証券DXとは?基礎知識と企業の活用事例をわかりやすく解説

証券業界では急速な環境変化と顧客ニーズの多様化により、デジタル化の重要性がこれまで以上に高まっています。しかし、依然としてレガシーシステムや人材不足といった課題が立ちはだかり、多くの企業がDXの推進に苦戦しているのが現状です。

本記事では、「証券DX」の基本から、その必要性・具体的なメリット・実践方法・成功事例までを網羅的に解説します。金融業界の変革に向けた第一歩を踏み出していきましょう。

証券DXとは

証券DXとは、証券業界におけるデジタルトランスフォーメーションのことで、ブロックチェーンやAIといった最新技術を使って業務のやり方を根本から変える取り組みです。

近年では、モバイル化やパーソナライゼーションサービスの開発も進んでおり、一人ひとりの投資家に合わせたきめ細かなサービス提供が可能になってきました。

証券DXの定義・目的

証券DXとは、従来の証券取引や金融サービスをデジタル技術で根本から変えていく取り組みです。単なるIT化やデジタル化とは違い、AIやビッグデータ、クラウドといった新しい技術を使って、顧客の体験を良くしたり、業務を効率化したり、これまでにないビジネスを生み出したりします。

主な目的は、投資家にとってより使いやすいサービスを作り、市場をもっと活発にし、取引にかかるコストを下げ、リスクをしっかり管理することです。

証券会社におけるDXの重要性

日本の金融業界は他の産業と比べて早くからシステム化が進んでいる業界ですが、それゆえに現在多くの課題を抱えているのが実情です。デジタル技術の広がりで、ユーザーの行動も大きく変わってきており、従来の方法では対応しきれない状況が生まれています。

特に若い世代の投資家は、スマートフォンで手軽に取り引きできるのを当たり前だと思っており、こうした期待に応えられなければ顧客離れが進んでしまうでしょう。また、他業界の企業が金融事業に参入してくるケースも増えており、競争に勝ち残るためにはデジタルを使った変革が急務となっています。

証券DXが求められる業界の背景

昔のペーパートレードから、インターネットやオンライン取引に移行したことで証券取引は大きく変化しています。さらに、その後のスマートフォンの普及により、取引がもっと手軽でリアルタイムにできるようになりました。

最近では、AIや機械学習を使ったロボアドバイザーが出てきて、個人投資家も簡単に資産運用のアドバイスがもらえるようになりました。

世界でもDXの進み方は様々で、米国ではフィンテック企業がイノベーションを引っ張り、アジアではモバイル中心のやり方が主流です。証券業界の変化は止まらず、変化に合わせていくことが生き残りのカギになっています。

証券業界が直面する5つの深刻な課題

証券業界は現在、デジタル化の波に乗り遅れることで生じるさまざまな課題に直面しています。長年にわたって構築されてきた業界構造や慣習が、急速に変化する市場環境への適応を困難にしているのが現状です。

他にも、顧客の投資行動や期待値の変化、新たな競合の参入、技術革新による市場の変容など、複数の要因が絡み合って業界全体に大きな変革圧力をもたらしています。

これらの課題は単独で存在するものではなく、相互に影響し合いながら業界の構造的な問題を深刻化させています。

1.レガシーシステムの課題

証券業界の多くの企業が、1980年代に構築された巨大なシステムに依存している状況が続いています。当時は最新技術として業務効率化を促進していましたが、現在ではシステムの大規模化・複雑化が問題となっています。これらは、メンテナンスや改修に多大なコストがかかるレガシーシステムとなってしまいました。

経済産業省の調査によると、金融機関は、全業界の中でも特にDX推進が遅れている状況です。金融業界では顧客の資産情報や個人情報を扱う関係上、システム変更には慎重にならざるを得ず、複雑化した既存システムの改修は大きなリスクを伴います。

参考:経済産業省|D X レポート

2.投資家層の減少と若年層の投資離れ

証券業界では、従来の主要顧客である高齢者が中心となっている一方で、将来のメイン顧客となる30代から40代の取り込みに苦戦しています。若い世代の資産の使い方や投資先が多様化しており、従来の営業スタイルでは対応が困難になっているのが実情です。デジタル化により情報を自身で取得しやすくなったことで、従来の営業マンが提供していた価値が相対的に低下しています。

また、インターネットの利用者が年々増加し、2021年には80%を超える状況です。対面での詳細な商品説明を重視してきた従来のビジネスモデルが通用しなくなってきています。顧客ニーズの変化に対応し、新たな価値提供方法を確立することが急務です。

参考:総務省|インターネットの利用動向

3.参入企業の増加による競争の激化

PayPayや楽天証券などに代表される、従来金融サービスを取り扱っていなかったIT企業が、デジタル技術を駆使して金融ビジネスに参入しています。レッドオーシャン化(競争が激化していく状況)が深刻な問題となっており、従来の証券会社は新たな競争環境への対応を迫られています。

選ばれるサービスになるためには、サービスの体験価値を高めるなどの方法で競争優位性を担保し、継続的な改善を繰り返していく必要があるでしょう。新規参入企業は最初からデジタルネイティブ向けのサービス設計を行っているため、従来型の証券会社との差が顕著に現れている状況です。

4.暗号通貨やブロックチェーン技術の普及

近年、ビットコインやイーサリアムなどの暗号通貨(仮想通貨)が注目を集めており、従来の金融サービスに大きな影響を与えています。暗号通貨はインターネット上で取り引きされる実体を伴わない電子的な通貨で、銀行を介さない送金などにより、本来金融機関が得られるはずの手数料収入が減少しています。

暗号通貨は今後さらに主流になると予想されているため、従来の証券業界のビジネスモデルに根本的な変革が必要なのかもしれません。一部の金融機関はブロックチェーン技術の検討を進めていますが、業界全体での対応は遅れています。

5.人口構造の変化による顧客ニーズの多様化

日本の人口構造の変化により、証券業界の顧客層も大きく変わってきています。金融資産を多く保有している層の高齢化が進む一方で、デジタルネイティブな若い世代は投資に対するアプローチや期待値が従来とは大きく異なります。

若い世代は情報収集から取引実行まで、すべてをデジタルで完結することを求める傾向が強く、従来の対面中心のサービス提供では満足させることが困難です。また、投資商品への期待も多様化しています。ESG投資やテーマ投資など、従来の株式や債券といった基本的な金融商品だけでは対応しきれないニーズが増えています。

証券DXがもたらす3つメリット

証券業界におけるDXの推進は、企業の運営と顧客サービスの両方を大きく変えます。従来の人手に頼った作業から、デジタル技術を活用した効率的な運営への転換により、会社の財務状況が改善されるでしょう。

業務の自動化やデータ分析の精度向上、新しいビジネスモデルの開発などを通じて、証券会社は投資家へのサービスを向上させられます。さらに、付加価値として、事業運営の透明性と効率性を同時に高められるでしょう。

1.業務効率化によって運営コストの削減が期待できる

RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)などの技術を使うことで、これまで手作業で行っていた取引処理や顧客対応を自動化でき、大幅な時間短縮とコスト削減が実現します。AIを使ったチャットボットによる顧客サポートの導入は、お客様からの問い合わせ対応にかかる人的リソースを減らせます。

また、AIによって顧客の行動パターンや市場の変化を分析すれば、効率的なマーケティング活動ができるようになり、コストも最適化できるでしょう。ブロックチェーンを活用した証券決済システムにより、取り引きの透明性を保ちながら決済にかかる手数料や時間を削減でき、全体的な費用対効果の向上が図れます。

2.業務プロセスの飛躍的スピードアップ

デジタル技術を活用した最新のツールやシステムの導入により、業務プロセスの自動化や効果的なマーケティング活動ができるでしょう。

高度なアルゴリズムを使った取引監視システムは、不正取引を見つけるだけでなく、市場の異常な動きを素早く捉えることができ、リアルタイムでのリスク管理ができます。ITシステムをクラウドに移すことで、インターネットがあればどこからでもアクセスできるようになるでしょう。さらに、システム障害時もベンダーが迅速に復旧作業を行うため自社の負担が軽くなります。

3.顧客体験の質が高まり、信頼と満足度の向上につながる

インターネットバンキングやモバイルバンキングの導入により、顧客は24時間365日、場所を選ばずに証券取引や資産管理ができるようになります。スマートフォンアプリを使った取り引きや一人ひとりに合わせたポートフォリオ提案など、デジタル技術を駆使して顧客との関係を深める取り組みが広がっています。

AIによる投資アドバイスサービスでは、顧客の投資目的やリスクに対する考え方や資産状況を分析してくれるため、投資初心者という新たな顧客層の開拓が可能となり、従来リーチできなかった幅広い市場への参入が期待できます。

さらに、オンライン証券取引やオンライン決済サービスなどの新しいビジネスモデルにより、証券取引を身近なものとして感じてもらえるかもしれません。

証券DXの具体的な実践施策

証券業界のDX化は、実際にさまざまな技術を導入して具体的な成果を生み出しています。クラウド、AI・機械学習、IoT、生体認証、RPAなどの最新技術を使い、これまでの証券業務のやり方を大きく変える取り組みが進んでいます。これらの技術は一つだけでも効果がありますが、組み合わせて使うとより大きな価値を生み出すでしょう。

各技術の特徴を理解し、自社の課題や目標に合わせて適切に組み合わせれば、効率的で効果的なDX化が可能になり、継続的な成長につながる基盤を作れます。

クラウド活用による業務システム刷新

証券会社では、従来のオンプレミス型システムからクラウドシステムへの移行が急速に進んでいます。その結果、メンテナンスコストや故障によるデータ消失リスクの大幅な軽減が実現します。

クラウドシステムの導入により、金融機関はITインフラのコストや管理コストを削減でき、さらにインターネットを介してアクセスするため、セキュリティが強化されるのも大きな特徴です。

社外からでもスムーズにアクセスできるため、テレワークの働き方にもマッチしており、特にコロナ禍以降の働き方の変化に対応しています。クラウドシステムは導入や運用が容易で、俊敏性や拡張性が向上するため、証券業界のDX推進において重要な要素となっています。

AI・機械学習による業務自動化

これまでは顧客の年齢や性別など基本的な情報だけで分析していましたが、現在では膨大なデータを使った高度な分析が欠かせません。AIとビッグデータの分析力により、巨大なデータから有益な情報を取り出し、市場の動きの予測やリスク管理がより正確に行えるようになっています。

他にも、AIチャットボットによる問い合わせ対応により、顧客はより早く正確な情報を得られるようになり、サービスの品質が向上します。資産管理の分野では、AIを使ったアルゴリズム取引が増えており、より高度で複雑な取引戦略の実行が可能です。また、OCRによる書類のデータ化により管理や分析が簡単になり、定型業務の効率化と正確で迅速なデータ分析ができるようになっています。

IoT技術を活用した投資判断の高度化

IoTは「Internet of Things」の略語です。「モノのインターネット」という意味で、さまざまな機器やセンサーから集められるリアルタイムデータを投資判断に使う取り組みが進んでいます。

これらのIoTデータを機械学習と組み合わせて分析すると、市場の変化をいち早く察知し、投資リスクを減らしながら収益機会を増やすことができます。ESG投資においても、企業の環境データや社会貢献活動の実績をIoTで継続的に監視し、より客観的で透明性の高い投資判断が可能になるのです。

生体認証システムによるセキュリティ強化

生体認証とは、指紋や顔などの体の特徴を使って本人確認を行う技術です。証券業界では、インターネット取引のログインやATMでの取り引き、口座開設などの場面で広く使われるようになってきました。従来のパスワード認証に比べて安全性が高く、使いやすいのが大きなメリットです。

最近は特に顔認証の導入が進んでおり、本人確認書類に添付されている顔写真と、その場で撮影した顔写真を照らし合わせることで本人確認を完了させる方法が普及しています。この仕組みにより、第三者のなりすましや画像データの悪用を防げるようになりました。セキュリティの強化が重要視される証券業界において、生体認証は欠かせない技術の一つとなっています。

RPA導入による定型業務の自動化

RPAとは、「Robotic Process Automation」の略で、ソフトウェアロボットを使って人が行う定型的な業務を自動化する技術です。証券業界では書類作成や登録業務など大量の定型業務が発生します。RPAを使うことで人間がPC画面上で行う作業を、事前に設定したルールに従ってソフトウェアロボットが自動で実行してくれるでしょう。

ミスの削減や人件費の削減、24時間365日の稼働も実現できますが、RPAの導入には十分な事前準備が必要で、過去の書類が残っている限り完全な自動化は難しいです。一部は人の手を介す必要があるのが現状です。

証券DXを成功に導く3つのポイント

証券業界でのDX化を成功させるためには、技術導入だけでなく組織全体での取り組みが重要になります。経営層が強いリーダーシップを発揮し、従業員のスキル向上を支援し、外部の専門パートナーとの連携を築くことで、効果的なDX推進が可能になります。

多くの証券会社がDX化に取り組んでいますが、一方で技術の導入だけに注力して失敗するケースも少なくありません。成功するためには、組織の文化や働き方を変革し、全社一丸となってデジタル化に取り組む体制を作ることが欠かせません。

経営層に求められるDXリーダーシップ

経営陣は、DXプロジェクトに必要な予算や人材を確保し、会社全体でのデジタル化の取り組みをリードしていく必要があります。

リーダー自身がデジタル化の大切さをしっかりと理解し、DXの目標を決めてチームを導くサポートを提供する責任をもちましょう。また、他の会社との競争の厳しさを理解し、将来を見据えた判断を下しましょう。

さらに、変革を進めるために、定期的にチェックとフィードバックを行い、継続的に関わり続けることが成功のポイントです。

従業員のデジタルスキル向上と教育体制

証券業界で働く従業員にとって、デジタルスキルは今や必須の能力となっています。DXを実現するためには、従業員が最新のテクノロジーや業界のトレンドについて継続的に学び、自分のスキルをアップデートしていくことが欠かせません。

企業側は、研修プログラムやワークショップ、オンラインコースを用意し、従業員のスキル開発をサポートする環境を整える必要があります。現在、DXに対応できるデジタル人材の需要に供給が追いついておらず、深刻な人材不足が起きているのが現状です。

この取り組みは、新たなアイデアを生み出すための基盤を築くことに役立つでしょう。

専門パートナーとの連携によるDX推進体制の構築

証券業界でのDX推進には、社内のデジタル人材だけでなく、外部の専門パートナーとの連携が重要になります。ITに強い人材を社内で確保するとともに、外部から専門スキルを持った人材を派遣してもらう方法も効果的です。また、デジタル人材の確保と同時に、DX支援業者の選定も事前に行っておきましょう。

DX支援業者にはそれぞれ異なる専門性があるため、自社の方向性や課題に最適な業者を選ぶ必要があります。社内だけでは対応が困難な高度な技術導入や、業界特有の課題解決には、証券業界での実績を持つ専門パートナーとの連携が不可欠です。

成功事例から学ぶ証券DXの先進的な取り組み事例

証券業界でのDX推進を成功させるために、実際に成果を上げている企業の事例を見ていきましょう。各社それぞれ異なるアプローチでDXに取り組んでいます。これらの先進企業の具体的な取り組み内容や成功のポイントの中に、自社のDX推進に活かせるヒントが隠されているかもしれません。

各社の事例から、技術導入だけでなく組織運営や顧客サービスの改善など、さまざまな角度からのDX推進方法を学び、自社に最適な戦略を構築していきましょう。

事例1:野村證券株式会社|DX戦略の変革

野村證券は、DX推進により社内業務の自動化・効率化を実現し、より付加価値の高い分析・アドバイザリー業務への注力に成功しています。特に若年層向けのデジタルプラットフォーム構築で大きな成果を上げており、2020年6月にマネーフォワードと共同制作した資産管理アプリでは、ユーザーが簡単な質問に答えるだけで「資産寿命」を知ることができる革新的なサービスを提供しています。

このアプリは複数の金融機関の口座データや不動産のAI査定価格を自動連携し、資産の一元管理を可能にしました。さらに、ブロックチェーン技術を活用したデジタル証券の発行・売買プラットフォームを開発し、従来の金融の枠を超えた新たな価値提供を実現しています。

参考:野村證券株式会社|DXの実践

事例2:アイザワ証券株式会社|eKYC導入による本人確認の効率化

アイザワ証券は、新規口座開設時の本人確認手続きにKYC対応デジタル身分証システムを導入し、大幅な業務効率化と顧客利便性の向上を実現しました。従来の店頭申込や郵送申込に代わり、スマートフォンを使って24時間いつでも口座開設の手続きが可能になりました。

運転免許証やマイナンバーカードの読み取りにより、最短5分で入力が完了し、本人確認書類の写しが不要になるため、顧客の負担が大幅に軽減されています。入力項目の減少により誤入力も少なくなり、申込みから口座開設完了までの日数が大幅に短縮されました。

同社では、新規口座開設書類の準備や郵送手続き、回収処理が不要となり、グループ全社で推進するペーパーレス化が促進され、業務効率化とコスト削減を同時に実現しています。

参考:アイザワ証券株式会社|口座開設時の本人確認にデジタル身分証システムを導入

事例3:東海東京フィナンシャル・ホールディングス株式会社|独創的な経営戦略

東海東京フィナンシャル・グループは「次世代型の証券ビジネス」を目指し、生成AIを活用した社内業務効率化やAIデータベースマーケティング、相続診断シミュレーションシステムなどを導入しました。

特に注目すべきは、スマホ専業証券「CHEER証券」と職域アプリ「YORISO」の開発です。CHEER証券では米国株式・国内株式・ロボアド・投資信託がすべて500円から購入でき、口座開設から取り引きまで全てスマートフォンで完結できます。

また、STOアジアネットワークやブロックチェーン技術を活用し、デジタル通貨プラットフォームによる最先端機能の提供も進めています。これらの取り組みが評価され「DX銘柄」に3年連続選定されるという快挙を達成しています。

参考:東海東京フィナンシャル・ホールディングス株式会社|DX推進による独創的な経営戦略

証券DXを進める上での注意点

証券DXを成功させるためには、単に新しい技術を導入するだけでは不十分です。金融という特殊な業界の特性を理解し、様々なリスクを想定した慎重なアプローチが求められます。

証券業界では、顧客の大切な資産を預かる責任があるため、セキュリティ面での配慮は他の業界以上に重要になります。また、長年使われてきた既存システムとの兼ね合いや、従業員のデジタル対応力の向上も欠かせない要素です。

1.セキュリティリスクに対する包括的な対策が必要

証券業界では顧客の大切な資産や個人情報を扱うため、サイバー攻撃や情報漏洩への対策には手を抜けません。DXを進めるときには、これまで以上にしっかりとしたセキュリティ体制を作る必要があります。

例えば、高度な暗号化技術やマルチファクター認証を入れたり、怪しいアクセスをリアルタイムで監視するシステムを使ったりと、いくつもの防御策を重ねることが大切です。自動でコンプライアンスをチェックする機能を使えば、規制に関する管理もぐっと楽になります。

しかし、金融もITも分かる人材がなかなかいないのが悩みどころかもしれません。

2.既存システムとの統合における技術的な課題を見極める

DXを進める際の大きな壁となるのが、既存システムと新しいデジタル技術の統合です。古いシステムと最新技術では、データ形式や通信方式が異なるため、連携させるのは簡単ではありません。

技術的な課題としては、システム間のインターフェース設計、データ移行時の整合性確保、セキュリティレベルの統一などがあります。

これらの課題を解決するには、事前に詳細な影響分析を行い、リスクを洗い出すことが大切です。全てを一度に変えるのではなく、段階的に統合を進めて、一気に刷新しないで課題を見つけながら進めていきましょう。

3.社員の意識改革とリテラシー向上が必要

証券DXを進める際に注意したいのが、社員の意識改革とリテラシー向上の問題です。多くの社員は従来のやり方に慣れ親しんでおり、デジタル技術に対する理解や関心が不足しているケースが少なくありません。

デジタルリテラシーの格差も大きな課題となっています。マネジメント層がデジタル技術の可能性を理解していなければ適切なDX方針を示せません。現場社員がデジタルツールを使いこなせなければ効果的な活用は期待できません。

特に証券業界では、データ分析やAI活用などの専門的な知識不足が問題となっています。

まとめ|証券DXから始める金融業界変革への第一歩を踏み出そう

証券業界が直面する課題の解決策は、レガシーシステムの刷新や新技術の導入だけでなく、組織全体でのDX推進体制の構築にあります。経営層の強いリーダーシップのもと、従業員のデジタルスキル向上と専門パートナーとの連携により、持続的な変革を実現できるでしょう。

証券DXは単なる技術革新ではなく、金融業界全体の変革への入り口です。現状の課題を正確に把握し、自社に最適なDX戦略を段階的に進めていくことが重要になります。今こそ、証券DXの推進を検討し、金融業界変革への確実な一歩を踏み出しましょう。