スマートファクトリーとは?定義・メリット・導入のポイントを徹底解説
製造
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※エンジニア数は2026年8月期 第1四半期決算説明資料に基づきます。
「見積を出すのに3日かかり、気づいたら他社に決まっていた」「営業が1人辞めたら、その人の案件の経緯が誰にもわからなくなった」「社長がいなくなったら売上が半分になると言われた」。製造業の営業でよく聞く声です。
どれも原因は同じで、見積の出し方、案件の進み具合、得意先との関係が、特定の人の頭の中にしかないことにあります。これが営業の属人化です。
本記事では、営業の属人化が起きる原因と放置した場合のリスクを整理したうえで、従業員100〜300名規模の製造業が3か月で仕組みに変える手順と、かかる費用の目安を解説します。先に営業支援ツールを入れて失敗する会社が多い理由も取り上げますので、これから取り組む方は参考にしてください。

営業の属人化とは、受注に必要な情報ややり方が特定の担当者に偏り、ほかの人では同じ仕事ができなくなっている状態のことです。担当者が休んだり辞めたりすると、見積も商談も止まってしまいます。
属人化そのものは、腕のよい営業がいる証拠でもあります。問題は、その人の知識が会社に残らないことです。製造業では、次の3つの形で表れます。
一般的な解説では「営業プロセスの標準化」や「情報共有」が対策として挙げられます。製造業の場合は、見積という技術と価格の判断が営業の中心にあるため、まず見積から手を付けるのが近道です。
まず、自社の状態を確認してみてください。当てはまる項目が4つ以上あれば、特定の人が抜けたときに売上へ影響が出る段階です。
| No | チェック項目 | 属人化している領域 |
| 1 | 見積を作れる人が1〜2人に限られている | 見積 |
| 2 | 過去の見積や図面を探すのに10分以上かかることがある | 見積 |
| 3 | 同じ製品でも、担当者によって見積金額や値引きの基準が違う | 見積 |
| 4 | どの引き合いがどこまで進んでいるかを、営業会議で初めて知る | 案件 |
| 5 | 失注の理由が記録されていない | 案件 |
| 6 | 担当者が休むと、その得意先からの問い合わせに答えられない | 案件・得意先 |
| 7 | 売上の上位5社のうち、社長しか窓口になっていない得意先がある | 得意先 |
| 8 | 営業が辞めたとき、引き継ぎ書に書ける情報がほとんどなかった | 得意先 |

営業が属人化する原因は、担当者のやる気や性格ではなく、仕事の流れにあります。製造業で特に多い原因は次の4つです。
それぞれ詳しく見ていきます。
見積が遅いと、営業の動きが悪いと思われがちです。しかし製造業向けの業務改善を手がける株式会社シクミが引き合い対応の時間を工程別に測ったところ、引き合い1件あたり平均45分のうち、判断に使っている時間は10分未満でした。月30時間の対応時間のうち約37%にあたる11時間は、在庫や生産予定の照合に使われていました。
つまり遅れているのは判断ではなく、図面、過去の単価、在庫と生産予定を探して集める作業です。情報がどこにあるかを知っている人だけが早く見積を出せるため、その人に仕事が集中します。
参考:PR TIMES|見積回答の遅れは、情報が3か所に分かれていることが原因だった(株式会社シクミ)
中小の製造業では、売上の大半を社長の付き合いで取っている会社が少なくありません。事業承継の支援会社の整理では、社長個人の売上比率が60〜80%に達する例が複数あり、営業の引き継ぎには最低3年かかるとされています。
得意先から見れば「社長だから頼んでいる」状態です。価格も社長の一声で決まるため、ほかの営業は値付けの根拠を学ぶ機会がありません。
参考:社長の営業を後継者に引き継ぐ3年ロードマップ(コムトリ)
見積書や顧客台帳をExcelで管理している会社では、前任者が組んだ関数やマクロがそのまま使われています。NTTデータビジネスブレインズが営業事務の経験者221名に行った2026年の調査では、64.2%が「前任者の謎のマクロ・関数」に苦労したと答えました。
単価の計算式がどのセルを見ているのか誰も説明できない状態では、値上げや新しい加工の追加にも対応できません。
参考:PR TIMES|営業事務のExcel属人化の実態(NTTデータビジネスブレインズ)
営業が3名前後の会社では、見積、納期の調整、クレーム対応、納品の立ち会いまで営業が担います。日報や商談の記録は「時間ができたら書く」ものになり、結果として何も残りません。記録がない以上、上司も会議で口頭の報告を聞くしかなく、案件の進み具合は本人にしかわからないままになります。
属人化は、売上が立っている間は問題として見えません。表に出るのは、人が動いたときと、相手の期待が変わったときです。
買い手は価格だけでなく、返事の速さも見ています。機械工具卸のトラスコ中山は、失注の原因を調べた結果、価格ではなく主に見積回答のスピードが原因で一定数の失注が起きていたと公表しています。同社はその後、見積を自動で回答する仕組みを自社で作り、最短5秒で回答できるようにしました。
相見積が当たり前の取引では、2日後に出す正確な見積より、当日に出す8割の見積の方が選ばれる場面があります。見積を作れる人が1人しかいない会社は、その人の手が空くまで全ての引き合いを待たせることになります。
担当者が辞めると、進行中の引き合い、過去の値引きの経緯、得意先の担当者の好みといった情報が一緒に失われます。後任は得意先に同じことを聞き直すことになり、信頼を落とします。引き継ぎ書を書いてもらっても、普段から記録がなければ書ける内容は限られます。
社長個人に結びついた得意先は、代替わりのときに離れやすくなります。後継者が技術や工場を引き継げても、営業は引き継げないという問題です。得意先からも「後継者は大丈夫か」と見られており、営業が仕組みになっているかどうかは会社の信用にも関わります。
担当者ごとに単価表や値引きの基準が違うと、同じ製品でも見積金額が変わります。原材料の値上げを見積に反映する時期も人によってずれるため、売上は変わらないのに粗利だけが下がっていきます。気づくのは決算のときです。
属人化の対策として、SFA(営業支援システム)やCRM(顧客管理システム)の導入を勧められることがあります。ただし、道具から入ると定着しないことが多いのが実情です。
株式会社ハンモックが、SFAを導入した従業員300名以上の企業の経営者・役員305名に行った調査では、全機能を活用できているのは27.6%にとどまり、63.2%は一部しか使えていないか、ほとんど使えていないと回答しました。約6割が定着に課題を抱えています。
定着しない理由は、現場から見ると「入力が増えるだけ」だからです。何を記録すれば見積が早くなるのか、会議が短くなるのかが決まっていないまま画面だけが用意されると、営業は従来のExcelと新しいシステムの両方に入力することになります。
道具より先に「何を解決するのか」を言葉にする必要があるのは、営業支援ツールに限りません。当社が従業員300名以上の企業でAI・DXの推進を担う責任者111名に行った調査では、91.9%が社内主導のプロジェクトの停滞や頓挫を経験しており、理由の1位は「経営課題・業務課題を活用につなげる力の不足」(58.8%)でした。人材や技術の不足より先に、課題を仕組みに落とし込むところでつまずいています。
参考:TWOSTONE&Sons|企業のAI内製化に関する「限界」の実態調査
関連記事:営業DXの課題を完全解説|7つの失敗要因と現場で使える解決策を徹底解説
順番は「型、道具、人」です。まず紙やExcelのままでよいので記録する項目と見積の手順を決め、それが回り始めてから道具に載せ替え、最後に人の配置や外部の力を検討します。
| 順番 | やること | この段階でやらないこと |
| 1. 型 | 案件の一覧に載せる項目を決める。見積の手順と、過去の見積を探せる置き場所を決める | ツールの比較・契約 |
| 2. 道具 | 決めた項目をそのまま入力できる仕組みを作る。二重入力をなくす | 項目の追加(使われない項目が増えるため) |
| 3. 人 | 営業事務への仕事の移し替え、外部の営業支援の活用を検討する | 型がないままの増員 |

ここからは、営業3〜10名、IT専任者がいない製造業を想定して、3か月で「案件の一覧」と「見積の型」を作る手順を紹介します。全社一斉ではなく、まず1つの営業所か1つの製品群で始めてください。
| 時期 | やること | できあがるもの |
| 1か月目 前半 | 直近3か月の引き合いと見積を全て書き出す。社長と各営業の頭の中にある案件も含める | 案件の一覧(Excelで可) |
| 1か月目 後半 | 見積1件にかかった時間を工程別に測る(探す・確認する・判断する・作る) | 時間がかかっている工程の特定 |
| 2か月目 前半 | 過去の見積を製品・加工・得意先で探せるように1か所へ集める。見積の計算の流れを紙1枚にする | 見積の型、過去見積の置き場所 |
| 2か月目 後半 | 案件の一覧と見積の型を、入力しやすい道具に載せ替える | 案件管理と見積の仕組み(試用版) |
| 3か月目 前半 | 営業会議を「一覧を見ながら次の一手を決める場」に変える。報告のための資料作りをやめる | 会議の運用ルール |
| 3か月目 後半 | 社長の得意先に後継者や担当営業が同行し、経緯を一覧に記録する | 得意先ごとの引き継ぎ記録 |
最初にやるのは、道具選びではなく棚卸しです。直近3か月の引き合いと見積を、得意先、品名、金額、提出日、結果、担当者の6項目で書き出します。社長が口頭で受けた案件も必ず入れてください。
あわせて、見積1件にかかった時間を「探す」「確認する」「判断する」「作る」の4つに分けて1〜2週間測ります。多くの会社では、判断よりも探す時間と確認する時間が長く出ます。ここが改善の対象になります。
過去の見積を、製品名や加工内容、得意先で探せる状態にします。フォルダ分けとファイル名のルールを決めるだけでも、探す時間は大きく減ります。次に、ベテランが見積を作るときに見ている順番を聞き取り、紙1枚にまとめます。材料費、加工時間、外注費、運賃、利益の乗せ方の順に書けば十分です。
型が決まったら、入力しやすい道具に載せ替えます。営業10名以下であれば、サイボウズのkintoneのような自分たちで画面を作れるサービスで足ります。スタンダードコースは1ユーザー月額1,800円、10ユーザーから契約でき、初期費用はかかりません。販売管理システムと数字をつなぐ必要がある場合や、見積の計算を自動にしたい場合は、開発会社に依頼する範囲になります。
関連記事:基幹システムの老朽化|中小製造業が業務を止めずに入れ替える手順と費用の内訳(※入稿時:公開後のURLを設定)
仕組みが定着するかどうかは、会議で使うかどうかで決まります。営業会議では一覧を画面に映し、止まっている案件と次の一手だけを話します。口頭の進捗報告と、会議のための資料作りはやめます。入力した内容が会議でそのまま使われるとわかれば、営業は記録するようになります。
社長の得意先については、後継者や担当営業が同行し、取引の経緯、価格の決め方、相手の担当者の情報を一覧に記録していきます。引き継ぎには年単位の時間がかかるため、3か月目から始めて続けることが大切です。
1か月目の棚卸しと計測にそのまま使えるExcelのテンプレートを用意しました。次の5つのシートで構成しています。
集計のシートで「探す+確認する」の割合が5割を超えていれば、時間を使っているのは判断ではなく情報集めです。過去の見積の置き場所と、製造の予定の見せ方から手を付けてください。
費用は、どこまでを自分たちでやり、どこから外部に頼むかで変わります。目安を整理しました。
| 進め方 | 費用の目安 | 向いている会社 |
| 自分たちでExcel・共有フォルダを整える | 0円(担当者の時間のみ) | 営業5名以下。まず型を作りたい |
| kintoneなどで自分たちで画面を作る | 月額1,800円×人数(10名で月18,000円) | 営業10名前後。社内に画面を作れる人がいる |
| 開発会社や支援会社に頼む | 内容により個別見積。依頼の前に型(項目と手順)を決めておくと、作る範囲が絞られて金額が下がる | IT専任者がいない。販売管理と数字をつなぎたい、見積の計算を自動にしたい |
| 営業代行・営業支援を使う | 固定報酬型で月50〜70万円、成果報酬型でアポ1件1.5〜3万円が相場 | 新規開拓の手が足りない |
参考:営業代行の費用相場(ローカルマーケティングパートナーズ)
注意したいのは、営業代行を先に使っても属人化は解消しないことです。見積の型と案件の一覧がない状態で外部の営業を増やすと、引き合いが増えた分だけ見積が滞ります。費用をかける順番も「型、道具、人」です。
関連記事:システム内製化が失敗する7つの理由と対策・成功に導くポイントを解説

岐阜県のアルミダイカストメーカーである大健工業株式会社は、自社サイトを作り直して加工の対応範囲や設備を詳しく載せた結果、新規の取引先が7社増え、サイト経由の売上は累計で3,000万円を超えました。社長の人脈に頼らず、問い合わせから引き合いが入る流れを作った例です。
参考:ブランディングテクノロジー|中小製造業の集客成功事例(大健工業株式会社)
機械工具卸のトラスコ中山も、見積の回答を仕組みにした例です。2018年当時、支店によっては1日1,000行を超える見積依頼を担当者が1件ずつ手作業で処理し、回答に数時間から1日かかっていました。販売店ごとの受注と見積の実績から価格と納期を自動で計算する仕組みを作り、2025年12月末時点で見積の30.5%を自動で回答しています。規模は違いますが、「過去の見積と実績を1か所に集め、定型の依頼は人が判断しなくても返せるようにする」という考え方は、中小の製造業にもそのまま当てはまります。
関連記事:営業DXの成功事例7選|売上向上・業務効率化の実例と自社で再現する方法を徹底解説
社長のやり方を否定する必要はありません。「社長が倒れたら見積が何日止まるか」「主要な得意先の担当者が代わったら誰が対応するか」を数字で示すと、保険として必要だと理解されやすくなります。最初の棚卸しを社長の案件から始めるのも有効です。
入力項目が多すぎるか、入力しても自分の得にならないかのどちらかです。項目は6つ前後に絞り、入力した内容が会議資料や見積の下書きにそのまま使えるようにしてください。日報と一覧の両方を書かせる運用は避けます。
型づくり(項目と手順を決める部分)にITの知識は要りません。道具に載せ替える段階だけ、外部の力を借りれば足ります。中小企業基盤整備機構の特集によると、売上50億円未満の企業では情報システムの担当者の61%が兼務です。専任者がいないことを前提に、運用が軽い道具を選ぶことが大切です。
参考:中小機構|中小企業は「ひとり情シス問題」にどう向き合うべきか
見積を探す時間の短縮は、過去の見積を1か所に集めた時点で表れます。受注率や新規の引き合いに効果が出るのは、会議の運用が回り始める3か月目以降です。事業承継を見据えた得意先の引き継ぎは、年単位で考えてください。
見積や案件の管理が特定の人に偏っていてお困りなら、『株式会社 TWOSTONE&Sons』にご相談ください。
当社は、案件の一覧や見積の手順といった型づくりから、それを載せる仕組みの開発、運用が回るまでの支援まで一貫して対応しています。販売管理システムを入れ替えずに、今ある数字とつなぐ形で進めることも可能です。道具を売ることが目的ではないため、Excelのままでよい部分はそのまま残す提案をします。
「うちの見積のうち、どこまで仕組みにできるのか」を知りたい段階でも構いません。お気軽にお問い合わせください。
関連記事:営業DXとは?今日から実践できる進め方|具体例・成功のポイントを徹底解説
営業の属人化は、担当者の性格ではなく、見積に必要な情報が散らばっていること、受注が社長の人脈に頼っていること、記録が残らない仕事の流れから生まれます。放置すると、見積の遅れによる失注、退職や代替わりでの得意先の離脱、値付けのばらつきによる粗利の低下につながります。
対策は、営業支援ツールの導入からではなく、案件の一覧と見積の型を作るところから始めてください。1つの営業所や製品群に絞れば、3か月で形になります。まずは直近3か月の引き合いと見積を書き出すことから始めてみましょう。
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