不動産DXとは?導入のメリットやデメリットを成功事例とあわせて解説
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※エンジニア数は2026年8月期 第1四半期決算説明資料に基づきます。
「積算AIを入れれば、見積にかかる時間は減るのか」。建設会社の積算や購買の担当者から、よく聞かれる質問です。
積算AIは、図面から数量を拾う作業を大きく減らします。一方で、見積の金額を決めるもう一つの作業、つまり協力会社から届いた見積を並べて比べる作業は、積算AIの対象に入っていません。協力会社ごとに書式も工種の呼び方も違うため、ここは今も多くの会社でExcelへの打ち直しが続いています。
本記事では、積算AIの仕組みとできること・できないことを整理したうえで、協力会社の見積を比較表にまとめ、単価データベースとして残していく手順を解説します。そのまま使える見積比較表のテンプレートも用意しましたので、積算や購買の業務を見直したい方は参考にしてください。

積算AIとは、図面を読み取り、工事に必要な材料や部材の数量を自動で拾い出す仕組みのことです。これまで担当者が図面に印を付けながら数えていた「数量拾い」を、画像認識の技術で代わりに行います。
積算は「数量×単価」で工事費を出す仕事です。このうち積算AIが主に担うのは数量の側です。単価の側は、自社の過去の実績や、協力会社から取る見積で決まります。ここを分けて考えると、AIに任せられる範囲が見えてきます。
積算は、図面と仕様書から数量を拾い、単価を掛けて工事にかかる原価を出す作業です。見積は、その原価に自社の経費と利益を乗せ、発注者に提示する金額を決める作業です。積算が原価の計算、見積が売値の決定と考えると分かりやすくなります。
積算AIは、PDFや画像の図面から、記号・線・文字を読み取ります。たとえば設備の図面であれば、機器の個数を数え、配管やダクトの長さを測ります。拾った結果はExcelやCSVで出力でき、見積ソフトに渡せる製品もあります。
製品によって、対応する工種と図面の種類が違います。設備(空調・衛生・電気)、内装、住宅の建材など、得意な範囲がはっきり分かれているのが現状です。
関連記事:建設DXの推進でAIの効率的に導入・活用|活用場面や企業事例を紹介
受注前の流れを工程ごとに並べ、どこまでがAIの対象かを整理しました。
| 工程 | 作業の内容 | AIでの対応 |
| 1. 数量拾い | 図面から材料・部材の数量を数える | 積算AIの主な対象。製品が対応する工種に限る |
| 2. 見積の依頼 | 協力会社に工種と数量を示して見積を頼む | 対象外。依頼の書式を揃えると後の作業が減る |
| 3. 見積の回収 | Excel・PDF・FAXで届く見積書を集める | 紙やPDFはAI-OCRで文字を読み取れる |
| 4. 比較表の作成 | 各社の見積を工種ごとに並べる | 積算AIの対象外。工種名を揃える「名寄せ」が必要 |
| 5. 査定・交渉 | 条件の違いを確かめ、発注先を決める | 人が判断する |
| 6. 単価入れ | 数量に単価を掛けて原価を出す | 過去の単価が残っていれば自動で入れられる |
| 7. 見積書の作成 | 経費と利益を乗せて提出する | 見積ソフトの範囲 |
積算AIによって作業時間を短縮できるのは1の工程です。協力会社に発注する割合が大きい会社では、3から5にも多くの時間がかかります。積算AIを入れただけでは、この部分は変わりません。
公開されている情報から、代表的なサービスを整理しました。効果の数値はいずれも提供会社の公表値で、測定の条件は公開されていません。自社の図面で試してから判断してください。
| サービス | 提供会社 | 対象 | 公表されている効果 |
| AI積算 | H2Corporation | 空調・衛生・消火設備。PDFの平面図から機器の個数と配管・ダクトを拾う | 拾いの精度97%以上(個数物99%、ルート系95%) |
| 積算AI | KK Generation | 内装、梁、電気設備、給排水設備、建具 | 数量拾い・見積書作成の時間を70%削減(同社調べ) |
| 間取り図AI積算 | パナソニック ハウジングソリューションズ | 自社の建材(内装ドア、床材など)。紙の図面を取り込む | 1棟分の拾い出しが41分から15分 |
参考:PR TIMES|KK Generation「積算AI」
料金は、どのサービスも公式サイトでは公開されておらず、図面の枚数や利用人数に応じた見積になります。
静岡県島田市の株式会社丸紅(土木建築、従業員69人、売上高約35億円)は、AI開発会社と共同で数量拾いのAIを開発しました。数量拾いにかかる時間は最大12時間から約10分に、積算全体の工数は最大15時間から約4時間に減ったと発表しています。
市販の製品が自社の工種に合わない場合でも、自社の図面に合わせて作るという選択肢があることを示す例です。
参考:PR TIMES|丸紅とrenue、数量拾いAIを開発

3つ目が、見落とされやすい点です。積算AIの効果を見積の速さにつなげるには、単価の側、つまり協力会社の見積の扱いも一緒に見直す必要があります。
関連記事:BIM/CIMとは?導入のメリットや実際の企業事例を紹介
協力会社の見積は、会社ごとに書式が違います。Excelで届くもの、PDFで届くもの、FAXや手書きのものが混ざります。同じ工事でも「枠組足場」「外部足場」「くさび式足場」と呼び方が分かれ、単位も「m2」と「式」が混在します。
このため、担当者は見積書を1枚ずつ見ながら、自社の比較表に打ち直しています。協力会社の数が増えるほど、打ち直しと確認の時間は増えていきます。
建設業でAI-OCR(紙やPDFの文字を読み取る技術)を使った例として、四電工の取り組みがあります。同社は、1案件につき10〜15種類あるメーカーの見積書を手で入力していましたが、AI-OCRの導入で、入力作業が業務全体に占める割合が3〜4割から2割ほどに減りました。
一方で同社は、メーカーごとに見積書の様式が統一されていないため、精度の高い変換ができない部分もあると述べています。読み取りの技術だけでは解決せず、書式が揃っているかどうかで結果が変わることが分かります。
つまり、協力会社の見積をAIで読めるようにする近道は、高性能な製品を探すことではなく、書式と工種名を先に揃えることです。次の章で、その手順を説明します。

見積を頼むときに、工種・数量・単位を自社で記入した書式を渡します。協力会社は単価を入れるだけになり、各社の見積が同じ行で返ってきます。Excelのまま返してもらえれば、読み取りの作業そのものが要らなくなります。
書式を作るときに気をつけたいのが、2025年12月に全面施行された改正建設業法です。労務費などの内訳を明示した見積書(材料費等記載見積書)の作成が努力義務になり、著しく低い労務費での見積や契約は禁止されました。
国土交通省の運用方針は、元請が見積の書式を指定する場合について、協力会社が労務費や必要経費を内訳で書けないような書式を使うことを禁じています。自社の書式には、次の欄を必ず設けてください。
参考:国土交通省|改正建設業法「令和7年12月施行分」説明会資料
名寄せとは、会社ごとに違う呼び方を、自社の工種名にまとめることです。ルールを決めて表にしておけば、担当者が替わっても同じ比較表ができます。
| ルール | 具体例 |
| 自社の工種名を1つ決め、別の呼び方を辞書に足していく | 「枠組足場」「外部足場」「くさび式足場」は全て「仮設足場」にまとめる |
| 単位を揃える | 「一式」で届いた見積は、数量と単価を聞き直す |
| 材料と手間の範囲を分ける | 「材工共」か「材料支給」かを別の列に書く |
| 含むもの・含まないものを書き出す | 運搬費、養生、ポンプ車、重機が見積に入っているか |
| 労務費と必要経費は別の行に出す | 法定福利費が諸経費に含まれている場合は、分けて書いてもらう |
| 数量の根拠を残す | どの版の図面で数量を拾ったか |
辞書は最初から完全である必要はありません。見積が届くたびに新しい呼び方を足していけば、まとめられる見積が増えていきます。
工種を縦に、協力会社を横に並べ、金額を入れます。合計だけでなく、工種ごとの最安値と各社の差を見ます。
ある工種で最高値と最安値の差が大きい場合は、価格の差ではなく、数量や含む範囲が違っていることが多くあります。金額を比べる前に、見積の条件(有効期限、支払条件、別途になっている費用、工期)を表にして確かめてください。
労務費が他社より極端に低い見積は、安いからといってそのまま発注しないことも大切です。改正建設業法では、注文する側が著しく低い労務費への変更を求めることも禁止されています。
書式を揃えても、紙やPDFで届く見積は残ります。その分にAI-OCRを使います。読み取った工種名を名寄せの辞書に当て、比較表の行に流し込む流れです。
AI-OCRの読み取りは100%にはなりません。FAXのかすれや手書きの癖で読み違いが起きるため、読み取り結果を人が確認する前提で組み立てます。数量×単価が金額と合っているかを自動で確かめるようにすると、確認する箇所を絞れます。
参考:富士フイルムビジネスイノベーション|AI-OCRの精度
関連記事:AI活用で進める経理DX!業務効率化からガバナンス強化まで詳しく解説
比較表は、発注先を決めたら役目が終わりではありません。決まった単価を1行ずつ残していくと、自社の単価データベースになります。
残す項目は次の9つで足ります。
単価は、時期・地域・工事の規模で変わります。金額だけを残すと後から比べられなくなるため、条件を一緒に残すことが大切です。
単価データベースがあると、次のことができるようになります。
最後の点が、積算AIと見積比較をつなぐ部分です。数量をAIで拾い、単価を自社のデータベースから入れる流れができて、初めて見積全体の時間が短くなります。
関連記事:調達DXにおけるAI活用とは?メリット・活用業務・導入事例を解説
ここまでの手順をそのまま進められるExcelのテンプレートを用意しました。次の7つのシートで構成しています。
比較表では、最高値と最安値の差が30%を超える工種に色が付きます。その工種は金額ではなく、数量や含む範囲が違っている可能性が高いので、先に確認してください。
見積比較の見直しは、3つの段階に分けて進められます。
| 段階 | やること | 進め方 |
| 1. 型を作る | 依頼の書式、工種マスタ、比較表を決める | Excelで自社だけで進められる |
| 2. 読み取りを入れる | 紙やPDFの見積をAI-OCRで読む | 市販のAI-OCRで試す。自社の見積書で読み取れる割合を確かめる |
| 3. つなぐ | 読み取り結果を名寄せして比較表に入れ、単価データベースや原価管理ソフトの実行予算に渡す | 自社の工種マスタに合わせた仕組みが必要。開発会社に頼む範囲 |
順番を逆にして、型がないまま道具から入るとうまくいきません。当社が従業員300名以上の企業でAI・DXの推進を担う責任者111名に行った調査では、91.9%が社内主導のプロジェクトの停滞や頓挫を経験していました。不足していたものの1位は「経営課題・業務課題をAI活用につなげる力」(58.8%)です。技術より先に、何をどの形に揃えるかを決めるところでつまずいています。
参考:TWOSTONE&Sons|企業のAI内製化に関する「限界」の実態調査
関連記事:システム内製化が失敗する7つの理由と対策・成功に導くポイントを解説
使えます。現在の積算AIの多くは、PDFや紙をスキャンした図面を読み取る方式です。ただし、図面の解像度が低い場合や、手書きの修正が多い場合は、読み取りの結果を人が直す手間が増えます。
概算の考え方を整理したり、見積書の文面を整えたりする用途には使えます。一方、図面から数量を正確に拾うことや、自社の単価を当てはめることは、生成AIだけではできません。数量拾いは専用の積算AI、単価は自社のデータという組み合わせが現実的です。
数量拾いに時間がかかっている会社であれば、規模を問わず効果は出ます。先に紹介した丸紅は、従業員69人の会社です。ただし、協力会社への発注が工事費の大半を占める会社では、数量拾いよりも見積比較の側に時間がかかっていることが多いため、どちらに時間を使っているかを先に確かめてください。
書式の指定そのものは問題ありません。ただし、労務費や法定福利費などの必要経費を内訳で書けない書式を指定することは、国土交通省の運用方針で禁じられています。内訳の欄を設けた書式を使い、協力会社が別の様式で内訳を出してきた場合も受け取ってください。
関連記事:建設DXとは?代表的な施策や解消できる課題について解説
協力会社の見積の打ち直しを減らしたい、過去の単価をすぐに引けるようにしたい、積算AIを入れたが見積の時間が思ったほど減らない、といったお悩みがあれば、『株式会社TWOSTONE&Sons』にご相談ください。
当社は特定の積算ソフトやAI-OCRを販売する会社ではありません。工種マスタと比較表の型づくりから入り、市販の製品で足りる部分はそれを使い、読み取った見積を名寄せして比較表や単価データベースに入れる部分だけを開発する形でご提案します。
ご相談では、実際に届いている見積書を何枚か見せていただき、「そのうち何割がAIで読めるか」「書式を揃えれば何割まで上がるか」を一緒に試算します。読める割合が分かってから、作るかどうかを判断していただけます。お気軽にお問い合わせください。
積算AIは、図面からの数量拾いを大きく減らします。ただし、対象は数量までで、協力会社の見積を並べて単価を決める作業は残ります。ここを減らすには、依頼の書式を揃え、工種の名寄せのルールを決め、比較表を単価データベースとして残していくことが近道です。
書式が揃えば、紙やPDFの見積もAI-OCRで読み取りやすくなります。まずは次の見積依頼から、統一の書式を協力会社に渡すところから始めてみましょう。
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