不動産DXにおけるIoTとは？IoT技術の種類や活用方法まで紹介

不動産DXでIoTの技術が活用される背景には、「スマートホーム」「スマートビル」「スマートシティ」などの構想が推進していることが挙げられます。IoTはモノのインターネットと呼ばれており、IoT機器を日常生活に取り入れることで、日常生活の利便性と快適性を向上させます。

本記事では、不動産DXにおけるIoTについて、IoT技術の種類や活用方法を解説していきます。不動産DXでIoT技術を活用するメリットまで紹介しているため、ぜひ最後までご覧ください。

不動産DXでIoTの技術が活用される背景

不動産DXでIoTの技術が活用される背景は、以下のとおりです。

• スマートホームにより居住性の向上が求められている
• スマートビル化で運用最適化が推進できる
• スマートシティ構想が推進している

それぞれ解説します。

スマートホームにより居住性の向上が求められている

スマートホームは、快適かつ利便性の高い暮らしを実現する技術として注目されています。音声操作でカーテンを開閉したり、天気予報を自動で読み上げたりすることで、日常生活の負担が軽くなります。

とくに高齢者や育児中の家庭では、操作が簡単なのが生活の質向上につながりやすいです。今後は、IoT対応の有無が住宅選びの判断材料となる場面も出てくるでしょう。

スマートビル化で運用最適化が推進できる

スマートビル化は、ビルの運用を効率よくおこなうための取り組みとして導入が進んでいます。センサーやBEMSの導入により、照明や空調を自動制御できる仕組みが整うと、エネルギーの無駄を抑えられます。

コストと効果のバランスを考慮しながら、段階的な導入を進めることによって、人的対応の負担の軽減も可能です。

スマートシティ構想が推進している

スマートシティ構想では、IoTを活用した都市機能の高度化が加速しています。交通や防災、環境管理などの分野でリアルタイムデータを活用し、サービスの質を向上させているのが特徴です。

不動産もこうした都市機能の一部として、より重要な役割を担うようになりました。都市づくりの将来を見据え、戦略的なIoT導入が検討されています。

引用元：スマートシティ官民連携プラットフォーム　始動｜国土交通省

不動産DXでIoT技術を活用するメリット

不動産DXでIoT技術を活用するメリットは、以下の7つです。

• 効率的なエネルギー利用を促進できる
• 物件価値の向上により入居率の改善ができる
• 不動産管理・仲介業務効率の向上につながる
• データ活用で物件価値の向上と差別化を図れる
• セキュリティの向上につながる
• 入居者や利用者の利便性・快適性が向上する
• 新たなビジネスモデルを創出できる

ひとつずつ紹介します。

効率的なエネルギー利用を促進できる

IoTを導入すると、エネルギーの最適な利用が促進できます。スマートメーターやBEMSで消費状況を見える化し、自動制御がおこなえます。

また、深夜帯に設備を稼働させる省エネ運用なども可能です。電力コストを抑えたい事業者は、前向きに導入を検討してみましょう。

物件価値の向上により入居率の改善ができる

IoT設備を導入すると、物件の魅力が増し入居率の改善につながります。スマートロックや顔認証システムは、先進性と安心感を与えやすいです。

とくに単身者や女性には、こうした設備が大きな安心材料になるため、差別化を図る手段としても有効な選択肢です。

不動産管理・仲介業務効率の向上につながる

IoTの活用で、管理や仲介業務の効率化が期待できます。たとえば、内見予約や設備確認を自動化すれば、人的リソースの削減が可能です。

さらに、非対面の鍵受け渡しにも対応でき、柔軟な運用が可能になります。業務効率を高めたい企業は、導入を積極的に検討しましょう。

データ活用で物件価値の向上と差別化を図れる

IoTによるデータ取得は、物件改善や差別化に有効です。たとえば、浴室の使用頻度に応じて換気を自動通知する仕組みなどが挙げられます。

また、快適性を高める施策は、入居者の満足度向上にもつながります。競争力を強化するには、データ活用の仕組みづくりが欠かせません。

セキュリティの向上につながる

IoT導入により、不動産の防犯体制を強化できます。顔認証やネットワークカメラによる入退室管理の自動化が可能です。

結果的に、住人の安心感が増し、物件全体の信頼性も向上します。防犯を重視する物件では、積極的な導入を検討してみてください。

入居者や利用者の利便性・快適性が向上する

IoT機器は、日常生活の利便性と快適性を向上させます。たとえば、スマートリモコンを使えば外出先からエアコンを操作でき、帰宅時には快適な空間が整います。

操作の手間が減ることで、日々のストレスも軽減されやすいです。居住者満足度の向上を目指す場合は、IoT導入の価値があります。

新たなビジネスモデルを創出できる

IoTの導入は、新たな収益モデルの創出につながります。具体的には、月額課金型のIoTサービスや生活支援型のサービス提供が可能になるためです。

顧客との関係性を深め、サービスの幅を広げられる点も魅力といえます。収益の多様化を目指すなら、新しいモデルを積極的に模索してみましょう。

不動産DX導入におけるIoT技術の種類

不動産DX導入におけるIoT技術の種類は、以下のとおりです。

• スマートスピーカー
• スマートロック
• スマートメーター
• スマートリモコン
• 開閉センサー
• ネットワークカメラ
• 各種センサー（温度、照度、人感、位置情報ビーコンなど）
• 顔認証システム
• サービスロボット（清掃、運搬、案内、警備など）
• BEMS（ビルエネルギーマネジメントシステム）
• クラウド型建物OS / スマートビルプラットフォーム

それぞれ解説します。

スマートスピーカー

スマートスピーカーは、音声操作で家電を制御できる利便性の高い機器です。手を使わず照明やエアコンを操作できるため、身体的負担の軽減につながります。

とくに高齢者や小さな子どもがいる家庭では、安心感の向上が見込めます。日常生活をより快適にしたい場合には、導入を前向きに検討しましょう。

スマートロック

スマートロックは、防犯性と利便性を両立できる装置です。スマートフォンやICカードによる施錠・解錠が可能なため、物理鍵を持ち歩く必要がありません。

紛失リスクの低減や履歴管理機能もあり、安全性向上にも役立ちます。安心な物件運営を目指す方は、積極的に導入を検討してみてください。

スマートメーター

スマートメーターは、電気やガス、水道の使用量をリアルタイムで可視化できるツールです。見える化によって省エネ意識を高められ、無駄な使用の抑制に役立ちます。

ピーク時間帯の使用回避にもつながるため、コスト削減効果が期待できます。エネルギー管理を強化したい施設にとって、有効な選択肢となるでしょう。

スマートリモコン

スマートリモコンは、複数の家電をスマートフォンひとつで一括操作できる機器です。外出先から遠隔操作できることで、帰宅時の快適な環境を整えられます。

利便性だけでなく、省エネ対策としても効果的です。暮らしの質を高めたいと考えている場合は、導入を検討するとよいでしょう。

開閉センサー

開閉センサーは、ドアや窓の開閉を検知し、異常時には即座に通知する防犯機器です。不審な動きへの即応が可能になり、安心感が向上します。

高齢者の見守り目的としても活用でき、家族の負担軽減にもつながるでしょう。防犯と見守りの両立を図りたい場合は、有効な対策となります。

ネットワークカメラ

ネットワークカメラは、遠隔から映像を確認できる監視システムです。スマートフォンと連携し、外出中でも室内の様子を把握できます。

AI機能付きモデルでは、不審な動きを自動検知し録画する機能もあります。とくに防犯意識の高い物件では、導入を検討してみるのがおすすめです。

各種センサー（温度、照度、人感、位置情報ビーコンなど）

温度や照度、人感などのセンサーは、環境や人の動きを感知し、設備制御を自動化する役割を担います。

たとえば、照明や空調の自動制御が可能になり、快適性と省エネの両立が実現できるため、特定条件に応じた柔軟な設定ができる点も利点です。業務効率や居住環境を改善したい場合は、導入をおすすめします。

顔認証システム

顔認証システムは、非接触で本人確認をおこなえる先進的な技術です。鍵の紛失リスクを回避でき、セキュリティ体制の強化にもつながります。

入退室履歴の自動記録機能もあり、管理もスムーズになります。高セキュリティを求める施設では、積極的に取り入れてみましょう。

サービスロボット（清掃、運搬、案内、警備など）

サービスロボットは、省人化や業務効率化に貢献する設備です。たとえば、清掃や案内、警備などを自動でおこなう機能が搭載されています。

IoTと連携することで、遠隔からの稼働状況確認や制御も可能になります。人手不足に悩む施設では、有効な導入手段といえるでしょう。

BEMS（ビルエネルギーマネジメントシステム）

BEMSは、建物のエネルギー使用を最適化する管理システムです。空調や照明の稼働状況をリアルタイムで監視・制御でき、無駄なエネルギー使用を抑制できます。

また、CO2排出量削減にも貢献できる点が評価されています。とくに、環境配慮とコスト削減を両立したい建物への導入がおすすめです。

クラウド型建物OS / スマートビルプラットフォーム

クラウド型建物OSは、ビルの運用効率を大幅に向上させる中心的な仕組みです。IoT機器の一括管理を可能にし、クラウド連携で遠隔操作やデータ分析も実現できます。

複数拠点の管理が一元化されるため、時間や人手のコストが抑えられます。スマートビルを推進したい企業は、積極的に導入を検討してみましょう。

不動産DXでIoT技術を活用した3つの成功事例

不動産DXでIoT技術を活用した成功事例は、以下の3つです。

• 成功事例1：物件の魅力向上と内見の効率化｜株式会社LIFULL（ライフル）
• 成功事例2：入居者の満足度向上と物件価値の維持｜大東建託株式会社
• 成功事例3：セキュリティ強化と生活利便性の向上｜レオパレス21

ひとつずつ紹介します。

成功事例1：物件の魅力向上と内見の効率化｜株式会社LIFULL（ライフル）

株式会社LIFULL（ライフル）では、IoTを活用して物件の魅力向上と内見対応の効率化を実現しています。スマートロックやカメラを導入し、入居希望者が非対面で自由に物件を見学できる環境を整備しました。

結果的に、内見件数が増加し、成約率の向上にもつながっています。営業対応を効率化したい企業は、同様のシステム導入を検討するとよいでしょう。

出典参照：平面の間取り図から3D間取りを生成！LIFULL、AIを用いた「LIFULL HOME’S 3D間取り」正式版の提供開始｜株式会社LIFULL

成功事例2：入居者の満足度向上と物件価値の維持｜大東建託株式会社

大東建託株式会社は、防犯性や快適性を向上させるIoT設備を積極的に導入しています。たとえば、環境センサー付き家電や顔認証システムの活用により、入居者の満足度を高めているのが特徴です。

また、異常検知と自動通知によって、迅速な対応も可能になりました。資産価値を維持しつつ入居者の安心を確保したい管理会社には、有効な事例といえます。

出典参照：「スマートライフ賃貸住宅」１号棟の入居募集開始 東急大井町線「等々力」駅・「上野毛」駅徒歩１１分（世田谷区中町）に９月末完成予定 ｜大東建託株式会社

成功事例3：セキュリティ強化と生活利便性の向上｜レオパレス21

レオパレス21では、顔認証システムやスマートロックを導入し、非接触型の入退室管理を構築しました。この施策によって、防犯性の向上と入居者の利便性が両立されています。

さらに、物理的な鍵の受け渡しが不要になったことで、従業員の業務負担も軽減されました。安心かつ効率的な管理体制を目指すなら、この取り組みを参考にしてみてください。

出典参照：スマートロック導入拡大で、新規入居の約85%が来店不要に | 株式会社レオパレス21

不動産DXでIoT技術を活用する方法

不動産DXでIoT技術を活用する方法は、以下のとおりです。

• 企業全体の課題や目的を明確にする
• 自社に最適なシステム・ツールを選択する
• 社内のデジタルリテラシーを向上する
• DX人材の採用して組織体制を整える

それぞれ解説します。

企業全体の課題や目的を明確にする

IoT導入を成功させるには、まず自社の課題や目的の明確化が必要です。目的が曖昧なままだと、適切なツールの選定や効果検証が難しくなります。

たとえば、省エネ促進や顧客満足度の向上など、導入の狙いを具体的にすることで方針が定まります。最初のステップとして、自社の現状を丁寧に洗い出しましょう。

自社に最適なシステム・ツールを選択する

課題に適したシステムを選ぶことが、導入の成功を左右します。用途に応じて、防犯強化にはスマートロック、エネルギー管理にはBEMS（ビルエネルギー管理システム）などの選定が求められます。

また、導入後の運用や拡張性を見据え、システムやツールを選ぶのが重要です。現場の声を反映しながら、慎重に比較検討を進めていきましょう。

社内のデジタルリテラシーを向上する

IoTの効果を最大限に発揮するには、社員のITスキル向上が不可欠です。操作方法を理解していなければ、導入機器を有効に活用できません。

社内研修やマニュアル整備によって、現場での活用をスムーズに進められる環境を整えるのが重要です。継続的な学習の場を設け、全社的に活用力を高めていきましょう。

DX人材の採用して組織体制を整える

不動産DXを推進するには、専門知識を持つ人材の確保が重要です。自社だけでは対応が難しい場合、外部の専門人材を活用するのも効果的な手段となります。

また、社内連携を強化し、部署間でスムーズな情報共有を図る必要があります。組織の体制づくりと人材配置は、中長期的な視点を持ち、戦略的に進めていきましょう。

まとめ

不動産DXで物件にIoT機器を取り入れることで、物件の魅力向上や内見対応の効率化、防犯性や快適性の向上などが期待できます。あらためて、不動産DX導入におけるIoT技術の種類を以下にまとめました。

• スマートスピーカー
• スマートロック
• スマートメーター
• スマートリモコン
• 開閉センサー
• ネットワークカメラ
• 各種センサー（温度、照度、人感、位置情報ビーコンなど）
• 顔認証システム
• サービスロボット（清掃、運搬、案内、警備など）
• BEMS（ビルエネルギーマネジメントシステム）
• クラウド型建物OS / スマートビルプラットフォーム

それぞれ異なる特長・メリットがあるため、自社の物件に最適なIoT機器を取り入れられると、顧客満足度の向上も実現できます。

すでにIoT機器を導入して一定の成果につなげている会社もあるため、成功事例を参考にしながら、ぜひ自社のDX化の推進に役立ててみてください。