの進め方が分かった」といった前向きな感想が多く寄せられたそうです。

研修を通してDXの基礎を社員に周知させた結果、DXへのハードルを下げ、主体性を引き出すきっかけになった事例です。

出典参照:導入事例 イオンディライト株式会社 | JMAM 日本能率協会マネジメントセンター | 個人学習と研修で人材育成を支援する|株式会社日本能率協会マネジメントセンター

医療DXの人材育成で活用できる国のプログラム・補助金

医療DXの人材育成で活用できる国のプログラム・補助金は、以下の4つです。

  • 大学と連携した医療DXイノベーション人材育成プログラム
  • 導入と合わせて活用できる医療情報化支援基金
  • 研修費用を支援する人材開発支援助成金
  • 自治体独自の研修・資格取得支援制度

それぞれ詳しく見ていきましょう。

大学と連携した医療DXイノベーション人材育成プログラム

将来の医療DXを担う高度な専門人材を育てるため、国は大学や企業と連携した人材育成プログラムを推進しています。この人材育成プログラムは、医療とデジタル技術の両方を理解したリーダーを育成するのが目的です。

大学院レベルの教育課程だけでなく、すでに働いている社会人が学び直すリスキリングの機会も提供します。

大学や企業と提携した人材育成プログラムは、未来の医療をリードする人材を、組織的に確保していくための重要な取り組みです。

出典参照:先進的医療イノベーション人材養成事業について(文部科学省提出資料)|厚生労働省

導入と合わせて活用できる医療情報化支援基金

医療情報化支援基金は、システムの導入費用と合わせて、職員の研修といった人材育成にかかる経費も補助対象とする制度です。電子カルテやオンライン資格確認の導入支援が主な目的ですが、それを使いこなすための初期研修の費用も支援してくれます。新しいツールの導入と、導入したツールを使う人材のスキルアップを同時に進められるのが医療情報化支援基金を活用するメリットです。

医療情報化支援基金は、医療DXの基盤づくりを総合的にサポートする仕組みといえます。

出典参照:医療情報化支援基金等|社会保険診療報酬支払基金

研修費用を支援する人材開発支援助成金

人材開発支援助成金は、医療機関が職員のスキルアップのためにおこなう研修費用を、国が助成してくれる制度です。医療DXに特化したものではありませんが、ITスキルやデータ分析といった幅広い研修に活用できます。

また、正職員だけでなく、パートタイムの職員も対象となるため、院内全体のデジタル対応能力の底上げに役立ちます。

人材開発支援助成金は、職員の成長を後押しする支援策です。

出典参照:人材開発支援助成金|厚生労働省

自治体独自の研修・資格取得支援制度

国全体の制度とは別に、都道府県や市区町村が、地域独自の医療DX人材育成を支援している場合があります。たとえば、IT研修の受講料を補助する、特定の資格取得にかかる費用を助成するなどがあります。

地域ごとの医療課題に合わせた、きめ細かな支援を受けられるため、自院が所属する自治体のWebサイトを確認し、活用できる制度がないか調べてみましょう。

出典参照:自治体DXの推進|都道府県と市町村の連携によるDX推進体制|総務省

医療DXの人材育成を成功させる体制づくりのポイント

医療DXの人材育成を成功させるためのポイントは、以下の4つです。

  • 経営トップがDX化の目的と将来像を明確に示す
  • 現状のITスキルを把握して育成のゴールを決める
  • 具体的な育成計画を立てて研修を実施する
  • 実際の業務で試し継続的にサポートする

1つずつ解説します。

経営トップがDX化の目的と将来像を明確に示す

医療DXの人材育成を成功させるには、まず経営トップがDXの目的と将来像を全職員に明確に示すのが重要です。院長自らが「何のためにデジタル化するのか」を具体的に語ると、職員は同じ方向を向いて協力しやすくなります。組織全体で目的が共有されている場合、新しい取り組みへの抵抗感軽減にもつながります。

トップがDX化の目的を組織全体に共有するのは、医療DXに対応できる人材を育成するうえで重要です。

現状のITスキルを把握して育成のゴールを決める

効果的な人材育成方法は、職員1人ひとりのITスキルを正確に把握し、個別のゴールを設定することです。パソコン操作が得意な人もいれば、苦手な人もいます。アンケートで現在のスキルレベルを調査し、それぞれに合った段階的な目標を決めると、無理なく職員の成長を促せます。

医療DX人材を育成するには、全員に同じ研修をおこなうだけではなく、スキル差に応じた計画を立てるのも大切です。

具体的な育成計画を立てて研修を実施する

職員のスキルレベルと目標に合わせて、具体的な研修計画を立てて実行に移すのも重要です。ただ話を聞くだけの座学だけでなく、実際にシステムを操作するワークショップ形式の研修を取り入れるのが効果的です。

また、研修後には理解度を確認するテストの実施や、フィードバックの機会を設けると、育成の質が高まります。

計画的な進行と定期的な振り返りが、医療DX人材を育成する着実なスキルアップにつながります。

実際の業務で試し継続的にサポートする

研修で学んだスキルは、実際の業務で使いながら身につけていくのが効果的です。導入して間もない時期は、操作に戸惑う職員も少なくありません。

気軽に質問できる相談窓口を設け、定期的にフォローアップの面談をおこない、現場の不安を解消する体制を整えましょう。

継続的な支援が、新しいツールの現場定着を促し、DXを組織全体の文化として根付かせるうえで必要です。

【まとめ】医療DXの成功は「人」への投資から始めよう

医療DXの成功は、最新のITツール導入だけでなく、それを扱う「人」への投資と育成から始まります。

経営トップが明確なビジョンを示し、職員のスキルレベルに合わせた育成計画を立てるのが医療DX人材を育成するポイントです。また、研修と実践を繰り返しながら、組織全体でサポートする体制が欠かせません。

「人」への投資こそが、医療の質を高め、将来にわたって選ばれ続ける医療機関となるための基盤になります。国の人材育成プログラムや補助金を活用し、医療DXに対応できる人材を育成しましょう。