医療DXの促進で人材確保を支援する方法やステップを解説

「医療DX推進に必要なITスキルを持つ人材を採用・確保したい」

「医療DX推進を成功させるために、現場スタッフにデジタル知識を身につけさせて業務に活かしたい」

「医療DXに対応できるチームを早期に整備したい」

医療DXの推進に必要な人材を確保したいと考えている方のなかには、上記のようなお悩みをお持ちの方もいるのではないでしょうか。

医療DXに対応できる人材を確保するには、中途採用だけではなく、外部の研修プログラムやeラーニングサービスを取り入れて既存社員を育てるのも効果的な方法です。この記事では、医療DXの推進に必要な人材確保の方法や活用できる支援策を解説します。

医療DX推進で求められる具体的な人材像や、医療DXの人材確保がもたらすメリットもご紹介しているため、ぜひ最後までご覧ください。

医療DXとは

医療DXとは、デジタル技術で医療の仕組みを変革し、患者さんと医療従事者の双方にとってより良い環境を目指す国の戦略です。医療DX推進で、業務が効率化されるとスタッフの負担が減り、働きやすい職場の実現につながります。

医療DXは、電子カルテ情報の標準化やオンライン資格確認などを通じ、質の高い医療を効率的に提供するのが目的です。医療DXの推進は、優秀な人材にとって魅力的であり、医療現場の人材確保といった課題解決にも結びつきます。

出典参照：医療DXについて 医療DXとは｜厚生労働省

医療DXを阻む「人材確保」に関する課題

医療DXを阻む「人材」に関する課題は、以下の3つです。

• DX化を引っ張るリーダーが不足している
• 現場スタッフのITスキル不足や変化への不安が障壁となる
• 医療とITの両方に精通した人材が不足している

1つずつ解説します。

DX化を引っ張るリーダーが不足している

医療DX推進の課題として、院内全体を牽引するリーダーの不足が挙げられます。医療DXの方向性を定め、経営層と現場をつなぐ旗振り役がいないと、組織はなかなか動きません。

とくにマネジメント層が医療DXの重要性を理解していない場合や、誰が責任を持って進めるのかが曖昧なままでは、どんなに良いシステムを考えても、導入までたどり着くのが困難です。

DX化を中心となって引っ張ってくれる人材の不足は、医療DXの推進や効果を最大化させるのに重要な存在です。

現場スタッフのITスキル不足や変化への不安が障壁となる

現場スタッフのITスキル不足や、変化への根強い不安も、医療DXを阻む壁の1つです。日々の忙しい業務のなかで、医療DXのメリットを理解する余裕がないのが実情です。十分な教育や、導入後の手厚いサポート体制がない場合、現場の協力は得られず、医療DXの推進がスムーズにできません。

現場スタッフから出る「新しい操作を覚えるのが大変」「仕事が増えそう」といった抵抗感は、医療DXツール・サービス導入の障壁となります。現場スタッフのITスキル向上や、変化に対する不安軽減のためにも、研修やサポート体制を整備しましょう。

医療とITの両方に精通した人材が不足している

医療DXの課題は、医療現場の事情とIT技術の両方を深く理解している人材が、社会全体で不足していることです。システム開発者は医療の専門的な業務を知らず、医療従事者はITの言葉を理解できないといったすれ違いが起こりやすいです。

お互いの知識や業務の橋渡し役がいないと、現場のニーズに合わない、使いにくいシステムが導入されるリスクがあります。

両分野に精通した人材の採用や育成が、医療DXを推進するうえでの課題です。

出典参照：医療DXの進捗状況について｜厚生労働省

医療DXの推進で人材確保が急務な理由

医療DXの人材確保が急務な理由は、以下の3つです。

• 導入したシステムの効果を発揮できる
• 業務の無駄をなくし生産性を高める
• 働きがいを高めて優秀な人材の離職を防ぐ

それぞれ見ていきましょう。

導入したシステムの効果を発揮できる

医療DXの人材確保が急務なのは、導入したシステムの価値を最大限に引き出し、投資効果を得るために必要だからです。どんなに高機能な電子カルテを導入しても、その性能を理解し、現場で活用できる人材がいなければ意味がありません。

システムを効果的に運用できる人材を確保すると、業務効率化や医療の質向上といった成果につながるため、人材確保は医療DXの効果を最大化させるうえで急務です。

業務の無駄をなくし生産性を高める

人手不足が深刻な医療現場では、業務の無駄をなくし生産性を高めるDX人材の確保が急務です。ITツールを効果的に活用できる人材がいる場合、人の手でおこなっていた作業を自動化し、時間的なロスを削減可能なため、限られたスタッフでも質の高い医療サービスを維持できます。

人材確保は、医療機関が厳しい経営環境を乗り越えるための重要な取り組みです。

働きがいを高めて優秀な人材の離職を防ぐ

優秀な人材の離職を防ぎ、採用競争で優位に立つためにも、DX人材の確保は急務です。非効率な作業が残る職場は、スタッフの満足度を下げ、離職の原因にもなりかねません。

DXを推進できる人材を確保し、働きやすい環境を整えると、職員の働きがい向上につながります。魅力的な職場は、新しい人材を引きつける力にもなり、長期的な人材確保に効果的な取り組みです。

【役割別】医療DX推進で求められる具体的な人材像

医療DX推進で求められる具体的な人材像は、以下の3つです。

• DXプロジェクトを計画し推進する人（プロジェクトマネージャー）
• データを分析してビジネスに活かす人（データアナリスト）
• システムの開発と運用を担う人（ITエンジニア）

1つずつご紹介します。

DXプロジェクトを計画し推進する人（プロジェクトマネージャー）

DXプロジェクトを計画し推進する人材は、院内の課題を整理し、改革の全体像を描いて実行を管理するリーダー役です。経営層の考えを現場に伝え、現場の意見を計画に反映させるといった、異なる立場の人々をつなぐ調整力が求められます。

プロジェクトマネージャーは、プロジェクトが計画通りに進むようスケジュールを管理し、課題の発生時は解決に動く重要な存在です。

データを分析してビジネスに活かす人（データアナリスト）

データを分析してビジネスに活かす人材は、院内に眠る数字を「見える化」し、経営改善のヒントを見つけ出せる重要なポジションです。役割の例として、患者さんの待ち時間データを分析して予約枠の改善案を提案する、診療データを整理して医師の判断をサポートするなどが挙げられます。

データアナリストが数字で客観的な根拠を示すと、現場スタッフも納得して新しい取り組みに協力しやすい環境が整います。

システムの開発と運用を担う人（ITエンジニア）

システムの開発と運用を担う人材は、医療DXの土台となるIT環境を構築し、安全に運用し続ける技術者です。医療現場のニーズをヒアリングし、それを満たすためのシステム設計や開発、導入後の保守管理までを担当します。

とくに、患者さんの大切な情報を守るためのセキュリティ対策は、専門知識が必要な業務です。

ITエンジニアは、医療DXを技術面で支え、安定した運用を実現する重要な存在です。

医療DXの人材確保がもたらすメリット

医療DXの人材確保がもたらすメリットは、以下の3つです。

• 日々の業務を効率化し組織全体の生産性を向上する
• より良い医療を提供して患者からの信頼を高める
• 魅力的な職場を作ってスタッフの定着率を上げる

それぞれ解説します。

日々の業務を効率化し組織全体の生産性を向上する

医療DX人材を確保するメリットは、専門的な知見で院内業務を効率化し、組織全体の生産性を高められる点です。予約管理や会計といった事務作業を自動化できる人材がいる場合、医師や看護師は患者さんと向き合う時間に集中できます。

結果、1人ひとりのスタッフが専門性を最大限に発揮できるようになり、より少人数でも質の高い医療提供が可能です。

より良い医療を提供して患者からの信頼を高める

データ分析に長けた人材を確保するメリットは、客観的な根拠にもとづく、より質の高い医療を提供し、患者さんの信頼を高められる点です。電子カルテの情報を分析できる人材がいる場合、個々の患者さんに合った治療法を提案しやすくなります。

また、複数の医療機関の情報を参照して、薬の重複やアレルギーのリスクを未然に防ぐのにも効果的です。

データ分析ができる人材の確保は、安全で納得感のある医療につながり、患者満足度向上に結びつきます。

魅力的な職場を作ってスタッフの定着率を上げる

医療DX人材を確保して働きやすい環境を整えるのは、既存スタッフの満足度を高めて離職を防ぎ、新たな人材も集まる魅力的な職場づくりにつながります。非効率な作業が減った職場は、職員にとって心身ともにゆとりを持って専門業務に集中しやすい環境です。

医療DX人材を確保して働きやすい環境を整えるのは、優秀な人材の離職率を下げると同時に、「ここで働きたい」と希望する新たな人材を引きつける場合があります。

医療DX人材を確保する3つの方法

医療DX人材を確保するための方法は、以下の3つです。

• 既存社員を育てる（社内育成・リスキリング）
• 専門人材を新たに採用する（中途採用）
• 外部のプロの力を借りる（外部連携・コンサル）

それぞれ詳しく見ていきましょう。

既存社員を育てる（社内育成・リスキリング）

医療DX人材を確保するには、既存の職員に新たなデジタルスキルを学んでもらい、院内でDX人材を育てる社内育成が効果的です。院内の業務や人間関係を熟知したスタッフがDXの知識を身につけると、現場に即した実用的な改善を進められます。

外部研修への参加支援やeラーニングの提供などを通じ、組織全体のITリテラシーの底上げを図りましょう。

社内育成は、長期的に見ても安定的で持続可能な人材確保策です。

専門人材を新たに採用する（中途採用）

院内で医療DX人材を育成・確保するのに困難な場合、ITやデータ活用に強い人材を、即戦力として外部から中途採用するのもおすすめです。自院にはない新しい知識や他業界の成功事例を持ち込んでもらうと、DXの取り組みを一気に加速させられます。

とくにプロジェクトの立ち上げ期において、中途採用での人材確保は強力な推進力につながります。

ただし、優秀なIT人材の採用競争は激しいため、魅力的な労働条件やビジョンの提示が必要です。

外部のプロの力を借りる（外部連携・コンサル）

医療DX専門のコンサルタントやIT企業と連携し、外部のプロの知見を借りるのも選択肢の1つです。正社員を1人採用するほどの予算や業務量がない場合でも、外部連携だと必要な期間だけ専門的な支援を受けられます。

医療DXコンサルとの外部連携は、医療DXの推進で何から始めるのが望ましいかといった戦略相談や、具体的なシステム導入まで、幅広いサポートを期待できるのが魅力です。

外部連携は、自院のリソースを補い、医療DX推進の確実性を高めるための有効な手段です。

医療DXの人材確保・育成で活用できる支援策

医療DXの人材確保・育成で活用できる支援策は、以下の2つです。

• 国や自治体の補助金・助成金制度を活用する
• 外部の研修プログラムやeラーニングサービスを取り入れる

1つずつご紹介します。

国や自治体の補助金・助成金制度を活用する

医療DXの人材確保や育成にかかる費用負担を軽減するため、国や自治体が提供する補助金・助成金を積極的に活用しましょう。厚生労働省の人材開発支援助成金は、職員に専門的な研修を受けさせる際の費用の一部を支援してくれます。

また、自治体によっては、新たにIT専門人材を採用した場合の人件費を補助する制度もあります。

国や自治体の支援策をうまく組み合わせるのが、コストを抑えて人材を確保・育成する賢い方法です。

出典参照：人材開発支援助成金｜厚生労働省

出典参照：自治体DXの推進｜都道府県と市町村の連携によるDX推進体制｜総務省

外部の研修プログラムやeラーニングサービスを取り入れる

自院だけで人材育成をおこなうのが困難な場合は、外部の専門研修やeラーニングを取り入れるのが効果的です。医療DXに特化した研修プログラムを利用すると、最新の知識やスキルを体系的に学べます。

とくにeラーニングは、職員が自分の都合の良い時間に学習を進められるため、忙しい医療現場に適した方法です。

質の高い教育を効率的に提供し、組織全体のスキルレベルを向上させましょう。

医療DXの人材確保を成功させるための4ステップ

医療DXの人材確保を成功させるためのステップは、以下の4つです。

• ステップ1：経営層がDXのビジョンと必要性を明確にする
• ステップ2：自院に必要な人材像（役割・スキル）を定義する
• ステップ3：確保・育成の具体的な計画（ロードマップ）を策定する
• ステップ4：計画を実行して継続的に評価・改善する

それぞれ解説します。

ステップ1：経営層がDXのビジョンと必要性を明確にする

医療DXの人材確保における最初のステップは、経営層が「DXでどんな医療を実現したいか」といったビジョンを院内に明確に示すことです。なぜDXが必要なのか目的を全員で共有すると、組織全体が同じ方向を向いて進めるようになります。

明確なビジョンは、既存スタッフの学習意欲を高めるだけでなく、「この病院で働きたい」と外部の優秀な人材を引きつける魅力にもつながります。

ステップ2：自院に必要な人材像（役割・スキル）を定義する

医療DX推進のビジョンが固まったら、それを実現するために必要な人材の役割やスキルを具体的に定義しましょう。「プロジェクト全体を管理する人」「データを分析する人」といったように、誰に何を任せるかを明確にするのが重要です。

求める人物像がはっきりすると、既存の職員を育成するか、外部から新たに採用するかといった次の人材確保の戦略も立てやすいです。

ステップ3：確保・育成の具体的な計画（ロードマップ）を策定する

必要な人材像が明確になったら、人材を確保・育成するための具体的な計画を立てます。社内育成と外部採用のどちらに重点を置くか、どのような研修プログラムを用意するか、予算はいくらか、といった項目を時系列で整理しましょう。

いつまでに、どのような状態を目指すのかゴールを定めると、計画の実現性が高まります。

ステップ4：計画を実行して継続的に評価・改善する

人材確保・育成の計画は、実行して終わりではなく、継続的に評価と改善を繰り返すのが大切です。「計画通りに進んでいるか」「育成の効果は出ているか」などを定期的にチェックし、問題がある場合は柔軟に軌道修正をおこないましょう。

PDCAサイクルを回していくと、人材確保の取り組みそのものが洗練され、組織の成長につながります。

【まとめ】医療DXを持続的に進めるためにも人材確保に取り組もう

医療DXを成功させ、持続可能なものにするには、システムだけでなく、それを動かす人材の確保と育成が重要です。DXを推進できる人材がいて初めて、業務効率化や医療の質向上といった真の効果が生まれます。

経営トップが明確なビジョンを示し、自院に必要な人材を計画的に確保・育成していく姿勢が大切です。将来にわたって選ばれる医療機関であるためにも、まずは「人」への投資から始めてみましょう。