2023年8月期 通期決算説明会 質疑応答

2023.10.17

当決算説明会における主な質疑応答の要旨は、以下の通りです。
回答者は当社代表取締役CEO 河端 保志が努めさせていただきました。
なお、記載内容につきましては、ご理解いただきやすいよう、加筆修正しております。

Q1

TSSファンドのベンチャー企業への出資について質問です。複数のベンチャー企業に出資しているとありますが、ITエンジニア関連とはまったく異なる業種への出資も行なっているのでしょうか? 今回の出資先は先行投資で赤字になっているため評価損となったという理解でよいですか?

また、ファンドが計上する損失のリスクは『中』ですが、純利益が赤字に陥る可能性もある規模での出資ですか? 株価のボラティリティへの影響が気になります。

A1

おっしゃるとおり、ITエンジニア関連とは異なる業種にも出資しています。ただし、基本的には当社のITエンジニアのニーズがある会社に出資しているため、出資した会社に有償ではありますが当社のエンジニアリソースを提供することで開発を進めることが出来る、先方にも非常にメリットがあるかたちになっています。

最近のスタートアップ企業は先行投資をするため、会計上は減損にしなければならない部分があります。そのため今回は、KPIとしては非常に順調であっても、会計上はどうしても評価損にしなければならないというケースが多々見込まれています。このような背景による評価損ですので、それほど大きな問題ではないと考えています。

1社当たりの投資金額は、おおよそでも1,000万円から2,000万円程度です。今回はむしろ利益がかなり超過していたため、まとめて何社かをいったん評価損にしました。つまり今後、純利益が赤字になるほどの影響があるような評価損があるかというと「ほぼ絶対ない」と言っても過言ではないと思っていますので、ご安心ください。

今回評価損とした部分は、今後イグジットした際の利益とそのままぶつかるようなかたちになるため、今後のことを考えると非常にポジティブな内容であると思っています。

Q2

貴社が急成長した背景には、エンジニア需要の増加だけでなく貴社の参入障壁の高さがあると考えています。他社との比較について教えてください。戦略的M&Aが鍵なのでしょうか?

A2

戦略的M&Aは非常に重要なポイントだと考えています。当社はまずグロース企業として高い成長率を維持しようと考えています。そのため、利益を出そうと思えばもう少し出せる部分があるものの、先行投資を優先しています。そして、M&Aを行うことによって非連続的な成長ができると考えています。

昨今、市場のさまざまな上場企業を見渡しても、M&Aを実施した翌期の売上や利益がM&Aした会社ののれんに負けてしまい、利益がシュリンクしてしまう会社が非常に多いと考えています。

しかし当社の場合は、M&Aの際にかなり厳しいデューデリジェンスを行い、かつ再現性の高いPMIを実行しています。今はその手法がうまく活きているため、自信を持ってよいM&Aができていると考えています。

参入障壁については、M&A先の当社よりも小規模な同業他社からすると、物理的に当社には勝ちづらい部分があります。なぜかと言うと、上場している会社にはエンジニアにとっての知名度やブランド認知があるからです。そのため、小規模な会社が同じ広告を打ったとしても、当社のほうが広告投資の効果が高くなると考えています。

つまり、当社のほうがエンジニアの獲得コストが安く、商いに例えると「安く仕入れることができる」ということです。加えて、案件に関しても、規模が大きく上場している当社のほうが数も多く持っているため、獲得したエンジニアも複数の選択肢の中から当社を選んでくれます。

取引のある企業に対しては、こちらが安く仕入れている分、そのまま単価に還元でき、エンジニアにはより多くの案件を提案できる。この状況では基本的に営業力でごまかさない限り、当社より小規模な競合プレーヤーが当社以上のメリットを出すことは本質的にかなり難しいと思います。

買収した会社のPMIがなぜここまでうまくいっているかというと、当社の手法が機能することにより、買収した会社のエンジニアが非常に喜んでいるからだと思っています。

Q3

上流から実動までの支援を一気通貫で行えることが強みとお話しされていましたが、なぜ強みと言えるのでしょうか?

A3

当社では、マッキンゼー・アンド・カンパニー・ジャパンやボストン・コンサルティング・グループやアクセンチュアなどの戦略コンサルティングファームを「上流」、案件の開発やプロジェクトを管理するプロダクトマネージャーが在籍している会社を「中流」、当社がメインとしてきた手を動かしてシステム開発を行う領域を「下流」と定義しています。

従来、上流を請け負ってきた会社では、下流の部分は下請け企業に流す前提の単価で考えています。そして、上流の日本企業の発注先の多くは外資系企業です。外資系企業のほとんどの本社がアメリカにあるため、アメリカの本社に対して、非常に高いフィーを取られます。当社は外資系のように高い本社へのフィーがかからない上に上流出身の人材が集まる企業であるため、質もパフォーマンスも同等にもかかわらず単価が低いので、先方の会社に喜ばれます。

加えて、今までは上流が戦略を描き、その後の手を動かす作業は二次請け・三次請けというかたちで下流の下請け企業が行うのが当たり前の世界でしたが、当社は一気通貫でソリューションを提供できます。

これまでの歴史上、当社が持っているコンサルティングファームのケイパビリティと、開発するケイパビリティを兼ね備えた会社はほぼありませんでした。そのため、このような提案を行うことで、大手企業も含めた顧客からは非常に高い満足度が得られています。

まだまだ営業力が弱く「このようなことができる会社です」と伝えられる機会は少ないものの、この強みを活かした提案をすることによって、足元では非常に手応えを感じています。したがって、2024年8月期以降は、とても期待できるのではないかと考えています。

Q4

2024年8月期の業績予想はM&Aを含んだ想定となりますか?

A4

当社は基本的にコンサバティブに物事を考えているため、M&Aを含んだ想定はしていません。当然ながらM&Aは行いたいですし、社内目標では行わなければいけないとしていますが、市場に出している数字については、M&Aを実施できなかったとしても達成したいと考えているものになります。

Q5

企業成長のための利益の内部留保も必要だと思いますが、配当についてはどのようにお考えですか?

A5

株主の方には当社を応援していただいている分、しっかり還元していきたいと考えています。ただ現状は、今ある利益を今後の成長に投資することによって、できる限り株価を向上させ、キャピタルゲインとして還元していきたいと考えています。

今後、会社の規模が大きくなり利益が数百億円や数千億円となった時に、当社が今の成長率を維持できるかというと、今ほどの再現性はなくなってくると考えています。その際には、当然ながら利益をさらにしっかりと出して配当を増やすことで還元しようと考えています。

しかし、今は何に投資すれば確実に会社が伸びるのかが明確な状況であるため、配当というかたちではなく、会社の事業成長に投資することによるキャピタルゲインの部分で還元していきたいと考えているため、ご理解いただけると幸いです。

Q6

SGの取り組みが投資の観点からも重要だと思いますが、ESG関係の取り組みで力を入れている部分、またこれから力を入れていきたい部分があれば教えてください

A6

今後はESGのすべての部分が非常に重要になってくると考えています。ヨーロッパのファンドの中でも特に機関投資家は、企業がESGをどのくらい重要視しているかを、投資の判断材料にしています。当社が今回も決算説明資料にESGの項目を載せているのは、そのような背景も影響しています。

当社の事業自体が、今までよりも大幅にCO2の排出量を減らすことのできる内容だと思っています。例えば、これまで物理的にやってきた作業を、主にシステム開発によってシステマチックにすることで、CO2排出削減に繋がっていると考えております。どのくらいのCO2排出量が削減できたかをいつか算出してみたいと思います。

また、日本の終身雇用という働き方自体に関しても、今は非常に大きなゲームチェンジが起きていると思っています。「フリーランス」という新しい働き方を根付かせることも、そもそも1つのESGの取り組みになっていると思っているため、今後もこのような部分に力を入れていきたいと考えています。

Q7

スライドに『技術分野の拡大』とありますが、現時点で見通しが立っていることはありますか? アイコンのとおり、AI分野への拡大を意識されているのでしょうか?

A7

技術分野の拡大に関しては、昨今話題になっているブロックチェーンやAIなど、さまざまな部分で情報収集しています。

ただし技術分野のR&Dに関しては、その時求められている人材に応じて教育や案件を拡充することが必要になってくると考えています。AI分野への拡大を意識しているのは事実です。AIという分野は、いわゆるディープラーニング(深層学習)という領域における「システムエンジニアの派生系」と考えることができます。昨今話題の「ChatGPT」から派生するプロンプトのエンジニアリングもそうです。

過去のITの歴史においても、例えばかつて「ノーコード」と呼ばれる、コーディングをしなくてもモノが作れるサービスが非常に流行し、実際にホームページやランディングページが多く立ち上がりました。それによって参入障壁が下がったことで、ホームページやランディングページをもっとリッチにしたいという需要が高まり、より一層システムエンジニアのニーズが増したという背景があります。

このことから、このままAIが加速してAIエンジニアが増えると同時に、作ったシステムをシステムエンジニアによってさらに拡充させたいというニーズは増していくと思っています。

この両方の観点で市場を俯瞰し、変化に合わせた経営戦略や事業戦略を立てていくことが大事だと考えています。

Q8

中期経営計画を大幅に超過する業績と理解していますが、好業績に合わせた計画の見直しはないのでしょうか?

A8

我々として、今は「中期経営計画を何のために出すのか」について考えています。

ほとんどの会社が、中期経営計画を出す時には株価への影響について考えていると思います。ところが当社は、現状で2020年の上場期に出した中期経営計画は大幅に外れています。ポジティブに外したのでよかったものの、外していることは事実です。

今出せる中期経営計画は、私を含めた経営陣の性格上、保守的な内容にならざるを得ません。私としては、ここであらためて中途半端に保守的な計画を出して「また超過したよね」という結果になるよりも、毎期ごとにしっかりと高い成果を上げ、そちらを評価していただくことのほうが大事だと思っています。

仮に会社の事業が多少鈍化した際に「今期は戦略的にやっているから、来期以降は安心してください」と言えるように、中期経営計画を出すことはあるかと思います。現状はみなさまのご期待に応えられると思いますので、中期経営計画を新たに設定する必要性を感じていません。

Q9

市場の地合いもありますが、本日の株価の推移はどうお考えですか?

A9

私自身も、上場してからは株式市場をしっかり理解するため、インサイダーにならない範囲での個別株の投資など、株式市場について相当勉強しています。

今週はさまざまな会社の決算発表がありましたが、グロース市場の会社で決算発表の引けまでに株価が上がった会社は、それなりによい決算でも大幅に落ちていました。一方で、落ちていた会社は、それなりの決算を出すと上がっていました。

当社の場合は直近で大きく期待されている分、多くのグロース系会社が上がっていたことにより、昨日の決算後には非常に売られていました。おそらくその影響もあり、売った投資家が多かったのではないかと考えており、個人投資家がリスクヘッジをするのは当然のことだと思います。

当社がデイリーベースで株価をコントロールすることはできません。株の値動きは需給によるものですので、株主や投資家が当社を魅力的に思うかどうかの差だと思っています。当社は株価を意識しつつも、まずはよい業績を出し続けることによって、確実に時価総額を上げていくことが大事だと思っています。

今日多少売られてしまったことは市場の観点からやむを得ないことと思っていますが、中長期的にわたってしっかりとした成績を出して、みなさまにご安心いただけるような経営をしていきたいと考えております。

Q10

マーケティングプラットフォーム事業領域でのM&Aは行わないのでしょうか?

A10

行う可能性はあります。ただし、現状はエンジニアプラットフォーム領域での再現性のほうが高いため、エンジニア領域を優先しています。

マーケティング領域に関しては、行うとしてもかなり慎重に進めることになると思います。会社の内部留保をいかに効率よく使っていくかという点が重要ですので、優先順位をつけてしっかりと選択と集中を行い、よいM&Aをしていく必要があると思っています。

Q11

エンジニア平均継続月数の下落が大きいように見えますが、理由は何でしょうか?

A11

こちらは計上月など、案件ごとの条件によって多少ボラティリティが発生します。

現在の平均継続月数が実際に落ちているかというと、そこまで影響はありません。たまたま終了月が重なって新規の方等の割合が大きくなると、今回のようにボラティリティが発生することがあります。悪い変化とは捉えていませんので、ご安心いただけたらと思います。

Q12

行政が行っている『リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業』への申請は行わないのでしょうか? これらの取り組みに参入することで認知度が上がる効果があるかと思います。

A12

こちらは本当に大事なことだと思っています。現在は、政府を筆頭にリスキリングのキャリアアップが推進され需要がありますので、非常に注力しているポイントです。

しかし、会社のリソースは有限です。選択と集中を考えた際に「売上に直結するか」を判断軸にすると、現在は他に優先すべきことが大量にあります。とは言え、こちらは絶対に進めなければいけないと考えていますので、頃合いを見ながら強化していきたいと思います。

当社では現在、「tech boost」というプログラミングスクール事業を展開していますが、ここに社内の優秀なリソースをもう少し割けば、売上のグロースはまだまだ見込めます。ただし、今の段階では「Midworks」に割いたほうがグロースする割合も大きいです。

そのため、しっかりとバランスを見極めながら進めていきたいと考えています。

Q13

マーケティング事業とエンジニア事業の連携について、具体的にどのようなことを想定しているのでしょうか?

A13

当社がここまでよい事業成長を遂げられた大きな理由として、ビッグデータを持っていることが挙げられます。

基本的には、マーケティングに投資する企業は業績が順調です。当社はマーケティング領域でさまざまな会社を支援していますので、どの事業領域でどのような会社が伸びているかをすぐに把握できます。加えて、Webマーケティングに投資するということはWebシステムへの投資も行います。そのため、当然ながらWebエンジニアへのニーズがあります。

したがって、伸びている領域へ営業戦略を傾けたり、お客さまと当社の間で「Midworks」の領域を連携したりするかたちでの展開ができると考えています。

Q14

来期も積極的な採用を進めるとのことですが、人材の受け入れ体制も整っているのでしょうか?

A14

当社としては「採用をしたから減益になった」という状況にはしたくありません。現状は、増益しながらも積極的な採用ができている組織になっていると思います。今回の計画も積極的に採用する前提で増益しています。

機関投資家のみなさまには、「最低でも売上と利益は30パーセント成長します」とお伝えしていたところ、2024年8月期は40パーセントの成長目標を出しています。そのような点もポジティブに捉えていただけたらうれしく思います。

足元では、非常によい幹部人材が採用できています。今後も引き続きさまざまな方のジョインが期待できると思いますし、上流部分にもスペシャリストが集まってきています。その意味で、来期は本当に楽しみな1年になると考えています。

Q15

事業部間での情報共有はどのように行うのでしょうか?

A15

社内では、事業部の責任者同士が集まった事業部経営会議など、連携のためのさまざまな定例会議が設定されています。当社はかなりフラットな組織ですので、「Slack」というメッセンジャーツールで日常的にやり取りしています。

また、若いメンバーが非常に多いこともあり、事業部責任者同士はとても仲がよいです。そのような関係性の中で、組織全体の成長について話し合う機会はしっかりと確保されており、密な情報共有ができていると考えています。

Q16

現時点で、『Midworks』の登録エンジニア数をどこまで増やせるとお考えでしょうか?

A16

これは非常に難しい質問です。当社の参入するSIer市場にはNTTデータや富士ソフトなど多くの会社があり、彼らだけでも数十兆円以上の売上規模があります。これらのSIerはエンジニアを社員として雇用し、出向させるモデルを採っています。

このような会社が、最近はフリーランスという選択肢を考えています。そのため、仮に人材が1パーセントずれただけでも数千億円の市場規模が広がりますので、フリーランスの満足度も非常に高いです。元同僚との会話の中で「フリーランスすごくいいよ」と紹介されて検討する方も増えています。したがって、「Midworks」に登録するフリーランスエンジニアは今後も爆発的に増えるのではないかと思っています。

一方で、このような場では保守的な考え方をせざるを得ない部分があるため何とも言えないところもありますが、当社はフリーランスエンジニア領域において完全にトップティアを走っています。一番初めに検討していただける会社になることが非常に大切であり、それを達成するためには今が攻め時だと考えていますので、大きな先行投資をしているのが実情です。

Q17

今後、機関投資家からのポートフォリオ組み入れなどの可能性はありますか?

A17

最近は四半期ごとに、インタビューの機会など、興味を持ってくださる機関投資家が増えており、本当にうれしいことだと思っています。会社の業績をしっかり出して認知度が上がるのはありがたいことですし、最近では成長株系のETFなどにも当社の株を組み込んでいただいていますので、非常によい流れだと思っています。

現状、特に機関投資家の中で、成長株投資やグロース株投資をしている会社のポートフォリオへの組み入れについてはお話をいただいています。「今回の通期決算で高い成長率を維持できたら、今期からまた組み入れるよ」と言ってくれるような会社もありますので、来週以降の動きを注視しています。

地合いによっても変わってきますが、今回の四半期も非常に多くの機関投資家の方からミーティングをいただいていますので、そこで自分たちの今後の成長性をしっかりとアピールできるかどうかが大事だと考えています。

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