建設業の請求書電子化|協力会社の請求書と出来高査定の照合、基幹への転記をなくす方法

建設業の請求書電子化|協力会社の請求書と出来高査定の照合、基幹への転記をなくす方法(出来高請求書テンプレート付き)

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「請求書を電子で受け取るようにしたのに、経理の仕事は思ったほど減らない」。請求書の電子化に取り組んだ建設会社から、よく聞く声です。

建設業の請求書は、出来高に応じて毎月請求する形が多く、受け取った後に、注文書や現場の出来高査定と金額を突き合わせる作業があります。電子化で紙の受け渡しはなくなりますが、この照合と、原価管理や会計のシステムへの入力は、そのまま残りやすい部分です。

本記事では、建設業の請求書を電子化する方法と守るべき法律を整理したうえで、電子化の後に残る照合と転記を、AI-OCRとシステムの連携でなくす手順を解説します。協力会社に配れる出来高請求書のテンプレートと、照合チェック表も用意しましたので、参考にしてください。

建設業の請求書電子化とは

請求書の電子化とは、紙で受け渡ししていた請求書を、データで受け取り、保存し、処理できるようにすることです。方法は大きく2つあります。

方法内容良い点気をつける点
AI-OCRで読み取る紙やPDFで届いた請求書の文字を読み取り、データにする協力会社に何も変えてもらわずに始められる読み取りは100%ではなく、人の確認が要る
請求書のシステムで受け取る協力会社にシステム上で請求書を作ってもらう、またはPDFを上げてもらう最初からデータで届く。承認の流れも画面で進む協力会社に操作を覚えてもらう必要がある

どちらか一方を選ぶのではなく、対応できる協力会社はシステムで、それ以外は紙やPDFをAI-OCRで、と組み合わせるのが現実的です。

関連記事:建設DXでペーパーレスを実現するには?課題・導入ステップ・活用ツールを解説

建設業の請求書が電子化しにくい理由

建設業の請求書が電子化しにくい理由を表したイメージ

インフォマートが建設業の従事者362名に行った調査(2023年)では、請求書の受け渡しを紙で行っている人が37.8%で、書類の中で最も多くなりました。手作業でシステムに転記している書類も、請求書が最も多く6割を超えています。

参考:インフォマート|6割超の企業が手作業で請求書を転記

一般の請求書と比べて、建設業の請求書には次の特徴があります。

  • 出来高請求:工事の進み具合に応じて、毎月、進んだ分だけを請求する
  • 指定請求書:元請が決めた様式で提出してもらう会社が多い
  • 注文書との紐づけ:注文番号と契約金額を請求書に書き、契約の範囲内かを確かめる
  • 出来高の査定:現場の担当者が、請求された出来高が実際に進んでいるかを確かめる
  • 保留金・相殺:出来高の一定割合だけを支払う取り決めや、安全協力会費・立替金の差し引きがある

金額を確かめるために、請求書のほかに注文書、出来高の報告、前月までの支払の記録が必要になります。請求書だけを電子化しても、突き合わせる相手が紙やExcelのままでは、照合は人の目で行うことになります。

建設業の請求書(出来高請求書)に書く項目と計算方法

出来高請求書に書く項目を整理します。協力会社に様式を配る元請の方も、請求書を書く協力会社の方も、確認に使ってください。

項目内容
請求日、請求書番号いつの請求かを特定する
請求元の名称、登録番号適格請求書(インボイス)発行事業者の登録番号(Tから始まる14文字)
請求先(元請)の名称誰に宛てた請求か
工事番号、工事名、注文番号どの工事の、どの注文に対する請求か
契約金額注文書の金額(税抜)
前回までの出来高の累計前月までに請求した出来高
今回の出来高今回の請求のもとになる金額。工種ごとの数量×単価で示す
出来高の累計、契約の残り累計が契約金額を超えていないかを確かめる
消費税税率ごとに区分した金額と、消費税額
差し引く金額、支払金額保留金、相殺する金額がある場合

出来高請求書の計算式

  • 出来高の累計=前回までの出来高の累計+今回の出来高
  • 契約の残り=契約金額−出来高の累計
  • 今回の請求額(税抜)=今回の出来高−今回の保留金
  • 今回の支払金額=今回の請求額(税込)−相殺する金額

保留金の扱いは会社によって違います。たとえば香川県の合田工務店は、契約済みの工事の請求書について、出来高の累計の90%から既に支払った額を引いた金額を請求し、出来高が100%になった月に残りを請求する方法を、協力会社向けに公開しています。

参考:合田工務店|契約済(取極)工事の請求書記入方法

インボイス(適格請求書)に必要な6つの項目

  • 請求書を作った事業者の名称と登録番号
  • 取引の年月日
  • 取引の内容
  • 税率ごとに区分して合計した金額と、適用する税率
  • 税率ごとに区分した消費税額
  • 請求書を受け取る事業者の名称

消費税の端数処理は、1枚の請求書につき、税率ごとに1回と決められています。明細の行ごとに端数を処理した請求書は、要件を満たしません。

参考:国税庁|No.6625 適格請求書等の記載事項

参考:国税庁|インボイス制度に関するQ&A 問57(端数処理)

請求書を電子化するときに守る法律

請求書を電子化するときに守る法律を表したイメージ

電子帳簿保存法

請求書をメールやシステムなど電子データで受け取った場合、2024年1月からは、そのデータを電子のまま保存する必要があります。保存のルールは次の3つです。

  • 改ざんを防ぐ措置をとる(訂正・削除の履歴が残るシステムを使う、事務処理の規程を定める、など)
  • 画面とプリンターで、すぐに表示・印刷できるようにする
  • 日付・金額・取引先で検索できるようにする

参考:国税庁|電子取引データの保存方法

インボイス制度

建設業では、元請が出来高検収書を作り、協力会社の確認を受けて保存することで、仕入税額控除を受ける方法が認められています。この場合、出来高検収書に、仕入明細書として必要な項目を書く必要があります。

支払のときに、元請の売上にあたる金額を差し引く場合は注意が必要です。差し引く分について、元請から協力会社へインボイスを渡すか、仕入明細書に元請の登録番号・税率ごとの金額・消費税額をあわせて書く必要があります。安全協力会費など、差し引く費目が課税の対象になるかどうかは内容によって変わるため、税理士に確認してください。

参考:国税庁|インボイス制度に関するQ&A 問97(出来高検収書)

参考:国税庁|インボイス制度に関するQ&A 問91(仕入明細書での相殺)

建設業法(支払の期日と差し引きのルール)

  • 元請は、発注者から出来高払いや完成払いを受けたら、その日から1か月以内に、できる限り短い期間で、協力会社に相応する代金を支払う(第24条の3)
  • 特定建設業者は、協力会社から引渡しの申出があった日から50日以内に支払期日を定める(第24条の6)
  • 安全協力会費などを代金から差し引く場合は、双方の合意と、見積条件・契約書面への明示が必要
  • 正当な理由なく、長い期間、保留金として代金の一部を支払わないことは違反になる

照合に時間がかかって支払が遅れると、この期日に触れるおそれがあります。請求書の処理を速くすることは、効率だけでなく、法律を守ることにもつながります。

参考:国土交通省|建設業法令遵守ガイドライン(第12版)

関連記事:領収書のデータ化は認められる?メリットやデメリットを徹底解説

請求書を電子化しても残る作業|照合と転記

協力会社の請求書を受け取ってから支払うまでの流れを、段階ごとに整理しました。

段階紙のときの作業電子化で減るもの電子化の後も残りやすいもの
1. 出来高の報告協力会社が出来高の明細を請求書に付けるシステム上で注文の金額を引いて入力できる自社の様式のPDFや紙で届く分は、そのまま
2. 現場の査定現場の担当者が請求書を受け取り、進み具合と見比べる紙の受け渡しと移動査定の金額を決める判断。台帳や出来高の報告との見比べ
3. 請求書の受領開封、工事ごとの振り分け、ファイリング開封、振り分け、保管システムに乗らない協力会社の紙やメールのPDF
4. 注文・出来高との照合経理が、査定の金額と請求書を1枚ずつ見比べる注文金額を超える請求の入力を防ぐ機能がある製品もある請求額と査定額、契約の残り、保留金、相殺、登録番号、消費税の確認
5. 承認押印と回覧画面での承認、進み具合の一覧差し戻したときの協力会社との連絡
6. 原価管理・会計への入力請求書を見ながら入力するCSVでデータを出せる取り込む形式への直し、工事番号や費目の付け直し、手入力
7. 支払支払通知書を1件ずつ送る支払通知のメール一斉送信相殺した後の支払額の確定、支払期日の管理

電子化で減るのは、紙を運ぶ作業です。数字を見比べる作業(2と4)と、別のシステムに入れ直す作業(6)は残ります。

栃木県の佐藤工業(従業員21〜50名)は、月に約300枚の請求書を請求管理のシステムで受け取るようにし、経理部門で月約50時間を削減しました。現場の担当者が会社まで請求書を取りに来る移動もなくなり、査定にかかる期間は3〜5日からほぼ半日になっています。一方、導入後も、経理は査定と承認を終えた請求書の金額と業者が合っているかを目で確認していると紹介されています。電子化は大きな効果を生みますが、照合そのものは残ることが分かります。

参考:ANDPAD|導入事例 佐藤工業株式会社

インフォマートの翌年の調査(2024年、328名)では、紙での受け渡しは減った一方、システムへの転記に1日1時間以上をかけている人が34.8%と、前年の30.7%から増えました。請求書と見積書は4割弱が電子化している一方、出来高報告書と納品書・検収書は電子化が遅れているという結果です。照合の相手になる書類の側が、まだ電子になっていないということです。

参考:インフォマート|転記の作業に1時間以上費やす企業は3割以上で昨年より増加(2024年調査)

残った照合と転記をなくす4つの手順

残った照合と転記をなくす4つの手順を表したイメージ

1. 協力会社に統一の出来高請求書を配る

請求書の様式を統一し、注文書の明細(工種、数量、単価)をあらかじめ入れた状態で協力会社に渡します。協力会社は今回の出来高の数量を入れるだけになり、元請は同じ形の請求書を受け取れます。様式が揃うと、後の読み取りと照合の精度が上がります。

2. 照合のルールを決める

担当者が頭の中で確かめていることを、ルールとして書き出します。次の7つが基本です。

  • 出来高の累計が、前回までの累計と今回の出来高の合計になっているか
  • 出来高の累計が、契約金額を超えていないか
  • 請求書の「前回までの累計」が、自社の記録と合っているか
  • 今回の請求額が、現場の査定額と合っているか
  • 注文番号と協力会社が、注文書と合っているか
  • 消費税が、税率ごとに1回の端数処理で計算されているか
  • 登録番号が書かれているか

ルールが決まっていれば、全ての請求書を人が見る必要はなくなります。ルールに合わなかった請求書だけを人が確認する形にできます。

3. AI-OCRで読み取り、注文と査定のデータに突き合わせる

紙やPDFで届いた請求書をAI-OCRで読み取り、注文のデータ(原価管理ソフト)と査定のデータ(現場の入力)に自動で突き合わせます。AI-OCRの読み取りは100%にはなりませんが、読み取った値を注文や査定の値と比べることで、読み違いも不一致として見つけられます。

大切なのは、読み取りと突き合わせを一続きにすることです。読み取っただけでは、人が見比べる作業は残ります。

参考:富士フイルムビジネスイノベーション|AI-OCRの精度

4. 原価管理ソフト・会計ソフトへ自動で渡す

照合が済んだ請求書のデータを、原価管理ソフトと会計ソフトが取り込める形に直して渡します。工事番号、費目、取引先のコードを自社の付け方に合わせる部分は、会社ごとに作る必要があります。請求書のシステムが出すCSVをそのまま取り込めない場合も、あいだに変換を入れることで、手入力をなくせます。

関連記事:AI活用で進める経理DX!業務効率化からガバナンス強化まで詳しく解説

建設業向けの請求書電子化サービス

公開されている情報から、建設業で使われている主なサービスを整理しました。機能と価格は変わるため、導入の前に各社へ確認してください。

サービス特徴原価管理・会計への渡し方
ANDPAD請求管理請求額とは別に、出来高の査定額を入力して承認できる。注文番号と工種を紐づける査定の結果をCSVで出力
Digital Billder 請求書工事と請求書を紐づける。出来高調書、保留金、相殺、注文書番号の項目に対応CSVやRPAで原価管理・会計システムへ
BtoBプラットフォーム TRADE・請求書出来高ベースの請求、相殺、保留金に対応。紙やPDFはAI-OCRでデータにできる工事原価管理・会計システムと連携
Bill One請求書の受け取りを代行してデータ化。請求書と発注・検収のデータを自動で照合する機能がある(建設業に特化した製品ではない)仕訳や振込データの作成

参考:ANDPAD|請求管理

参考:燈|Digital Billder 請求書

参考:インフォマート|BtoBプラットフォーム TRADE 建設業向け

参考:Sansan|Bill One「AI自動照合」

サービスを入れると、受け取り・承認・保管は大きく楽になります。そのうえで、査定額の入力が現場の手作業のままになっていないか、出力したデータを原価管理ソフトに手で入れ直していないかを確かめてください。残っている場合は、サービスを替えるのではなく、前後をつなぐことで解決できます。

すぐに使えるテンプレート|出来高請求書・照合チェック表

協力会社に配れる出来高請求書と、受け取った請求書を確かめる照合チェック表を、Excelのテンプレートにしました。次の4つのシートで構成しています。

  • 出来高請求書:工種ごとの契約数量・単価と、前回まで・今回の出来高数量を入れると、累計、進み具合、保留金、消費税、支払金額が自動で計算される。登録番号などインボイスに必要な項目つき
  • 出来高査定:現場で認めた数量を入れると、請求書との数量・金額の差が明細ごとに出る
  • 照合チェック表:その月の請求書を1行ずつ並べ、査定額との差、注文金額の残り、消費税、登録番号を自動で判定。「要確認」の請求書だけを人が見る
  • 集計:枚数、自動で一致した割合、要確認の理由、照合にかかる時間の目安

集計のシートで「自動で一致した割合」が高ければ、照合を自動にしたときに減らせる時間も大きくなります。出来高請求書の様式を使う前に、保留金や相殺の扱いが自社の契約と合っているかを、経理と税理士に確認してください。

建設業の請求書電子化についてよくある質問

請求書の電子化は義務ですか

紙で受け取った請求書を電子にすることは、義務ではありません。義務になっているのは、メールやシステムなど電子データで受け取った請求書を、電子のまま保存することです(電子帳簿保存法、2024年1月から)。

協力会社が電子化に対応してくれない場合はどうすればよいですか

全ての協力会社に同じ方法を求める必要はありません。対応できる会社はシステムで、難しい会社は紙やPDFのまま受け取ってAI-OCRで読み取る、という組み合わせで進められます。統一の様式をExcelで配るだけでも、読み取りと照合はかなり楽になります。

月に300枚ほどでも、自動化する意味はありますか

枚数よりも、1枚にかかる時間で考えてください。注文書と出来高を見比べ、原価管理ソフトと会計ソフトに入力している場合、1枚あたりの時間は長くなります。テンプレートの集計シートで、今の時間と、自動で一致した分を除いた後の時間を比べると判断しやすくなります。

現場の出来高査定もなくせますか

査定の判断は、現場の担当者に残ります。なくせるのは、請求書を取りに行く移動、前月の資料を探す時間、査定した金額を別の表に書き写す作業です。前回までの累計や契約の残りを画面に出しておけば、査定そのものも短い時間で済みます。

関連記事:ペーパーレス化とは?意味・進め方・法律と企業事例を解説

関連記事:建設業のkintone活用|施工管理システムを入れても残る二重入力を、日報・工事台帳・請求の連携でなくす方法(※入稿時:公開後のURLを設定)

建設業の請求書処理の悩みは『株式会社 TWOSTONE&Sons』へ

請求書を電子化したのに経理の時間が減らない、出来高との照合を人の目で行っている、請求書のデータを原価管理や会計のシステムに手で入力している、といったお悩みがあれば、『株式会社 TWOSTONE&Sons』にご相談ください。

当社は請求書のサービスを販売する会社ではありません。今お使いのサービスやソフトを残したまま、AI-OCRでの読み取り、注文・出来高との突き合わせ、原価管理・会計への受け渡しの部分だけを、自社の様式とルールに合わせて開発する形でご提案します。

ご相談では、毎月の請求書の枚数と、原価管理や会計のシステムに入力している項目を教えていただければ、どこまで自動にできるかを一緒に整理します。照合チェック表を使ってみて、手作業の量が見えてきた段階でも構いません。お気軽にお問い合わせください。

まとめ|電子化の次は、照合と転記をなくそう

電子化の次は、照合と転記をなくしていこうといっているイメージ

建設業の請求書は、出来高・注文書・保留金・相殺と突き合わせる必要があり、電子化しても照合と、原価管理や会計への入力は残りやすくなります。ここをなくすには、統一の様式を配り、照合のルールを決め、AI-OCRで読み取った値を注文と査定のデータに自動で突き合わせ、照合が済んだデータをそのまま各システムに渡す流れを作ります。

まずは、今月届いた請求書を照合チェック表に並べ、ルールどおりに一致する請求書が何割あるかを確かめるところから始めてみましょう。

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